糖尿病性腎臓病 原因・病態・病理

医学ノート(なすび用)

糖尿病腎症 糖尿病性腎症 diabetic kidney disease;DKD

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原因

尿細管障害

糸球体からのアルブミン漏出が軽度であれば全て尿細管で再吸収されるが,尿細管障害があると再吸収能が低下してアルブミン尿という形で顕在化する.

近位尿細管に到達したアルブミンは近位尿細管内に取り込まれ,ER(endoplasmic reticulum)ストレス,酸化ストレス,オートファジー不全,ミトコンドリア機能不全といったさまざまな機序で近位尿細管を傷害するとされている.

メガリンの発現低下

尿細管腔に存在するエンドサイトーシス受容体であるメガリンの発現低下に伴う再吸収能が低下する.

抗老化遺伝子Sirt1の発現低下

Sirt1は,ニコチン酸を含むNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)代謝に関与し,カロリー制限によって発現が誘導され,寿命やストレスに抵抗する蛋白質の発現を調節している.

近位尿細管でSirt1が低下すると,近位尿細管におけるNAD代謝異常が起こり,中間代謝産物のNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の量が低下する.

糸球体上皮細胞(ポドサイト)におけるSirt1発現が低下し,細胞間密着結合に関わるclaudin-1の発現が上昇することでスリット膜構造に異常をきたしてアルブミン尿を引き起こす.

病態

古典的なDKD

糖尿病に伴う代謝異常による糸球体血管内皮障害や糸球体過剰濾過,それに続く微量アルブミン尿の出現から始まる.

その後,ポドサイト障害の進展と共に蛋白尿へ移行すると,持続的な尿細管への蛋白曝露が生じ,尿細管障害が惹起され,ネフロンの喪失を来たし,やがて末期腎不全へ至る.

顕性アルブミン尿を伴わずに腎機能が低下していくDKD

高齢化や糖尿病罹病期間の延長,食生活の欧米化に伴う肥満の増加など,患者背景の変化により,症例の割合が増加している.
→1型糖尿病症例で約20%,2型糖尿病症例で約40%との報告がある.

典型的なDKD病理所見を呈する割合が,糸球体病変のみならず,尿細管・間質病変においても少ない.
→軽微な糸球体病変に比べ,中等度以上の尿細管病変・動脈硬化病変といった腎硬化症の特徴を有する症例の割合が多くなっている.

動脈硬化に起因した虚血や,その他のさまざまな要因で尿細管障害を来たし,ネフロン喪失,GFR低下をきたしていると考えられている.

病理

糸球体病変

びまん性病変

糸球体基底膜(glomerular basement membrane;GBM)の肥厚とメサンギウムの拡大からなる.

高血糖や高AGE刺激が,内皮・上皮・メサンギウム細胞に緩徐and長期に作用することで,nuclear factor-kappa B(NK-κB)などの細胞内のシグナルを介してtransforming growth factor-β(TGF-β)などの増殖因子の産生が亢進し,これがそれぞれの細胞に作用することで基質産生を促していることが要因と考えられる.

GBMの肥厚
糖尿病性腎症に出現する糸球体病変のうち,最も早期に現れる病変であり,電顕にて把握することができる.

メサンギウム拡大
基質の増加が主体であり,メサンギウム細胞増多は目立たない.
メサンギウム領域全般にPAS染色で赤紫色,PAM染色では黒色に染色される.
判定は血管極近傍より末梢のメサンギウム領域にて行うのがよい.

びまん性病変では糸球体係蹄の基本構築は保持される点が,結節性病変との鑑別ポイントになる.

結節性病変 nodular lesion

Kimmelstiel-Wilson nodule(Kimmelstiel-Wilson結節,K-W結節)

細胞外基質の蓄積によりメサンギウム領域が類円状・結節性に拡大したもの.

高血糖などによる内皮細胞障害やメサンギウム細胞障害が関与している.

びまん性病変の進展によりメサンギウム領域が拡大し結節が生じる場合
メサンギウム融解(メサンギオリシス)後の修復過程で生じる場合

病理所見としては,PAS染色の染色が低下し,PAM染色でも黒色ではなく暗褐色に染色される点が特徴的.
・正常糸球体ではメサンギウム基質はⅣ型コラーゲンを主体とし,ラミニンなどで構成されているのに対して,結節性病変ではⅣ型コラーゲンに加えて,Ⅴ型コラーゲンやⅥ型コラーゲンが増加するため.

鑑別として,慢性期の膜性増殖性腎炎,アミロイドーシス,軽鎖沈着症,fibrillary glomerulonephritis,immunotactoid glomerulopathy,fibronectin glomerulopathyなどの糸球体沈着症,チアノーゼ先天性心疾患なども挙がるので注意.

糸球体基底膜二重化,内皮下腔開大

内皮下腔が浮腫状に拡大し,基底膜の新生を伴い,GBMが二重の輪郭を示すこと.

内皮細胞障害を基盤として生じる病変であり,糖尿病性腎症においては高血糖による内皮細胞が本病変の形成に関与している.

メサンギウム融解やfibrin cap形成にも関連している.

病理所見では,内皮下腔が浮腫状に開大し,基底膜の新生を伴いGBMが二重の輪郭を示す.

メサンギウム融解

糸球体内皮細胞障害→血管透過性亢進→GBMと内皮細胞の間が浮腫状に広がり,内皮細胞下腔の開大

結節性病変の形成への関与が示唆されており,糖尿病性腎症の糸球体硬化症の初期病変として重要.

病理所見では,内皮細胞とメサンギウム細胞の間には基底膜構造がないため,内皮下腔に流入した血漿成分がメサンギウム領域にも流入し,メサンギウム領域も浮腫状となり,メサンギウム領域は嚢胞化を呈する.

滲出性病変

主に血漿蛋白や脂肪で構成されたものが内皮下腔へ滲み込み貯留したもの.

fibrin cap
糸球体係蹄壁の内皮細胞と基底膜の間に半球状に貯留しているもの.

capsular drop
Bowman嚢上皮とBowman嚢基底膜の間にみられる病変.

いずれも半球状の沈着物として認められることが多い.
均質でエオジン好性,無細胞性のヒアリン.
PAS染色で陽性,PAM染色で陰性(PAM染色まですることで鑑別しやすくなる).

足細胞の脱落

糸球体毛細血管の上皮細胞である足細胞が脱落を来たし,血管の透過性亢進をきたす.

動脈硝子化

輸出入細動脈の硝子化

血管門部に新生した微小血管(polar vasculosis)の硝子化

糸球体門部血管増生 polar vasculosis

糸球体血管極にみられる輸入細動脈・輸出細動脈以外の小血管が増加して認めるもの.

糖尿病性腎症の早期からみられる組織所見の一つで,高頻度で認め,診断的価値が高い.

新生血管の増生は,糸球体内,ボウマン嚢周囲,尿細管周囲などにも生じるが,光学顕微鏡で新生血管と既存の血管を区別することは困難.
→糸球体血管極は通常輸入細動脈・輸出細動脈以外の血管は認められないため,この部位の小血管の増生は認識しやすい.

新生血管は幼若な形質をもち,血管壁には硝子化を伴うことが多い.

尿細管病変

尿細管萎縮,間質の線維化,炎症細胞浸潤,尿細管基底膜の肥厚が目立つことが多い(非特異的).

傍尿細管基底膜滲み込み現象 paratubular basement membrane insudation;PTBMI

尿細管極から近位尿細管に拡がる滲出性病変.

腎症病期分類と腎病理

GBM肥厚,メサンギウム領域の拡大,間質の細胞数増加,細動脈の硝子化など
→アルブミン尿増加と関連

糸球体濾過面積の減少,間質の線維化,細動脈の血管壁肥厚など
→GFR低下と関連

腎症第1期

特徴的所見:びまん性病変,血管・間質病変,門部小血管増生(22%であるが病初期からみられる,第2期では50%を超える)

腎複合イベント予測所見:結節性病変,滲出性病変,メサンギウム融解

腎症第2期

特徴的所見:滲出性病変(18.4%であるが病初期からみられる,第3期では50%を超える)

腎複合イベント予測所見:結節性病変,基底膜二重化,メサンギウム融解

腎症第3期

特徴的病変:結節性病変,基底膜二重化,メサンギウム融解

腎複合イベント予測所見:びまん性病変,IFTA,間質細胞浸潤
総死亡予測所見:基底膜二重化,メサンギウム融解

腎症第4期

特徴的病変:糸球体肥大,糸球体の40%以上が全節性硬化

腎複合イベント予測所見:基底膜二重化

医学ノート(なすび用)
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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
勉強好きで,私用に細々とまとめています.

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