慢性膵炎 chronic pancreatitis

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

慢性膵炎とは,遺伝的や環境要因,その他の危険因子を有し,実質への傷害やストレスに対して持続的な病的反応を生じる個人に起きる,膵臓の病的線維化炎症症候群.

慢性膵炎は生活習慣的要素を備えた疾患.
→生活指導や食事指導などが病期の進行を遅らせ,患者の生活の質と生命予後を改善するために重要.

原因

アルコール性慢性膵炎

非アルコール性慢性膵炎(特発性,遺伝性,家族性など)

病態

代償期

繰り返す腹痛・背部痛や膵炎発作(急性増悪)の治療が中心になる.

非代償期

膵外分泌機能不全による消化吸収障害と膵内分泌機能不全による膵性糖尿病の治療が中心となる.

膵癌

慢性膵炎は膵癌の危険因子の1つとみなされている.
・慢性膵炎診断後の経過観察期間別の膵癌リスクは,0年7.96,1年6.09,2年16.16,5年7.90,9年以上3.53.

腹部エコー,CT,MRIで鑑別が困難な場合には,ERCPを用いた経十二指腸乳頭的な細胞診や超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)などによる病理学的検索も考慮する.

診断

慢性膵炎診断基準2019

慢性膵炎確診
a,b のいずれかが認められる.
a.①または②の確診所見
b.①または②の準確診所見と,③④⑤のうち2項目以上

慢性膵炎準確診
①または②の準確診所見が認められる.

早期慢性膵炎
③~⑦のいずれか 3 項目以上と早期慢性膵炎の画像所見が認められる.

注意点
1)他の膵疾患,特に膵癌,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)との鑑別が重要.
2)①,②のいずれも認めず,③~⑦のいずれかのみ3項目以上有する症例のうち,早期慢性膵炎に合致する画像所見が確認されず,他の疾患が否定されるものを慢性膵炎疑診例とする.
疑診例には EUS を含む画像診断を行うことが望ましい.
3)③〜⑦のいずれか 2 項目のみ有し早期慢性膵炎の画像所見を示す症例のうち,他の疾患が否定されるものは早期慢性膵炎疑診例として,注意深い経過観察が必要.

【慢性膵炎の診断項目】
①特徴的な画像所見
②特徴的な組織所見
③反復する上腹部痛または背部痛
④血中または尿中膵酵素値の異常
⑤膵外分泌障害
⑥1日60g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴または膵炎関連遺伝子異常
⑦急性膵炎の既往

特徴的な画像所見

US or CTによって描出される膵嚢胞,膵腫瘤ないし腫大,および不規則でない膵管拡張は膵病変の検出指標として重要だが,慢性膵炎の診断指標としては特異性が劣る.
→これらの所見を認めた場合には画像検査を中心とした各種検査にて確定診断に努める.

確診所見 以下のいずれかが認められる.

1)膵管内の結石
2)膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化
3)MRCP または ERCP 像において,主膵管の不規則な拡張と共に膵全体に不均等に分布する分枝膵管の不規則な拡張
*「不規則」とは,膵管径や膵管壁の平滑な連続性が失われていることをいう.
4)ERCP 像において,主膵管が膵石や蛋白栓などで閉塞または狭窄している場合,乳頭側の主膵管と分枝膵管の不規則な拡張

準確診所見 以下のいずれかが認められる.
1)MRCP または ERCP 像において,膵全体に不均等に分布する分枝膵管の不規則な拡張,主膵管のみの不規則な拡張,蛋白栓のいずれか
2)CT において,主膵管の不規則なびまん性の拡張と共に膵の変形や萎縮
3)US(EUS)において,膵内の結石または蛋白栓と思われる高エコー,または主膵管の不規則な拡張を伴う膵の変形や萎縮

特徴的な組織所見

確診所見:膵実質の脱落と線維化が観察される.膵線維化は主に小葉間に観察され,小葉が結節
状,いわゆる硬変様をなす.

準確診所見:膵実質が脱落し,線維化が小葉間または小葉間・小葉内に観察される.

血中または尿中膵酵素値の異常

以下のいずれかが認められる.
1)血中膵酵素が連続して複数回にわたり正常範囲を超えて上昇あるいは低下
2)尿中膵酵素が連続して複数回にわたり正常範囲を超えて上昇

血中膵酵素の測定には膵アミラーゼ,リパーゼ,トリプシン,エラスターゼ1など膵特異性の高いものを用いる.

膵外分泌障害

BT-PABA 試験(PFD 試験)で尿中 PABA 排泄率の明らかな低下を認める.
*尿中PABA排泄率の低下とは,6時間排泄率70%以下をいい,複数回確認することが望ましい.

1日60g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴 or 膵炎関連遺伝子異常

膵炎関連遺伝子異常
カチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子のp.R122H変異やp.N29I変異,膵分泌性トリプシンインヒビター(SPINK1)遺伝子の p.N34S 変異や c.194+2T>C 変異など,膵炎との関連が確立されているものを指す.
*一部の施設で研究レベルでしか行われておらず,保険収載されていない.

早期慢性膵炎の画像所見

a,bのいずれかが認められる.

a.‌以下に示すEUS所見4項目のうち,1)or 2)を含む2項目以上が認められる.
1)点状または索状高エコー(Hyperechoic foci[non―shadowing] or Strands)
2)分葉エコー(Lobularity)
3)主膵管境界高エコー(Hyperechoic MPD margin)
4)分枝膵管拡張(Dilated side branches)
b.MRCP or ERCP像で,3本以上の分枝膵管に不規則な拡張が認められる.

早期慢性膵炎のEUS所見は以下のように定義する.
1)点状高エコー:陰影を伴わない縦横3mm 以上の点状に描出される高エコー.3つ以上認めた場合に陽性とする.
2)索状エコー:3mm以上の線状に描出される高エコー.3つ以上認めた場合に陽性とする.
3)分葉エコー:大きさは5mm以上の,線状の高エコーで囲まれた分葉状に描出される所見.3つ以上認めた場合に陽性とし,各分葉エコーの連続性は問わない.
4)主膵管境界高エコー:膵管壁の高エコー所見.膵体尾部で観察される主膵管の半分以上の範囲で認めた場合に陽性とする.
5)分枝膵管拡張:主膵管と交通のある1mm以上の径を持つ拡張した分枝膵管拡張とし,3 つ以上認めた場合に陽性とする.分枝型 IPMNとの鑑別は時に困難である.

治療

外来では,断酒・禁煙を中心とした生活指導の他,食事療法・薬物療法が行われる.

急性増悪を来した場合には,急性膵炎と同様に入院治療が検討される.

膵管ドレナージ

膵炎発作の再発予防で,膵石や膵管狭窄に対する治療が行われる.

内視鏡的膵管ステント留置術

体外衝撃波膵石破砕術 extracorporeal shock wave lithotripsy;ESWL

消化酵素薬

パンクレリパーゼ製剤

リパーゼ力価が高い.

脂肪便の減少,蛋白代謝の改善,体重増加,便通の改善などの有効性が報告されている.

栄養管理

消化吸収障害による便中脂肪排泄の増加や糖尿病による尿糖の増加に伴う栄養障害を伴っていることがある.

消化酵素薬を用い,栄養状態を評価した上で,適正カロリー量を設定する.

タイトルとURLをコピーしました