Cushing症候群 Cushing’s syndrome;CS

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なすび医学ノート

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慢性的な高コルチゾール血症により,特徴的な臨床症状や身体所見を呈する疾患群.

 視床下部CRH-下垂体ACTH-副腎コルチゾール系のうち,病因としてACTHの過剰分泌によるもの(ACTH依存性Cushing症候群)と,副腎が原因でACTHとは無関係にコルチゾール過剰分泌をきたすもの(ACTH非依存性Cushing症候群)とがある.

疫学

 50%以上を副腎腺腫が占め,次いで40%前後がCushing病,10%前後が異所性ACTH症候群,その他の疾患はまれである.

 一般的には20~40歳代に多く,男女比は1:3~4で女性に多い.

病態

ACTH非依存性Cushing症候群(副腎性Cushing症候群)の分類

1.副腎腺腫
2.AIMAH(ACTH-independent macronodular adrenocortical hyperplasia)
  ACTH非依存性両側副腎皮質大結節性過形成
3.PPNAD(primary pigmented nodular adrenocortical disease)
  原発性色素性副腎結節性異形成
4.副腎癌
5.その他:異所性ホルモンレセプターによるもの

subclinical Cushing症候群(SCS)

腫瘍からのコルチゾールの自律的分泌を認めるもののCushing症候群の特徴的な症状を呈するに至らないもの.

 SCSはCSと比較してコルチゾール分泌量が少なく,比較的軽症であることが多いが,高血圧・低カリウム血症・糖/脂質/骨代謝異常などの合併症は起こしうる.

 SCSはCSに進展しないと考えられている.

 副腎腫瘍が存在するが,Cushing症候群に特徴的な身体徴候がなく,血中コルチゾールの基礎値が正常な場合は鑑別にあげる.

周期性(Cyclic) Cushing症候群

コルチゾール分泌が変動し,過剰の時はCushing症候群となるが,正常化すると,臨床所見も軽快・消失するもの

 周期は数日~数年にわたることがあり,非活動期には診断が困難.

 UFCや夜間血清コルチゾール濃度が診断に適しており,デキサメタゾン抑制試験は適していない.

偽性Cushing症候群

うつ病,慢性アルコール依存症,神経性食欲不振症,グルココルチコイド抵抗症,妊娠後期などでは,視床下部からのCRH分泌が高まり,高コルチゾール血症を呈するもの

 しかし皮膚の非薄化や筋力低下などの身体徴候を認めず,コルチゾールの自律的産生を認めない.

アルコール摂取→CRHの過剰分泌→下垂体のネガティブフィードバック機構の反応性低下

 偽性Cushing症候群の完全な除外が難しい例では,デキサメタゾン-CRH試験が有用との報告がある.

症候

慢性的コルチゾール過剰分泌が原因の特異的な所見

1)むくんだ赤ら顔の満月様顔貌(moon face)
2)体幹部が肥満し四肢が細くなる中心性肥満(central obesity)
3)赤紫色皮膚線条 purple striae(幅1cm以上)
4)皮膚の伸展性
5)血管壁の脆弱性による皮下出血斑
6)水牛様脂肪沈着(Buffalo hump)
7)成長遅延(小児の場合)
8)月経異常
9)筋力低下(特に近位筋)
 高齢者のCushing症候群の場合には肥満を伴わず,筋萎縮が著明で筋力低下が主になりやすい.
10)男性型多毛 hirsutism
11)ざ瘡

非特異的所見

1)高血圧
・コルチゾールのNa貯留作用や昇圧物質に対する感受性の亢進
2)耐糖能異常
・グルココルチコイドはインスリン作用に拮抗し,アミノ酸,グリセロール,遊離脂肪酸を筋肉・脂肪から放出させる.
・糖新生系の酵素誘導により,肝腎における糖新生を高める.
・GLUT4の細胞内トランスロケーションやブドウ糖のリン酸化を抑制することにより,筋肉・脂肪での糖取り込みを低下させる.
・膵α細胞を刺激して,グルカゴンの分泌を促進する.
・オステオカルシン↓→インスリン分泌↓
3)脂質異常
4)全身性肥満
5)骨粗鬆症
・骨芽細胞のアポトーシスを誘導するとともに,骨芽細胞の寿命の短縮/機能の抑制により骨代謝マーカーであるオステオカルシン,アルカリホスファターゼ,Ⅰ型プロコラーゲンC末端ペプチドの低下が起こり骨形成能が低下.
・腸管からのカルシウム吸収を抑制し体内のカルシウム量を減少させたり、尿中への排泄を促進する.
6)白血球数増加および分画異常(好酸球減少,好中球増加,リンパ球減少傾向
7)浮腫
8)低K血症
・相対的な11β-HSD2低下が起こり,コルチゾールがMRと結合可能になり,尿中K排泄が亢進する
9)抑うつ症など

ACTH高値

口腔内,関節部,爪床などの色素沈着

診断

コルチゾール過剰の診断
→ACTH依存性かACTH非依存性かの診断
→追加検査
→合併症検査

ACTH・コルチゾール測定の注意点

1)ACTH/コルチゾールはストレスの影響を受けるため,30分以上(入院患者では1時間)の安静臥床後に採血する.
2)夜間の採血は直前まで睡眠していることが重要.
3)検体を放置したり溶血すると,ACTH値が実際より低くなる.

コルチゾール過剰の診断

ACTHおよびコルチゾールの日内変動

1)正常では通常朝高く,夜低い日内変動を示すが,Cushing症候群ではそれが消失する.
 朝8~9時:10~20μg/dL
 午後:10μg/dL未満
 夜11~12時:6μg/dL未満
2)Cushing症候群では23時~午前0時の血清コルチゾール濃度が覚醒時で>5.0 μg/dL(睡眠中で>1.8 μg/dL)を呈する例が多い.

24時間尿中遊離コルチゾール(urinary free cortisol;UFC)の測定(蓄尿)

1)各種負荷試験の影響がない日に蓄尿し測定する.
2)血中でコルチゾールは約10%がタンパクと結合していない遊離のコルチゾールとして存在し,これが活性をもつ.
 血中でコルチゾールが高くなると結合タンパク(cortisol-binding globulin:CBG)は飽和し,腎からはタンパクと結合していない遊離のコルチゾールが多く排出される.
3)一般に尿中遊離コルチゾールが100μg/日以上あると高値と考える.
4)血清コルチゾール濃度は遊離コルチゾールとCBG結合コルチゾールの両者を反映する.
5)コルチゾール分泌が不定期な周期性分泌を示すため,最低2~3回は測定する.
6)FR<60mL/minのCKDでは,腎機能低下に伴い,UFCが低値(偽低値)となる
→デキサメタゾン抑制試験をする

overnightデキサメタゾン抑制試験,1mgデキサメタゾン抑制試験(dexamethasone suppression test;DST)

1)成人では1mg抑制試験でコルチゾールが5μg/dL以下に抑制される.
 実際には正常の多くが1.5μg/dL以下の抑制.
2)5μg/dL以下に抑制されていない場合には,2mgまたは8mg(高用量)負荷試験を施行する.
3)一般的には副腎性Cushing症候群ではコルチゾールは低用量・高用量デキサメタゾン抑制試験ともに抑制されない.
4)米国内分泌学会ではCushing症候群の臨床的疑いが強い例では1.8μg/dLをカットオフとすべきとしている(感度95%,特異度80%.

ACTH非依存性の診断

ACTH<5pg/mL→ACTH非依存性
ACTH 5~10pg/mL→ACTH非依存性の疑い
ACTH>20pg/mL→ACTH依存性

追加検査(ACTH非依存性が疑われる場合)

副腎CT(5mm以下のスライス厚),単純+造影

1)副腎腫瘍の確認.
2)典型例では径2~3cm以上で,造影前は低または等吸収域で造影効果を認めることが多い.
3)一般に皮質由来の腺腫は,脂肪を多く含むため,造影前のCT値は低く,15以下であればほぼcortical adenomaと診断できる(特異度は95%と高い).
 ただし,cortical adenomaの約30%は15以上である.
4)反対側の正常副腎は萎縮を示す.

副腎MRI

1)脂肪成分が多いと,chemical shift MRIでT1強調画像のout-of-phase(opposed-phase)で脾臓と比べてシグナル低下を示す.
2)chemical shift MRI
 MRIの信号源はプロトンだが,主に水と脂肪からなっており,両者の共鳴周波数はわずかに異なっている.この差をchemical shiftと呼ぶ.このずれを利用して脂肪沈着部と非沈着部の識別を可能とする.
 脂肪と水の共鳴周波数の違いは脂肪と水のプロトンの位相のずれとして反映され,両者が揃っている状態の画像をin-phase画像,ずれている状態の画像をout-of-phase画像とよぶ.

131Iアドステロール副腎皮質シンチグラフィ

1)機能性を示す皮質側の腫瘍側のみにアドステロールの取り込みを認め,反対側の正常副腎は機能が抑制されているため,萎縮し取り込みを抑制する.
2)AIMAHのような両側性の副腎性Cushing症候群の場合は両側に取り込まれる.
3)甲状腺への被爆を防ぐために前処置としてヨードブロックを行う.シンチ用ルゴール液5% 1.5mL/日(撮影前11日)

血中DHEA-S測定

1)副腎性アンドロゲンであるDHEA-SはACTHの刺激により合成・分泌抑制されることから,ACTHが抑制される副腎性Cushing症候群では低値を示すことがある.ただし,正常値であることが多い.
2)稀な疾患でアンドロゲン産生腫瘍,副腎癌によるCushing症候群では増加を示すこともある.
3)DHEAでは半減期が短く,値が変動しやすいため,DHEA-Sが一般に有用.

CRH試験

1)副腎性の場合,ACTHが抑制されているのでCRHに対してACTHは無~低反応.
2)もしも,ACTHの基礎値が5~20pg/mLでかつ,CRHに対して正常反応した場合には,ACTH依存性Cushing症候群の可能性を再検討する必要がでてくる.

合併症の評価

耐糖能異常

・ターゲス
・75gOGTT

骨粗鬆症

骨形成↓,骨吸収↑
・骨密度測定
・骨代謝マーカー
 血清TRACP-5b[骨吸収マーカー],骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ
 血清P1NP[骨形成マーカー],1型プロコラーゲンNプロペプチド
 血清ucOC[骨マトリックス関連マーカー],低カルボキシル化オステオカルシン

Cushing症候群の診断

必須項目

1.副腎腫瘍の存在(副腎偶発腫瘍)

2.臨床症状
 Cushing症候群の特徴的な身体徴候の欠如.
 ただし,高血圧・全身性肥満・耐糖能異常はCushing症候群に特徴的な所見とはみなさない.
*Cushing症候群の特徴的な身体徴候
満月様顔貌,中心性肥満または水牛様脂肪沈着,皮膚の伸展性赤紫色皮膚線条(幅1cm以上),皮膚のひ薄化および皮下溢血,近位筋萎縮による筋力低下,小児における肥満をともなった成長遅延

3.検査所見
1)血中コルチゾールの基礎値(早朝時)が正常範囲内.2回以上の測定が望ましく,常に高値の例は本症とみなさない.
2)コルチゾール分泌の自律性
overnightデキサメタゾン抑制試験:1mgで3μg/dL以上かつ8mgで1μg/dL以上

さらに3)から6)の項目の1つ以上,あるいは7)が必要
3)ACTH分泌の抑制
ACTHの基礎値が正常以下(<10pg/mL)あるいはACTH分泌刺激試験(CRH負荷試験など)の低反応
4)副腎シンチグラフィでの患側の取り込みと健常側の抑制
5)ACTHおよびコルチゾールの日内リズムの消失
6)血中DHEA-Sの低値.年齢および性別を考慮した基準値以下の場合を低値と診断する.
7)副腎腫瘍摘出術後,一過性の副腎不全症状があった場合,あるいは付属副腎皮質組織の萎縮を認めた場合.

subclinical Cushing症候群の診断

治療

片側の副腎腺腫

片側副腎摘出術(腹腔鏡)

対側副腎の機能抑制が明確な場合には,副腎手術後のグルココルチコイド補充療法の適応.
1)血漿ACTHが抑制
2)副腎CTで対側副腎の萎縮
3)副腎皮質シンチグラフィで対側副腎の取り込みが抑制

*周術期の管理[グルココルチコイド補充療法]
術当日 サクシゾン100mg+生食100mL 1日2回(術前,帰室後にそれぞれ1時間かけてdiv)
術後1日目 サクシゾン50mg+生食100mL 1日2回(朝,夕に1時間かけてdiv)
術後2日目 コートリル10mg 朝3錠 昼1錠 夕1錠
術後3日目 コートリル10mg 朝2錠 夕1錠
術後4日目以降 コートリル10mg 朝1.5錠 夕0.5錠
 術後6~10ヶ月間はグルココルチコイド補充療法を要するが,具体的な投与方法についての文献は少ない.

 一般的には術直後の24時間はヒドロコルチゾン200mg静注から開始して,症状をみながら100mg→75mg→50 mgと減量し,術後4日目からヒドロコルチゾン(コートリル®) 内服に変更し,内服量が20~30mgになった時点で退院可能.

 内服量10mgになった時点で迅速ACTH試験により,残存副腎機能を評価する.

 グルココルチコイドの減量速度が速すぎると食欲不振,悪心,発熱,関節痛,脱力,体重減少などの副腎不全症状をきたすステロイド離脱症候群(steroid withdrawal syndrome)を起こすので注意が必要.

両側の副腎腺腫(AIMAH,PPNAD)

・両側副腎摘出

subclinical Cushing症候群

 高血圧,糖尿病,骨粗鬆症,精神症状などのコルチゾール過剰症状の改善を目的に手術療法を検討.

副腎皮質癌

・副腎皮質癌は極めて悪性度が高く,急速に進行し,肝臓や肺への遠隔転移を認めて予後不良.
・副腎皮質癌では外科的摘出が第一選択であり,術後のアジュパント治療として,または手術不能例や再発例に対して症状軽減のためにミトタン(オペプリム®)を投与する.

高度の高コルチゾール血症を呈する場合

程度が重篤で感染症(敗血症,真菌感染など)のリスクが極めて高いため,診断に先立ち副腎皮質コルチゾール産生を阻害する薬剤の投与を優先する.
→速効性を有するメチラポン.

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