血糖コントロール(CKD保存期,透析期)

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

低い空腹時血糖値,顕著な食後高血糖

腎臓における糖代謝

糖新生

主にカテコラミンの刺激によって近位尿細管で行われる.

空腹時における血中グルコース濃度の20~40%が腎臓に由来し,絶食時間が長くなるほどその寄与率は高くなるとされる.

糖利用(解糖系)

体内のグルコースの約10%が主に腎髄質のおいて解糖により利用される.

原尿へのグルコース濾過と再吸収

血糖値を100mg/dLに一定にした場合,24時間あたり最大180g程度のグルコースが糸球体より濾過される.
→健常人は,そのほとんどを尿細管のNa-glucose共輸送体(SGLT2 90%,SGLT1 10%)を介して再吸収する.

病態

糖新生の低下

腎実質機能低下による糖新生低下による空腹時血糖値が低下しやすい.

尿糖排泄の低下

尿量減少をきたすほどの末期腎不全状態にある症例においては尿糖排泄低下が起こるため,食後の血糖上昇が顕著になる.

インスリンクリアランスの低下

膵臓から分泌されたインスリンは,まず門脈を通過してその半分程度が肝臓で分解される.
→残りが大循環中に放出され,うち30~80%が腎臓の近位尿細管で代謝される.

腎臓で代謝されるインスリンの2/3は,糸球体での濾過後,主にendocytosisによって管腔側細胞膜より細胞に取り込まれる.
残りの1/3は管腔側細胞膜より核酸され,基底膜細胞膜からレセプターを介して細胞内に取り込まれる.

細胞内で分解を受け不活性化され,尿中へのインスリン分泌は1%にも満たない.

GFR≦15~20では,インスリン分解が有意に低下
→インスリンの血糖降下作用が遷延

インスリン分泌低下

二次性副甲状腺機能亢進症に起因するPTH高値は,膵β細胞内へのCa2+流入を増加させる.
→持続的なCa2+刺激がミトコンドリアの酸素供給やATP産生を低下させ,インスリン分泌不全を引き起こす可能性が指摘されている.

ビタミンD欠乏は膵β細胞のインスリン分泌能力を低下させる.

インスリン抵抗性の増大

高血圧性腎硬化症の非糖尿病患者におけるstudyで,グルコースクランプ法を用いて評価したところ,GFR<50で有意に糖利用率が低下し(インスリン抵抗性),インスリン感受性は透析導入前の末期腎不全で60%低下する可能性が示された.

腎機能障害が進行すると,尿毒症状態により骨格筋レベルでのインスリン抵抗性が悪化することが古くから報告されている.

インスリン抵抗性を惹起する因子には,尿毒症性物質(中分子蛋白,pseudouridineなど),腎性貧血,代謝性アシドーシス,高TNF-α血症などがある.

薬物代謝

腎排泄薬が未変化体のままで蓄積して血中濃度が上昇し,低血糖のリスクが増加する.

その他

長期罹病によるインスリン分泌低下の進行,進行した自律神経障害による消化管運動異常,無自覚性低血糖の合併,低蛋白・高カロリー食への変化など

検査

△HbA1c

腎性貧血のため,HbA1c値が実際の血糖コントロール状態よりも低く見積もられ,適切な指標となりにくい.
→さまざまな尿毒症物質やサイトカインの蓄積により赤血球寿命が短縮し,加えて,腎性貧血の治療のため,赤血球造血刺激製剤の投与を受けていることが多く,糖化されていない幼弱な赤血球が増加する.

インスリン分泌能

治療

薬剤選択の上で,①腎排泄性の程度,半減期など代謝排泄における腎障害の影響,②薬剤中間代謝産物の血糖低下作用の有無とその血中レベル,③臨床治験や試験などにおける安全性とその効果におけるデータ,④低血糖を中心とした重篤な副作用報告や頻度,などが重要.

インスリン療法

インスリンクリアランス(インスリン分解の遷延と半減期が延長)が低下することで体内にインスリンが蓄積しやすくなる.
→インスリン必要量が減り,低血糖リスクが増大する.

DPP-4阻害薬

シタグリプチン
通常量:50~100mg
中等度腎機能障害:25mg(慎重投与)
重度腎機能障害:12.5mg(慎重投与)

ビルダグリプチン
通常量:100mg 分2
中等度腎機能障害:50mg 分1(慎重投与)
重度腎機能障害:50mg 分1(慎重投与)

アログリプチン
通常量:25mg
中等度腎機能障害:12.5mg(慎重投与)
重度腎機能障害:6.25mg(慎重投与)

リナグリプチン
通常量:5mg
CKDで減量必要なし

テネリグリプチン
通常量:20~40mg
CKDで減量必要なし

アナグリプチン
通常量:200mg 分2
中等度腎機能障害:減量必要なし
重度腎機能障害:100mg 分1(慎重投与)

サキサグリプチン
通常量:5mg
中等度腎機能障害:2.5mg(慎重投与)
重度腎機能障害:2.5mg(慎重投与)

GLP-1受容体作動薬

糖尿病性腎症が進行している患者では,合併症として自律神経障害を有する割合も増えるため,消化器副作用に注意が必要.

LEADER試験で,腎障害の進行抑制作用が示されている.

エキセナチド以外は,減量の必要なし.

エキセナチド
腎で分解を受ける.
中等度腎機能障害:慎重投与
重度腎機能障害:禁忌

SGLT2阻害薬

腎不全を有する患者では血糖低下作用が期待できない.
→中等度の腎不全で使用を慎重に判断する.
→透析を含む末期腎不全で投与しない

EMPA-REG試験やCREDENCE試験で,顕性アルブミン尿を認める患者や,CKDステージG3a-bのDM患者を含んだ大規模な臨床試験が行われ,末期腎不全への移行,Crの2倍化を有意に抑制することが示された.

SU薬

血糖低下時であってもインスリン分泌刺激が持続するため,インスリンクリアランスが低下している腎不全患者では,低血糖が遷延しやすい.

重度腎機能障害では,禁忌
腎機能障害では,慎重投与

SU薬代謝は肝臓で行われるが,代謝物は主に腎から排泄される.
・グリクラジドの代謝物に活性は存在しないとされる.
・グリベンクラミド,グリメピリドでは,活性代謝物も蓄積により血糖降下作用を有することが報告されている.

グリベンクラミドとグリメピリドは,SU受容体のA site,B siteの両方に結合するが,グリクラジドは1点のみで結合するため,親和性が弱いとされる.
→やむをえず使用する場合は,グリクラジドを少量(10~20mg)で使用.

グリニド

短時間作用型であるため,SU薬に比較すると低血糖の頻度は少ないとされる.

産生されたインスリンのクリアランスが低下していることに注意が必要.

ミチグリニド・レパグリニド
透析患者を含む腎機能障害で,低用量で使用可能(慎重投与)

レパグリニド
・代謝には肝細胞におけるCYP2C8,一部CYP3A4も関与すると推察されている.
排泄経路は,約95%は糞中排泄,尿中排泄は約9%.
→これらのことより,CKD患者でも用量調整が必要なく使用可能であることが示唆されている.
・低血糖頻度は,腎機能障害程度に関連性は認めなかったと報告があるが,1日2回少量から開始するのが無難.

ナテグリニド
活性代謝物も血糖降下作用を有し,腎排泄→透析患者には禁忌

α-グルコシダーゼ阻害薬

自律神経障害による胃腸運動障害を有している場合があるため,イレウスリスクには注意が必要.

ボグリボース・アカルボース
腎機能障害でも,通常通り使用可能

ミグリトール
小腸上部より吸収され,腎排泄となっているため,慎重投与.

メトホルミン

腎以外の代謝経路がなく,未変化体のまま腎臓から排泄されるため,腎機能障害では血中濃度が上昇する.
→乳酸アシドーシス発症に注意

1日最高用量の目安
60≦eGFR<90:2,250mg
45≦eGFR<60:1,500mg
30≦eGFR<45:750mg
eGFR<30:禁忌

・糖尿病腎不全症例では,メトホルミンを服用せずとも乳酸アシドーシスが同頻度生じていることも報告されている.
・メトホルミンの腎クリアランスは20.6~36.9L/hrと高く,蓄積しやすい薬剤ではない.
・メトホルミン投与群で非投与群に比較して,有意に乳酸アシドーシスが増加したという明確な証拠はない.

(チアゾリジン)

単独で低血糖のリスクはないが,副作用として体液貯留作用があり,浮腫・心不全をきたすことがある.

重度腎機能障害では,禁忌
腎機能障害では,慎重投与

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