新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 疫学・病態

医学ノート(なすび用)

Coronavirus Disease 2019;COVID-19

新型コロナウイルス名は,Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2;SARS-CoV-2

2019年12 月から中国武漢市を中心に広がっている新型コロナウイルス感染症.

通常のコロナウイルスは感染しても通常の感冒などの重度でない症状にとどまる(一般の感冒の原因の10~15%.流行期は35%)が,過去のSARS,MARSは深刻な呼吸器疾患を引き起こし,問題となった.新型コロナウイルスも深刻な呼吸器疾患を引き起こしかつ,強い感染力を持つことが問題.

1)8割の感染者は,軽度で無症状であることが多い.
2)70歳以上の高齢者や糖尿病や腎不全などの基礎疾患のある症例では重症化しやすい.
3)死亡率は2~3%とインフルエンザ感染症に比べてかなり高い.

なすび専用のまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
ちゃんとした正書や情報提供サイトを強く推奨します.
当ブログは一切の責任を負いません.

流れ

2019年12月末 中国武漢市で,海鮮市場に関連した4人の肺炎患者が報告される.
2020年1月 新型コロナウイルスによるものと特定し,人-人感染による地域流行も明らかになる.
→WHOが「国際的な公衆衛生上の脅威となる緊急事態(PHEIC)」の宣言をする.
2020年2月 欧州で感染者が急増し,ロックダウンなどの強力な蔓延防止策が敢行.
2020年3月 アメリカでも急増し,死亡者数も急増.
2020年12月 ワクチン接種をイスラエル・イギリスで開始.
2021年1月 アルファ株が台頭し,徐々に増加し,入れ替わっていく.
2021年3~4月にかけて流行のピークを迎えるが,気温が上昇し,ワクチン接種率が向上したため,感染は収束.規制緩和が始まる.
2021年5月 インドで蔓延したデルタ株が,世界に広がり,日本においても置き換わっていく.
2021年7月~ デルタ株による流行がピークを迎える.

疫学

2021年10月時点,全世界の感染者数は2億4000万人を超え,死亡者数は約490万人,死亡率は2.0%.
日本においては,感染者数は170万人を超え,死亡者数は1万8000人を超え,死亡率は1.0%程度.

透析患者

日本の新型コロナウイルス感染症の透析患者のうち,生存と死亡率が明らかである患者を対象とした致死率は30.8%.
→一般人口と比較し,20倍と高率

年代別の透析患者の致死率は,60歳未満が10.4%,60歳代が21.5%,70歳以上45.4%
→いずれの年代でも致死率が非常に高い.

透析歴の上昇とともに有意な致死率の上昇を認め,性別や透析導入原疾患に差はなし.

合併症では,末梢動脈疾患があるとHR 1.49と有意な致死率の上昇を認めた.

なすび院長
なすび院長

積極的なワクチン接種が推奨される!!

COPD

重症化のリスク因子.

喫煙は,気道上皮・肺胞に発現しているACE2の蛋白レベルでの発現を上昇させ,さらにCOPDを発症している肺ではさらに増強しており,感染成立の一因となり得ることが指摘されている.

ウイルス特性

エンベロープを持つ一本鎖RNAウイルス.

従来,感冒を含む急性気道感染症の原因ウイルスとして4種類のコロナウイルスが報告されていたが,SARSウイルス・MERSウイルスが存在する.
→今回のウイルスは,SARS-CoVとウイルス学的に類似しているため,SARS-CoV-2と呼ばれるようになった.

SARS・MERSと同じβコロナウイルスGroup2に属する.
・全塩基解析と系統樹解析により,SARSコロナウイルスとは70~80%の相同性,コウモリのコロナウイルスとは85~88%の相同性が認められた.
→SARS-CoV-2はコウモリのウイルス由来と考えられている.コウモリとヒトとの間の中間宿主の有無は不明.

標的細胞への侵入

感染経路としては,主に気道粘膜を介した飛沫感染or接触感染が想定されており,その体内への侵入には細胞外膜上のAngio-tensin Converting Enzyme 2(ACE2)がウイルス表面のスパイク蛋白を活性化することにより細胞に取り込まれる.

・ACE2はⅡ型肺胞上皮,血管内皮,口腔粘膜,肝臓,腎臓,腸,心臓などの細胞に存在している.
・transmembrane protease serin 2(TMPRSS2)の酵素活性にてスパイク蛋白が活性化することで細胞内へ侵入する.

SARS-CoV-2の直接的な細胞浸潤により,ウイルス増殖,侵入した細胞のアポトーシスをきたし,RAS活性が惹起されることが想定されている.

自然免疫系の応答

通常のコロナウイルスに対しては,①Ⅰ型インターフェロン産生を誘導する経路,②NLRP3インフラマソームを活性化する経路にて自然免疫系が応答するが,SARS-CoV-2は,感染した細胞のⅠ型IFN応答を抑制してしまう.
→ウイルス増殖が抑制されず活性化されるため,多くの感染細胞が感染する.
→NLRP3インフラマソームの活性化は抑制されず持続するため,炎症性サイトカインが産生され,免疫系細胞の流入が感染巣に持続するため,強い炎症が起こり,重症化してしまう.

初期のウイルス負荷が低い場合は,IFNは早期に誘導され,効果的に感染を除去する.
→軽症ですむ.

初期のウイルス負荷が大きい場合は,ウイルスの回避機構でIFN反応が強く抑制され,ウイルス増殖が活発になってしまう.
→大量の炎症性サイトカインが発生し,免疫が暴走し,肺炎が重症化.

種類

変異株  Variant

変異により形質の変化に至ったウイルス.

懸念されるべき変異株 Variants of Concern;VOC
主に感染性や重篤度が増す,ワクチン効果を弱めるなどの性質が変化した可能性がある変異株.

注目すべき変異株 Variants of Interest;VOI
VOCに見られる特徴的な変異を有するなど,影響を与える可能性が示唆される(が性質の変化については十分証拠がない)変異株

最初に注目されたのが,宿主細胞のレセプターと結合するスパイクタンパク質のD614G変異で,現在はすべてのSARS-CoV-2が有する.
・増殖性が高いが,症状の重篤性や抗原性にはあまり影響がないとされた.
→ここまでは従来株.

アルファ型(英国型) VOC

VOC-202012/01,B.1.1.7

2020年9月に発見
主な変異:N501Y(受容体との結合部位となるスパイクタンパク)
感染性:非常に感染性が強い
病原性:致死率上昇の可能性あり
免疫逃避(再感染性):なし

ベータ型(南アフリカ型) VOC

501Y.V2,B.1.351

2020年5月に発生とされる.
主な変異:N501Y(受容体との結合部位となるスパイクタンパク)/E484K(免疫逃避と関連する)
感染性:増加の可能性あり
病原性:不明
免疫逃避(再感染性):あり

ガンマ型(ブラジル型) VOC

501Y.V3,P.1

2020年11月に発見
主な変異:N501Y(受容体との結合部位となるスパイクタンパク)/E484K(免疫逃避と関連する)
感染性:増加の可能性あり
病原性:不明
免疫逃避(再感染性):あり

デルタ型(インド型) VOC

B.1.617.2

スパイクに「L452R」という変異がある.
感染力は,アルファ株の1.5倍,従来株の2倍.

ウイルスへの曝露からPCR陽性になるまでの日数が短くなっている可能性,感染初期のウイルス量が従来株の1000倍以上になっている可能性,デルタ株の増殖速度が速く,感染早期により感染性が高い可能性が指摘されている.
→アルファ株に比較し,入院リスクの上昇
→再感染のリスクも従来株に比較して高い
→ブレイクスルー感染者(規定のワクチン接種後の感染者)からの感染伝播が起こりうる

新型コロナ デルタ型変異ウイルス 感染力、重症化リスク、ワクチンの効果など 現時点で分かっていること(yahooニュース,忽那先生,2021/08/01)

ラムダ型 VOI

新型コロナ 南米で拡大しているラムダ型変異ウイルス 現時点で分かっていることは?(yahooニュース,忽那先生,2021/08/01)

ミュー型 VOI

新型コロナ 変異株「ミュー」「新たなデルタ株」について現時点で分かっていること(yahooニュース,忽那先生,2021/09/07)

オミクロン型 VOC

南アフリカから見つかった新規変異株「オミクロン株」 現時点で分かっていること(yahooニュース,忽那先生,2021/11/27)

軽症中等症病床から見たオミクロン株“第6波”(日経メディカル 2022/01/20)

約50カ所の変異があり,感染力が強くワクチンが効きにくい可能性がある.

肺より主に上気道に炎症を起こすという特徴があり,肺炎など重症化はしにくいと考えられている.

病態

感染性が高い

ヒト-ヒト感染による感染拡大.
・基本再生産数(Ro:1人の患者から何人に感染するか)は2.2(1.4~3.9)と推定されている.
 季節性インフルエンザと同等か,それよりやや高い.

飛沫感染と接触感染の2つが考えられている.

発症2日前から発症後7~10日間までの時期に感染性が認められており,特に発症の直前・直後にウイルス排出量が高い.

肺炎の合併する頻度が高い

高齢者・基礎疾患保有者における肺炎の合併は生命を脅かす重篤な状態につながる可能性がある.

肺胞レベルでは,Ⅱ型肺胞上皮を中心にウイルスの感染が起こり,強い炎症が惹起された結果肺胞内に浸出液が滲出し,肺胞内には硝子膜が形成される.
→肺胞のガス交換が妨げられ,低酸素血症が起こる.

初期のウイルス負荷が大きい場合は,大量の炎症性サイトカインが発生し,免疫が暴走し,肺炎が重症化する(発症後7日前後から).

COVID-19関連凝固異常症

剖検例の多くに静脈血栓塞栓症,多臓器に血栓がみつかり,急変することがわかってきた.

病態

①ACE2を介したrenin-angiotensin-aldosterone(RAA)系の異常
②炎症性サイトカインによる過剰免疫反応
が想定されている.

①RAA系の異常→酸化ストレスの亢進→血管内皮細胞の障害,von Willebrand因子の亢進

②炎症性サイトカインによる過剰免疫反応(サイトカインストーム)→補体の活性化・neutrophil extracellular traps(NETs)の過剰放出
・リンパ球とマクロファージが活性化し,TNF-α,IL-2,IL-6,GM-CSFが分泌され,サイトカインストームが発生する.

検査所見

・D-dimerやFDPの上昇が特徴的
・D-dimer値が正常上限値の6倍を超えるとより致死率が高くなる.

病初期はAPTT,PT,血小板数の変化は軽微.

重症の70%では,DICの特徴を有しているという報告がある.

急性腎障害 acute kidney injury;AKI

およそ1万人の入院患者におけるAKIの発症率は,全体で11%,重症者では23%,腎代替療法を要する症例は重症患者のおよそ5%程度とされる.

RRTを要したAKIを呈した生存退院者の2~3割は退院後もRRTを必要とする.

リスク因子

男性,高齢者,黒人,糖尿病,CKD,高血圧,心血管病,うっ血性心不全,肥満,人工呼吸器装着,血管作動薬使用が挙げられる.

特に人工呼吸器に表現されるCOVID-19での呼吸不全と強い関連がある.
→中等度以上のAKIは,呼吸不全症例で生じる.

RAS阻害薬はリスク因子になっていない.

病態

AKIの機序としては,高度な炎症(サイトカインストーム)による尿細管障害,血行動態の変化による虚血や人工呼吸器装着での高い呼気終末陽圧による腎うっ血,薬剤などの,非特異的なメカニズムが想定されている.

腎臓の糸球体内ポドサイトと近位尿細管上皮細胞に,SARS-CoV2の認識蛋白であるangiotensin-converting enzyme 2(ACE2)とTMPRSS2が多く発現しており,SARS-CoV-2関連腎病変のターゲットになっていると想定されている.
→糸球体内では,ポドサイト障害によって高度な蛋白尿が出現する.

腎生検での糸球体病変としては,巣状分節性糸球体硬化症と内皮細胞障害による血栓性微小血管症がみられることが多い.
・近位尿細管上皮細胞では,刷子縁の消失,空胞変性がみられ,間質には単球の浸潤がみられる.

共感染

初期の報告では,SARS-CoV-2の約3%で,他のウイルスとの共感染がみられている.

・最近では,SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの共感染は単独感染よりも重症化を招きやすいという疫学データが出ている.
・動物実験では,A型インフルエンザ感染初期にSARS-CoV-2を共感染させると有意に致死率が上昇すると報告されている.
→インフルエンザワクチン接種も重要であることが示唆される.

臨床経過

潜伏期は平均5.2日,感染源の発症から二次感染者の発症まで7.5日と報告されている.

発症後数日はウイルス増殖が,そして発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であると考えられている.

新型コロナ感染7段階モデル

症状の経過(ウイルス増殖期)

多くの80%は無症状か軽症(風邪と同等)のまま経過する.

潜伏期間(1〜12.5日,約5日)ののち一定の割合で発熱・呼吸器症状(咽頭痛・咳)などの感染症状,嗅覚・味覚異常など症状が認められるようになる.
・発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く,強いだるさ(倦怠感)を訴える人が多いことが特徴.
・発熱や呼吸困難の1~2日前に下痢や嘔吐が前兆として出ることがある.
・入院症例の初発症状は,発熱(98.6%),倦怠感(69.6%),乾性咳嗽(59.4%),食欲不振(39.9%),筋肉痛(34.8%),呼吸困難(31.2%),喀痰(26.8%),咽頭痛(17.4%).

通常の感冒,インフルエンザであれば3〜4日までが症状のピークであるが,COVID-19では3~4日では症状が良くならず,病悩期間が長い.
・ワクチン未接種の場合は,平均16日程度かけて徐々に軽快していく.

症状の経過(免疫過剰応答)

感染者の2割は肺炎が増悪し,炎症反応が過剰に起こることによって重症化する.

発症から入院までの中央値は7日,ARDSを発症するまでが8日.
→発症後,比較的ゆっくり病勢が進行し,改善もしくは急に増悪

軽症・Mildと分類される患者であっても,胸部CTでは肺に陰影があることが多い.
→この場合は,酸素投与不要.

一部の患者では,発症後1週間前後から咳や高熱が出始め,呼吸不全を伴う肺炎を起こす.
→重症となり,酸素投与が必要となるケースがある(新規陽性患者の0.5~1%前後が人工呼吸器orECMOによる治療が行われている)

無症候性低酸素血症 Silent hypooxemia
息苦しさを感じず,無自覚のまま症状が進行する.

血液検査

1)重症患者の特徴は顕著なリンパ球減少,白血球と好中球は増加
2)死亡症例では,経過中に好中球増加,リンパ球減少,D-dimer上昇,BUN・Cr上昇

SOFAスコアの高値,D-dimer≧1μg/mLの所見は,発症段階で予後不良患者を予知する一助になる.

胸部CT

両側の末梢側を中心とする多発性すりガラス状陰影が特徴的.
・ただし,一般的なウイルス性肺炎の所見であるため,本症に特異的ではない.

初期のGGOやcarzy-paving patternが,発症10日目頃にコンソリデーションとなり,2週間以降に回復傾向になった.

併存疾患との関係

血液透析

血液透析患者の新型コロナウイルス感染症の特徴 透析会誌 54(9):441~448,2021
血液透析患者のCOVID‒19は解熱,PCR検査陰性化するまで時間がかかり,予後不良.
血栓による急変に注意が必要で,白血球,D‒ダイマーが高値,リンパ球割合が低値の症例は重症化に注意が必要.

医学ノート(なすび用)
スポンサーリンク
なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
勉強好きで,私用に細々とまとめています.

妻:りんご
長女:いちご
次女:れもん
三女:みかん
事務長:かえる

なすび院長をフォローする
なすびクリニックは今日も改装中!
タイトルとURLをコピーしました