膀胱炎 cystitis

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

急性細菌性膀胱炎:膀胱粘膜と粘膜下組織の非特異的細菌感染症である.
・特殊なものとして,ウイルス性膀胱炎,薬物性膀胱炎,放射線膀胱炎,間質性膀胱炎などがある.

疫学

急性単純性膀胱炎の大半が女性で,生殖年齢に多い.
・女性の半数が生涯に 1~2回罹患するとされる.
・女性は尿道が短いために上行性感染が起きやすい.
・若年女性は男性に比べ,約30~40倍もリスクが高い.
・性交,妊娠,分娩後,閉経後,避妊具や殺精子剤の使用が感染の頻度を増す.
・閉経後はエストロジェンの減少が腔粘膜の萎縮,乳酸菌の消失,腔内pHの上昇を招来し,腸内細菌が定着しやすくなる.

50歳以下の男性では尿路感染症は稀である.
→常に基礎疾患を疑う.
・前立腺肥大症か慢性前立腺炎が多い.性感染症や包茎も考える.
・50歳以上では前立腺肥大が最も大きく関与する.
・男性の尿路感染症を見たら,尿路奇形,前立腺肥大・炎症,尿路結石症,腫瘍などの閉塞機転を考慮し,画像診断による精査が必要.膀胱癌には注意!

糖尿病患者では,腎盂腎炎やその合併症が数倍に増加することが知られている.

病態

95%は上行性感染であり,5%は血行性.
・外陰部から尿道を経由して上行性に感染する.

病原菌

腸内細菌をはじめとするグラム陰性桿菌で大腸菌が最も多い.

細菌線毛:グラム陰性桿菌
莢膜:大腸菌
細胞壁
毒素:溶血性大腸菌
バイオフィルム:緑膿菌など

付着因子

細菌表面に発現し,尿路上皮細胞のレセプターと特異的に結合する付着因子(adhesin)が作用して,尿路上皮細胞の表面を覆うムチン層からなる感染防御機構を越えて細菌が定着する.
→再発性膀胱炎の原因になる.

分類

単純性

・基礎疾患がない
・女性に多い.

・原因菌が大部分は大腸菌(7~8割).Staphylococcus saprophyticusに注意が必要(膀胱粘膜への付着性が非常に高く,難治性になりやすい).

複雑性

基礎疾患がある,カテーテル留置,自己導尿している.
・再発性膀胱炎,難治性膀胱炎,男性の急性膀胱炎では基礎疾患のあることが多い.
・膀胱癌,膀胱結石,膀胱憩室,神経因性膀胱のほか,男性では慢性細菌性前立腺炎,前立腺肥大症(BPH),尿道狭窄,前立腺癌,女性では尿道憩室など.

男性に多い.

原因菌は大腸菌以外にKlebsiella, Proteus, Pseudomonas, Enterobacter, Serratiaなどのグラム陰性桿菌,Enterococcus, Staphylococcusなどのグラム陽性球菌

特殊な膀胱炎

ウイルス性膀胱炎
・小児で,排尿痛と肉眼的血尿がみられる.アデノウイルス感染.
・1~2週間で自然治癒する.

薬物性膀胱炎
・シクロホスファミド(CPA)(抗癌薬),トラニラスト(抗アレルギー薬)で膿尿(+),細菌(-)の難治性膀胱炎をきたすことがある.

放射線膀胱炎
・放射線による慢性炎症で難治.

間質性膀胱炎
・原因不明の膀胱炎で,蓄尿時に下腹部の痛みを訴え,進行すると萎縮膀胱となる.

症候

頻尿,排尿痛,尿混濁が 3 主徴である.
・肉眼的血尿を呈することも多い.
・膀胱炎のみでは発熱をきたさない.

膀胱刺激症状 bladder-irritative symptom
・頻尿,夜間尿,尿意切迫,排尿痛などの膀胱炎の症状.
・原因として膀胱の感染症や化学膀胱炎あるいは放射線膀胱炎,間質性膀胱炎,前立腺炎,精神神経症,卵巣嚢腫の捻転・破裂,膀胱内異物による膀胱の炎症がある.
・膀胱上皮内癌は鑑別に注意を要する疾患である.
・帯下の増加や悪臭,外陰部の掻痒感の有無を確認し,膣炎を除外する.

尿検査

尿定性

白血球エラスターゼテスト
感度75~95%.扁平上皮の混入の多い場合など偽陽性となる.

亜硝酸
・陽性の場合,10^5CFU/mLの有意細菌尿を意味する.
・感度は,採尿前の膀胱内貯留時聞が短いと40%,4時間以上であると80%に高まる.
・淋菌や腸球菌など,硝酸塩を亜硝酸に還元しない細菌では陽性とならない.

尿沈渣

白血球
膿尿=尿中に白血球が混入した尿.尿沈渣で5/HPF(1視野,400倍) or 10/m3以上の白血球を認める.

細菌尿
・10^3/ml 以上の細菌尿(男性中間尿および女性カテーテル尿),10^4/ml 以上の細菌尿(女性中間尿).
・10^4/ml 以下のときは外陰部の汚染による可能性がある.
・採尿は中間尿で行うが,カテーテル採尿のほうが厳密.

基礎疾患の検索

難治性,再発性,男性の膀胱炎では,膀胱,腎臓の超音波断層法,残尿の有無,尿細胞診,膀胱鏡,前立腺の検索などを行う.

治療

抗菌薬

第1選択は第1~2世代セフェム系であり,3~5日間投与する.
第1世代:CEX(cefalexin) ケフレックス®250mg 3T(3×毎食後)
第2世代:CTM(cefotiam) パンスポリンT®200mg 3T(3×毎食後)
第3世代:CFDN(cefdinir) セフゾン®100mg 3T(3×毎食後)

・米国の第1選択は,ST(バクタ) 800/160mg×2/日,3日間.
 ST合剤は安価で比較的安全な薬剤であるが,わが国では抗菌薬の中で唯一「警告」付きの薬剤であり,やや用いにくい(実際は重篤な副作用の発生頻度はきわめて低い).
・ABPC(ビクシリン®)やAMPC(サワシリン®)はE.coliの約30%が耐性を示すので,残念ながら奨められない.
・ニューキノロン系薬の3日間投与も当然有効だが,ニューキノロン系薬は内服薬で唯一緑膿菌や多くのブドウ糖非発酵菌に有効な薬剤であり,第1選択として推奨しない.ニューキノロン系薬の単回投与は確立していない.
・妊婦と男性は,やや長く7日間治療する.

生活指導

水分摂取,保温に留意し,排尿を我慢しない.

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