薬剤性腎障害 drug-induced kidney injury;DKI

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
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薬剤の投与により,新たに発症した腎障害,あるいは既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合.

機序に基づく分類

①中毒性腎障害および②アレルギー機序による急性間質性腎炎(過敏性腎障害),③薬剤による電解質異常,腎血流量減少などを介した間接毒性,④薬剤による結晶形成,結石形成による尿路閉塞性腎障害に分類できる.

腎の障害部位に基づき,①薬剤性糸球体障害,②薬剤性尿細管障害,③薬剤性腎間質障害,④薬剤性腎血管障害に分類することも可能.

中毒性

腎毒性を持つ薬物により,腎を構成する細胞や組織に直接障害が起こる型の腎障害.

基本的に用量依存型の腎障害であり,基本的に腎虚血誘因薬物,腎毒性をもつ腎排泄型の薬物,溶解度の低い水溶性薬物(尿細管での原尿濃縮により析出する)で発症しやすい.
→用量依存型であるため,可能な場合にはTDM(therapeutic drug monitoring)を行う.

投与前に腎機能の低下のある場合には,腎排泄型の薬剤を使用すれば,排泄の遅延と同時に血液中の薬剤濃度上昇により,副作用発現の危険性が高まる.
・高齢者では,加齢に伴い腎機能の低下を認めるのが一般的であり,筋肉量の減少から血清クレアチニン値やeGFRで腎機能を判断するのが困難なこともあるので特に注意が必要.

脱水状態では,尿の濃縮機構により,腎での薬剤濃度が極めて高濃度になる

→薬剤投与前に腎血流量,尿量を確保するため,細胞外液補充を行い,同時に利尿薬の投与を行うことも大切.
・一部の薬剤では利尿薬投与が腎障害の悪化因子となることもある.

中毒性腎症予防のためのチェック項目として,薬剤投与前に,
①薬剤の排泄経路(腎排泄型か? 肝代謝・胆汁排泄型か?)の確認
②腎機能の確認(腎機能低下はないか?)
③高齢者(潜在的な腎機能低下の可能性)
④脱水はないか?[腋下乾燥・口腔内乾燥・皮膚の張り(skin turgor)の低下]
を注意する.

急性尿細管壊死(尿細管) acute tubular necrosis;ATN

アミノグリコシド系抗菌薬
・陽性に荷電しているため,糸球体を通過した後に尿細管細胞膜を構成している陰性荷電を有するリン脂質と結合する.
→megalin-cubilin複合体を介してエンドサイトーシスで尿細管細胞に取り込まれ,ライソゾームに蓄積
→アミノグリコシドはライソゾームの酵素を阻害
→myeloid bodyが蓄積し,細胞死を招く

バンコマイシン

アムホテリシンB

アデホビル

テノホビル
・OAT-1(organic anion transporter 1)で尿細管細胞に取り込まれ,MRPやMDR-1により尿細管腔に分泌されるが,腎機能の低下などで血中濃度が高くなると尿細管細胞内濃度が上昇し,ミトコンドリア毒性を発揮し,尿細管細胞を障害する.

プラチナ製剤(シスプラチンなど)
・シスプラチンはOCT-1(organic cation transporter 1)により尿細管細胞に取り込まれる.

ヨード造影剤

浸透圧製剤(ヒドロキシエチルデンプンなど)
・ヒドロキシエチルデンプンはpinocytosisにより尿細管細胞に取り込まれる.
→生体には分解する酵素がないため,特に腎機能低下症例では尿細管細胞の細胞死をもたらす.

血栓性微小血管障害症(糸球体)

カルシニューリン阻害薬
マイトマイシンC
チクロピジン
ゲムシタビン
シスプラチン

アレルギー性

薬剤の投与量や投与期間に関わらず発症する.
→低用量・短期間の薬剤投与でも注意が必要

腎臓は血流が豊富かつ薬物代謝臓器であるため,薬物アレルギーにsensitive.

腎臓に到達した薬剤の多くは低分子化学物質であり,単体では抗原性を持たないが,ハプテンとして働き,内在性タンパクの構造を変化させ,抗原性を獲得する.

典型例では薬剤投与2~3 週後に,発熱,皮疹,下痢,関節痛などのアレルギー症状や血液好酸球の増多,好酸球尿を伴い発症するが,腎機能低下,血清クレアチニンの上昇のみで発見される例も多い.

尿所見も軽度~ネフローゼレベルの蛋白尿を併発するもの,高度血尿から尿所見の非常に乏しいものまで様々.

高齢者では多種多様な薬剤が併用され,原因薬剤はアレルゲン性の高いβラクタム系抗菌薬などの抗菌薬や抗てんかん薬が被疑薬になりやすいが,特定が困難な例が非常に多い.

アレルギー,過敏反応等の既往を問診により必ず確認する.
→病歴聴取により,過敏反応の既往のある薬剤は使用しない.
→アレルギー歴のある薬剤と同系統のものも基本的に使用しない.

急性尿細管間質性腎炎(尿細管) acute tubulointerstitial nephritis;ATIN

抗菌薬

NSAID

PPI
*メタアナリシスではPPI使用者のAKI発症リスクは,RR 1.61

抗てんかん薬

半月体形成性糸球体腎炎(糸球体)

D-ペニシラミン
ブシラミン

ANCA関連腎炎(糸球体)

プロピルチオウラシル
アロプリノール
TNF-α阻害薬

ループス様腎炎(糸球体)

TNF-α阻害薬

間接毒性

急性尿細管壊死(尿細管)

血流障害
NSAID
RAS阻害薬
ヨード造影剤
利尿剤
活性化ビタミンD製剤

横紋筋融解
向精神薬
スタチン
フィブラート系

尿路閉塞性

薬剤投与後に,尿細管や尿路に結晶や結石を形成するもの.

予防として,尿pHの調整や,補液による尿量の確保,尿酸生成阻害薬の投与などが行われる.

腫瘍崩壊症候群(尿細管)

抗がん剤
・尿細管内の尿酸結石が形成される場合がある.

結晶形成(尿細管)

溶解度が低い抗ウイルス薬(アシクロビル・ガンシクロビル)やメトトレキサートは,尿細管で濃縮されると結晶化し,尿細管を閉塞する.

メトトレキサート
ガンシクロビル
アシクロビル
ホスカルネット
インジナビル
テノホビル

重合体の析出(尿細管)

バンコマイシン
・ウロモジュリンとバンコマイシンの微少重合体による閉塞性の機序も指摘されている.

検査

尿細管マーカー

NAGや尿中L-FABPなどの尿細管マーカーは,尿細管障害の早期から上昇するため,尿細管障害型の症例では診断の手助けになる.

尿中好酸球

尿中好酸球はアレルギー性機序で起こるATINで検出される場合があるが,偽陰性率が高い.
→検出された場合は,ATNを否定し薬剤性などのアレルギー性機序のATINを疑う根拠になる.

腎生検

侵襲を伴う検査であるが,薬剤中止後も腎障害が持続する場合,腎障害部位の同定を行いたい場合,糸球体や間質の炎症や線維化の程度からの腎予後の推定やステロイド治療の有用性を予測したい場合などには有用.

ガリウムシンチグラフィ

アレルギー性機序によるATINの診断の補助になる.

・ATNでは集積がないとされ,ATINとATNの鑑別にも役に立つ.

集積のカットオフをどうするかによって感度や特異度が変動するので注意が必要.

薬剤誘発性リンパ球刺激試験 drug-induced lymphocyte stimulation test;DLST

細胞性免疫(Ⅳ型アレルギー)が関わるものであれば,原因薬剤の推定が可能な場合がある.
*特異度が低く,陰性であっても起因薬剤であることを否定できない.

診断

診断基準

1)該当する薬剤の投与後に新たに発生した腎障害であること.
2)該当薬剤の中止により腎障害の消失,進行の停止を認めること.
→上記の1),2)があって他の原因が否定できる場合に診断できる.

ただし,
①薬剤投与から発症までの時間が個々の薬剤で異なること.
②既存の腎障害の存在などにより,診断に難渋すること.
③原因と推定される薬剤も複数が該当し,確定診断は困難なことが多々あること.
④ときに腎障害が固定して改善しないこと,長期にわたり緩徐に進行する場合があること.
以上の問題点もあり,薬剤性腎障害の診断ならびに原因薬剤の特定がしばしば困難となる.

治療

治療の基本は該当薬剤を可能な限り早期に同定し,中止する.

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