造影剤腎症 Contrast iuduced nephropathy;CIN

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なすび医学ノート

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ヨード造影剤使用後,72時間以内に血清クレアチニン値が前値より0.5mg/dL以上または25%以上増加した場合をCINを定義する.

造影剤以外の原因(コレステロール塞栓など)が除外される場合に診断.

疫学

発症率
基礎病態により異なる.
低リスク群:2-5%
高リスク群:9-16%

予後
造影剤性腎症発症例は死亡率が高い.
院内死亡率:35.7%
2年生存率:18.8% (McCullough PA et al. Am J Med 1997)
院内死亡のリスクは非発症例の5.5倍(Levy EM et al. JAMA 1996)

腎予後
一般的に腎機能低下は可逆的でS-Cr値は3~5日後にピークに達した後,7~14日後に前値に戻る.
透析が必要な場合もあるが,その場合は造影剤以外の悪化要因があることが多い.

発症機序

腎血流低下(腎髄質)

造影剤が腎臓に流入すると,数秒間の腎血流増加後に高度で長時間持続する腎血流低下が生じる.
・血管内皮細胞から放出されるendothelin,adenosine等の血管収縮因子の増加とNO/prostaglandin等の血管拡張因子の減少の関与が示唆されている.

浸透圧利尿による腎髄質の酸素分圧低下

尿細管毒性

造影剤投与直後に高度のNa利尿がみられ,尿細管上皮細胞には空胞変性が生じる.

さらに尿中への尿細管上皮細胞由来の逸脱酵素が増加することから,造影剤による尿細管上皮への直接傷害も造影剤腎症の発症機序として重要と考えられている.

尿細管閉塞

危険因子

1.既存の腎機能障害
侵襲的処置(冠動脈造影など)→eGFR<60mL/min/㎡
非侵襲的処置(造影CTなど)→eGFR<45mL/min/㎡

2.糖尿病

3.高齢者(70歳以上)

4.有効腎血流量の低下(うっ血性心不全,脱水,低Alb血症など)

5.造影剤の大量(>150mL)または反復投与

6.腎毒性薬剤の併用(消炎鎮痛剤など)

予測スコア

臨床症候

血清Crの経過

一般的には以下のような経過をとる.

1~2日後:上昇(24時間後60%,72時間後 90%以上の症例で上昇)
3~5日後:最高値に達する
7~14日後:前値に回復

尿所見

非乏尿性(乏尿の頻度=30%)

腎前性尿所見(UNa<20mEq/L,FENa<1%)

診断

欧州泌尿生殖器放射線学会(EUSR)より発表された定義 1999年

72時間以内にSCr値が前値より0.5mg/dL以上or25%以上増加した場合

KDIGOのAKI基準

1)~3)の一つを満たせば,AKI
1)48時間以内に血清クレアチニン値0.3mg/dL以上の上昇
2)7日以内に血清クレアチニン値がベースラインあるいは推定値から1.5倍以上に上昇
3)尿量<0.5mL/kg/時が6時間以上持続

ESURガイドライン 2018年

造影剤投与後,48~72時間以内にSCr値が基準値より0.3mg/dL以上の増加,もしくは1.5~1.9倍の増加

鑑別疾患

コレステロール塞栓症→好酸球増多症,低補体血症,皮疹を伴う.

造影剤使用時の注意点

事前確認

利尿薬→FurosemideはCINのriskであり,使用は推奨しない.
*予防的投与にエビデンスはない.

NSIADsやACE-Iといった薬剤を中止する.

ビグアナイド系糖尿病薬を使用している際は一時的に休薬させる.

→一過性に腎機能低下した場合に乳酸アシドーシス(予後不良)のrisk

腹膜透析患者への造影剤投与は残腎機能低下のriskとなる可能性があるが,造影剤100mL程度では残腎機能に影響を与えないという報告もある.

造影剤の種類と量

造影剤投与量はCIN発症のrisk factorの一つであり,投与量は必要最小限とする.

CIN発症のhigh risk症例では高浸透圧造影剤と比較して腎障害を惹起しにくい低浸透圧性造影剤の使用する(高浸透圧造影剤に血管内投与の適応はない).

等浸透圧造影剤と低浸透圧造影剤との間でCINの発症riskの違いについては明確な結論はでていない.
・腎機能障害例で低浸透圧性造影剤使用により発症の危険性が1/3に低下(Rudnick MR et al. Kidney Int 1995)
・Freemanの最大造影剤用量(maximum radiographic contrast dose: MRCD)
MRCD=5ml×BW(kg)[最大300ml]÷S-Cr(mg/dl)

最近では,eGFR≧30のCKD患者では,造影剤の経静脈的投与がCIN発症のリスクとなる可能性は低いという報告が近年増えてきている.

輸液療法

低張性輸液0.45%食塩水より等張性輸液である0.9%食塩水が優れる.

0.45%食塩水(1mL/kg/hr)を造影剤投与12時間前から投与12時間後まで輸液し,発症率を11%に抑制(Solomon R et al. N Engl J Med 1994).少なくとも6時間.

簡易法として,生理食塩液を検査前1時間より3 mL/kg/hrで開始し,実施後より1 mL/kg/hr として6時間継続することが勧められる.

①尿細管での造影剤濃度を低下させることで,直接の尿細管障害を抑制
②血管内血漿量が増加し,レニン・アンジオテンシン系,バゾプレシンなどが抑制され,NOやプロスタグランジン産生が抑制されないため,動脈収縮が抑制される.

他に等張性炭酸水素ナトリウム(1.26%炭酸水素ナトリウム液フソー,Clの代わりにHCO3-が152mEq/L)を造影剤検査の1時間前から3mL/kg/時で投与を開始し,検査終了後は1mL/kg/時で6時間点滴する方法がある.

(薬物療法)

N-acetylcysteine(NAC),hANP,アスコルビン酸,スタチン
⇒現時点で高いエビデンスで有効性を証明されたものはなく,すべて推奨されない.

NAC投与後に血清Crが上昇しないからといって腎保護効果が示されたとは限らない.
NACは筋肉のクレアチンキナーゼ活性を上昇させるとともに腎尿細管からのCrの分筆を増加させることが知られている.

(血液透析)

輸液療法群と血液透析併用群との間で発症率に差はない(Lehnert T et al. Nephrol Dial Transplant 1998)

血液透析で60-90%が除去されるが,リスクは減少させないことが報告されている.

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