糖尿病と冠動脈疾患

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なすび医学ノート

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糖尿病がなくても発症するが,軽度の血糖値の上昇(耐糖能障害)の段階から,その危険因子となる.

WHOでは,75gOGTTでの境界型(耐糖能異常)例を冠動脈疾患のリスクグループとしており,虚血性心疾患の一次予防のために,食事・運動療法は糖尿病発症以前より開始されるべきであると勧告している.

疫学

糖尿病患者が心筋梗塞を起こす危険度は健常者の3倍以上であり,欧米では糖尿病患者の40~50%で心筋梗塞が直接死因となっている.
・本邦でも,虚血性心疾患が直接死因となる糖尿病患者が増加している.

1型糖尿病および2型糖尿病患者では,非糖尿病患者に比べて冠動脈疾患の頻度は2~4倍に上昇する.

冠動脈疾患の既往がない糖尿病患者の心筋梗塞発症率は,非糖尿病者で心筋梗塞がある者の再発率とほぼ同等.

女性の冠動脈疾患発症のリスクは男性の約50%であるが,糖尿病患者では,冠動脈疾患のリスクとしての性差は減少する.

糖尿病患者における冠動脈病変

病変長が長く,多枝病変,石灰化を伴うなど複雑病変を伴う場合が多いため,血行再建術が進歩した現在でも予後不良.

糖尿病患者の急性心筋梗塞は,はっきりした症状がないことが多い(無症候性,非定型的).

発症時に冠動脈の多枝病変を有するなど,すでに病変が進行した例が多く,心不全や不整脈が多い.

大血管症の発症リスクは,impaired glucose tolerance(IGT)の段階から上昇する.さらに,空腹時血糖の上昇よりも,経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値の上昇のほうが,心血管疾患発症と強い関連が認められる.

リスク因子には加齢,男性であること,高血圧,脂質異常症(高LDL-C血症,低HDL-C血症,高TG血症),高血糖,喫煙,微量アルブミン尿などがある.
・糖尿病における冠動脈疾患には脂質異常症や高血糖,インスリン抵抗性の関与が高い.

病態

インスリン抵抗性

高インスリン血症,インスリン抵抗性による血管弛緩能異常,血管壁酸化ストレスの亢進や,炎症性サイトカイン(TNF-α,MCP-1,IL-6,レジスチン)の分泌が増加し,アディポネクチンが低下することによる血管炎症伴う動脈硬化が進行する.

全身でのインスリン抵抗性が出現すると,それに平行して出現するマクロファージのインスリン抵抗性のため,炎症反応がさらに加速するvicious cycleが存在すると考えられている.

食後高血糖(グルコーススパイク)

食後の急峻な血糖上昇は,酸化ストレスや炎症性サイトカインの上昇などを介して血管内皮細胞が障害されることが一因として考えられている.Diabetes Metab Res Rev 2000;16:125-132

高TG血症や高LDLコレステロール血症の亢進

血液凝固能の亢進

2型糖尿病を長期に渡り観察し,食後高血糖が心血管疾患の独立した危険因子である. Diabetes Care 2011;34:2237-2243

食後高血糖の是正が心血管疾患の一次予防に有効である(STOP-NIDDM).JAMA 2003;290:486-494
食後高血糖の是正が心血管疾患の二次予防に有効ではない(HEART2D,NAVIGATOR).Diabetes Care 2009;32:381-386 N Engl J Med 2010;362:1463-1476

低血糖

・血管内皮機能障害
・交感神経亢進
・不整脈発症,QT延長
・凝固系異常
・炎症亢進など Diabetes Care 2010;33:1389-1394

血糖変動

大幅な血糖変動が動脈硬化の強力な進展要因である酸化ストレス亢進と相関する.JAMA 2006;295:1681-1687

評価

運動負荷心電図

800点

心筋虚血を判定することを目的とするが,感度・特異度ともに70%前後と高くない.
・糖尿病患者は冠動脈疾患と同等の冠動脈疾患発症リスクを持ち,検査前確率が高いため偽陰性に注意が必要.

検査を行うにあたっては心筋酸素需要を増加させるために十分な運動負荷が必要であり,負荷が一定のマスター二段階法よりトレッドミル負荷心電図の方が望ましい.

心筋虚血の判断のみならず予後予測にも有用.

Dukeトレッドミルスコア
-11以下を高リスク,+5以上を低リスクと報告されている

絶対禁忌
・急性心筋梗塞発症早期,不安定狭心症
・コントロール不良の不整脈
・急性心不全あるいは重症心不全
・急性肺塞栓あるいは肺梗塞
・急性心筋炎あるいは心膜炎
・大動脈解離などの重篤な血管疾患

相対禁忌
・左冠動脈主幹部狭窄
・中等度の狭窄性弁膜症
・高度の電解質異常
・重症高血圧
・頻脈性あるいは徐脈性不整脈
・閉塞性肥大型心筋症などの流出路狭窄
・運動負荷が行えない精神的/身体的障害例

冠動脈CT coronary CT angiography:CCTA

2500点

病変の特徴(病変長,狭窄の程度,リモデリング,プラーク特性)を評価できる.

リスク層別化が可能.
・Agatstonスコアと長期的な心血管イベント発生率は相関すると複数報告あり.

陰性的中率が高い.

石灰化により狭窄度の評価が困難となる.

心臓核医学検査

8000点

心筋虚血の有無に加えて,虚血範囲,さらに梗塞範囲を把握することができる.

リスク層別化が可能.

左脚ブロック症例では運動負荷は行えない.

気管支喘息症例には薬物負荷は行えない.

二次予防

・抗血小板薬

高齢者での管理

ADAのガイドラインでは効果発現までの時間を考慮して,①血圧管理は全例に,②脂質および抗血小板薬は推定生命予後2~3年以上で副作用がなければ積極的に,②血糖管理は推定生命予後10年程度なら考慮するとされている.

急性期診断

糖尿病を有する症例は症状が非典型的であることがしばしばで,典型的な胸痛を訴えずに呼吸困難や胸部不快感を主訴とすることも多い.症状が非典型的であることは来院遅延および診断の遅れにつながり,予後悪化の要因となる.

下顎や奥歯の絞扼感で歯科を,頑固な肩こりで整骨院や整形外科を,また上腹部不快感で消化器科を受診することも稀ではない.
→糖尿病患者が上半身(胸部だけでない)の不快感を訴えた場合は,急性冠症候群を発症している可能性があることを念頭に置きながら診察することが肝要

心筋梗塞時の血糖管理

心筋梗塞急性期

糖尿病治療薬の確認

ビグアナイド薬(メトホルミン)
ヨード造影剤との併用により乳酸アシドーシスを来すことがあるため,併用注意とされている.
・原因は,ヨード造影剤の投与により一過性の腎機能低下を来す可能性があり,その結果,ピグアナイド薬の腎排泄が減少し,血中濃度が上昇するためと考えられている.
→ピグアナイド薬の服用を中止し,PCI 48時間後から再開することが望ましいとされている.

ピオグリタゾン
心筋梗塞は心臓ポンプ機能を低下させるため,心不全を合併する場合も多く, ピオグリタゾンは体液貯留(Na貯留)作用があることから急性期は休薬することが望ましい.

血糖管理

現在,糖尿病を合併した心筋梗塞患者の急性期における血糖管理目標値は明確には定められていない
・血糖管理の目標値は患者の重症度に依存することが多いため.

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