持続インスリン皮下注入療法 continuous subcutaneous insulin infusion;CSII

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

通称インスリンポンプ

皮下にカニューレを留置して,ポンプ内のシリンジをモーターで押して注入する.

チューブ式ポンプとパッチ式ポンプに大別される.

注入量は0.025単位/hr刻みで設定できる.

基礎インスリン注入速度と追加インスリンの注入条件をあらかじめ設定しておき,操作はポンプ画面で行うので患者が注射する回数はかなり少なくなる.

メリット

1)追加インスリン(ボーラス)のボタン操作が容易

2)基礎インスリン(ベーサル)をプログラムで時間毎に設定できる

3)いつでも基礎インスリン量を増減できる(一時基礎注入設定機能)

4)追加インスリンを即時注入せず,時間を設定して持続注入することができる(スクエアボーラスなどの機能)

適応

①従来の頻回インスリン注射療法では血糖値が不安定で高血糖,低血糖もしくは無自覚性低血糖などを呈する成人1型糖尿病もしくは,インスリン分泌が著しく低下した2型糖尿病.

②厳格な血糖コントロールが必要な,妊娠を計画中もしくは1型もしくは2型糖尿病.

③小児の1型糖尿病

★必須条件
1)CSIIを理解し,充分な動機を有する例.
2)インスリンポンプの操作,血糖自己測定などが正確に行える能力を有する例,小児糖尿病例では保護者が充分教育を受け,ポンプの操作を行うか,もしくは補佐できる例.
3)CSIIの充分な経験と技能を有する医療スタッフがおり,CSIIの継続的な教育やトラブルへの対応も充分に行える医療施設に通院中の例.

【診療報酬】
・在宅自己注射指導管理料:複雑な場合 1230点
・間歇注入シリンジポンプ加算:プログラム付きシリンジポンプ 2500点
*小児慢性特定疾病の医療費助成の対象.事業の対象年齢は18歳未満の児童で,引き続き治療が必要と認められる場合は,期間が20歳未満まで引き上げられる.

【施設基準】
・糖尿病の治療に関し,専門の知識および少なくとも5年以上の経験を有する常勤の医師が2名以上配置されていること.
・持続皮下インスリン注入療法を行っている保険医療機関であること.

チューブ式ポンプ

MiniMed 620G

メドトロニック

インスリンポンプ一体型リアルタイムCGM
sensor arugumented pump;SAP

CGMのSG値に応じた低血糖・高血糖に対するアラート機能を有するが,単独では重症低血糖の抑制効果は示されていない.

MiniMed 640G

メドトロニック

インスリンポンプ一体型リアルタイムCGM
sensor arugumented pump;SAP

カニューレは3日毎,センサーは6日毎に交換.

血糖変動パターンから低血糖を事前に予測して,インスリンが自動で2時間停止するpredictive low glucose management(PLGM)機能を有する.
・SMILE研究で,低血糖は約1/4,重症低血糖は約1/6に低下
・2時間のインスリン停止では,その後の血糖が反跳上昇することが多いため注意.
・追加インスリンによって生じる低血糖を防ぐことは難しい.

(MiniMed 770G)

第1世代ハイブリッド型クローズドループインスリンポンプ

CGMに対応したPLGMに加え,高血糖に対しても基礎インスリン投与量を増やし,高血糖を是正する機能を持つ.
→夜間高血糖の抑制効果が高い.

スマートフォンと連動.

TOP-8200

トップ

パッチ式ポンプ

インスリン注入のためのチューブがないポンプ

メディセーフウィズ

テルモ

コントローラで皮膚に貼りつけた34gのインスリンポンプを遠隔操作する.
→チューブと機器との接続から解放される.
取り付け方も専用のアダプターを使用してわかりやすくできる.

操作はスマートフォン大のコントローラー.

基礎インスリンの設定,ボーラス投与量の計算機能などの基本的な機能が備わっている.

シリンジ内には200単位までしか入らない.

新規導入法

基礎インスリンの設定

目標血糖値:各食前100~120mg/dL,各食後2時間160mg/dL以内,眠前120~150mg/dL

基礎インスリン注入量の決定

持効型インスリンの基礎補償と比較して,生理的インスリン分泌パターンに近い血中インスリンレベルの再現が可能で,必要インスリン量は約80%に減量できるとされる.
・基礎インスリン注入量は年齢によっても影響を受け,思春期より20歳過ぎまでが最も必要量が多いとされる.

★MDI時の総インスリン量(Total Daily insulin Dose;TDD)より算出
・変更前のTDDの約90%が予測されるCSIIのTDD.
・MDI時の1日総インスリン投与量の30~40%前後をCSII時の1日総基礎インスリン量とする.

体重より算出
・インスリン基礎注入量は体重と正の相関があり,患者の現体重×0.01単位/時間が目安.
・決定された基礎インスリン量は0.1~0.8単位/時間の範囲のことが多い.

実際の導入

日本人の基礎インスリン量は欧米人と比較して少ない.
→成人の1型糖尿病患者の基礎インスリン量は,1日総インスリン投与量の約30%が目安.

まずは,ポンプ導入前の持効型インスリンの1日使用量を,そのまま1日の基礎インスリン注入量として24分割する.

その後,血糖変動をみながら,微調整していく.
「食事,追加インスリンの影響がない状態で,血糖値が一定になるように基礎インスリンを調整する」

切り替える際は,直近の持効型インスリンと,ポンプの基礎インスリンと重複する時間を考慮する.
・事前予定されていれば,持効型インスリンを前日から1/2に減量する.
・一時基礎レート設定機能を用いる方法もある.
グラルギン,グラルギン300→最終注射時間から24時間まで基礎注入0%,24時間以降から基礎注入100%
デグルデク→最終注射時間から24時間まで基礎注入0%,24~36時間を基礎注入50%,36時間以降から基礎注入100%

本来は,絶食状態でするのが望ましいが,外来では難しいため,SAPデータをみながら,食後4時間後から次の食事までの時間において,血糖値が上下しないようにするという観点で,調整する.

高度の暁現象を認めたら,先の注入量の20~50%の増量値をAM4時より朝食前までの注入量にする.

絶食テスト(基本的に入院で)

1)3食のうちいずれか1食を抜いて血糖値をSMBGで測定(計6回).
・21時~12時(欠食なし,夕食は17時までに),12時~18時(昼欠食,朝食は8時までに),15時~21時(昼食を11時まで,夕食は21時以降)の3区分に分ける.
→各ポイントで血糖測定を2回以上行う.
・SMBGで絶食試験開始時点,および試験途中で血糖値を測定し,70~250mg/dLの範囲を外れていれば中止.

2)CGMSで得られた血糖変動曲線を参考に概ね時間あたりの血糖変動が±10mg/dL以内であれば基礎インスリン注入量を10%増減し,時間あたりの血糖変動が±11~30mg/dLの範囲であれば基礎インスリン注入量を20%増減させるよう調整.
・食事の影響がない時間帯(すなわち本来の食事時間から4時間以上経過した時間帯)で血糖値30mg/dL以上の上昇や下降のない場合を適正な基礎インスリン量がなされていると判定する.

追加インスリン

Bolus注入のモード

速やかに注入量のすべてが追加されるノーマルボーラス
・通常時
・血糖値の補正用にも使える.

ある程度の時間をかけて注入量が追加されるスクエアボーラス
・30分~8時間まで30分刻みの時間で注入する方法.
・食前よりも食後血糖が下がって,次の食前血糖が上昇するような胃腸運動障害の疑われる症例や,脂質の多い食事を摂取する際に有効.
・注入時間が長いと入浴時間にまで延びてしまうなど,生活に支障をきたす場合があるので,最短の時間を設定する.

ノーマルとスクエアの組み合わせであるデュアルボーラス
・ピザなど炭水化物に加えて脂質を多く摂取するときに有効.
・ノーマルとスクエアの配分を使用者が決めるため煩雑.

ボーラスウィザード機能 BolusWizard

インスリン投与量の計算機能.

あらかじめ,①炭水化物に対するインスリン量(インスリン/カーボ比 carb ratios,糖質/インスリン比),②1単位の超速効型インスリンで下がる血糖値(インスリン効果値 sensitivity),③目標血糖値,④インスリン効果時間(active insulin time;AIT)を設定する.
→血糖値と炭水化物量を入力するだけで,自動的にインスリン投与量を計算してくれる.

計算しやすい数字で,実際に使用しながら調節

AITは使用インスリンの種類や種々の病態下での作用時間を示すが,経験的に決められ,超速効型インスリンでは3~4時間,腎不全では5~6時間と経験と試験により決めるのが一般的.

目標血糖値は日中は100mg/dL,夜間は120mg/dLに設定する.

手計算と違い,残存インスリン時間の計算までしてくれる.
→血糖補正に必要なインスリン量だけ自動で差し引いて計算をしてくれるため,過剰なインスリン投与を防げる.

カーボ量,血糖値,インスリン量がボーラスするたびにポンプ内に記録されるため,設定変更を検討する際に,根拠をもって調整できるようにできる.

カーボ-インスリン比 Carbohydrate to Insulin ratio;CIR

1単位のインスリンが何gの炭水化物を代謝するかの指標.

500ルール:500 ÷ TDD=「暫定C-I比」
*TDD:1日総インスリン量(total daily dose of insulin)
・超速効型インスリン1単位に対応する食物の炭水化物(グラム単位)の簡易計算式.
・通常インスリン依存状態の症例や1日総インスリン量が30単位以上の症例ではC-I比が10g/単位程度.1日総インスリン投与量が30単位未満の症例ではC-I比を15g/単位程度.
・1日の中で朝食ではC-I比は低く,昼食夕食時は高いことにも留意して設定しておく必要がある.
→朝食C-I比:300÷TDD 昼食・夕食C-I比:400÷TDD
・日本人成人では300~400ルールを用いるのが適切(CSIIのステートメントによると).

インスリン効果値(insulin sensitivity factor;ISF),インスリン補正値(correction factor;CF)

超速効型1単位で下がる血糖値.

1700 or 1800ルール:1700 or 1800 ÷ TDD =「暫定CF値」
・超速効型インスリンの1単位が下げるであろう血糖値(mg/dl)の簡易計算式.
・ADAの教科書には1800ルールが記載されているが,論文としての報告は少ない.日本人の場合は1700ルールが適合する場合が最も多い.
・多くの場合は50と設定して開始して,調整していく.
・インスリン感受性は時間帯によって異なるため,朝昼夕にそれぞれ設定することもある.
・月経周期によって変えることもある.

残存インスリン時間

注入後インスリンが消失していく時間.
→設定することで,事前に注入したインスリンの残存量を計算し,インスリンの入りすぎを防ぐ.

ノボラピッド・ヒューマログ4時間,アピドラ3時間,フィアスプ・ルムジェブ2.5時間

運動中の調整

運動はインスリン感受性を亢進させるとともに,グリコーゲンを消費するため,運動後に低血糖が起こりやすい.

過度の運動によって,夕方から翌朝,場合によっては数日にわたって夜間の低血糖のリスクが増える.

運動の程度により,軽度で10~25%,中等度で35%,高度で50%減量した基礎インスリンを30分前~直前から運動中減量する.

長時間の有酸素運動をする場合は,運動前に炭水化物を含む間食を1~3単位摂取しておく.

SAP療法 sensor arugumented pump

CGM機能を備えたインスリンポンプ.
ミニメド620G,ミニメド640G

ポンプの液晶画面に直近3時間のグルコースのグラフと,トレンドを表す上向きor下向きの矢印が表示される.
・グラフは6時間,12時間,24時間分に切り替えることもできる.

SMBGでは捉えられない血糖変動(特に夜間低血糖)を見出し,基礎インスリン注入プログラムを適正化して低血糖を予防するのに極めて有用.

リアルタイムにグルコース値がわかるので,早期に血糖低下に対処することができる.

グルコースの下限値と上限値を設定しておくと,低グルコースアラート,高グルコースアラートを発することも可能.
・下限値or上限値に達するより設定した時間だけ前に警告を発する予測アラート機能も備えている.

アラート機能は,低血糖に対する不安感を軽減する効果が期待されたが,実際には頻回のアラートをストレスと感じる人も少なくなかった.
・アラートに反応して炭水化物を摂りすぎ,HbA1cが上昇しやすい.

睡眠中にアラートに気付かないこともしばしば.

predictive low glucose management(PLGM)機能

本邦では,ミニメド640Gに使用.

持続皮下グルコースモニタリングシステムと連動し,低血糖を予測してインスリン注入を自動停止する.

時間帯毎にセンサーグルコースの下限値(T)を設定すると,グルコース値の変化から30分以内にT+20mg/dL以下に低下すると予測した時点でアラートを発し,同時にインスリン注入が停止する.

停止時間は最長120分であるが,それ以前でもT+20mg/dL and 30分後にT+40mg/dL以上に上昇すると予測すると注入が再開される.

PLGMシステムの有効性・安全性についてはすでに多くの成績が報告されている.
・夜間低血糖の改善
・HAAFを改善.

アルゴリズムを信頼し,糖質を摂らずに自然再開を待つ患者が多く,QOL向上に貢献.

なすび院長
なすび院長

夜間低血糖や無自覚性低血糖を減らし,重症低血糖のリスクを低下させる

ボーラスインスリンの過剰投与,食事摂取不足,長時間の運動による低血糖では,効果に限界がある.

インスリンポンプのセット

インスリンポンプ針

クイックセットのタイプとシルエットタイプがある.

クイックセット

皮膚に対して垂直に穿刺する

世界で広く使用されている.

刺入部長も6mmと9mmの2種類から選べる.

穿刺時に皮下でカニューレの折れ曲がりを起こしやすく,その後の高血糖やケトアシドーシスの原因になりやすいことを念頭に置く.
→回路交換後の高血糖はチューブトラブルと考え,直ちに回路交換を行うよう指導する.

シルエットタイプ

皮膚に対して水平に穿刺する.

穿刺の補助器(サーター)を使用しない場合,点滴の針のように皮膚への刺入角度を自由に調整できるため,痩せている場合・乳幼児・高齢者などの皮下脂肪の少ない症例に適している.

リスク管理

基礎注入が入らない状態が数時間続くだけで容易に,高血糖,ケトアシドーシスになる.

シックデイルール

1)基礎インスリン注入を絶対に中止しない.

2)十分な水分摂取により脱水を防ぐ.

3)食欲がなくても消化のよい食物を摂取し,絶食にしない.

4)SMBGで3~4時間毎に血糖値を測定し,200mg/dL以上で,さらに上昇傾向のときは,追加インスリン2~4単位注入する.

5)医療機関と連絡をとる.
・嘔吐や下痢が激しく,食事摂取ができない.
・高熱が続く.
・高血糖と尿中ケトン体陽性が1日以上続く.
・口渇,多飲,多尿が出現
・尿量が減少

6)早急に医療機関を受診する.
・食物摂取が2日以上不能の場合
・発熱が2日以上続き,尿ケトン体陽性,血糖値が350mg/dL以上のとき

注入針の皮下組織での折れ曲がり(最も高頻度)

多くの場合,交換時に発生する.
・サーターで穿刺する際,皮膚に緊張が少ない場合に皮下で折れ曲がりやすくなる.
→穿刺する部位の皮膚を十分緊張させ,サーターをしっかり密着させて穿刺することで予防できる.
・回路交換後は,必ず2~3時間後にSMBGによる血糖測定を行い,留置が確実に行えているかを確認する.
・就眠直前や外出前に回路交換することは避ける.

予期せぬ高血糖時は,まず回路トラブルによるインスリン中断を疑い,至急回路交換を行う.
2~4単位のインスリンをポンプでボーラス注入して1~2時間で改善ない場合も回路交換する.
すぐに交換できない場合には緊急時に用意しているペン型超速効型インスリンを追加注射する.

注入回路の閉塞

クイックセット以外の注入回路でも,留置時間が長くなる程,回路内の閉塞が発生しやすくなり,血糖が不安定になることがある.
→3日目に血糖値が不安定になる所見を認めたら,閉塞の可能性を考え1~2日でセットを交換する.

閉塞しやすさは患者によって異なる.

皮下膿瘍

長時間の留置で注入部の穿刺部位に皮下膿瘍が発生することがある.

皮下穿刺時のアルコール綿を用いた清潔操作や,穿刺部位のチェックを患者に指導する.

発生時には抗生剤入りの軟膏や抗菌剤の内服,医療機関での処置が必要.

インスリンの吸収障害

インスリン注入が頻回に同一部位に行われるため,皮下組織の変化が起き,局所のインスリン吸収に障害を生じやすい.

→腹壁,臀部,大腿部,上腕部などへ穿刺,留置し,この部位は広く大きくローテーションするように心がける.

インスリン効果が不安定の場合,回路交換2~3日で血糖値の上昇傾向がある場合には,注入回路留置部位での皮下組織の変化によるインスリン吸収障害を疑う.
→その部位への留置を数週間以上避けることで回復する.

ポンプのトラブル

ポンプのトラブル発生時には,まず速やかにあらかじめ決定しておいたMDIへの切り替えを行う.

CSII時と同量の(超)速効型インスリンを食前に注射,さらにCSII時と同量の基礎インスリン量を作用持続型インスリンで行う.次いで,SMBGによる血糖値チェックを1~2時間毎に行う.

注射部位の皮膚の色素沈着と結節

数日間のカテーテルの留置と粘着テープの刺激によって,留置部位の皮膚の色素沈着が生じることが多い.繰り返しの同部位への留置によってその程度は増強する.
→広い範囲でのローテーションが必要.

生じた色素沈着は数週間のその部位への留置回避で軽減する.

長期間CSIIを行っていると皮下結節を生じる場合がある.

皮膚組織は一般のインスリンリポハイパートロフィーのそれとは異なる.

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