利尿薬 diuretic drug

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

病態別の考え方

高血圧症

利尿薬は本来多い体液量,高い血圧でなければ排泄できないNa+量を,もっと少ない体液量・低い血圧下でも排泄可能とする.

1)高血圧の発症,維持に関与する様々な因子の中で,腎臓におけるNa排泄障害は末梢血管抵抗の増加とともに重要.
2)利尿薬は単位血圧当たりのNa+排泄量を増幅させ,降圧作用を発揮する.
・食塩感受性が強い症例ほど降圧効果は大きく,また増塩下では降圧効果が大きいが,減塩下では小さい.
・長期的には,末梢血管抵抗を低下させる.
3)最大の効用は,体内Na+量を正常以下に維持することによって,血圧日内リズムをnon-dipperからdipperに正常化する.
・心不全などの心血管事故の発症を抑制.
・夜間血圧下降に一致して,夜間尿量が減少する.
4)安価

適応

1)減塩が困難な高血圧では利尿薬を少量から併用してもよい.
・大規模臨床試験においても利尿薬の併用率は高く,また利尿薬単独でも心血管イベントの抑制効果が報告されている(ALLHAT)
2)他の多くの降圧薬が血管拡張や心抑制により体液貯留の方向に働くのに対し,利尿薬はそれを是正し,相乗的に降圧効果を増強するため,3剤の降圧薬を使用する場合には利尿薬を含める.
3)利尿薬は特に高齢者,低レニン性高血圧,CKD合併高血圧,糖尿病,インスリン抵抗性など食塩感受性が亢進した高血圧に効果が期待でき,減塩が困難な高血圧や浮腫を有するなど体液過剰を合併した高血圧,あるいは治療抵抗性高血圧に対する降圧薬としても有用.

使用方法

一般的にはサイアザイド系利尿薬を使用し,eGFR<30mL/min/1.73㎡以下になったらループ系利尿薬

1)サイアザイド系利尿薬は少量(配合剤では1/4相当量もあるが一般的には半量)から投与を開始することにより,副作用の発現を抑えて良好な降圧効果が得られる.
2)治療抵抗性高血圧に利尿薬を投与する場合には,電解質,代謝などへの影響に注意しながら,推奨用量より高用量の使用を検討することも勧められる.
3)他のクラスの降圧薬との併用によって降圧効果が増大するが,糖・脂質代謝に悪影響を与えるためにβ遮断薬との併用は勧められない.
4)RA系阻害薬との併用により蛋白尿減少効果に優れることが報告されているが,腎機能障害(eGFR低下),季節性血圧変動に伴う夏季の過剰降圧,あるいは低Na血症,低K血症には十分注意する.

心不全

軽度の浮腫の場合は,腎機能に応じて,サイアザイドやループ利尿薬を使用

1)ループ利尿薬はトラセミドなどの長期作用型のものがフロセミドなどの短期作用型よりも,長期的には心不全の予後によい可能性が示されている.
2)低K血症を合併する場合には積極的にアルドステロン拮抗薬の使用を考慮する.
・RALES studyではスピロノラクトンによる重症心不全に対する予後改善作用が示された.
3)過度の利尿薬の利用による心拍出量の低下に注意.
4)トルバプタン 7.5~15mgも使用できる.
5)浮腫が強い急性期にはフロセミド

肝硬変

腹水・浮腫には一般にはスピロノラクトンが第一選択

1)腹水形成に二次性アルドステロン症が関与している.
2)他の利尿薬と異なり,作用の発現に尿細管での管腔内への分泌を必要とせず,腎機能が悪くても作用が減弱しにくい.
3)アンモニア産生を亢進させる低K血症を起こさない.
4)最大効果発現に時間がかかり(数日~1週間以上),また中止による効果消失にも時間がかかるため,高度の腹水や高K血症のリスクが高い場合はループ利尿薬との併用が必要.
5)1日500mL以上の除水は循環不全や急性腎不全を起こす可能性が高くなるため注意.
6)トルバプタン 7.5mgも使用できる.

高K血症,高Ca(Mg)血症

等張液輸液による強制利尿と併用して,ループ利尿薬が投与される

ACEIやARBによる高K血症にはサイアザイド系 or ループ利尿薬の併用が効果的と報告されている.

尿路結石や骨粗鬆症

サイアザイド系利尿薬を使用

ループ利尿薬と逆に遠位尿細管においてCaの再吸収を亢進させるため,低Ca血症とCa保持効果が期待される.

利尿薬の分類と作用強度

近位尿細管で,濾過量の約60%が再吸収されているが,Henle係蹄以降における再吸収量は管腔液流量に比例して,増加可能なため,近位尿細管の再吸収を阻害しても,正味としての利尿効果はほとんど得られない.

GFRが正常な場合の利尿薬の効果発現機序

強さ ループ利尿薬>サイアザイド>>スピロノラクトン・アミロライド・トリアムテレン・アセタゾラミド

Na再吸収の割合の多い部位に作用する利尿薬ほど効果が強い.

代謝 ほとんどは血中で蛋白に結合し,糸球体を濾過せずに尿細管腔に分泌される.

スピロノラクトンのみは尿細管分泌を受けず,血管側から皮質集合管に入り、アルドステロン受容体に作用する.

GFRが低下している状況における利尿剤の選択

CKD stage4以降であれば,効果の高い利尿薬はループ利尿薬に限られる

GFRが低下
→Na再吸収量が低下(単位ネフロン当たりのNa排泄量が増えるため)
→Na再吸収率の悪い遠位尿細管以降では効果が低い

ループ利尿薬

Henle上行脚でのNaCl再吸収を抑制して,利尿効果を発揮する

サイアザイド利尿薬に比べ,利尿効果は強いが,降圧効果は弱い.

CKDにおいてループ利尿薬は正常時と同じ効果を発現するためには必要な量が増大する.

1)GFR低下→尿細管から利尿薬を分泌する力が低い.
2)GFR低下→腎血漿流量低下→利尿薬が腎に輸送される量が減る.
3)蛋白尿を認め,低Alb血症になっている場合,利尿薬が蛋白に結合されにくくなる.

副作用

低Na血症(ADHの作用亢進)
高齢の小柄な女性や減塩療法下の高齢者では要注意
低K血症
聴力障害
大量の持続投与やアミノグリコシド系抗生薬との併用でのリスクが高い.

フロセミド furosemide

ラシックス®
経口 40~80 mg/日
静注 20~500 mg/回

1)Henle係蹄のNa+・K+-2Cl-共輸送担体を管腔側から阻害.最大作用強度25%.
2)利尿作用が強力であるが,作用時間が短い.
3)薬剤の半減期は0.5~2時間,臨床的な作用時間も2時間程度しかない.
→効果減弱後のNa再吸収亢進を起こしやすい.
→酸素消費の増加,組織酸素濃度の低下や腎髄質血流の低下が懸念される.
内服は増量したら1日2回(朝・昼)投与へ
4)ボーラス投与はdown regulationによる効果減弱をきたしやすい.
・2回目以降の効果が1回目よりも下がる
・約20%のNa再吸収量の増加があるというBraterらの報告がある.
→持続投与の方が効果が強い
・ある程度の濃度に達しないと効果を発揮しないため,点滴で行う場合は40mg静注を行った後,GFRの程度により2~20mg/hrでの持続投与を行う(血中濃度を早く有効域に到達させ,維持させる).

フロセミド静注の具体的な使用法

作用発現は5分以内で,半減期T1/2は20~30分,効果持続は2~3時間程度

静注の場合→Cr×20mL
点滴静注の場合→5%TZ 12mL+フロセミド6A 12mL(total 24mL)で1mL/hr(5mg/hr)で開始

フロセミドの限界

1)Henle係蹄上行脚末端に存在するMacula Densa(緻密斑)細胞に直接作用し,レニン分泌を刺激する.
2)脱水でレニン分泌が刺激されるため,renin-angiotensin-aldosterone(RAA)系が活性化され,集合管におけるNa+再吸収が促進される.
→薬剤が作用を発現している時間内だけは体液量が減少に向かうが,効果が消失した途端,逆にNa+再吸収が活性化され,体液貯留に傾く.
3)CKD患者では,過剰な体液量を正常化させ,かつ腎機能低下に伴って薬剤の持続時間を延長しているので有効.

フロセミド抵抗性への対策

サイアザイド利尿薬との併用
遠位尿細管に存在するサイアザイド感受性のNa+輸送担体(aldosterone誘導蛋白)の発現亢進や遠位尿細管細胞の肥大が出現するため,ループ利尿薬単独ではHenle係蹄で再吸収を免れたNa+が遠位尿細管が再吸収されてしまう.
→心不全や糖尿病性腎症など,特に体液コントロールが困難な病態では,サイアザイド利尿薬との併用が有効なことが多い.

ループ利尿薬+サイアザイド利尿薬の組み合わせは強力だが,電解質異常に注意!

抗アルドステロン薬の併用
・サイアザイド感受性Na+輸送担体と,集合管のNa+チャネルの両方を追加阻害することができる(RALES,EPHESUSで有効性を認めた).
・集合管では糸球体濾過されたNa+の3%程度しか再吸収していないため,Na+排泄作用は弱いが,作用持続時間が長く,減塩と同様に降圧効果を発揮する.
高K血症に注意

長時間作用型のループ利尿薬に変更
トラセミドなど

アゾセミド azosemide

ダイアート®
60~240 mg/日(分1)

1)短時間作用型フロセミドのリバウンドを避ける長時間作用型.
 経口投与後1時間以内に作用が発現し,9時間後まで持続した.
 Tmax 3.3時間,T1/2 2.6時間
2)心血管死と心不全による入院を有意に減少させることが報告されている.

トラセミド torasemide

ルプラック®
4~8 mg/日(分1)

1)ループ利尿作用に加え,抗アルドステロン作用に由来するカリウム保持性を併せ持っている.
2)生物学的利用率が高く,食事の影響を受けないという薬物動態的特長も加え,個体差の少ない安定した利尿効果を示す.
10mgでTmax 0.9時間,T1/2 2.2時間

サイアザイド利尿薬

遠位尿細管のNa-Cl共輸送担体を管腔側から阻害.

1)最大作用強度3~5%.
2)ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬は,再吸収を免れた大量のNa+が皮質集合管でNa+チャンネルを通じて,細胞内に流入するため,負の細胞内荷電が減弱し,細胞内のK+が管腔へ流出する.
→低K血症になる.
3)腎機能が低下すると腎血流の減少に伴って,尿細管腔への薬の分泌到達量が著減する.
 それに加え,糸球体で濾過されたNa+の約7%しか再吸収していない遠位尿細管に作用しているため,GFRが低下すると,ほとんど利尿効果が得られなくなる.
CKDステージG4以降はループ利尿薬を選択せざるを得ない

副作用

低K血症
・低K血症があると,予後の改善効果が消失し,死亡率増加と関連する.
・ある場合はRAS阻害薬,MR拮抗薬との併用などが推奨

低Na血症(ADHの作用亢進)
・高齢の小柄な女性や減塩療法下の高齢者では要注意
・ループ系利尿薬に比較して,発生頻度が高く,ようり重症例が多いとされる.
SLCO2A1(プロスタグランジン輸送蛋白)遺伝子変異の低Na血症への関与が指摘されている.

高Ca血症や低Mg血症
Caの再吸収を促進し,Mgの再吸収は抑制するため.

高尿酸血症,耐糖能障害,脂質異常症
β遮断薬との併用はすすめられない

光線過敏症や血小板減少
・頻度は少ないが,重篤.
・副作用を防ぐために低用量を中心に用いる.

トリクロルメチアジド trichlormethiazide

フルイトラン®

1mg/dayより開始し,血圧コントロール不十分であれば2mg/dayまで増量

アミロライド

皮質集合管のNa+チャンネルを管腔側から阻害.

トリアムテレンはアルドステロンと関係なく,アミロライド感受性の上皮型Naチャネルを抑制して同様の効果を示す.

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 Mineralocorticoid receptor antagonist;MRA

バゾプレシンV2受容体拮抗薬

V2受容体においてバソプレシンの働きを抑制することで,尿中から血中への水の再吸収を減少させ,Naなどの電解質排泄に直接の影響を与えずに水分のみを体外へ排出する.

1)水利尿で,限外濾過(ECUM)のような効果が得られる.
2)Na利尿薬と比して,腎血流量および糸球体濾過量への影響が少ないこと,神経体液因子への影響が少ないこと,強力な尿量増加作用を有することなどが報告されている.

トルバプタン tolvaptan

サムスカ®
1回1錠,1日1回
開始するときは少量(サムスカ3.75mg 隔日~連日服用など)から開始

1)本邦では心性浮腫,肝性浮腫に保険適応.心不全代償期での適応は低い.
2)進行したCKDにおいての有効性も明らかではない.
・CKDステージG1からG4までの被検者ではtolvaptanによりごく軽度のGFR低下がみられ,ステージG5では利尿効果は維持されるにもかかわらずGFR低下はみられなかった.Kidney Int 2013;31:285
3)心不全を伴うCKDステージの進んだCKD患者にtolvaptanを併用したときの腎機能変化は少なかった.Clin Exp Nephrol 2013;17:834-838
4)1錠15mgあたり2525.7円と高価なのがネック.
5)高齢者に使用する場合は,口渇感による飲水ができるかが重要.認知機能が保たれている,覚醒状態にある,飲水制限は軽めに.

利尿薬に対する耐性の原因とその対策

Naの過剰摂取

食事の塩分制限

腸管での再吸収不良

1)Oral bioavailabilityの高い利尿薬へのスイッチ
2)経口から経静脈投与への変更

NSAIDsの使用

1)NSAIDsは腎ヘンレループ上行脚髄質部でのNa再吸収を亢進させ、利尿薬の効果を大幅に減弱
2)NSAIDsの中止

低Alb血症

アルブミンと利尿薬の併用(ただし、高度の低Alb血症2g/dL以下に限る)

肝硬変における高度腹水

大量腹水穿刺・TIPSの併用

心不全における高度水貯留

血液濾過

不十分な量の利尿薬(尿細管利尿薬濃度低値)

利尿薬増量

短期作用型利尿薬使用後のリバウンドNa再吸収亢進

1)利尿薬の頻回投与
2)ボーラス後の持続投与
3)長期作用型利尿薬の使用

より遠位の尿細管でのNa再吸収亢進

遠位尿細管作用型利尿薬の併用(特にサイアザイド)

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