認知症の診断は,まず認知症かどうかの診断を行い,ついで病型診断を行う.
認知症の重症度,日常生活動作(ADL),手段的日常生活動作(IADL)も評価する.
→MCIとの区別は,社会生活や日常生活に支障を来たしているかどうか.
症候
認知機能障害(中核症状)
行動・心理症状 behavioral and psychological symptoms;BPSD(周辺症状)
過活動(暴言・興奮など)だけでなく,低活動(無為や抑うつ,拒食など)の症状もあることに注意.
行動症状
徘徊,暴言・暴力,不穏・興奮,焦燥,拒絶,無為など
心理症状
幻覚,妄想,不安,抑うつなど

問診による
↓
一般身体所見,神経学的所見
病歴聴取
病歴
どのような症状が,いつ頃から起こったのか?
・患者本人から病歴が得られない場合がある.
・最初の症状は正常人にも起こりうる症状で,見逃されやすい.
→家族からの聴取が重要.
教育歴
心理検査の評価にも影響する.
既往歴,服薬歴,家族歴
手段的日常生活動作 instrumental ADL;IADL
IADLの低下は頻度が高く,初期からみられる.
スクリーニングテスト
1)被験者の協力が得られるかどうかが結果に大きな影響を与えるため,被験者との協力関係が得られるような人間関係を構築する必要がある.
2)被験者の不安感を取り除くように心がける.
3)評価は厳密に行う.過度にヒントを与えたり,評価を甘くしたりしない.
4)検査結果のみで認知症と診断しない.
5)体調が検査結果に悪影響を与えることがある.
(突然の悪化や改善は,被験者の体調や意識レベルの検討が必要)
6)うつ状態が存在しないかどうかは認知機能検査では重要であり,あわせて評価しておくことが望ましい.
改訂長谷川式簡易知能評価スケール Revised Hasegawa’s Dementia Scale;HDS-R
MMES:Mini-Mental State Examination
MoCA:Montreal Cognitive Assessment
地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System;DASC
21項目からなり,認知機能と生活機能を総合的に評価.
IADLの項目が6つと充実しているため,MCIの生活障害を検出しやすい.
病型診断
初発症状の特徴,臨床症状の特徴・経過,代表的な診断基準,画像所見の特徴から鑑別を行う.

病型鑑別が難しいのが,
1)若年性でみられる失語が目立つアルツハイマー型認知症
2)前頭葉型のアルツハイマー型認知症
3)高齢者タウオパチー
4)高齢者で複数病理が疑われる例
鑑別診断
せん妄
本質的に意識障害があり,発症の時期を明確に限定できる点が認知症とは決定的に異なる.
疑った場合は,身体合併症のチェック,使用薬剤のチェックが重要.
背景に認知症が潜んでいることがある.
うつ
高齢者のうつは,若年者のうつと比較して非哀感や自責感が乏しく,心気的な訴えや体の不調感を訴えることが多いため,見逃されやすい.
うつが認知症の先行症状であることや合併することがあるため,鑑別は困難.
てんかん
頻度が高い.
複雑部分発作で意識の減損を来たすと,ある程度の記憶が入力されない.