熱傷

医学ノート(なすび用)

高熱(加熱液体,加熱気体・加熱固体,火炎など),低温(液体,気体,固体など),化学物質,電流などが皮膚に接触し生じる外傷.

熱傷はありふれた皮膚外傷の一つ.

温度と接触時間により深達度が変わり,深達度とその範囲(受傷面積)により全身状態に影響を与える.
→不適切な初期治療・治療の遅れは,その後の治療経過に悪影響を及ぼす恐れがあるため,的確な重症度判定・初期治療の開始が必要.

熱傷診療ガイドライン(改訂第3版)pdf

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アルゴリズム

重症度判定

まず重症度の判定を行い,入院治療が必要と思われる中等度以上の熱傷と,外来治療が可能と思われる軽症に分け,治療をどこで行うか判断する.

必要に応じ専門施設への搬送が検討されるが,局所治療を含めた適切な初期治療を開始することが望まれる.

中等症,重症

Ⅱ度≧15%,Ⅲ度≧2%
気道熱傷,顔面・手足・会陰部の熱傷
軟部組織の損傷・骨折の合併
電撃傷,化学熱傷

全身管理
・輸液管理
・成人:熱傷面積≧15%,小児:熱傷面積≧10%
・特殊熱傷の確認・治療
・感染管理

軽症

Ⅱ度<15%
Ⅲ度<2%

感染管理

局所治療

広範囲熱傷の場合,四肢の循環・胸郭の動きを確認し,障害があるときは減張切開を考慮する.
治癒までに2週間を超える熱傷については手術療法を検討

診断

受傷原因の他に熱傷の深度と熱傷面積が重要.

原因

生活環境の改善により広範囲重症熱傷患者は減少しており,日常診療で遭遇するのは,湯沸かしケトル,カップラーメン,ホットプレートなどによる小範囲の熱傷が中心.

熱傷の深度

臨床症状による分類(推奨度1C)
Ⅰ度熱傷(epidermal burn):紅斑,有痛性
浅達性Ⅱ度熱傷(superficial dermal burn):紅斑,水疱(圧迫で発赤が消失),有痛性
深達性Ⅱ度熱傷(superficial dermal burn):紅斑,紫斑~白色,水疱(圧迫で発赤が消失しない),知覚鈍麻
Ⅲ度熱傷(deep burn):黒色,褐色 or 白色,水疱(-),無痛性

深度判定に,レーザードプラ血流計測法(推奨度2B),ビデオマイクロスコープ(推奨度2B)も有効(機器があまり普及していない).

熱傷面積の推定

Ⅱ度熱傷とⅢ度熱傷を合わせた面積であり,Ⅰ度熱傷(発赤のみ)は含めない!

9の法則(推奨度1D)

5の法則(推奨度1D)

Lund & Browderの法則(推奨度1D)

手掌法(推奨度1C)
・局所的な熱傷面積の推定方法
・成人の場合に患者の手掌を体表の約1%として概算する方法

熱傷深度は受傷後数日で多少の変化(Ⅰ度→Ⅱ度など)がみられることがあるため,初療時のオーバートリアージはある程度許容されるが,後日再評価が必要.

顔面の熱傷

閉所での受傷,熱い蒸気or液体の吸引などで受傷機転(推奨度1C)
身体所見として口腔内or喀痰内のすす,鼻毛の先端の焦げ,顔面の熱傷など(推奨度1C)
→気道熱傷を疑う

診断の確定には,気管支鏡検査が有用.
気管支内のススの付着,粘膜の蒼白と潰瘍化が有意な所見.

重症度の判定には,Artzの基準(推奨度1D)が用いられる.

全身管理

特に広範囲重症熱傷においては,局所処置より気道確保・静脈路の確保・尿カテーテル留置・心電図モニター装着を優先させる.

その間,熱傷局所に対しては保湿を心がける.

気道確保

気道熱傷を疑われる場合,気管支鏡検査での診断確定(推奨度1C)が望まれるが,検査施行困難であれば,予防的気管内挿管(推奨度1C)を行ってもよい.

初期輸液療法

熱傷面積が成人で体表面積の15%,小児で10%を超える症例は輸液療法の適応となる(推奨度1D).

受傷早期(受傷後2時間以内)からの輸液開始が望ましく,乳酸リンゲルなどの等張電解質輸液が用いられる(推奨度1B).

患者の重症度が高く,専門施設への搬送を行う場合であっても輸液療法は開始しておく.

輸液量の算定には,Parkland法(Baxter法)を用い(推奨度1A),輸液速度の調整は時間尿量(成人0.5mL/kg/hr,小児1mL/kg/hr)を指標とする.

血圧・脈拍数など他のバイタルサインの確認も必要.
高齢者では心エコーでの心機能の評価が必要となることもある.

電撃傷

高電圧電撃による受傷では,全身のモニタリングのため入院治療が推奨される(推奨度1C).

局所所見以外に不整脈の出現,筋組織傷害に伴うミオグロビン血症や腎障害に出現に注意する.

ミオグロビン尿を伴う場合は,時間尿量1mL/kg/hrを維持するよう輸液速度を調整する.

感染管理

画一的な抗菌薬の全身的予防投与(推奨度B)は有効度を示す十分な根拠がなく,明確な推奨はできず.

汚染創や易感染宿主と判断された場合,小児例,周術期では創培養や施設・地域の特殊性を考慮して標的とする菌を設定し抗菌薬の全身投与を検討する(推奨度2B).

受傷状況と汚染の程度により他の外傷と同様に抗破傷風療法(推奨度1D)を行う.

水治療(シャワー・洗浄・入浴)について,小範囲の熱傷患者においては薦められるが,広範囲重症熱傷患者におていは院内感染の原因となることがあるため,共用設備の管理・感染対策を行った上での水治療(推奨度2C)が望まれる.

肛門周囲の熱傷の感染予防においては排便管理チューブの使用(推奨度1B)が有効.

局所治療

特殊な初期対応

化学熱傷

初期対応としては,十分な量による水洗浄を行う(推奨度1C).
迅速な処置(受傷後10分以内が理想),十分な洗浄(15分以上)が望まれる.
*粉末状の化学物質の場合では,まずブラッシングで除去した後に水洗浄を行う(水との反応熱を最小限とする目的で)

特殊な初期対応が必要な受傷物質
①フェノール→ポリエチレングリコールを用いる.
②フッ化水素→グルコン酸カルシウムの局所外用や動注など
③セメント→衣服を除去し十分払い落としたのちに水洗浄
④生石灰→十分払い落とした後に水洗浄など

減張切開(専門医コンサルト)

四肢・体幹の全周性に近い深達度Ⅱ度orⅢ度熱傷の場合,四肢末梢循環障害の有無や呼吸状態をみて減圧のための減張切開が考慮される(推奨度1A).

四肢の全周性熱傷においては,臨床所見に加えドプラー所見の所見やパルスオキシメーターのSpO2の測定も有用.

外用処置

外用薬

急性期の熱傷創では,通常Ⅰ~Ⅲ度熱傷まで混在していることも多く,初期外用治療としては,油脂性基剤軟膏を使用する(推奨度1D).

時間の経過とともⅡ~Ⅲ度熱傷がはっきりとしてきたら,創状態に合わせて外用薬を変更する.

Ⅱ度熱傷への初期治療

(1D)油脂性基剤軟膏:酸化亜鉛,ジメチルイソプロピルアズレン,ワセリンなど

Ⅱ度熱傷

(1A)トラフェルミン
(1B)トレチノイントコフェリル,ブクラデシンナトリウム,プロスタグランジンE1
(2B)アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート(アルクロキサ),リゾチーム塩酸塩

(Ⅱ度熱傷)壊死組織を伴う慢性期潰瘍

(1A)プロメライン
(1B)カデキソマー・ヨウ素,デキストラノマー
(1D)スルファジアジン銀

広範囲Ⅲ度熱傷

(1B)スルファジアジン銀

小範囲Ⅲ度熱傷の壊死組織除去

(1A)プロメライン
(1B)カデキソマー・ヨウ素,デキストラノマー
(1D)スルファジアジン銀

ドレッシング剤

Ⅱ度熱傷に対してはドレッシング材での保存的治療も行われる.

Ⅱ度熱傷

ドレッシング材については,外用薬と比較し疼痛軽減,交感回数の減少などのメリットがあるが,感染を誘発する可能性や,Ⅱ度熱傷に保険適用がないものがあるため注意が必要.

(1A)銀含有ハイドロファイバー®
(2A)銀含有アルギン酸塩,銀含有ポリウレタンフォーム/ソフトシリコン
(2B)アルギン酸塩,ハイドロコロイド,ハイドロジェル,ポリウレタンフィルム
(2C)キチン,ポリウレタンフォーム

医学ノート(なすび用)
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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
勉強好きで,私用に細々とまとめています.

妻:りんご
長女:いちご
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事務長:かえる

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