Creutzfeldt-Jacob病 Creutzfeldt-Jakob disease;CJD

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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図表は以下の文献より引用
日内会誌2013;102:1958-1964

○1996年に起こった狂牛病(ウシ海綿状脳症)騒動で国民にも広く知られるようになったCreutzfeldt-Jacob病(CJD)は,根治的な治療法はなく急激な経過をたどる致死的疾患であり,社会的にも感染予防の観点からも見逃すことができない.
○本症に特徴的で従来からよく知られている不随意運動(ミオクローヌス)や脳波所見(周期性同期性放電[PSD])だけでなく,むしろ脳MRI(magnetic resonance imaging)での特異所見や,脳脊髄液検査で14―3―3 蛋白や感染性プリオン蛋白質,プリオン遺伝子検査などを積極的に活用してプリオン病の可能性を検討する必要がある.

疫学

○およそ100万人に年間1人の割合で発症.
○患者の多くは50歳以上.

病態

プリオン病

○主として中枢神経系に障害をきたす致死的な神経疾患であり,感染性を有するプリオン蛋白(Prion Protein;PrP)が脳に蓄積することで発症する.
○罹患脳の病理的な特徴から伝達性海綿状脳症とも呼ばれ,ヒトだけでなく動物にも感染しうる人獣共通感染症であり,ウシにおいては狂牛病(ウシ海綿状脳症),ヒツジにおいてはスクレイピー,ヒトにおいてはCJDが代表的である.
○ヒトはプリオン遺伝子を持っており,正常の脳細胞にはプリオン蛋白が存在するが(正常型プリオン蛋白:PrPC),これには感染性はなく,プリオン病を引き起こすのはPrPCが高次構造に変化が生じることで不溶性となった感染型プリオン蛋白(PrPSc)である.
○ヒトプリオン病は成因により孤発性,遺伝性,感染性の3 つに大別され,特に孤発性では臨床像に多様性が存在し,プリオン遺伝子多型やプリオン蛋白タイプがその多様性に関与していることが明らかとされている.

診断

症状

○進行性の認知機能障害,精神症状などの臨床症状.
・初発症状は視覚症状(幻視や変形視・霧視など)や小脳症状(ふらつき・失調など),精神症状(活動性の低下や抑うつ・興奮・不眠など),高次機能障害(記銘力障害や失語、失行など)が比較的多い.
・運動麻痺,感覚障害,不随意運動などで発症する症例もあり,多彩である.

検査所見

○本症の診断を支持する検査所見として,教科書的には脳波上のPSD(periodic synchronous discharge)が有名であるが,典型例でも病初期にはみられないことや経過を通じてPSDを欠く例も少なくない.
○PSDが出現する前の病初期から中期においては,脳脊髄液中の14-3-3蛋白やタウ蛋白の上昇,MRI拡散強調画像において大脳皮質・大脳基底核・視床などにみられる特徴的な高信号所見の方が診断的に有用である.
○近年では,脳脊髄液中のPrPScを高感度かつ特異度に測定できる検査法(realtime QUIC(quaking-induced conversion)法)が開発され,プリオン病の診断に極めて有用であると期待されている.

頭部MRI

○拡散強調画像における大脳皮質や線条体の広範な高信号域は特徴的.

治療

根治的治療法はなく,そのため感染予防に重点を置いた診療が必要.

保健所への届け出

○本邦では5 類感染症に指定されていることから医師は7 日以内に届け出が必要.
○特定疾患治療研究事業対象疾患にも指定されており,申請に基づき認定されると医療費の一部が公費負担として助成される.

感染予防

厚生労働省研究班により「プリオン病感染予防ガイドライン(2008 年版)」が作成され公開されている.

○標準的な滅菌・消毒法ではプリオン蛋白の感染性は消失せず,確実な消失は焼却であり,焼却が困難である場合には適切な方法での滅菌が必要である.
○非侵襲的医療行為に際し基本的には標準予防策の実施のみでよく隔離などは不要.
○侵襲的医療行為に際しては用いた外科器具を他の患者に使用しない.
○プリオン病患者から献血された血液や提供された臓器を他の患者に使用しないことを原則.
○感染性の高い臓器(脳・脊髄・硬膜・視神経・網膜)を扱う脳神経外科,整形外科,眼科領域の手術はハイリスク手技であり,手術の有用性を十分検討した上で施行の有無を決定し,施行する場合には術者への感染や手術場の汚染のリスクが非常に高いことを理解し,ガイドラインに記載された項目を遵守して施行する.
○ハイリスク手技に該当しない侵襲的医療行為(内視鏡検査や歯科治療など)や剖検についても本ガイドラインには個別に留意点がまとめられている.
○孤発性CJDにおいては血液からの感染の報告はないが,変異型CJDでは血液にも感染性があることから,血液が付着する器材は極力ディスポーザブルのものを使用し,再利用する際には適切な3%SDS(sodium dodecyl sulfate)溶液処理が好ましい.
○中等度の感染性を有する脳脊髄液の採取にあたっては十分な注意が必要で,施行者はメガネを着用し,ベッドには防水性のシーツを敷き,不圧棒など器材はディスポーザブルのものを用いる.

期待されている薬物療法

キナクリン

○抗マラリア薬であり,PrPCがPrPScへの構造変化するのを阻害する作用や,PrPScの蓄積を阻害する作用を有し,プリオン病に対する治療効果が期待された.
→本邦やフランス,イギリスなどで多数例を対象にキナクリン内服による治療効果が検討され,一部の症例で覚醒度が上昇するなどの効果がみられたもののその効果は一過性であり,転帰を左右するような治療効果は示されなかった.
○副作用として肝障害をきたしやすく忍容性にも問題があり,治療の選択肢になりえるとは考えづらい.

ペントサンポリサルフェート

○間質性膀胱炎の治療薬として海外で使用されており,主に変異型CJDに対して生存期間を延長させる可能性が示されており,かつ忍容性も比較的高く期待されている.
○本邦でも本剤を投与した孤発型CJD症例において,脳へのPrPScの蓄積が通常の孤発型CJDと比較して減少していることが示されているが,臨床的な治療効果については一定の見解が得られておらず,また本剤は血液脳関門を通過せず脳室内投与が必要であり,ハイリスク手技ある脳外科処置が前提であることから,現時点では積極的に選択する根拠は乏しい.

その他

○ドキシサイクリンやシンバスタチンによる実験的治療が海外を中心に行われており,その結果が待たれている.

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