糖尿病と悪性腫瘍

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なすび医学ノート

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2型糖尿病患者ではがんリスクが高まることが注目されている.

糖尿病とがんは,その発症と予後に生活習慣の影響を大きく受け,なかでも肥満・喫煙・運動不足・アルコール多飲などの生活習慣が両者の共通要因としてまず挙げられる.

糖尿病では心血管疾患による死亡が増加するが,がん死の多い日本では,糖尿病においてもがんは死亡の主因である.

糖尿病でみられる悪性腫瘍の特徴

国内外からの報告をまとめたメタアナリシスとして,糖尿病は,大腸癌・肝臓癌・膵臓癌・乳癌・子宮内膜癌・膀胱癌のリスク上昇と関連し,前立腺癌ではリスク低下と関連することが報告されている.

本邦で実施された8コホート研究のプール解析では,糖尿病は男女共に全癌罹患のハザード比は1.2.
・結腸癌(HR比1.40)
・肝臓癌(HR比1.97)
・膵臓癌(HR比1.85)

糖尿病と癌に共通する危険因子として,①肥満や身体活動量の低下,②喫煙,③加齢などが挙げられる.

日本人における肥満と癌全体との関係は,欧米の報告ほど強くないが,日本人を対象とした研究に基づく報告では,肥満は閉経後乳癌のリスクを上昇させることが「確実」であり,大腸癌・肝臓癌に対しての影響も「ほぼ確実」とされている.

BMIと癌リスクについてのメタアナリシスでは,BMIが5増加する毎に全癌罹患の相対リスクは6%,乳癌においては12%増加.
・特に乳癌は,BMI≧35で急峻なリスクの上昇.

病態

①インスリン抵抗性と高インスリン血症
・肝臓や骨格筋でのインスリン抵抗性を代償する高インスリン血症が,直接もしくは二次的な遊離IGF-1の増加を介して,腫瘍細胞の増殖を促進する.

②高血糖による,ミトコンドリアにおけるグルコース酸化への過負荷などを介しての酸化ストレスの亢進

③2型糖尿病に多く伴う肥満による,脂肪組織の慢性炎症によるもの
・肝臓などでは,肥満や飲酒による脂肪蓄積に伴い,慢性炎症が促進する.

④肥満に伴う活性型エストロゲンの増加
・エストラジオールの合成増加と肝臓のSHBG(sex-hormone-binding globulin)低下により血中のエストロゲン活性が上昇し,乳腺上皮や子宮内膜に影響する.

initiation
発がん物質がDNAを傷害すること,あるいはDNA複製時のエラーとして核酸に異常が生じること.

promotion
initiationを受けた細胞がある条件下に置かれると,細胞は自律的に増殖を開始し,過形成性変化を起こす.

progression
initiationを受けた細胞がpromotorの影響下に増殖しているとき,次の重要な遺伝子異常が生じると,細胞は腫瘍性変化を起こす.不可逆性変化で,この段階の細胞に最終段階の悪性変化が生じて癌となる.

悪性腫瘍のスクリーニング

一般に,糖尿病の血糖コントロールが急激に増悪したとき,体重が減少したときは悪性腫瘍の合併を念頭に置いて診療をすすめる.

膵癌

糖尿病の新規発症や原因不明の急激な増悪,腹痛などの腹部症状を認める場合は,膵癌の可能性を考慮する.

膵癌高リスク群,腹部超音波検査で膵管拡張・嚢胞・胆管拡張など間接所見を認める場合,血清膵酵素高値例・腫瘍マーカー陽性例に対しては,造影CT・造影MRI・MRCP・超音波内視鏡などの画像検査を追加する.

肝癌

B型慢性肝炎,C型慢性肝炎,肝硬変のいずれかがある場合は,肝細胞癌の高リスク群として定期的なスクリーニング対象となる.

糖尿病の有無は,検査間隔を決定する際に考慮する因子の一つ.
→3~6カ月間隔での腹部超音波検査を主体とし,腫瘍マーカー(AFP,AFP-L3分画,PIVKA-Ⅱ)測定を用いたスクリーニングを軸とする.

B型肝硬変・C型肝硬変は超高危険群とされる.

胃癌

問診に加え,胃部X線検査 or 胃内視鏡検査

対象者:50歳以上
*当分の間,胃部X線検査については40歳以上に対し実施可

受診間隔:2年に1回
*当分の間,胃部X線検査については年に1回実施可

子宮頸癌

問診,視診,子宮頸部の細胞診・内診

対象者:20歳以上

受診間隔:2年に1回

肺癌

質問(問診),胸部X線写真,喀痰細胞診

対象者:40歳以上

受診間隔:年1回

乳癌

問診,乳房X線検査(マンモグラフィ)
*視診・触診は推奨しない

対象者:40歳以上

受診間隔:2年に1回

大腸癌

問診,便潜血検査

対象者:40歳以上

受診間隔:年に1回

糖尿病が悪性腫瘍の治療に与える影響と注意点

周術期管理

糖尿病患者の術後合併症の頻度は20~30%と高く,入院期間も長期化しやすい.

術後感染症や虚血性心疾患の合併が多く,一般に術後の死亡率も非糖尿病患者と比べて高い.

低栄養を合併している場合,摂取エネルギー量の確保と同時に高血糖の回避を両立する必要がある.

血糖管理

手術侵襲による交感神経の賦活化とカテコラミン分泌亢進,ストレスによるACTHや成長ホルモン,グルカゴンの分泌亢進の結果,術後は血糖値が上昇する.

周術期はインスリンを中心とした血糖管理への切り替えが原則.

周術期の急速な血糖管理,特に低血糖が神経障害・増殖網膜症を悪化させる可能性があることに注意を要する.

SGLT2阻害薬は中止(術前3日前より).
・周術期におけるストレスや絶食によりケトアシドーシスが惹起される危険性がある.

メトホルミンも中止(特に飲食物の摂取が制限される外科手術の前後)

検査への影響

FDG-PET(flurodeoxyglucose positron emission tomography)検査

悪性腫瘍は一般に糖代謝が亢進しており,FDGを強く集積するものが多い.

血糖値が高い場合や一部の糖尿病患者ではFDGの腫瘍集積が低下し,バックグラウンド集積が増加するため,検出能が低下することがある.

インスリン投与後は筋肉等のバックグラウンド集積が高くなる.

造影CT

eGFR 30~60mL/min/1.73㎡の患者では,ヨード造影剤投与後48時間はメトホルミンを再開せず,腎機能の悪化が懸念される場合にはeGFRを測定し,腎機能を評価した後に再開する.

悪性腫瘍の治療が血糖値に与える影響

高血糖の副作用のある抗腫瘍薬

インターフェロン(腎細胞癌)
インターフェロンγ-1a(イムノマックス-γ®)

免疫チェックポイント阻害薬(悪性黒色腫,非小細胞肺癌など
ニボルマブ(オプジーボ®)
ペンブロリズマブ(キイトルーダ®)

免疫抑制薬(骨髄移植時)
タクロリムス(プログラフ®)
シクロスポリン(ネオーラル®)

代謝拮抗薬(急性白血病,悪性リンパ腫)
L-アスパラキナーゼ(ロイナーゼ®)

FOLFIRINOX療法(膵臓癌,大腸癌)
オキサリプラチン(エルプラット®)
イリノテカン
5-FU
ホリナート

LH-RHアゴニスト(前立腺癌,閉経前乳癌)
リュープロレリン
ゴセレリン(ゾラデックス®)

抗アンドロゲン薬(前立腺癌)
クロルマジノン(プロスタール®)
ビカルタミド(カソデックス®)

ステロイド

抗癌薬による化学療法の際の制吐薬として,プレドニゾロンやデキサメタゾンなどのステロイド薬が用いられる場合,血糖値が急激に上昇する.

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