カルシウム・リン代謝

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なすび医学ノート

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カルシウム(Ca)代謝はリン(P)代謝と密接な関係にあり,脊椎動物では骨の石灰化のために高い血中Ca・P積を維持する必要がある.

1)腎臓は骨・副甲状腺・腸管と密接な関係をもって,生体のミネラルバランスを保持している.
2)線維芽細胞増殖因子(FGF 23;fibroblast growth factor 23),副甲状腺ホルモン(PTH;parathyroid hormone),活性型VitD[1,25(OH)2D] と3つの因子によって,リンとカルシウムの代謝は恒常性が保たれている.

Ca代謝

血清Ca基準値 9~10.5mg/dL
→遊離Caイオン 4.5~5.25mg/dL(50%) 1.1~1.3mmol/L(Ca原子量40)

体内におけるCaの99%は骨に蓄えられており,血中濃度の維持に重要な役割を果たしている.

血清中総Ca=イオン化Ca[48~55%]+アルブミン結合Ca[40~50%]+クエン酸・リン酸などと結合[数%]

1)Ca全体の約50%は,生理的な作用を示すイオン化Caとして存在し,その濃度は緻密な調節を受けている.
2)残りの約50%はアルブミンなどと結合して存在する.
・低Alb血症があると,見た目の総Caが同じでも,生理的に作用しているイオン化Caは増えており,みかけ上低Ca血症になる.
Payneの式で補正して評価を行う.
 補正Ca=血清Ca+(4-Alb)
3)血清Ca濃度は,骨におけるCaの蓄積/流出,腸管におけるCa吸収,腎臓におけるCa排泄/再吸収といった出入りのバランスの総和として調節されており,PTHや活性型ビタミンDが中心的な役割を果たしている.

P代謝

Pは細胞内に豊富に存在する主要な陰イオンであるため,細胞外液に存在するリンの由来として骨・腸管に加えて,細胞内プールを考える必要がある.

1)体内におけるPの分布は,85%が骨,15%が細胞内(Caと異なる点)がプールされ,細胞外液には0.1%のみが存在している.
・生体内では,骨格系と筋肉系組織に集中して存在し,筋肉の主成分である蛋白質はリン含有量が多い.
・細胞内液の陰イオンの中では全体の50~60%を占め最も多く,大部分がATP,AMP,2,3-DPG(2,3-diphosphoglycerate) のような有機リンの形で存在している.
・Pは細胞外液中では陰イオンとして約1%を占める.

2)血液中リンはそのほとんどが無機リン(inorganic phosphate;Pi)である。
・通常測定されている血中リンの値はリン酸塩として存在する無機リンである.
・血清Pi濃度は日内変動が大きく,食事の影響を受ける.

3)食品では,魚貝類,肉類,豆類,鶏卵などがリン含有量の高い食品で,100 g(すべてが蛋白質ではない)当たり150 ~200 mgの含有量となる.
・蛋白質 1 g当たりで換算すると15 mg程度のリンが含まれている.

生体におけるPの恒常性は,主に腎におけるP再吸収の調節を通して維持されている.
調節因子は,
1)GFR:glomerular filtration rate
2)腎の近位尿細管におけるP排泄閾値→近位尿細管細胞におけるNaPi(sodium/phosphate cotransporter)-2a,-2cの発現・活性を規定するホルモン=PTH,FGF-23,副腎皮質ステロイド,GH,IGF-1

PTH→尿細管管腔側(刷子縁側)に発現しているNaPi-2のendocytosisを促進することで速やかに細胞内局在を変え,その活性を抑制する.

FGF-23やステロイド→近位尿細管細胞におけるNaPi-2の蛋白発現を抑制

GHやIGF-1→近位尿細管細胞におけるNaPi-2の蛋白発現を亢進

副甲状腺ホルモン parathyroid hormone;PTH

1)PTHは副甲状腺で合成・分泌され,84のアミノ酸からなる分子量9540のペプチドホルモンで,PTH1受容体(PTH1R)を発現する細胞に作用する.
2)PTHの受容体は骨,腎に存在しており,主作用は骨代謝の制御と考えられ,骨芽細胞に作用して骨回転を亢進させる.
・PTHの受容体は7回膜貫通型の受容体
3)副甲状腺細胞膜上には,血清Caを感知する受容体(カルシウム受容体 calcium-sensing receptor;CaSR)が発現しており,それを介して,PTHを調節する.
・血清イオン化Ca値とPTHの分泌との間には逆S字状の関係があり,PTHの分泌と合成は血清イオン化Ca値の影響が大きく,迅速に反応する.

Ca↑ P→(相殺)
①骨吸収の促進→血清Ca・P↑
②腎遠位尿細管でのCa再吸収促進
③腎近位尿細管における1α水酸化酵素(CYP27B1)を誘導し,活性型ビタミンD産生を亢進
④PやHCO3-の腎排泄を促進する(尿細管でのP再吸収低下)
→Pは相殺され,ほぼCaのみを細胞液中に動員する

 腎近位尿細管腔側(刷子縁側)に発現する2a型,および2c型ナトリウム―リン共輸送体 NaPi(sodium/phosphate cotransporter)-2a,-2cのendocytosisを促進することで速やかに細胞内局在を変え,その活性を抑制
→P排泄促進

測定

PTHの測定アッセイは,現時点では1‒84 PTHと7‒84 PTHを検出するintact PTH assay か,ほぼ1‒84PTHだけを検出するwhole PTH assay が主流.

Intact PTH 値とwhole PTH 値の換算は,intact PTH(pg/mL)=1.7×whole PTH(pg/mL)の式を用いて概ね可能.

Intact PTH assay が世界的には主流だが,キット間測定誤差の問題は未解決.

臓器障害との関連

1)脂肪細胞のPTH1Rに作用してエネルギー消費を亢進し,栄養障害を引き起こす.
2)心筋細胞にも作用して心肥大を引き起こす.
3)骨髄のニッチェに作用し,腎性貧血を増悪させ,一方で副甲状腺摘出術はSHPT 患者の貧血を改善することが知られている.

活性型ビタミンD 1,25-ジヒドロキシビタミンD3 1α,25-(OH)2VitD;1,25(OH2)D

1)一般に2~3割程度が食事由来で,残りは日光の紫外線エネルギーにより皮膚で合成される.
2)血中ビタミンDのほとんどは肝臓のCYP27B1により25位の水酸化を受け,25-(OH)vitaminD(略して25(OH)D)となる.
 そのごく一部が腎臓の近位尿細管のCYP27B1により1α位の水酸化を受け,活性型である1,25(OH2)Dに変換される.
・25(OH)DがビタミンDの充足状態の指標になるとされる
3)25(OH)DはビタミンD結合蛋白とともに糸球体を濾過した後,近位尿細管にメガリンを介して再吸収され回収される.
・尿蛋白の多い症例やメガリンの機能障害が示唆されている糖尿病患者では,この再吸収は不十分で,尿中に失われるとされる.

生理作用

腸管からのCaおよびPの吸収促進

CKD-MBD

CKDにおいてビタミンD欠乏は高頻度に見られ,25-水酸化ビタミンDも活性型ビタミンDも共に低下する.

・日本人のコホート研究によると尿蛋白の多い症例,糖尿病症例がビタミンD欠乏のリスクが高かった.
①腎機能が低下する事により産生の場をなくす
②血清リンの上昇により1α-hydroxylaseを抑制しビタミンD活性化障害を助長する
③早期CKDにおけるFGF23上昇

線維芽細胞増殖因子23 fibroblast growth factor 23;FGF23

骨により産生され,Klotho-FGF受容体複合体に作用することにより,腎近位尿細管でのリン再吸収と,血中1,25-水酸化ビタミンD濃度の低下を介する腸管リン吸収の抑制により,血中リン濃度を低下させるホルモン.

1)近年同定された骨細胞由来のペプチドホルモン.
2)FGFの一種であるが,生理的濃度ではFGFRにはほとんど結合しない.
→FGFRがKlothoと複合体を形成すると,FGF23は高い親和性でこの複合体に結合する.

FGF23がKlotho/FGFR共受容体に結合すると,2a型および2c型ナトリウム‒リン共輸送体(NaPi-2a,-2c)の腎尿細管での発現が抑制され,リン再吸収が低下する.

1)糸球体で濾過されたリンは大部分が近位尿細管で再吸収されるが,この近位尿細管での生理的リン再吸収を担う分子がNaPi-2a,-2cである.
2)CKDが進行するとP利尿は起こらず,Pは蓄積していく.

FGF23は,活性型ビタミンD[1,25(OH2)D]産生酵素である1α‒水酸化酵素(CyP27B1)発現を低下させるとともに,2 4‒水酸化酵素(Cyp24A1)の発現を促進することにより血中1,25(OH2)D濃度を低下させ,血中リン濃度は低下する.

Klothoは副甲状腺細胞にも発現しており,FGF23はMAP kinase依存性に副甲状腺ホルモン(PTH)の産生および分泌を抑制する.

FGF-23の作用

病的意義

不顕性のP蓄積に刺激されたFGF23の上昇がCKD‒MBDの初期病態を形成する.

・FGF23はCKDにおけるリン負荷を反映すると考えられている.

FGF23が高いほど,総死亡や心血管イベント発症リスクが高いことが報告されている.

・FGF23が直接的に心肥大をもたらすことが報告され,予後の悪化との関連が考えられている.

FGF23には,intactアッセイとc-terminalアッセイがあるが,そのいずれも透析導入などの腎予後を予測する.

・日本の臨床研究では前者が,欧米の研究では主に後者のアッセイが多く使われている.

・腎機能にかかわらず鉄の投与は,c-terminal FGF23を低下させることが報告されているが,クエン酸第二鉄に関しては保存期においてintact FGF23も低下させる.

Klotho

1)Kuro‒oらは早老症を呈する突然変異マウスを発見し,その原因遺伝子Klothoを同定した.
2)Klotho欠損マウスは寿命の短縮とともに,動脈硬化,心肥大,骨粗鬆症,高リン血症,異所性石灰化などを呈しており,この表現型は透析患者の合併症と類似していた.
3)その後,常染色体優性低リン血症性くる病/骨軟化症の原因遺伝子であり,腫瘍性くる病/骨軟化症における低リン血症惹起液性因子でもある,線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)が同定された.
4)FGF23欠損マウスはKlotho欠損マウスときわめて類似した表現型を呈しており,Klotho蛋白(α-Klotho)とFGF受容体(FGFR)が複合体を形成し,FGF23の高親和性受容体として機能することが判明した.
・α‒KlothoはCKDにおける早期から発現が低下し,ついでFGF23が上昇する.

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