慢性疼痛 chronic pain

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なすび医学ノート

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発症のメカニズムとしては,末梢性の要因(侵害受容性及び神経障害性),中枢性の要因,心理的要因ならびに社会的要因があり,末梢性・中枢性の要因については器質的な要因,心理的・社会的要因については精神的な要因の大きなファクターとなり得る.

慢性疼痛を訴えている場合,病態を正確に把握し,なぜ,どのような機序を背景に疼痛が生じているのかを捉えることは,適切な診断と治療を進めるうえで重要.

神経内科疾患

解剖学的には,大きく末梢神経障害と中枢神経障害に分けられる.

メカニズム

中枢性疼痛と中枢性感作という2 つの概念がある.

中枢性疼痛

視床出血や脳梗塞の際,反対側の顔面や上下肢に出現する異常感覚・疼痛がこれに相当する.

中枢性感作 central sensitization

明らかな器質的な異常がないにもかかわらず,全身や慢性の痛み,アロディニアがみられる場合には,中枢性感作が原因と考えられる.
・線維筋痛症,顎関節症,過敏性腸症候群といった疾患群の発症メカニズムとして考えられている.

初期に慢性疲労,睡眠障害,局所的な疼痛が発生し,それらが遷延した後に,全身へ異常感覚や疼痛が拡大する.

要因としては,上行性網様体賦活系と下行性疼痛抑制系のバランスが崩れ, グルタミンやsubstance Pの増加,γ -aminobutyric acid(GABA)やセロトニンの低下,これら化学物質の伝達の変化が生じるということが挙げられる.
→疼痛促進と抑制のバランスの悪化を来たし,慢性的に疼痛が過剰に中枢神経系に入力される.

線維筋痛症や慢性疼痛の患者における各種画像検査では,報告により詳細は異なるが,おおよそ島回,弁蓋部,帯状回ならびに前頭前野といった領域に何らかの変化を呈する.
・線維筋痛症患者に対するPET画像診断の特異度は90%を超える.
・慢性疼痛に関連するこれらの領域を総称してpain matrixと呼ぶ.

アプローチ

問診

痛みは,疼痛なのかしびれなのか,感覚過敏なのか低下なのか,局所性なのか放散するのか,どのような状況で出現しやすいのか,どの時間帯に出現するのか,その性状等を詳細に聴取する.

痛みがあるのは皮膚表面なのか筋なのか,関節が痛いのかも確認する.

器質的な疾患の場合,痛みは局所的であり,神経学的な解剖に一致することが多い.

末梢神経性疼痛→四肢の末端や単神経の走行に沿う疼痛
中枢性疼痛→全身性に広がるような疼痛

診察

脳神経系の異常,筋力低下ならびに筋萎縮が認められる場合には,その分布を観察する.

歩行の様子から,局所的な病変があるかどうか,中枢性かどうかを判別することが可能.
→診察室内の短い距離でもよいので,座位から立位の姿勢変換,その後歩行をさせる.
・典型的神経疾患のいずれにも当てはまらないような歩行を呈する場合には,心因性の可能性を考える.
・心因性の歩行であるかどうかは,どのような奇抜な姿勢の歩行を取っていたとしても転倒はしないこと,Hoover徴候陽性であること,訴えの割には下腿の筋萎縮やトーヌスの変化がないこと等で鑑別する.

深部腱反射の異常や病的反射の出現は,客観性の保たれた検査所見になる.
・深部腱反射が低下する場合には末梢神経障害
・病的反射が出現する場合には中枢神経の障害

自律神経障害の合併の有無もチェック.
・疼痛が強い場合には,自律神経のバランスが崩れ,発汗過多,動悸,排尿障害,過敏性腸症候群などが併発しやすい.
・Parkinson病やPOTS等の疾患では重要な所見となる.

触覚,温覚ならびに振動覚も大事な所見であり,痛がっている箇所を筆や爪楊枝で触れたときの感覚がわかるのかわからないのか,感覚過敏か低下か正常かを確認する.
・線維筋痛症のような中枢性疼痛を主体とする場合には,検査による感覚の所見は正常.
・振動覚は比較的客観性のある検査方法で,低下する場合には,末梢神経障害や脊髄後索の障害が考えられる.中枢性疼痛,線維筋痛症ならびに心因性では低下することはない.

検査

必要に応じて,各種血液検査,MRI(頭部及び脊椎),CT,末梢神経伝導速度,針筋電図等を行い,末梢性・中枢性の鑑別を行っていく.

電気生理検査は,客観的な末梢神経障害及び根障害の把握に有用である.

Sjögren症候群等で認められ,小径線維が主に障害されるsmall fiber neuropathyの場合には,皮膚生検を施行し,特殊染色下で電子顕微鏡による神経密度のカウントが必要になる.

鑑別

Parkinson病

最も多彩な慢性疼痛の訴えがある疾患であり,慢性疼痛は,major symptomの1つ.

多くは腰部や下肢に集中しており,性差では多くは女性.
・体幹を支持する筋量が少なく,姿勢異常を来たしやすいことも,女性に慢性疼痛が多い原因として考えられる.

約30~40%にうつ病の合併.
→腰や背部,下肢に限局した慢性疼痛を来たす場合,慢性疼痛とうつ病の合併から疼痛に対する破局的思考へ陥り,難治性の永続的な全身痛へと波及するメカニズムが考えられる.

認知症

Alzheimer病や前頭側頭型認知症.

頸肩腕症候群や筋骨格系に関与する全身痛

多くは,一側に放散する疼痛,デルマトーム,神経根の支配領域に一致する限局した痛みならびに体動による悪化等の所見を呈する.

必要に応じて,X線撮影や脊椎MRIを施行し,腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症,根神経の圧排所見等の有無等を確認する.

糖尿病性末梢神経障害

甲状腺疾患

古くはHoffmann症候群(甲状腺機能低下性ミオパチー)と呼ばれる甲状腺機能低下症の長期罹患から,筋肥大や筋痛を呈し,ハンマーで筋を軽く叩くと局所的な膨隆を呈するmounding現象が生じる.

継続的な筋痛,筋疲労,脱力感ならびにけいれんといった症状を呈する.
・線維筋痛症とも類似し,線維筋痛症患者の20~30%に甲状腺疾患の合併があるとする報告もある.

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