心アミロイドーシス cardiac amyloidosis

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なすび医学ノート

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免疫グロブリン軽鎖,トランスサイレチン(transthyletin;TTR),amyloid A蛋白などにより形成されるアミロイドは心臓に沈着するが,臨床的に問題になる心アミロイドーシスを生じるのは免疫グロブリン軽鎖・TTRがほとんど.

病型分類

TTRによるアミロイドーシスは,TTR遺伝子に変異がある遺伝性ATTRアミロイドーシス(従来の家族性アミロイドポリニューロパチー)と,変異のない野生型ATTRアミロイドーシス(従来の老人性全身性アミロイドーシス)とに分けられる.

いずれの病型も症状は類似しており,心不全と不整脈(心房細動・伝導障害・心室性不整脈)が中心.

ALアミロイドーシス

前駆蛋白:免疫グロブリン自由軽鎖
基礎疾患:形質細胞異常
心障害:+++
腎障害:+++
肝障害:++
末梢神経障害:+
自律神経障害:+
その他の障害:軟部組織,消化管
治療:化学療法,自家幹細胞移植

異常形質細胞により産生されたモノクローナルな免疫グロブリン(M蛋白)の軽鎖(L鎖)に由来.

疑うときには,免疫グロブリン,血清・尿免疫固定法(or電気泳動),血清遊離軽鎖(フリー来とチェーン)の測定を行って,M蛋白の証明.

ATTRvアミロイドーシス

v=variant

前駆蛋白:変異型TTR
基礎疾患:TTR遺伝子変異
心障害:++
腎障害:+
肝障害:ー
末梢神経障害:+++
自律神経障害:+++
その他の障害:消化管,眼
治療:肝移植,トランスサイレチン安定化薬,核酸医薬

常染色体(優性)の遺伝性全身性アミロイドーシス.

大部分が肝臓で,一部が脳脈絡叢,眼の網膜色素上皮から産生され,血中に分泌される血漿蛋白質であり,血液中では四量体を形成し,サイロキシンの運搬やレチノール結合蛋白の運搬を担っている.
TTR遺伝子変異がある場合,TTR四量体が不安定化するため,単量体へと解離し,アミロイド線維を形成する.

本邦で最も頻度が高いTTR遺伝子変異はV30M(p.V50M)変異.
・長野県や熊本県といった集積地にみられる典型像(early onset Val30Met型)は,若年発症で,末梢神経症状を中心とした多彩な臨床症状を呈する.
・非集積地においても,Val30Met型が散在することが報告されている(late onset Val30Met型).50歳以降の比較的高齢発症,家族歴の頻度が少ない,男性が多いなどの特徴がある.

末梢神経障害に加え,心症状を契機に診断される場合も稀ではない.

ATTRwtアミロイドーシス

wt=wild-type

前駆蛋白:野生型TTR
基礎疾患:加齢
心障害:+++
腎障害:+
肝障害:ー
末梢神経障害:+
その他の障害:手根管症候群
治療:トランスサイレチン安定化薬

加齢により四量体が不安定となり解離して単量体を形成し,アミロイド線維を形成する.
・機序は十分に解明されていない.

主に症状を出現するのは関節・靭帯・心臓.
→手根管症候群(特に両側),脊柱管狭窄症,心不全,不整脈

手根管症候群は,心症状に数年先行して出現する.

左室駆出率の保たれた心不全(EFpEF)に多く潜んでいる可能性が指摘されている.

大動脈弁狭窄症に多く潜んでいることも指摘されている.
・ATTRアミロイドーシス合併AS患者の特徴として,男性に多く,EFの軽度低下,low-flow low-gradient ASという病態を有する症例が多くみられる.
・治療後の予後は,ATTRアミロイドーシスを認めない例に比べ不良.

AAアミロイドーシス

前駆蛋白:SAA
基礎疾患:炎症性疾患(関節リウマチなど)
心障害:±
腎障害:+++
肝障害:+
末梢神経障害:ー
その他の障害:消化管
治療:炎症抑制

診断

心アミロイドーシスを念頭に置くべき患者

1)原因不明の心不全
2)原因不明の左室肥大
3)大動脈弁狭窄症(ATTR)
4)強い伝導障害

チェックすべき徴候・身体所見

1)手根管症候群(特に両側)
2)脊柱管狭窄症
3)末梢神経障害
4)自律神経障害
5)巨舌
6)Shoulder pad sign
7)蛋白尿などの腎障害
8)下血などの消化器症状
など

スクリーニング検査

心不全症状や不整脈に伴う症状のある患者において,下記の所見がある場合に疑う.

心電図

1)四肢低電位
2)偽梗塞パターン(冠動脈疾患がないにも関わらず,心筋梗塞で認められる異常Q波やR波増高不良を認める所見)
3)伝導障害
など

心エコー

1)全周性左室肥大
2)granular sparkling sign(不均一な心筋内の顆粒状の高輝度エコー)
3)拘束性血行動態
→左室肥大に加え,右室肥大や心房中隔を認めた場合は強く疑う.

ストレイン法で,以下を認めた場合は強く疑う.
1)左室global longitudinal strain低値
2)apical sparing(ストレインが心尖部は保たれ,心基部が低下する)

高感度トロポニンT/I

他の心疾患に比べ,持続的に高値であることが明らかなになり,スクリーニングとして有用.
*心アミロイドーシスの診断のための保険適応はなし.
→肥大心において,高感度トロポニンT≧0.03ng/mL持続して高値であることが疑うきっかけになる.

M蛋白の検出

1)血清FLC
2)血清蛋白電気泳動
3)血清免疫固定法
4)尿免疫固定法

シンチグラフィ

99mTcピロリン酸(pyrophosphate;PYP)シンチグラフィや骨シンチグラフィが,ATTR心アミロイドーシスで高率で陽性となり,診断に非常に有効.
・ALアミロイドーシスを除外した場合,骨シンチグラフィを用いたATTR心アミロイドーシスの診断陽性的中率は100%と報告されている.

Grade0~3に分けられる.

Grade0,M蛋白陰性→心アミロイドーシスは否定的

Grade1,M蛋白陰性→再評価(特に心臓MRI)

Grade0-1,M蛋白陽性→生検
Grade2-3,M蛋白陰性→生検

Grade2-3,M蛋白陽性→診断基準に則り,Propable診断が可能.ATTRの可能性が極めて高い.

心臓MRI

以下の所見が診断に有用
1)造影MRIにおける心室内膜下優位のびまん性遅延造影
2)T1 mappingにおけるnative T1値や細胞外容積分画の高値

生検

診断を確定するには,組織の生検によりアミロイド沈着を証明することが必要.
→アミロイド沈着を認めた場合,免疫染色を行い,アミロイドのタイピングを行う.

低侵襲な部位

生検は腹壁脂肪吸引,皮膚,胃十二指腸から行われることが多いが,必ずしも検出率は十分ではない.

高侵襲な部位

上記で確定診断がつかない場合は,主たる障害臓器で生検を行う.
心筋生検,神経生検,骨髄生検,腎生検
・心筋生検の陽性率は100%に近い.

生検でアミロイド沈着を認める場合

アミロイドタイピング
1)免疫組織化学染色
2)組織重量分析(LMD-LC-MS/MS)

免疫染色でアミロイドーシスの病型鑑別ができない場合は,質量解析により沈着したアミロイド蛋白の同定を行う.

ATTRアミロイドーシスと診断した場合は,遺伝子検査を追加する.
→ATTRvアミロイドーシス or ATTRwtアミロイドーシス

診断基準に則り,Difinite診断を行う.

治療

心アミロイドーシスの症状は,心不全に伴うものと不整脈によるものに大別される.

心不全

体液貯留に対する利尿薬の投与が中心となる.

ATTRアミロイドーシスに対する疾患修飾療法

肝移植
・肝臓における変異TTRの産生を抑制する目的.
・ATTRvアミロイドーシスに対して

TTR四量体安定化薬

TTRのサイロキシン結合部位に結合し,四量体を安定化させ,アミロイド線維の形成を抑制する.

タファミジス
・非常に高価

核酸医薬

TTRのほとんどが肝臓で産生されるため,遺伝子サイレンシングの手法を用いた遺伝子治療の良い標的となる.

パチシラン
・TTRメッセンジャーRNAを標的とし,遺伝子発現を抑制し,TTRの産生を阻害する干渉RNA製剤
・通常3週に1回,0.3mg/kg点滴静注する.

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