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薬理作用
陰性変時作用と陽性変力作用を持っていること,副交感神経の賦活化作用を有することが特徴
陽性変力作用
心筋細胞膜上のNa-K-ATPase阻害作用により細胞内Na+濃度の上昇
↓
Na-K交換機構の作用が低下して心筋細胞内にCa2+が蓄積
↓
心筋細胞の収縮が増強
陰性変時作用
迷走神経の活性化
↓
房室伝導を抑制
↓
主に安静時や夜間帯の心拍数を減少
使用上の留意点
①腎排泄の薬剤であり,半減期が36時間と長い.
②血中濃度の治療域が極めて狭い
特に高齢者では,脱水やシックデイによる腎機能の悪化により,ジギタリスの効果が強まる危険がある.
ジギタリス製剤は,P-糖蛋白質を基質とするため,P-糖蛋白質と競合する薬剤の併用で血中濃度上昇のリスク.
(よく併用されるトルバプタン,スピロノラクトン,アミオダロン,アトルバスタチンに注意)
ジギタリス製剤を服用している患者の診察では,
①症状の有無を聴取
②定期的に薬物血中濃度の測定をモニタリング(月に1回まで特定薬剤治療管理料が算定できる)
中毒症状
嘔気や食思不振などの消化器症状から致死性不整脈まで幅広い.
薬物血中濃度
血中濃度が高いほど,死亡率が高い(特に≧1.2ng/mL)
→現行のガイドラインでは,≦0.8ng/mLを推奨
ガイドラインにおける推奨
急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版
HFrEFにおけるジギタリス製剤の推奨は,
洞調律の患者に対し血中濃度≦0.8ng/mLに維持しての投与(ClassⅡa)
副伝導路のない頻脈性AFを有する患者に対する心拍数調節を目的とした投与(ClassⅡa)
2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療
HFrEFに併存するAFの心拍数調節に対する長期にわたる経口ジゴキシンの投与(ClassⅢ(harm))
△洞調律のHFrEF患者におけるジギタリス
PROVED試験
RADIANCE試験
DIG試験
→ジゴキシンは心不全増悪の予防に有効であると認識されるようになった(過去の試験では,ACE-I,β遮断薬,MRAといった標準治療は不十分).
but!生命予後を改善したとする臨床試験は乏しく,心不全治療薬の第一選択となりえない.
心房細動を合併したHFrEF患者におけるジギタリス
AF-CHF試験(2020年の追加解析)
AFを合併したHFrEF患者へのジゴキシンの使用は,全死亡・心臓死・不整脈関連死と関連することが報告され,特に不整脈関連死は2倍以上の増加し,予後を悪化した.
→長期間の使用はClassⅢ(harm)の推奨に変わった.
ジギタリスは細胞内Ca濃度上昇により遅延後脱分極をもたらし,催不整脈性の可能性が指摘.
(心拍数の速い心室頻拍や診察細動との関連)
RATE-AF試験(2020年)
P:NYHA ClassⅡ以上の症状を有する慢性AF患者(HFrEFは2割程度)
低用量ジゴキシン VS ビソプロロールを6カ月間.
QOLは同等.
日々の活動度や治療満足などの副項目ではジゴキシン群で12ヵ月後に有意に改善.
ジゴキシン群でNT-proBNP値も有意に低かった.

AFを併存した有症候性の心不全患者の症状改善やエビデンスのある心不全標準治療薬の導入や投与量の調節を目的にジゴキシンを短期間使用することはあっても,心不全予後をターゲットとしての長期間投与は控える.
急性心不全に合併した頻脈性心房細動の治療
心機能低下例における急性期の頻脈性AFの心拍数調節のための静注薬は,
ジゴキシン or ランジオロールがClassⅡa
J-Land試験
ジゴキシン VS ランジオロール
投与開始2時間後の心拍数が投与前より-20%以上減少 and HR<110の割合はランジオロールで有意に高い(13.9% VS 48.0%)
ランジオロールは心房粗動や心房頻拍などのマクロリエントリー性頻拍に関しては効果が限定的との報告がある.
→ランジオロールでの徐拍化が不十分であれば,ジゴキシン静注薬を考慮.
ランジオロールはβ1選択性が非常に高く,陰性変時作用が主体だが,血圧低下のリスクが残る.
→超低心機能で補助循環装置を用いる症例,カテコラミン静注が必要な症例では,ジゴキシンの活躍する場面あり
(欧米では,アミオダロンが使用される)