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37℃で凝固分離した血清を4℃で48~96時間放置して沈殿あるいはゲル化した蛋白をクリオグロブリンと呼び,クリオグロブリンが存在する血液状態をクリオグロブリン血症という.
沈殿した物質を免疫電気泳動によって3型に分類している.
・Ⅱ型とⅢ型のクリオグロブリンは,基本的には免疫グロブリンと抗グロブリン抗体やリウマチ因子による免疫複合体.
・何らかの外来抗原や内因性抗原に対してIgG抗体が産生され,そのIgGに対して単クローン性IgMが産生されればⅡ型となり,多クローン性免疫グロブリンが産生されればⅢ型となる.
・Ⅰ型では腎病変は一般的ではないが,BrouetらはⅡ型の31%,Ⅲ型の12%に腎病変がみられる.
病態
Ⅰ型:モノクローナル免疫グロブリン(Ig)のみから成る.
Ⅱ型:モノクローナルIgとポリクローナルIgの複合体.
Ⅲ型:2種以上のポリクローナルIgで形成されているものをいう.
・Ⅱ型とⅢ型を混合型クリオグロブリンと呼び,基礎疾患が明らかでないものを本態性混合型クリオグロブリン血症と称している.
Ⅰ型
モノクローナルIgを過剰産生するBリンパ球系腫瘍〔マクログロブリン血症(IgM型),多発性骨髄腫(IgG,IgA,IgD型)〕によることが多い.
Ⅱ型
最近C型肝炎ウイルス(HCV)との関連が注目を集めている.
EBウイルス感染症,Sjoegren(シェーグレン)症候群でも出現することがある.
複合体形成様式については不明な点が多い.
Ⅲ型
ループス腎炎などの自己免疫疾患,Schoenlein-Henoch(シェーンライン-ヘノッホ)紫斑病,感染症などで出現しやすい.
C型肝炎との関連
・Cacoubらは127例のC型慢性肝炎で,37%にⅢ型クリオグロブリン血症が,また17%にⅡ型クリオグロブリン血症が認められたと報告している.
・C型肝炎にクリオグロブリン血症が起こる理由として,HCVに感染したB細胞が多クローン性のIgMリウマチ因子を産生するとの考えも示されている.
原発性クリオグロブリン血症性糸球体腎炎
約50%で低補体血症を伴う腎障害を合併し,ほとんどの例がネフローゼ症候群を呈する.
腎内細小動脈の血管炎のほか糸球体病変としては膜性増殖性糸球体腎炎のことが多い.
その他メサンギウム増殖性糸球体腎炎,半月体形成性腎炎のこともある.
糸球体毛細血管内にクリオグロブリンからなる微小塞栓がしばしば観察される.
内皮下からメサンギウム域に特有の構造を有するelectron dense depositが存在することもある.
光学顕微鏡
多核白血球の浸潤による管内増殖性変化,毛細管内腔にみられるエオジン好性の血栓がみられる.
膜性増殖性腎炎Ⅰ型と同様:メサンギウム細胞の増生やメサンギウム基質の増加,毛細血管壁の二重化・分葉化.
蛍光抗体法
すべての例にIgGやIgMなど免疫グロブリンの沈着をみる.
沈着している免疫グロブリンの種類は,クリオグロブリンを構成している免疫グロブリンと同一.
C3など補体の沈着は一般的で,C4やC1qの沈着もしばしば認められる.
電子顕微鏡
基底膜内皮下に特徴的線維状沈着物.
メサンギウム領域の沈着や上皮下の沈着物は稀.
線維状沈着物は,対になった幅25mmの弯曲した管状構造物が特徴的.
症候
沈殿したクリオグロブリンが小血管を閉塞する症状に加えて,補体を活性化し炎症症状が出現する.
皮膚では紫斑,結節,潰瘍が寒冷により増悪する.
約70%で関節痛がみられる.
40~50%で浮腫,高血圧を合併する.
HCV感染症に由来することもあり,肝障害,肝硬変症を伴うことがある.
血液検査
炎症性変化として赤沈促進,CRP陽性,リウマチ因子陽性,高ガンマグロブリン血症がみられることが多い.
血清補体は低下することが多く,一過性に溶血性貧血,抗核抗体陽性が出現することもある.
治療
I型の基礎疾患としてはBリンパ球系腫瘍のことが多いので主としてその治療を行う.
・多発骨髄腫に対して抗腫瘍薬,副腎皮質ステロイドのほかインターフェロンが有効のこともある.
Ⅱ型ではHCV感染症によるものがあり,その場合は抗ウイルス療法が有効なことがある.
・副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬によって炎症を抑えることもある(ウイルスを増殖する恐れがあり).
・重篤な場合には血漿交換療法または血漿濾過療法が試みられる.クリオフィルトレーション.
・予後は血管炎の広がり,特に中枢神経,腎障害の程度によって規定される.