食事療法(糖尿病)

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

総エネルギー摂取量

○年齢や病態,身体活動量によって異なり,個別化が必要.
○まずは下記を目安に初期設定を行い,適宜変更していく.

総エネルギー摂取量(kcal/日)=目標体重(kg)×エネルギー係数(kcal/kg)

目標体重の目安

総死亡が低いBMIは年齢によって異なり,一定の幅がある.

65歳未満:身長(m)2×22
65歳~:身長(m)2×22~25

*75歳以上の後期高齢者の場合は,現体重に基づき,フレイル,基本的ADLの低下,併発症,体組成,身長の短縮,摂食状況や代謝状態の評価を踏まえ,適宜判断する.

○1980年代に実施された職域健診で,異常所見の合計が最も少ないBMIが22であるとした研究に基づき,これを標準体重となってきた.
しかし!
○BMIと死亡率との関係を検討した近年の研究では,最も死亡率の低いBMIは,アジア人では20~25にあり,日本人の食事摂取基準2020年版でも,目標とするBMIを20~24.9としている.
○2型糖尿病でも,中国人,日本人では総死亡率が最も低いBMIは20~25にあったとされ,75歳以上の高齢者ではBMI 25以上でも,死亡率の増加は認められない.

○体格と総死亡との関係には,体組成が大きく関与する.
・BMIが非肥満内にあっても,脂質異常症や高血圧などのメタボリックシンドロームの症候を持つ場合,健康な非肥満者に比べて明らかに死亡率が高く,その反面,メタボリックシンドロームのない肥満者では,死亡率の増加はないことから,BMIのみでは健康状態を正確に把握できないとする報告もある.

○目標体重を一律に定めるのではなく,現体重に基づき,年齢や臓器障害等の患者の属性や代謝状態を評価する柔軟性が大事!

身体活動レベルと病態によるエネルギー係数(kcal/目標体重kg)

1)軽い労作(大部分が座位の静的活動):25~30
2)普通の労作(座位中心だが通勤・家事,軽い運動を含む):30~35
3)重い労作(力仕事,活発な運動習慣がある):35~

*フレイルがある場合は身体活動レベルより大きい係数を設定できる.
*肥満がある場合は身体活動レベルより小さい係数を設定できる.

肥満の是正

○総エネルギーの適正化による肥満の是正が糖尿病の予防と管理にはもっとも重要.
○当面の体重管理目標を5 %減とし,その後7-10 %の減量を維持する.

炭水化物の摂取量

糖尿病の予防・管理のための望ましいエネルギー産生栄養素摂取比率について,これを設定する明確なエビデンスはないため,身体活動量,併発症の状態,年齢,嗜好性などに応じて個別化をはかり,適宜柔軟に対処する必要がある.

炭水化物 50~60 %エネルギー(150 g/日以上)
タンパク質 20 %エネルギー以下
残りを脂質(脂質が25 %エネルギーを超える場合は多価不飽和脂肪酸を増やすなど,脂肪酸の構成に配慮する)

糖質制限食 Low-carbohydrate diet

○肥満,非高齢糖尿病患者であれば,半年間の軽度糖質制限食(130~150 g/日)はHbA1cや肥満の改善に有用かもしれない.

A randomized controlled trial of 130 g/day low-carbohydrate diet in type 2 diabetes with poor glycemic control - PubMed
Our study demonstrated that 6-month 130 g/day LCD reduced HbA1c and BMI in poorly controlled Japanese patients with T2DM. LCD is a potentially useful nutrition ...

○糖質からのエネルギー摂取率と全死亡率にはU字型曲線の関連があり,50~55 %の摂取で全死亡率が最も低い.

Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis - PubMed
National Institutes of Health.

短期間であれば,効果が期待できるが,長期間での効果,血管合併症や長期予後に対する効果に関しては明らかではない.

○妊婦,授乳中の女性,食行動に問題のある患者,腎機能異常のある患者では勧められない.
○SGLT2阻害薬を使用している患者ではケトアシドーシスのリスクが高まるため注意が必要である.

食物繊維

20 g/日以上摂取することが望ましく,食物繊維の豊富な食物(野菜,果物,全粒穀物,豆類など)の摂取を意識することが重要.

○炭水化物中の食物繊維は糖質とは異なり,小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし血糖の上昇を抑制するなど,生活習慣病に良い作用をもつことが知られている.

○定期的で十分な食物繊維の摂取は糖尿病の発症を抑制し,糖尿病患者の血糖コントロールを改善させ,全死亡率を低減することが示されている.

ショ糖

○ショ糖[砂糖(スクロース)=ブドウ糖(グルコース)+果糖(フルクトース)]入りの甘味やジュースの過剰摂取は,血糖コントロールの悪化,メタボリックシンドロームの助長,体重増加,心疾患,腎疾患,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH),齲歯などのリスクを有意に上昇させる可能性があり控えるべき.

人工甘味料

○サッカリン,ネオテーム,アセスルファムカリウム,アスパルテーム,スクラロース,アドバンテーム,ステビアなどの低カロリー,非栄養人工甘味料の,糖尿病やメタボリックシンドロームなどの発症リスクや長期的な有用性に関しては一定の見解が出ておらず,これも過剰な摂取は控えるべきである.
・キシリトールなどの糖アルコールはこれらの人工甘味料には含まれない.

Glycemic index;GI Glycemic load;GL

○Glycemic indexは食事中の炭水化物(厳密には糖質)の食後血糖上昇能を示す指標で,炭水化物の質を表す.

○Glycemic loadは炭水化物(厳密には糖質)の質と量とを同時に示す指標.

○GIおよびGLと2型糖尿病の発症リスクの関係を検討したメタ解析では,GIやGLの低い食材をとると糖尿病の発症リスクが低減するとしているが,糖尿病患者の血糖コントロールや糖尿病の発症リスクに対して否定的な結果を示す研究もある.→糖尿病患者の食事療法に積極的に取り入れるべきかどうかについては,現時点では十分な根拠があるとはいえない.

タンパク質

動物性タンパク質摂取量の増大は,糖尿病発症リスクを高める可能性がある.
タンパク質過剰摂取による長期的な安全性は確認されていない.

○タンパク質の摂取量は20 %エネルギー以下が妥当と考えられる.

○タンパク質の摂取は,“量”の問題だけでなく,その種類(動物由来か植物由来か),タンパク質と一緒に含有される脂質や炭水化物,加工法さらには調理法を含めた“質”についても考慮する必要があり,最終的には糖尿病患者“各個人”の状態・食生活に合わせたタンパク質摂取を推奨することが望まれる.

タンパク質過剰摂取と心血管疾患リスク

○心血管疾患発症リスクの高い腎症を有する症例では,心血管疾患を抑制するという点からも,タンパク質過剰摂取は避けるべきである.

○根拠となる臨床的データが十分ではないが,タンパク質摂取量の上限の目安は1.3 g/体重kg/日とし,低タンパク質食を実施しない場合でも1.3 g/体重kg/日以上および20 %エネルギー比以上のタンパク質摂取は避ける.
 栄養障害/サルコペニア・フレイルのリスクを有する症例では,GFR>60 mL/min/1.73 m2であれば1.5 g/体重kg/日までの摂取は許容する.

高齢者糖尿病患者におけるタンパク質摂取量

○高齢者のフレイル・サルコペニアの予防のためには,栄養バランスに配慮した比較的多めのエネルギーに加え,十分なタンパク質を摂取する.
○腎機能障害を有する場合のタンパク質制限に関しては、個別化することが望ましい.

○ESPENのexpert groupは,健康な高齢者のタンパク質摂取量は少なくとも1.0 g~1.2 g/体重kg/日とし,低栄養または低栄養リスクがある場合は1.2 g~1.5 g/体重kg/日を推奨している.

Protein intake and exercise for optimal muscle function with aging: recommendations from the ESPEN Expert Group - PubMed
The aging process is associated with gradual and progressive loss of muscle mass along with lowered strength and physical endurance. This condition, sarcopenia,...

○日本人高齢者では,朝食や昼食でのタンパク質摂取量の不足が指摘されているため,タンパク質は3食に分けて摂取することが望ましい.

○3大栄養素だけでなく野菜,ビタミン,ミネラルなどもバランスよく配合された食事に心がけ,食後には運動療法(特にレジスタンス運動)を組み合わせることにより,筋肉量および筋力の維持が可能となり,その結果サルコペニアやフレイル予防につながるものと期待できる.

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