Lewy小体型認知症 dementia with Lewy bodies;DLB

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なすび医学ノート

進行性の認知機能低下を必須症状とし,認知機能の変動,幻視,レム睡眠行動障害,パーキンソニズムの4つの中核的臨床的特徴を主徴とする神経変性疾患.

神経変性疾患に伴う認知症では,Alzheimer病(Alzheimer’s disease;AD)に次いで多い.

臨床的には,早期には重篤な記憶障害を示さない進行性認知症であり,具体的な反復する幻視,認知障害の大きな変動,パーキンソニズムを伴うことを特徴とする.
・DLBでは,ADに比べ記憶障害が比較的軽く,注意障害,遂行機能障害,視空間・視知覚障害が際立つ.
・幻視を中心とした幻覚,錯視,誤認妄想,REM睡眠行動障害(REM behavior disorder;RBD)などの特徴的な行動異常は,パーキンソニズムや自律神経障害とともに,DLB特有の臨床的および介護上の問題となる.

ADに比較すると生命予後は悪く,認知症の進行速度も早いことが知られ,運動障害と自律神経障害もさらに日常生活活動を損なう.
精神症状・行動異常は患者本人を苦しめるだけではなく,介護者の身体的,精神的,社会的負担を増大させ,病院あるいは介護施設への早期入院・入所を招く.

病態

病理学的には大脳皮質に出現を特徴とする.

病理

神経病理学的には,Parkinson病(Parkinson’s disease;PD)と同様に,中枢神経系,末梢自律神経系の神経細胞や神経突起にα-シヌクレインの凝集物が沈着することが明らかにされている.
→PDとDLB,認知症を伴うPDは,同様の病態機序で発症する一連のスペクトラム上にある疾患と考えられ,Lewy小体病と総称されている.

大脳では萎縮した海馬領域や扁桃体を含む大脳辺縁系を中心に,神経細胞の脱落がみられ,認知機能障害の原因と考えられる.

黒質や青斑核などでは,神経細胞の胞体内にPDと同様のLewy小体が認められる.
延髄の迷走神経背側核や間脳の視床下部やマイネルト核,さらに末梢交感神経節や内臓自律神経系にも分布.

DLBでは大脳にもLewy小体がみられるのが特徴であり,扁桃体や大脳辺縁系皮質,さらに大脳新皮質にまで広く分布している.
・脳幹や間脳の脳幹型レビー小体と比べて境界が不明瞭であり,皮質型Lewy小体と呼ばれる.
・DLBにみられる認知機能障害や精神症状は,大脳辺縁系のLewy小体の出現に関連していると考えられる.

DLBでは多くの場合,ATDにみられるアミロイド沈着や神経原線維変化を伴っていることが多く,これも認知機能障害を悪化させる原因となっている.

症候

進行性の認知機能低下に加え,認知機能の変動,幻視,RBD,パーキンソニズム,さらに妄想,うつなどの精神症状,さまざまな自律神経症状,嗅覚低下が認められる.
・記憶障害の発症年齢は平均74.9歳,
・便秘は76%,記憶障害の9.3年前
・嗅覚低下・脱失は44%,記憶障害の8.7年前
・うつは24%,記憶障害の4.8年前
・RBDは66%,記憶障害の4.5年前
・起立性のめまいは33%,記憶障害の1.2年前
・失神は17%,記憶障害の1.4年後
・パーキンソニズムは86%,記憶障害の1.5年後
→記憶機能低下の出現前にさまざまな症状がみられ,この時期をprodromal DLBと呼ぶ.

認知機能低下

進行性の認知機能障害は必須症状.

特徴として,ADに比し海馬の障害が軽度であるため,記憶障害は軽度となるが,注意・遂行機能・視空間機能に関するテストで初期から成績が悪い.

認知機能の変動

典型的にはせん妄様で,認知機能,注意ならびに覚醒状態が自然に変化する.
・矛盾した行動を取ったり,辻褄の合わない話をしたり,注意力が散漫になったり,一点をじっと見つめたり,ぼーっとするような意識の変容を来たすエピソードを繰り返したりする.
・日中の傾眠や覚醒時の混乱がしばしばみられ,せん妄との区別が難しいことがある.

初期に目立つことが多い.

幻視

実際にはそこには存在しない物が見えること.
・外界に存在する対象が実際の者とは異なって見える現象は錯視という.

80%に幻視が見られ,典型例は,再現性があり,形がはっきりしており,詳細に説明することができる.
反復性に現れる.

典型的なものは人物や小動物の幻視で,しばしば不安感を伴い,夕方や薄暗いときに多くみられる.

幻視以外の精神症状として,錯視や人物・場所の誤認も多くみられる.

REM睡眠行動障害 REM behavior disorder;RBD

通常レム睡眠時には全身の骨格筋の緊張が低下しているが,何らかの原因で筋緊張の抑制が障害されるために,夢で見たことをそのまま行動に移してしまう状態.
・夜間睡眠時に悪夢を伴う大声や体動を示す.

α-シヌクレイノパチーに高頻度に見られ,PDでは33~60%,DLBでは50~80%,病理学的に確定診断されたDLBでは76%と多く認められる.

DLBと非DLBを鑑別する際の重要な症状

パーキンソニズム

運動緩慢が必須で,これに静止時振戦 or/and 筋強剛(筋固縮)があることが条件.
・安静時振戦は末期まで目立たないことがある.

運動緩慢には,動作の遅さと振幅の減少の2つの様相がある.

DLBに必須ではなく,ほとんどみられない場合もある.

頭部MRI

側頭葉内側は比較的保たれている.

SPECT/PET

後頭葉の脳血流/ブドウ糖代謝が低下し,一方,中部あるいは後部帯状回のブドウ糖代謝が比較的保たれる(帯状回島兆候)

線条体DATシンチグラフィ(指標的バイオマーカー)

線条体にあるドパミン神経細胞終末部のシナプス前機能を評価することができる画像検査.

黒質線条体系(黒質ドパミン神経細胞シナプス前終末)の変性を伴うParkinson症候群ではドーパミントランスポーター(dopamin transporter;DAT)を標識する物質(イオフルパン)の集積が低下する.

DLBでも,DATシンチグラフィで線条体におけるイオフルパン集積の低下がみられる.
・DLBではPDに比し,尾状核におけるDAT結合の低下が著しく,PDの方が被殻後半部分の左右差が大きい.

ADでは,DATシンチグラフィ画像は正常であり,DLBと鑑別することができる.

MIBG心筋シンチグラフィ(指標的バイオマーカー)

DLBでは,心臓のMIBG集積が著明に低下し,H/M比も2を大きく下回っているが,AD・FTDでは,健常成人と同様に,心臓のMIBG集積,H/M比は共に正常.
・心臓交感神経の機能低下を反映

メタ解析によると,DLBと他の認知症を鑑別する際の感度/特異度は98%/94%.

睡眠ポリグラフ検査

RBDは,睡眠ポリグラフ検査で「筋緊張低下を伴わないレム睡眠」を確認すれば確診できる.

RBDがあると,Lewy小体病理を有している可能性が高い.

診断

レビー小体型認知症(DLB)の臨床診断基準(2017)

DLB の診断には,社会的あるいは職業的機能や,通常の日常活動に支障を来す程度の進行性の認知機能低下を意味する認知症であることが必須.
・初期には持続的で著明な記憶障害は認めなくてもよいが,通常進行とともに明らかになる.
・注意,遂行機能,視空間認知のテストによって著明な障害がしばしばみられる.

中核的特徴

最初の 3つは典型的には早期から出現し,臨床経過を通して持続する.

1)注意や明晰さの著明な変化を伴う認知の変動
2)繰り返し出現する構築された具体的な幻視
3)認知機能の低下に先行することもあるレム期睡眠行動異常症
4)特発性のパーキンソニズムの以下の症状のうち 1つ以上;動作緩慢,寡動,静止時振戦,筋強剛

支持的特徴

抗精神病薬に対する重篤な過敏性
姿勢の不安定性
繰り返す転倒
失神または一過性の無反応状態のエピソード
高度の自律機能障害(便秘、起立性低血圧、尿失禁など)
過眠
嗅覚鈍麻
幻視以外の幻覚
体系化された妄想
アパシー,不安,うつ

指標的バイオマーカー

1)SPECT または PET で示される基底核におけるドパミントランスポーターの取り込み低下
2)MIBG 心筋シンチグラフィでの取り込み低下
3)睡眠ポリグラフ検査による筋緊張低下を伴わないレム睡眠の確認

支持的バイオマーカー

1)CT や MRI で側頭葉内側部が比較的保たれる
2)SPECT,PETによる後頭葉の活性低下を伴う全般性の取り込み低下(FDG-PET により cingulate island sign を認めることあり)
3)脳波上における後頭部の著明な徐波活動Probable DLB は、以下により診断される.

Probable DLB
a.2つ以上の中核的特徴が存在する.
または
b.1つの中核的特徴が存在し,1つ以上の指標的バイオマーカーが存在する.
Probable DLB は指標的バイオマーカーの存在のみで診断するべきではない.

Possible DLB
a.1つの中核的特徴が存在するが、指標的バイオマーカーの証拠を伴わない.
または
b.1つ以上の指標的バイオマーカーが存在するが,中核的特徴が存在しない.

DLB の診断の可能性が低い
a.臨床像の一部または全体を説明しうる,他の身体疾患や脳血管疾患を含む脳障害の存在(ただし,これらはDLBの診断を除外せず,臨床像を説明する複数の病理を示しているかもしれない)
b.重篤な認知症の時期になって初めてパーキンソニズムが出現した場合

・DLB は認知症がパーキンソニズムの前か同時に出現したときに診断されるべきである.
・PDD は,明らかな Parkinson 病の経過中に起こった認知症を記載するために用いられるべきである.
・実際の場では,その臨床的状況に最も適した用語が用いられるべきで,Lewy 小体病(Lewy Body Disease)といった総称がしばしば役立つ.
・DLBとPDDの区別が必要な研究では,認知症の発症がパーキンソニズム発症の 1 年以内の場合 DLB とする“1 年ルール“を用いることが推奨される.

治療

現時点では,α-シヌクレイン凝集物の沈着過程そのものに修飾を加える根本的治療はなく,中核症状の認知機能障害,BPSD,パーキンソニズムならびにさまざまな自律神経障害などに対する対症療法が主体になる.

認知機能障害

原則として,コリンエステラーゼ阻害薬(cholineesterase inhibitors;ChEIs)を使用する.

DLBでは大脳のアセチルコリン濃度がATD以上に低下していることが報告されており,ChEIsがDLBの認知機能障害にも効果的であると考えられている.
→本邦では,2014年ドネペジル(アリセプト®)の保険適応

BPSD

幻視,妄想ならびに誤認などのBPSDが出現したときは,まずは引き起こす・悪化させる要因がないかどうかを確認することが重要.

DLBにおけるBPSD,特に幻視,妄想ならびにアパシーなどの薬物療法にはChEIsが第一選択.
・ドネペジルやリバスチグミン(保険適応外)等のChEIsでは,DLB/PDD患者の精神症状,とりわけ幻視の改善に有効であることが認められている.
・メマンチンについても,DLBのBPSDが改善したと報告されている.

BPSDに対する抗精神病薬投与の使用は適応外であり,患者のリスクベネフィットを考慮し,十分なインフォームドコンセントを行って使用する.

ChEIsが使用できない場合や無効の場合,緊急にコントロールしなければならない行動症状などに対しては,非定型抗精神病薬を使用する.
・比較的副作用が少ない少量のクエチアピン(12.5mg or 25mgから開始して75mgまで)が推奨されている.
・糖尿病がある場合はリスペリドンを使用する(パーキンソニズムを悪化させる可能性があるため,特に少量から慎重に投与).

抑肝散®は認知症患者のBPSDに有効であるとの報告がみられ,DLB患者のBPSDにも使用されることがある.
・低K血症以外に大きな副作用はなく,非定型抗精神病薬よりは安全.

パーキンソニズム

原則的にはL-ドパを使用する.
・精神症状の悪化が,他の抗PD薬より少ない.
・消化管運動障害などで吸収が悪くなることがあり,その際はドンペリドンなどを併用する.
・L-ドパを少量(50mg)から用い,効果と副作用を考慮しながら,600mg(分3)くらいまで増量を試みる.

幻覚がみられるときは,まずChEIsを使用し,その後にL-ドパを投与すると幻視が悪化しにくい.

ゾニサミドはL-ドパ投与時の追加投与で,認知機能や精神機能の悪化を起こすことなく,パーキンソニズムを改善したことにより,2018年保険適用が認められた.

自律神経障害

血圧変動

起立性低血圧 orthostatic hypotension;OH
・起立時に血圧が低下
→起立後3分以内に少なくとも収縮期20mmHg以上 or 拡張期10mmHg以上の低下を示す場合
・症状はめまい,立ちくらみ,頭重感,程度が強いと失神

交感神経刺激薬→ドロキシドパ(半減期1.9時間),ミドドリン(半減期1時間),アメジニウム(半減期13.6時間)を単剤or併用
血漿増量薬のフルドロコルチゾンを使用することもあるが,副作用として臥位高血圧,浮腫,低K血症,心不全などがあり,継続使用できる例は少ない.

食事性低血圧
・食事中もしくは食後に血圧が低下.
・食後にぼーっとして時に意識が低下.

食前or食後に短時間作用型のミドドリン,ドロキシドパを使用することがある.

排尿障害

主に畜尿障害(頻尿,尿意切迫)による症状が認められている.

抗コリン薬→ソリフェナシン,トルテロジン,イミダフェナシン
α1受容体遮断薬→タムスロシン,ナフトピジル
アドレナリンβ3受容体刺激薬→ミラベグロン,ビベグロン

消化管運動障害

消化管蠕動低下が多い.
→胃排出機能低下,便秘,悪化すると麻痺性イレウス

酸化マグネシウム,ルビプロストン,ドンペリドン,モサプリド,大建中湯®,センナ,センノシド

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