薬剤性肺障害 Drug-induced lung disease

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

薬剤を投与中に起きた呼吸器系の障害の中で,薬剤と関連のあるもの.

ほとんどの薬剤で肺障害の詳細な発症機序は不明であるが,
1)活性酸素種やプロテアーゼなどを介して薬剤そのものが直接的に呼吸器系の障害を引き起こす機序や,2)薬剤が血中の蛋白と結合することで免疫原性を獲得し,免疫応答を惹起して呼吸器系の障害を来たす機序が想定されている.

呼吸器系の障害には,肺胞出血・好酸球性肺炎・肺水腫・間質性肺炎などの肺実質・間質を主座とする病態,胸膜炎などの胸膜疾患,気管支喘息などの気道疾患などが含まれているが,80%以上は間質性肺炎.

おすすめ

https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/photos/1049.pdf

薬剤性間質性肺炎 Drug induced interstitial pneumonia

一番頻度が多い.

原因薬剤

これら薬剤を使用時には,慎重な事前評価+投与中のモニタリングが重要.

分子標的薬
ゲフィチニブ(1~10%未満),エルロチニブなどのEGFR-TKI
エベロリムス(11.6%),テムシロリムスなどのmTOR阻害薬
ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤

免疫チェックポイント阻害薬
ニボルマブ(3.2~6.8%),ペムブロリズマブ(4.1%)などのPD-1抗体
アテゾリズマブ(2.7%),デュルバルマブなどのPD-L1抗体
イピリムマブなどのCTLA-4抗体

抗リウマチ薬
メトトレキサート(0.1~5%未満)
レフルノミド
ペニシラミン
金製剤

殺細胞性抗悪性腫瘍薬
ブレオマイシン(10%),ペプロマイシン

抗不整脈薬
アミオダロン(1.9%)

免疫抑制薬
シクロホスファミド

その他
インターフェロン

臨床病型

HRCTの所見に基づいて分類される.

びまん性肺胞障害 diffuse alveolar damage;DAD

画像所見
両側のびまん性すりガラス影・浸潤影

臨床上の特徴
最重症の病型.
急速に呼吸不全が進行して極めて不良な転帰をとりうる.

器質化肺炎(OP)

画像所見
斑状分布の浸潤影・すりガラス影

臨床上の特徴
ステロイドへの反応性が良好の場合が多い

非特異性間質性肺炎(NSIP)

画像所見
均一に広がる網状影・すりガラス影

臨床上の特徴
線維化が進展することもあり,一般にOPより予後不良

好酸球性肺炎(EP)

画像所見
汎小葉性すりガラス影・浸潤影と小葉間隔壁の肥厚

臨床上の特徴
ステロイドへの反応性が良好の場合が多い

過敏性肺炎(HP)

画像所見
びまん性淡いすりガラス影

臨床上の特徴
ステロイドへの反応性が良好で予後不良

投与前の評価

呼吸数
SpO2の異常がないか

胸部単純X線写真,HRCTで既存の肺疾患がないか

KL-6,SP-A,SP-Dなどの血清マーカーを測定

なすび院長
なすび院長

事前評価で異常があれば,投与の可否を再検討し,呼吸器専門医へ相談

ゲフィチニブによる肺障害に関するコホート研究では,PSの低下,高齢者,喫煙歴,画像所見で既存の間質性肺炎 or 正常肺の面積が少ないことなどが挙げられている.

投与中のモニタリング

乾性咳・息切れ・呼吸困難・発熱などの自覚症状,呼吸数・SpO2・背部の聴診(呼気終末での捻髪音の有無)

胸部単純X線写真,HRCTなどの画像検査

KL-6,SP-A,SP-Dなどの血清マーカー

診断

診断基準

①原因となる薬剤の摂取歴がある
・健康食品,市販薬.非合法の麻薬/覚醒薬にも注意
・投与中のみならず,投与終了後に発症する場合があることに注意が必要.

②当該薬剤による類似病型の肺障害過去に報告されている.
・臨床所見,画像所見,病理パターンの報告
・PNEUMOTOX on line,医薬品医療機器総合機構など,過去の薬剤性肺障害に関する報告をまとめたサイトを利用

③他の原因疾患が否定される
・感染症,心原性肺水腫,疾患増悪などの鑑別
・問診や諸検査による鑑別診断が重要

④被疑薬の中止により症状が改善する
・自然軽快もしくは副腎皮質ステロイドにより軽快
・必ずしも投与中止のみでは改善しない.

⑤被疑薬の再投与により増悪する
・致死的肺障害を誘発されるリスクがあるため,意図的な再投与は一般的には推奨されない.

鑑別

膠原病肺
過敏性肺炎
日和見感染症(ニューモシスチス肺炎,サイトメガロウイルス肺炎など)

問診:住環境,職場環境など

身体所見:関節腫脹,特徴的な皮疹などの膠原病に特徴的な所見

血液検査:抗核抗体,MPO-ANCA,PR3-ANCA,リウマトイド因子,BNP,抗トリコスポロン・アサヒ抗体,β-Dグルカン,サイトメガロウイルス抗原検査など

(薬剤リンパ球刺激試験 drugn-induced lymphocyte stimulation test;DSLT)

患者リンパ球を被疑薬と反応させて,3H-チミジンの取り込みを測定することで,患者リンパ球の分裂・分化の程度を調べる検査.

薬剤性肺障害に対しては保険適応外.

抗悪性腫瘍薬などでは偽陰性が多い.
小柴胡湯やメトトレキサートでは偽陽性が多い.

治療

原因薬剤の中止

大原則→可能な限り被疑薬の中止を試みるが,中止困難な場合は類縁薬に変更するなどの対応をする.

副腎皮質ステロイド

薬剤中止後にも症状が不変だったり増悪したりする場合,低酸素血症を伴う場合などは考慮する.

プレドニゾロン0.5~1.0mg/kg/日程度で開始し,漸減しながら2~3ヵ月程度で終了する.
*改善が顕著であれば短い期間,改善が乏しければ長い期間をかける.

PaO2<60Torrの呼吸不全を呈する場合やDADパターンを認める場合は,メチルプレドニゾロン500~1000mg/日を3日間投与するパルス療法をまず行う.

その他

シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫抑制薬,好中球エラスターゼ阻害薬などについては確立したエビデンスはない.

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