糖尿病性舞踏病 diabetic chorea

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なすび医学ノート

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高血糖性脳症の一つで,高血糖状態や急激な血糖の変動時に,片側の舞踏運動および時に大きく速い動きであるバリズムを伴い,MRI T1強調画像で対側の被殻に高信号を認める疾患.

・糖尿病のほとんどが非インスリン依存型であり,大部分が非ケトン性高血糖.
・予後は良好で,数日から数週間で,不随意運動は軽快する症例がほとんど.まれに再発例.
・画像所見は数ヶ月以内で消え,少量の経口薬でコントロール可能な安定した糖尿病に落ち着く.

疫学

・高齢者に多い.8割は60歳以降の発症.
・女性にやや多く発症する.
・アジア人に多く報告されており,何らかの遺伝的背景も想定されている.

・発症時の平均血糖は500 mg/dL前後(49~1,264 mg/dL).
・発症前から糖尿病を指摘されていたのは半数に満たず,不随意運動を期に発見されるケースが3割.
(発症時のHbA1cは平均13.0%程度であり,以前から高血糖状態であったと思われる)

原因

いくつかの説があるが,結論には至っていない.

大脳基底核の代謝異常

高血糖下では,神経細胞は代償的にGABAをエネルギー源として利用
→GABAの枯渇・乳酸値の上昇
→視床への抑制が働かず,不随意運動が生じる.

微小点状出血

矛盾点が多く指摘されている
高血糖→血液脳関門の破綻→線条体の点状出血

虚血

高血糖→代謝の劇的な変化→線条体へストレス
→局所の虚血に類似した部分的な神経細胞死・機能障害

コレア・バリズムの発症機序(DeLongの仮説)

間接路のうち,淡蒼球外節に投射する線条体ニューロンが障害
→淡蒼球外節の活動が亢進→視床下核に対する抑制が強くなる
→視床への抑制が弱まり,視床ニューロンの活動が亢進
糖尿病性舞踏病の場合,神経細胞は高血糖下では代償性にGABAを利用するため, GABAが枯渇して視床に対する抑制が障害されると推測する報告がある.

症候

不随意運動

1)舞踏運動・バリズムで発症する場合.
2)はじめは昏睡で,片麻痺・構音障害などで発症し,それらの症状が軽快するとともに不随意運動が目立ってくる場合.

・両側性は2割程度で,片側性が多い.
・舞踏運動のみが4割弱で最も多く,舞踏運動+バリズムは3割,バリズムのみは2割程・度,舞踏運動+アテトーゼは1割.

舞踏病
顔面・四肢ならびに体幹に及ぶ全身性に非律動的で大きな不随意運動.
・何か物をとろうと手を伸ばす,指差すといった一見目的があるかのような短い運動.
・本来の目的に沿ったスムーズな運動を妨げる.

バリズム ballism
四肢近位部(上肢あるいは下肢)を投げ出す,または放り出すような激しい不随意運動.
・腕を振り回すようなドラマティックな動き.

頭部MRI

不随意運動と反対側の大脳基底核でT1強調画像高信号,T2強調画像低~等信号の領域.
・被殻は必発であり,尾状核・淡蒼球にも同様所見がみられた報告も多い.
・数ヶ月~1・2年で消退・消失する.

頭部CT
MRIと同部位に,高吸収域の報告と等吸収域の報告が半々だが,正常例も報告されている.

SPECT

dopamine transporter imaging with single photon emission computed tomograthy;DAT-SPECT

線条体部のRI(radio isotope)集積低下

黒質線条体のドパミン細胞変性脱落を検出することができ,Parkinson病やLewy小体型認知症の診断に有用.

可能性として・・・
1)投射先の線条体が障害された結果としてDAT発現が低下.
2)未知のフィードバックシステムによる黒質ドパミンニューロンの抑制
3)線条体のシナプス後D2受容体の障害に続発するシナプス前ドパミン作動性ニューロンの機能障害
4)線条体/淡蒼球の障害によるシナプス前ドパミン作動性末端のドパミン再取り込み障害

診断

1)~3)が揃えば確実,1)+2)では疑い例.
2)+3)ではDCとは呼べないが,不随意運動発現を考慮した経過観察が必要

1)突然発症の一側または両側の舞踏運動・バリズムであること.
2)症状の発現時またはその前に,高血糖状態か急激な血糖変化を認めること.
3)MRIT1強調画像で被殻に高信号を認めること.
4)糖尿病以外の舞踏運動を生じる原因(薬剤性・炎症性疾患・腫瘍・血管奇形・一般的な脳血管障害など)を否定できること.

治療

血糖コントロール

1番の治療で,これのみで速やかに不随意運動は改善する.

舞踏病治療薬

ハロペリドール
クロルプロマジン
ジアゼパム
チアプリド
スルピリド
*著効するという記載はなく,試行錯誤しつつ使用するうちに軽快する報告が多い.

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