糖尿病ケトアシドーシス(DKA)

医学ノート(なすび用)

Diabetic Ketoacidosis;DKA

インスリンの極端な欠乏とインスリン拮抗ホルモンの増加により生じる高血糖,高ケトン血症,アシドーシスを呈した高度の代謝失調状態.

約2/3は1型糖尿病,約1/3は2型糖尿病.

SGLT2阻害薬によるDKAは↓

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病態

肝臓におけるブドウ糖とケトン体の過剰産生+筋肉や中枢神経系でのブドウ糖やケトン体の処理能の低下.

インスリン作用の極度の低下
インスリン拮抗ホルモンの過剰(グルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンなど)

糖利用低下,脂肪分解の亢進

高血糖と高遊離脂肪酸血症

遊離脂肪酸(free fatty acid;FFA)がインスリン欠乏下の肝で急速な酸化を受け,ケトン体を生じる.

高ケトン体血症が血液の緩衝作用を凌駕した結果,アシドーシスを発症.

インスリン作用の極度の低下

・1型糖尿病の初発症状
・1型糖尿病で摂取不良等によるインスリンの減量・中断
・2型糖尿病のソフトドリンクケトーシス

インスリン拮抗ホルモンの過剰

・感染症
・重篤な全身性疾患
・脳血管障害
・心血管障害

ケトン体産生のメカニズム

インスリン欠乏状態でTG分解が亢進
インスリン欠乏とグルカゴン過剰でcarnitine palmitoyItransferaseⅠの阻害物質であるマ口二ル-CoA産生が低下
→ミトコンドリアでのβ酸化が亢進し,インスリン欠乏下ではTCA回路よりもケトン体産生に傾く

ケトン体はFFAから生成され,FFAは食事or脂肪分解により供給される.

インスリンの欠乏とインスリン拮抗ホルモンの増加
→脂肪組織におけるホルモン感受性リバーゼの活性を亢進させ,脂肪分解(lipolysis)を促進
→大量の遊離脂肪酸(long-chain non-esterified fatty acids;NEFA)を供給
・グルカゴン値はDKAの発症早期より上昇し,ケトン体値とグルカゴン値には強い相関があるとの報告がある.

遊離脂肪酸は,インスリン欠乏とグルカゴン過剰で,ケトン体産生の律速酵素のcarnitine palmitoyItransferase(CPT)Ⅰの阻害物質であるマ口二ル-CoA(coenzyme A)産生が低下する.
→CPT-Ⅰ,CPT-Ⅱが亢進し,能動的にミトコンドリア内に取り込まれケトン体の産生に利用される.

ケトン体にはアセト酢酸(acetoacetic acid;AcAc),アセトン,3-ヒドロキシ酪酸(hydroxybutyric acid;OHBA)がある.
→AcAc,3-OHBAは弱酸であるが,通常のpHでほぼすべてイオン化しており,DKAにおける過剰の蓄積は容易に血液緩衝能を超えるため,血液の酸性化を起こす.
・pHは血糖値と必ずしも相関せず,血糖値がそれほど高くないケトアシドーシスも存在する.

電解質異常

インスリン欠乏は細胞膜Na+-K+ ATPase活性低下を起こし,K欠乏となる.
DKAではNaやPの欠乏もみられる.
水分欠乏量は100 mL/kg体重,K欠乏は5mEq/kg,Na欠乏は10mEq/kg程度とされる.

症候

1~2日の経過で,急激な口渇・多飲・多尿・倦怠感が出現.
→脱水,意識障害,体重減少へ進行する.

腹痛・嘔気を伴うことがあり,急性腹症と誤診されることがある.

Kussmaul呼吸
異常に深大な呼吸が連続し,規則正しく続く.
代謝性アシドーシスを補正するため

呼気のアセトン臭

脱水
口腔粘膜の乾燥,低血圧,頻脈,turgor低下

高血糖(≧250 mg/dL)
低Na血症
高血糖の際の血清Naの低下の速度は,血糖100mg/dLの上場に対して,Na 1.6mEq/Lの低下とされている.

高ケトン体血症.以下が揃えば,診断価値が高い.
 血中総ケトン体>3 mmol/L
 3-OHBA/AcAc≧3
 3-OHBA>3.8 mmol/L
  *3-OHBA:3-ヒドロキシ酢酸,AcAc:アセト酢酸

代謝性アシドーシス
pH<7.30,HCO3-<18 mEq/L,anion gap上昇,pCO2低下)

WBC上昇[10,000~15,000/μL],CRP陰性.
 WBC>25,000/μL,CRP陽性は感染症などの炎症の存在を示唆する.感染が疑われるときは血液培養や画像精査を行う.

血清アミラーゼ上昇
DKAの66%にアミラーゼが上昇しているとの報告もみられる.急性代謝障害による膵酵素の逸脱と考えられるが,急性膵炎の併発の可能性もあり,注意が必要.

治療

・血漿浸透圧や意識状態が正常化するまでは,血糖値250~300 mg/dLを目標[低血糖や輸液過剰による脳浮腫といった急性期治療の合併症を予防するため]
・血漿浸透圧や意識状態が正常化したら,血糖値150~200 mg/dLを目標
・治療の最終目標はケトアシドーシスの解除[尿中ケトン体の陰性化]

輸液による脱水補正

ケトアシドーシスでは平均して,体重の10%の水分と10 mEq/kgのNaClが欠乏している.

①生理食塩水 500~1,000mL/hrで開始.
②脱水の程度にあわせ,250~500mL/hrを目安に調整.
・血清Naが上昇すれば,1/2生理食塩水へ.血清Naが低下すれば,生理食塩水に戻す.
・大量の生理食塩水は脳浮腫をきたすおそれがあるが,一般に治療開始後24時間以内の輸液量が4L/㎡以下では脳浮腫は起こらない.
③血糖値が250~300 mg/dLになれば,3号液[5~10%ブドウ糖+Na含有]へ変更.

インスリン少量持続静注法

・速効型インスリンを生理食塩水に混注して,0.14U/kg/hrの速度で点滴静注を開始し,調整[50~75 mg/dL/hrの速度で血糖降下するとされている].
・血糖値が200mg/dLをきったら,0.02~0.05U/kg/hrの速度へ変更する.

*血糖が下がるときは急激に下がるので,血糖が下がる兆候がみえたら,インスリンの指示を切り替える.

電解質の補正

血清Kは最初の1日は2~4時間毎に測定.

K・Pはブドウ糖流入に伴って細胞内に移行するため,治療により血清電解質レベルは低下する.糖尿病ケトアシドーシスにおける重炭酸塩の投与やリンの補充が,生命予後や病態の改善に寄与するというデータはない.

K補正

血糖とアシドーシスの改善に伴い,Kは低下してくる.
・血清K濃度を4.0~5.0mEq/Lの範囲に維持.
・K≦5.2 mEq/Lになれば,輸液1LのK濃度を20~30 mEq/Lに調整する(腎機能に異常がない場合).

P補正

血清P濃度が2mg/dL以下であればPの補充を考慮する.
・P不足は赤血球中2,3-ジホスホグリセリン酸(2,3-DPG)濃度の回復を遅延させ,組織代謝の改善を障害する可能性がある.

HCO3-の補正は基本的に不要

基本的に補正不要.pH<6.9であれば,pH 7.0を目標に補正する.
・ケトアシドーシスでは解糖系の抑制のため,赤血球中2,3-DPG濃度が低下しており,ヘモグロビンと酸素の解離が抑制されている.このような状態で急激にpHを是正すると,酸素解離曲線が左方移動し,組織の酸素供給が障害される.
・HCO3投与により生じるHCO3-とCO2とでは血液脳関門の通過性に差異があり,やみくもなアシドーシスの補正はかえって中枢神経系のアシドーシスを悪化させる可能性さえあるといわれている(paradoxicalacidosis).

肝酵素上昇

治療経過中に肝酵素が上昇することがある.

予防

シックデイ

・糖尿病患者が感染症などによる発熱・下痢・嘔吐をきたしたり,食欲不振のため,食事が摂れない状況.
・特にインスリン治療を行っている場合は,インスリン拮抗ホルモンの影響で,食事量が少なくても,むしろ血糖値が上昇することが多い.

シックデイ・ルール
①できるだけ摂取しやすい形で,エネルギー・炭水化物を補給する(最低でも1日100g以上).
②水分は少なくとも1,000 mL/日は摂取する.ミネラルを含むものが望ましい.
③血糖自己測定を行う.
④食事ができないからといって,インスリン量を極端に減らしたり,中止をしない.
⑤以下の場合は,病院を受診する.
・発熱,消化器症状が強く,24時間にわたって経口摂取が困難なとき.
・血糖値が350 mg/dL以上のとき・意識状態の変容がみられるとき

シックデイの糖尿病患者への対応
・必ず,尿中ケトン体の測定を行い,ケトアシドーシスの除外を行う.
・帰宅させる場合は,シックデイ・ルールの再確認をする.
・インスリン治療中の場合,持効型インスリン注射は同量で継続するよう指導する.毎食前の追加インスリンについては,食事量にあわせ,適宜調整する.

医学ノート(なすび用)
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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
勉強好きで,私用に細々とまとめています.

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