個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.
腹部などの皮下に留置したセンサー(電極)により組織間質液中のグルコース濃度を連続測定できる血糖測定システム.
血糖変動を「点」ではなく,「線」で捉えて可視化することができる.
グルコース濃度測定可能範囲:40~400 mg/dL
皮膚間質液中のグルコース値は,実際の血糖値と完全に一致しないので,1日数回はSMBGも必要(一部必要がないものも出てきた).
- 活用法
- 評価項目
- 注意点
- 血糖日内変動の実際
- 診療報酬
- ミニメド CGMS-Gold® △
- ミニメド640G®
- iPro2® ○
- FreeStyleリブレPro® ◎
- FreeStyle Libre®
- ガーディアンコネクト®
- Dexcom G4 PLATINUMシステム®
活用法
1)無自覚性低血糖の検出
2)基礎インスリン注射と夜間の低血糖,高血糖さらには暁現象の有無
3)食事とインスリン注射のタイミング,血糖値の関連,インスリンの種類と血糖値の関連
4)運動と血糖値変動の関連
5)仕事や身体活動と血糖値の関連
6)生活パターンの異なる日での血糖値の違い
7)感染症と血糖値の関係
8)血糖値に大きく影響しているインスリン注射手技の不確実性の発見
9)患者説明への応用
retrospective CGM
Blinded CGM
プロフェッショナルCGM
記録データを検査終了時に解析し,遡って患者指導にいかす.
医療者専用.
iPro2® メドトロニック
フリースタイルリブレPRO® アボット
personal CGM
CGM装着者が今現在の血糖値やその変動を把握し,より良い血糖コントロールを目指すことを可能とする.
患者が随時に血糖値を推定できるため,積極的な血糖管理行動につながる.
*SG値は血糖値から10~15分の時相の遅れが生じる.
→可能な限りSMBGを併用することや,SG値と同時に示される矢印で血糖変動の方向性と程度を認識したうえでの対応が必要となる.
間欠的スキャンCGM intermittently scanned CGM;is-CGM
flash glucose monitoring;FGM
・Flashとは,写真のフラッシュのことで,リーダーをセンサーにかざした瞬間の皮下グルコース値を読み取ることができる.
フリースタイルリブレ® アボット
SMBGと同様に,患者が意図してリーダーをセンサーにかざすことで,現在から8時間前まで遡り後ろ向きにSG値を認識できる.
SMBGと同様にスキャン回数が多いほど血糖改善効果が高い.
real-time CGM;RT-CGM
皮下留置センサーが連続計測したSG値がトランスミッターを介して端末機器に送られる.
2017年にインスリンポンプと連携するsensor augmented pump;SAPとして臨床導入された.
評価項目
リブレの測定データの解析に用いられているAGP(Ambulatory Glucose Profile)という手法では,測定期間中に記録した数日間にわたる血糖変動の傾向が一つのグラフになって示される.
1)24時間の平均血糖値
2)24時間の血糖変動幅
3)食後血糖の平均上昇幅
time in range;TIR
曲線
低血糖のリスク
・10~90パーセンタイル曲線が目標範囲の下限を超えて低血糖の範囲に入っている場合は,その時間帯にときどき低血糖を起こっていることを示す.
・25~75パーセンタイル曲線が目標範囲の下限を超えて低血糖の範囲に入っている場合は,その時間帯にさらに高頻度で低血糖を起こっていることを示す.
高血糖のリスク
・曲線が設定した目標範囲の上限を超えている時間帯は,高血糖を起こしやすい時間帯であることを示す.
・10~90パーセンタイル曲線,25~75パーセンタイル曲線が範囲内に収まっているかどうかを見ることで,その頻度を推測できる.
日内変動
中央値曲線を見る.
・起伏が激しい時間帯は,1日の中で血糖値の変動が大きい時間帯.
・食後の時間帯で中央値曲線が大きく上昇している場合は,食後高血糖が頻発している.
日差変動
25・75パーセンタイル曲線の帯の幅をみることで,日によってグルコース値にバラつきがある時間帯と,比較的バラつきの少ない時間帯を確認することができる.
中央値曲線
数日間にわたって同じ時間帯に測定されたグルコース値を並べたとき,ちょうど中間に来る値が「中央値」.
→1日のそれぞれの時間帯の中央値を結んだ曲線.
25パーセンタイル曲線・75パーセンタイル曲線
数日間にわたって同じ時間帯に測定されたグルコース値のうち,50%がこの範囲内に入る.
10パーセンタイル曲線・90パーセンタイル曲線
数日間にわたって同じ時間帯に測定されたグルコースのうち,80%がこの範囲に入る.
標準偏差 Standard Deviation;SD
血糖日内変動を評価する代表的な指標.
1)CGMは間質液中のグルコース濃度を5分間隔で1日288回測定して結果を記録するが,SDは288回の測定値の標準偏差であり,CGMに付属している解析ソフトウェアを使用すると自動的に算出される.
2)食後高血糖の指標,日差変動の指標とも関連することが報告されている.
平均血糖変動幅 mean amplitude of glycemic excursions;MAGE
大きな血糖変動のみを捉えた指標.
1)もともとの定義では,5分ごとに血糖値を測定し,1SDを超える血糖変動幅のみを取り出し,2日間の平均を求めていた.
現在では,上向きの血糖変動を選択したMAGE+や,下向きの血糖変動のみを選択したMAGE-,両方を平均したMAGE averageなどが用いられている.
Chenらによると,正常耐糖能のMAGEは37.8mg/dL,2型糖尿病初期患者のMAGEの77.4mg/dLと報告されている.
2)ストレスや全身状態などに伴う高血糖など純粋な糖代謝以外の影響も反映される
・MAGEと血管合併症の関係については,MAGEは酸化ストレスや冠動脈病変,プラークの不安定性と関連することが報告されている.
血糖曲線下面積 area under the curve;AUC
時間経過に伴う血糖増加量を,食後高血糖(≧180mg/dL)の程度とその時間を掛け合わせ,面積(mg×day/dL)としてあらわした指標.
・高血糖の影響を鋭敏に反映させるため,薬剤比較の際にその差を明確にすることが可能.
・CGMに付属している解析ソフトウェアを使用すると自動的に算出される.
注意点
精度・タイムラグ・校正
測定値はあくまでも間質液のブドウ糖濃度で,SMBGで測定した血糖値で校正する必要がある.
・その精度はSMBGよりも悪く,血漿血糖値と比べて10~20%の誤差がある.
・血漿血糖値の変化と比べて,CGMSの測定値には5~15分の遅れ(タイムラグ)があり,特に低血糖時には血糖値より高く,回復時には低くなりやすい.
・CGMSで測定される皮下組織間質液のブドウ糖濃度の変動は中枢神経における変動をラグなく反映するとの報告もあり,低血糖時の中枢神経保護という観点からはむしろ間質液の測定の方がよい可能性がある.
・SMBGによるCGMS装置の校正については,回数よりもタイミングが重要であり,血糖が上下に変動している時間帯(食後など)ではなく安定している時間帯(夜間・食前)での入力によりCGMSの精度が向上する.
血糖日内変動の実際
耐糖能正常者
血糖日内変動が少なく,70~140mg/dLの間を推移している.
耐糖能異常者
食直後から急峻な血糖上昇が認められ1時間以内に180mg/dLまで上昇し,正常値に服するのは2~3時間後である.
2型糖尿病患者
食直後から急峻な高血糖,昼食後は夕食前まで高血糖が持続している.
診療報酬
CGM検査として一時使用する場合(間欠的スキャン連続血糖測定 intermittently scanned continuous glucose monitoring;isCGM)
プロフェッショナルCGM(iPro2)
プロフェッショナルFGM(FreeStyleリブレPro®)
リアルタイムCGM(ガーディアンコネクト®,Dexcom® G4 PLATINUM)
D231-2 皮下連続式グルコース測定(一連につき) 700点
*6ヵ月に2回(実質3ヵ月に1回)
医療従事者が管理
メモリー最長14日間
1つのReaderにつき,複数の患者のセンサーに対応させて使用可能
CGM外来と名乗るのはこっち
対象
低血糖のリスクが高い薬剤(インスリン,SU,グリニド)を使用中の患者
施設基準
1)糖尿病の治療に関し,専門の知識および少なくとも5年以上の経験を有する常勤の医師が1名以上配置されていること.
2)持続皮下インスリン注入療法を行っている保険医療機関であること.
償還価格
158 皮下グルコース測定用電極
【iPro2】
①一般型(ソフセンサ) 6240円
②疼痛軽減・針刺し事故防止機構付加型(エンライト) 6550円
【FreeStyleリブレPro】 6390円
血糖自己測定加算として準用技術料を請求する場合(間欠的スキャン連続血糖測定 intermittently scanned continuous glucose monitoring;isCGM)
パーソナルCGM(FreeStyleリブレ®)
血糖測定電極の補助として,FGMセンサーを提供
C150 血糖自己測定器加算(間歇スキャン式持続血糖測定器によるもの)1,250点
3月に3回に限り,第1款の所定点数に加算する.
患者自身で管理
メモリーは最長8時間
1つのReaderにつき対応するセンサは1つ
対象
入院中の患者以外の患者であって,強化インスリン療法を行っているものまたは強化インスリン療法を行った後に混合型インスリン製剤を1日2回以上使用しているものに対して,血糖自己測定値に基づく指導を行うため、間歇スキャン式持続血糖測定器を使用した場合.
*1型糖尿病でも2型糖尿病でもOK.
上記以外で間歇スキャン式持続血糖測定器を使用する場合には,間歇スキャン式持続血糖測定器以外の血糖自己測定をした回数を基準に算定する.
施設基準
糖尿病の治療に関し、専門の知識及び5年以上の経験を有する常勤の医師又当該専門の医師の指導の下で糖尿病の治療を実施する医師が、間歇スキャン式持続血糖測定器を使用して血糖管理を行った場合に算定する.
自己管理ツールとして継続使用する場合(リアルタイム式持続血糖測定 real time continuous glucose monitoring ;rtCGM)
リアルタイムCGM(ガーディアンコネクト®,Dexcom® G4 PLATINUM)
SAP(ミニメド640G)
同じ患者が継続して使用
C152-2 持続血糖測定器加算
2個以下:1,320点,4個以下:2,640点,5個以上:3,300点
*毎月算定可能
対象(SAP)
インスリンポンプ患者のみ(2型糖尿病でもOK)
対象
1型糖尿病のみ(緩徐進行型を除く)
施設基準(SAP)
1)糖尿病の治療に関し,専門の知識および少なくとも5年以上の経験を有する常勤の医師が1名以上配置されていること.
2)持続皮下インスリン注入療法を行っている保険医療機関であること.
施設基準
SAPの基準に以下を追加
3)医師だけでなく,看護師または薬剤師もインスリンポンプ療法に関する2年以上の経験を有する.
4)適切な研修の受講,糖尿病学会の行うリアルタイムCGMのeラーニングを修了する.
ミニメド CGMS-Gold® △
メドトロニック
retrospective CGM
現在,販売終了.まず使われない.
1)3~4日の連続測定が可能.
2)センサーを付けたままの解析が可能であり、主に入院中に使用する.
→途中結果をみながら,インスリンの調整ができる.
3)1日4回血糖値の入力をしたり,手間がかかる.
ミニメド640G®
インスリンポンプ一体型リアルタイムCGM
sensor arugumented pump;SAP
iPro2® ○
メドトロニック
retrospective CGM
値段が高く,外来ではまずしない.入院中のみ.
CSIIと併用するSAPの場合,持続血糖測定器加算がとれる.
1)サイズが小さく,防水テープで入浴も可能.
2)5分おきに測定.5日程度の測定が可能(最長6日間).
3)血糖測定値の毎回の入力が不要.
4)データのダウンロードは1回のみで,アップロードしたら,その時点で終了.
→途中結果をみながら,インスリンや内服薬の調整ができない.
エンライトセンサ/エンライトサータ(挿入器)
・ソフセンサに比べ,長さが40%ダウンし,太さが22Gから27Gになり,出血を抑え,痛みを抑え,傷跡を最小限にした.
・6日間の長寿命.
・2~30℃の常温管理が可能となった
・ウェッティング時間が5分と短縮.
ソフセンサ / センサータ (挿入器)
・2~10℃内での温度管理が必要で,一度常温に戻してしまうと,1週間以内に使用しないといけない.
・ウェッティング時間が15分必要.
FreeStyleリブレPro® ◎
Abbott
retrospective CGM
2016年12月より保険適応
Reader本体7089円,センサー(1枚2週間分)6380円
→CGMS-Gold,iPro2に比べ廉価
医療従事者が小さな丸いセンサーを糖尿病患者の両上腕外側部(推奨)に装着することで,センサー中心部の極細の針が,組織間質液中のグルコース値を持続的に測定する.
・病院所有で,主に治療方針の検討に用いられる
・センサーは15分ごとに自動でグルコース値を記録し,最大14日分,1,340回の測定データを保存する.
・途中で血糖をみることはできない.
従来のCGMと異なり,センサーの正確性を維持するために行う指先穿刺によるキャリブレーションが不要.
・センサーは工場出荷前にキャリブレーションが済んでおり,その後の患者自身が指先穿刺を伴う日々のキャリブレーションをする必要はない.
・リブレの精度はMARD 11.4 %とされている.
・乖離の程度が症例毎に大きく異なるので,低血糖や高血糖が疑われる場合は必ずSMBGによる検証を行う.
患者はセンサーを上腕の後部に装着するのみで,操作などの必要もない.
・医療従事者は患者にキャリブレーションの方法を指導する必要がなく,毎回の洗浄・消毒を必要とする送信機や部品も使用していないため,業務量や時間を大幅に削減することができる.
保存された14日分のデータは,患者が医療機関に再来院した際,医療従事者の持つ「FreeStyleリブレPro」のリーダーを用いてセンサーをスキャンすることで,5秒ほどでダウンロードすることができる.
・グルコース値だけでなく,この変動データを実用的なトレンドやパターンにして表示するAmbulatory Glucose Profile (AGP)と呼ばれるレポートを簡単に作成できる.
・医療従事者は患者の日常におけるグルコースプロファイルを視覚的かつ容易に把握でき,より適切な治療管理や患者指導が行えるようになる.
FreeStyle Libre®
Abbott
センサーが1分おきに測定したグルコース値を記録し,患者さんがセンサーにリーダーをかざすことでいつでもデータを確認できる.
その時のグルコース値だけでなく,変化の方向や8時間分の血糖変動のグラフが表示され,患者さん自身で血糖値の動きを把握することができる.
○スキャンを行う際にイベントを記録する機能があり,データの振り返りに役立つ.
×リーダーにかざしていないときは皮下グルコース値は読み取られないので,リアルタイムのアラート機能はない.
ガーディアンコネクト®
メドトロニック
real-time CGM
iOSかAndroid(Galaxy®)のスマートフォンにデータが自動的に送信される(専用アプリをダウンロードし,Bluetooth通信).
アラート(警告)機能
・設定した血糖値の範囲を逸脱した際に作動する「高/低グルコースアラート」
・逸脱を予測して警告する「高/低グルコース予測アラート(60分前から予測可能)」
・血糖値が設定した速度以上に急速に上昇または低下した際に作動する「速度アラート(上昇/低下アラート)」
・血糖値が55mg/dL以下になると強制的に音声で警告する.
遠隔モニタリング機能
・離れた場所にいる家族などが装着している患者のCGMデータをリアルタイムに閲覧できる.
・医療者は,専用ソフトウェア(ケアリンクプロ)にてより詳細はデータをみることができる.
欠点
・モバイル機器のバッテリーの減りが大きい.
・トランスミッタ内には最大10時間分のデータが蓄積されるため,10時間以上前のデータは上書きされる.
Dexcom G4 PLATINUMシステム®
Dexcom(国内はテルモ)
real-time CGM
Dexcom社のCGMはMARD 10%以下と極めて精度が高い(アメリカではSMBGの代替品として使用できるほど).
モバイル機器でなく,専用のモニターが必要.
・スマホとは別に機器(パソコン)が必要
・遠隔モニタリング機能ができない.
・専用ソフトウェアはClarity.
アラート機能
・高/低グルコースアラート・速度アラートはあるが,予測高/低グルコースアラートはG6からしかできない.