便秘症 治療

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

便秘症 constipation
本来,体外に排出すべ糞便を十分量かつ快適に排出できない状態日本の人口の10%程度にみられ,有病率が高い...

治療の基本は,運動習慣の改善や高繊維食(1日20~25g)などの食事内容の変更.
糞便量を増加させて大腸を刺激して蠕動運動を高める.

1)水分の十分な補給も重要.
2)自然な排便リズムを回復することが理想的で,朝食後など決まった時間での排便(たとえ便意がなくても)を毎日続けて習慣化させる.
3)大腸の器質的疾患,全身性疾患が診断された場合には原疾患の治療を行う.
4)薬剤が原因と考えられる例では中止,減量,他薬剤への変更を行う.

食習慣

食習慣,生活習慣の改善を用いた治療の有効性を示すレベルの高い臨床的エビデンスはほとんどなく,観察研究や症例集積に基づくものが多い.

食物繊維を多く含む食品を積極的に食べる.

1)便量を増大させ,排便リズムを回復させる.
2)食物繊維を多く含む食品はたけのこ・緑黄色野菜・ごぼう・さつまいも・ふき・七分搗き米・大豆・ひじき・かんぴょう・切干大根などがある

有用性は前向き試験で示されている.
特に大腸通過正常型の便秘では,有効性が高いと推測される.

朝食を食べる

冷水・冷牛乳を適切に摂って,胃・大腸の反射を促す.

1)特に起床後の摂取が勧められる.水分は便を軟らかくする.
2)牛乳も小腸ラクターゼ活性の低い人には効果がある.

適度な脂質の摂取.脂質に含まれている脂肪酸が大腸を刺激する.

適度の香辛料やアルコール・酸味類・エキス分(肉・魚のうま味分)は排便を促す.

パインアップル・いちご・りんご・牛乳・ヨーグルト・プルーン・梅干など有機酸を多く含む食品を積極的に摂る.

腸管内で醗酵し,ガスを発生させやすい豆類・いも類・かぼちゃ・くりなどを摂る.

米飯の難消化性でんぷんが食物繊維と同様の働きをする.

白米より七分搗き米・胚芽米・玄米のほうが食物繊維の量も多くなり,より効果がある.

食事量の確保も大切

高齢者などは特に食事量の過小が便秘の原因になっていることがある.

薬物療法

1)一般療法や食事療法により効果が認められない例に対して行う.
2)作用の弱い薬剤を少量から用い,その効果により量を決定する.長期間の濫用を避ける.
3)弛緩性便秘に用いる薬剤とけいれん性便秘に用いる薬剤とは異なる.

整腸剤

腸内環境を整える.
→腸内で善玉菌を増やし,有害な悪玉菌の増殖を抑え,整腸作用を示す.

ビフィズス菌

ビオフェルミン® 錠
ビオスリー®
1日3~6錠 分3

宮入菌

ミヤBM 細粒0.5g/1g(主成分として10mg/20mg) 1錠(主成分として20mg)
1日30~60mg 分3

耐性乳酸菌

ビオフェルミンR® 散 錠
1日3g or 3錠 分3

抗生物質,化学療法(ペニシリン系・セファロスポリン系・アミノグリコシド系・マクロライド系・テトラサイクリン系・ナリジクス酸)投与時の腸内細菌の異常による諸症状の改善

膨張性下剤

バルコーゼ®

腸管内で水分を吸収して膨らみ,便を軟化.また便容積を膨大させることで腸管壁を刺激,蠕動運動を高める.
→薬剤が体内吸収されないため,副作用が少なく,食物繊維の摂取が少ない大腸通過正常型の便秘患者には有効性が高い.

水分を保持する非消化性の繊維を内服するため,内服薬剤量が多く,服薬コンプライアンスが低下しやすい.

便のボリュームが増えるため,腹部膨満感が出現しやすい.

一般的な便秘患者に対する有効性は限定的であることが多い.

浸透圧性下剤

腸管内の液体の浸透圧を高めて,腸管からの水分の吸収を抑制し,腸管内容の量を増やして蠕動運動を活性化すると共に便を軟らかくすることを目的に用いる.

塩類下剤

胃酸で塩化マグネシウムとなり,更に腸内で難吸収性の重炭酸塩又は炭酸塩となって,浸透圧を維持するために,水分が腸管内に移動し,便を軟化増大させて蠕動運動を高める.

酸化マグネシウム(マグミット®)
1日2g 分3 or 分1(就寝前)
硫酸マグネシウム,クエン酸マグネシウム(マグコロール®)

マグネシウム製剤は,小規模なランダム比較試験で便回数と硬便を改善することが示されている.

薬剤の容量が少なく,投薬量の調整もしやすいため,服薬コンプライアンスが良好,安価であるため,長く第一選択薬として用いられてきた.

高齢者の入院患者を対象とした本邦のコホート研究では,腎機能障害を有する患者への定期的な投与によって血清Mg値が上昇することが報告されている.
腎機能障害を有する高齢者にはMg製剤は使用しない!!
→高齢者に使用する場合は,定期的な血清Mg濃度の測定が推奨

心機能障害のある患者は徐脈を起こし,症状が悪化することがあるため,慎重投与.

PPIを併用すると胃内pHが高まり酸化マグネシウムの溶解度が低下し,塩化マグネシウムが形成されず,効果が減弱することが報告されている.

キノロン系抗菌薬はマグネシウムと難溶性のキレートを形成し,薬剤の吸収が阻害されることから,一般論としてキノロン系抗菌薬の服用後2時間以上空けてから酸化マグネシウムを服用した方が影響は少ない.

漫然と長期投与されている場合は他剤への変更を検討
→段階的に減量し,PEG or ラクツロース or クロライドチャネルアクチベーターを上乗せする

糖類下剤

D-ソルビトール
ラクツロース

ガラクトースと果糖で構成された二糖類で浸透圧下剤として作用するとともに,大腸内の腸内細菌で分解され,有機酸を産生し,腸管内の環境を変えて便秘を改善する.

ラクツロース
ラグノス®NF経口ゼリー 1包12g 三和
便秘症:1日24g(max72g) 分2 症状により調整

1)ラクツロースは腸内の分解で発生した有機酸も腸蠕動を促進する.
2) 乳糖の含有が少ないため,血糖に対する影響が少ない.
3)甘味も抑えてあり,飲みやすい.
4)1g中に結晶ラクツロース541,67g含有(1包で6.5g).

腸管内でのアンモニア産生を低下させるとともに,アンモニアの吸収も低下させ,高アンモニア血症を改善する.

ポリエチレングリコール製剤 polyethylene glycol;PEG

吸収されない溶質であるPEGと電解質を含む薬剤を内服することで腸管内の浸透圧を高める.

マグロゴール400(モビコール®配合内容剤) EAファーマ
1包6.8523g,約60mLの水に溶解する
2歳~7歳未満:1日1包(max4包) 分1~3(1回2包まで)
7歳以上12歳未満:1日2包(max4包) 分1~3(1回2包まで)
成人:1日2包(max6包) 分1~3(1回4包まで)
*増量するときは2日以上の間隔を空ける

水に溶解して内服するものが多く,服薬コンプライアンスの問題はあるが,量の調節がしやすく,海外では最もよく使用されている.

効果の発現はゆっくりで,数日以上内服を続けることで最大効果を示すことがわかっている.

1)マクロゴール4000を主成分.
2)腸管内の水分を増やし、便をやわらかくして排便を促す.
3)安全性が高く、刺激性下剤にみられる耐性や習慣性の心配もない.
4)小児を含め一般的な慢性便秘症に広く用いられる.

胆汁酸トランスポーター阻害薬(IBAT阻害薬)

回腸終末の胆汁酸再吸収機構を阻害することによって小腸内に高濃度に存在し,脂肪の消化吸収を助け,小腸内細菌数を低くコントロールしている胆汁酸の終末回腸での再吸収を抑制し,大腸内胆汁酸濃度を高める.
→大腸内で胆汁酸は上皮細胞や内分泌細胞の細胞膜に存在するTGR5(transmenbrane G protein-coupled receptor 5)と呼ばれる受容体に結合することで,上皮細胞からの水分の分泌を増やして便を軟らかくすると共に,内分泌細胞からのセロトニンの分泌を増やして腸管蠕動運動を亢進させる.

エロビキシバット elobixibat(グーフィス®) 錠5mg EAファーマ
1日10mg(max15mg) 分1 食前 症状により増減

1)回腸末端の上皮細胞管腔側に発現している胆汁酸トランスポーターを阻害
・小腸内に分泌された胆汁酸の腸肝循環を抑制することで,大腸に流入する胆汁酸が増加し,消化管内で直接作用し、体内への吸収はわずか.
2)安全性が高く、全身性の重い副作用は報告されていない.
3)効果を良くするには,食事の刺激により胆汁酸が放出される食前に飲むことが大事.
4)長期連用しても効果は減弱しない.

胆汁酸プールを縮小させ,コレステロールからの胆汁酸産生を促進するので,血清コレステロールを10%ほど低下させる.

上皮機能変容薬,クロライドチャネルアクチベーター

主に小腸の上皮細胞に腸管の内腔側から作用することによって,直接的or間接的に上皮細胞のクロライドチャネルが活性化され,塩素イオンが腸管内に分泌されると浸透圧の関係で,小腸からの水分分泌を促進する.
→小腸での水分分泌を増やすことで便を柔らかくし、便の移動をスムーズにして排便を促す.

即効性が高い.
効果に個人差があり,用量調節が難しい場合がある.

ルビプロストン lubiprostone

アミティーザ® カプセル12μg/24μg マイランEPD
1日48μg 分2(朝・夕) 症状により増減

プロスタグランジンの代謝物

腸管の内腔から直接クロライドチャネルClC2に作用してClC2を活性化し,腸管内へのクロライドイオンの分泌を増加させることで水分分泌を増やす.

有効性が高く,48μgの標準用量以下でも十分な効果があることが多く,12μgと24μgの軟カプセル剤が使用可能で用量調整がしやすい.

1)即効性→約60%の患者で24時間以内に自発排便が認められる.
2)自発排便回数を増加させ,硬便,いきみ,残便感,不快感,腹部膨満感といった慢性便秘症に伴う諸症状を改善する.
3)大建中湯との相性がいいよう.
4)慢性機能性便秘症だけでなく,Parkinson病,糖尿病に伴う症候性便秘や麻薬性鎮痛薬の使用に伴う薬剤性便秘に対しても有効性が高いことが報告されている.
糖尿病患者→Am J Gastroenterol 2017; 112(2): 356-364

年齢が若い人や女性では,内服1週間程度は嘔気の副作用が出現することがある.
妊婦や妊娠している可能性のある女性では禁忌!

リナクロチド linaclotide(GC-C受容体作動薬)

小腸粘膜の腸上皮細胞内にあるグアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体を刺激し,Clチャネルのcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CGTR)の活性化・開放を介してCl-分泌を招く

リンゼス® 錠0.25mg
1日0.5mg 分1 食前 症状により0.25mgに減量
便秘型過敏性腸症候群,慢性便秘症が保険適応

14アミノ酸よりなるペプチド製剤
・ペプチド内にシステインが6個含まれており,3カ所にジスルフィド結合を有している.

1)分泌されたClイオンは消化管内腔の水分子をひきつけ,下部消化管の推進運動の分泌を促進
・腸内の水分量を増やしたり,腸の運動を活発にして便通をつける.

2)消化管粘膜下の内臓知覚神経を抑制
・上皮細胞の基底膜側から間質内に放出され,知覚神経の閾値を上げる.
・大腸の痛覚過敏を抑制して,腹痛や腹部不快感を改善する.
→便秘型過敏性腸症候群にも保険適応あり

3)体内には吸収されないので.安全性が高い.
・腸管粘膜に作用し,体内にはほとんど吸収されず,薬物相互作用もない

大腸刺激性下剤

腸内細菌によって活性体に変化した後に作用するため,腸内細菌が多い大腸内で作用する.
→活性体が平滑筋や運動系の神経に作用することで,直接に大腸の蠕動運動を活性化し,大腸内容物の移動を促進し,排便を刺激する.

1)連用によって薬剤耐性が生じ,難治性便秘となる.
2)精神的依存性から下剤乱用症候群を引き起こし,さらなる耐性を招いてしまうなど悪循環に陥ってしまう.
3)長期内服時にしばしばみられる大腸メラノーシスと大腸癌の発症との関連を示唆する報告もある.

刺激性下剤は必要時の頓用,もしくは短期間の使用が推奨

長期内服例では,徐々に減量できないかトライ(通常はある程度まで減量が可能)
→マグネシウム製剤,PEG,ラクツロース,上皮機能変容薬,IBAT阻害薬などをカバーし,さらなる減量もしくは頓服への軌道修正を試みる.

アントラキノン系誘導体

小腸より吸収され,血行性or大腸のAuerbach神経叢を刺激して,蠕動運動を亢進させる

センナ・センナジツ(アローゼン®) 顆粒
1日0.5~1.0g 分1~2 症状により増減

センノシド(プルゼニド®) 錠12mg
1日12~24mg(max48mg) 分1(就寝前) 症状により増減

OTC緩下薬のおよそ7割.

ジフェノール誘導体

小腸で加水分解されずに大腸に移行し,大腸粘膜を刺激し,蠕動運動を亢進させる.

ピコスルファートナトリウム内用液(ラキソベロン®) 錠2.5mg 内用液0.75%
1日2~3錠 分1
1日10~15滴 分1

比較的腹痛などが少ない.

坐剤

成分が直腸内で溶解して直接直腸に作用し,収縮運動を刺激したり,炭酸ガスを発生させて直腸を進展させ,排便反射を誘発したりすることで排便を促す.

ビサコジル

成分が大腸を直接刺激して腸の蠕動運動を亢進させる.

テレミンソフト® 坐薬2mg/10mg EAファーマ
成人 1回10mgを1日1~2回肛門内に挿入

炭酸水素ナトリウム, 無水リン酸二水素ナトリウム

直腸内で徐々にCO2を発生し,腸運動を亢進させる.

新レシカルボン®
1~2個を出来るだけ肛門内深く挿入する.

高吸水性ポリマー

吸水作用による水分の保持機能で腸に水分が維持されるため,腸内に存在する内容物の容積が増大する.

ポリカルボフィルカルシウム(ポリフル®,コロネル®) 錠500mg/細粒83.3%
1日1.5~3.0g 分3 食後

過敏性腸症候群で使用される.

漢方

基本は,腸管における水分の調節による便の軟化,腸管粘膜の刺激による腸管運動亢進ならびに腸管の過剰収縮の抑制

2種類以上の漢方は効果が重複し,副作用の危険性が高まる.

アントラキノン誘導体を含む生薬は,連用すると大腸メラノーシスや大腸腸管壁の神経叢障害をきたす可能性がある
→長期運動は避ける.

大黄甘草湯 ダイオウカンゾウトウ

ツムラ84番

体力がある.
明確なエビデンスあり

大黄を含有しており,刺激性下剤としての性格を有する.
→連用を避ける.

潤腸湯 ジュンチョウトウ

ツムラ51番

コロコロした便に

大建中湯 ダイケンチュウトウ

腹痛をきたす場合に,大黄を含まない.

ツムラ麻子仁丸 マシジンガン

ツムラ126番

成人は1日7.5gを2~3回に分割し,前もしくは食間に水またはぬるま湯で飲む.

浣腸

含有される成分が大腸粘膜を刺激して,大腸の収縮運動や排便反射を起こさせるものや,多量の水分が便を軟化させ排便しやすくするものがある.

50%グリセリン液を成人の場合50~100ml,生理食塩液または微温湯を用いる場合も成人では100ml以上を,肛門からゆっくり注入する.

摘便

便が直腸の下部に貯留し排出できない場合(糞便塞栓)に対しては有効

ゴム手袋の第2指にキシロカインゼリーを塗り,第2指で用手的に便を排除する.

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