デング熱 dengue fever

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なすび医学ノート

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ネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるデングウイルスの感染症.人畜共通感染症.

多彩な症状を示し,初期症状はインフルエンザなどのウイルス感染症に類似する.
・消化管出血は34.3%の割合でみられ,主な死因の一つ.

全数報告対象(4類感染症)であり,診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない.

デングウイルス

フラビウイルス科に属し,RNAウイルスに分類され,DEN-1,DEN-2,DEN-3,DEN-4まで4種の血清型に分類される.

4つの血清型は流行のサイクルがずれ,1~4型は入れ替わりで流行するため,デング感染症流行地域では,ほぼ毎年,デング熱が流行する.

蚊(ネッタイシマカAedes aegypti,ヒトスジシマカAedes albopictus)によって媒介される.
・日本国内においては,デング熱はヒトスジシマカによって媒介される.
・ヒトスジシマカの活動は主に5月中旬~10月下旬(南西諸島の活動期間はこれよりも長い)に見られ,冬季に成虫は存在しない.

疫学

デングウイルス感染症がみられるのは,媒介する蚊の存在する熱帯・亜熱帯地域,特に東南アジア,南アジア,中南米,カリブ海諸国であるが,アフリカ,オーストラリア,中国,台湾においても発生している.

全世界では年間約1億人がデング熱を発症し,約25万人がデング出血熱を発症すると推定されている.

日本国内においては,デング熱はヒトスジシマカによって媒介される.
・本州(秋田県および岩手県以南)から四国,九州,沖縄まで広く分布している.
・日本では,2014年に約70年ぶりに国内流行が発生した.

病態

非致死性の熱性疾患であるデング熱と,重症型のデング出血熱やデングショック症候群の二つの病態がある.

デング熱は抗体依存性の感染増強現象を起こす特性があり,2度目の感染では症状が重篤化するため,ワクチン開発が困難.

デングウイルスに感染した場合,かなりの割合で不顕性感染に終わると考えられている.

重症化

解熱時に突然,血管外への血漿漏出と出血症状を主症状とする患者群がいる.
・腹痛,遷延する嘔吐,粘膜出血,胸水貯留などが出現する.
・重症化徴候である出血傾向,血漿漏出は,初期症状出現後の3~7日目に発生する.

重症化の危険因子としては,若年,女性,高BMI,ウイルス株,MHC classⅠ related sequence B,ホスホリパーゼC epsilonⅠ遺伝子の6つが判明している.

重症型デングは放置すれば致命率は10~20%に達するが,適切な治療を行うことが致命率が1%未満に減少させることができるとされる.

マスト細胞の活性化により,キマーゼを含む血管作動性物質に作用することで,血漿を血管外に漏出させ,臓器虚血を起こし,高度肝障害,腎障害,場合によってはショックを引き起こす.

消化管出血を合併する原因として,デングウイルスの非構造蛋白であるNS1(non-structural protein 1)の関与が示唆されている.
・NS1は,デングウイルスが肝細胞,マクロファージ,血管内皮細胞に感染した後,感染細胞が合成され,細胞外に分泌される蛋白.
・全身を巡ったNS1はプロトロンビン/トロンビンに結合し,プロトロンビンの活性化の阻害血小板上の蛋白質ジスルフィドイソメラーゼを認識し,血小板凝集の阻害をすることが近年に明らかになった.

臨床経過

潜伏期間は4~10日.

初期症状は,発熱,悪心・嘔吐,頭痛,関節痛・筋肉痛など,皮疹以外は一般的なウイルス感染症と類似した症状を示す.
・患者本人が気づかず,風邪と同じように対応し,病院を受診しないことも多い.
・発熱で発症し,多くの場合,2~7日持続して改善する.
・発症後4~7日目に発症する紅斑や点状出血が特徴的.

検査

末梢血の血小板・白血球数が徐々に低下し,発熱後4~7日頃には最も低くなる.

病原体診断

血液のPCR検査は,発病初日~4日目頃までは陽性であるが,その後は,陰性化する.

血液中のNS1抗原検査は,発熱当日から7日目頃までに陽性となる.

診断基準

probable dengue

デング熱流行地域に居住,または旅行歴がある場合
+発熱と以下徴候を2つ満たす

・嘔吐
・発赤
・関節痛
・ターニケットテスト陽性
・白血球減少
・重症化徴候がある

重症化徴候
・腹痛と圧痛点
・持続的嘔吐
・臨床的体液貯留
・粘膜出血
・無出力,不穏状態
・2cm以上の肝腫大
・検査所見:Hct上昇と同時期のPltの急速な減少

重症型デング

1.重度の血漿漏出
・ショック
・呼吸苦を伴う体液貯留

2.臨床評価された重度の出血

3.重度の臓器障害
・肝臓:AST or ALT>1000
・中枢神経症状:意識障害
・心臓と他の臓器

治療

十分な輸液.

バイタルサイン(特に脈圧)を注意深くみていく.
・圧差が減少していく場合は,血管内からの体液の漏出によるショックに至る可能性があるため,急速輸液を行う.

重症化デング

血管破壊そのものは起こさないため,一度血管外に漏出した血漿は,マスト細胞の活性化が終了する48~72時間経過後には血管内に戻ってくるため,そのまま細胞外液を過負荷すると心不全になってしまう.
→血漿漏出時には補液をして血管内ボリュームを保ち,その時期が終了した後には,逆には補液を終了して経過をみる必要がある.

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