徐拍,徐脈 bradycardia

スポンサーリンク
救急マニュアル

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

不整脈とは「正常洞調律(成人の場合:心拍数毎分60~100 回)以外の調律」であり,心拍数が毎分60回未満のもの.

時に突然死の原因となるため,必要以上に心電図診断に時間を要することなく,迅速かつ適切な患者の状態評価と初期治療が必要となることがある.

アルゴリズム

不安定を示唆する症候

症状:意識状態の悪化,失神,持続する胸痛,呼吸困難など

徴候:血圧低下,ショックの所見(冷汗,末梢冷感,尿量減少,意識障害など)

身体診察(初期ABCD評価)

視診および触診によって速やかにA(Airway気道),B(Breathing呼吸),C(Circulation循環)の評価を行う.

視診と第一印象

患者の姿勢や表情,皮膚の色調や呼吸状態などによって「重症感」の有無を判断する.

A(Airway)

会話可能であれば気道は開通していると判断する.

B(Breathing呼吸)

呼吸数や呼吸様式によって呼吸状態を評価する.

C(Circulation循環)

橈骨動脈などの末梢動脈を触れることで脈拍数,脈の強弱,不整の有無や冷汗や湿潤の有無を確認し,循環状態を評価する.

酸素投与―静脈路確保―モニタ装着(Oxygen-IV-Monitor)

第一印象で「重症感あり」と判断した場合や,初期ABCD評価のいずれかに異常を認めた場合は,直ちに状態の安定化を図るための酸素投与と静脈路確保,更なる状態評価のための酸素飽和度や心電図モニタの装着を実施する.

酸素投与

不整脈を有し,初期ABCD評価において異常を認めた患者に対して直ちに酸素投与を開始する.
*慢性呼吸不全患者に対しては,動脈血ガス分析を行い低濃度酸素から投与する.

静脈路確保

抗不整脈薬をはじめとする各種薬剤を投与する経路を確保するため,末梢静脈より血管確保を行う.
*心不全を合併していることも多く容量負荷にならないよう十分に注意する.

各種モニタ装着

酸素飽和度や心電図モニタの装着を行う.

二次ABCD評価

的確な身体診察や血圧測定の他,酸素飽和度・心電図モニタ所見によって更なるA(Airway気道),B(Breathing呼吸),C(Circulation循環)の評価を図る.

A(Airway)

意識障害を有する傷病者では,頭部後屈あご先挙上による気道確保や経口経鼻エアウエイ挿入により気道確保を補助する.

B(Breathing:呼吸)

酸素飽和度で酸素化の状態を評価するとともに,聴診によって呼吸音の異常(湿性乾性ラ音,左右差など)の有無を確認する.

C(Circulation:循環)

視診による顔色や頸静脈怒張の有無の評価のほか,聴診による心音評価(奔馬調律,収縮期・拡張期雑音),触診によるThrill,肝脾腫,下腿浮腫の有無を評価し,心不全をはじめとする循環不全徴候の有無を判断する.

血行動態評価のために血圧測定は必須であり,ショック診断基準を満たすような血圧低下を見逃しては
ならない.

ショック診断基準
・収縮期血圧90mmHg以下
・平時収縮期血圧150mmHg以上の場合:平時より60mmHg以上の血圧下降
・平時収縮期血圧110mmHg以下の場合:平時より20mmHg以上の血圧下降

心電図モニタ


リズム(心拍数,整・不整)とQRS幅を確認する.
*モニタ画面のみで正確な心電図診断を行うことは困難なことが多いが,頻拍か徐拍か,リズムが一定か否か,QRS幅が広いか狭いか(QRS幅≧3 mmを幅が広いと判断する)等を確認する.

心電図診断に必要以上に時間をかけることで患者評価や初期治療の実施が遅れてはいけない.

酸素飽和度モニタ

呼吸および循環状態の評価に有用である.
*あくまでもおおよその目安としての評価にとどめ,血液ガス分析により正確な評価を行う必要がある.

検査

12誘導心電図

不整脈の診断において12 誘導心電図は最も診断的価値の高い.

正常洞調律であってもQT延長やST-T異常など不整脈発生の危険な所見を見落とさないようにする.

胸部X線撮影

心陰影拡大,肺水腫,胸水の有無による重症度評価と大動脈疾患や肺動脈疾患などの致死的疾患の鑑別に有用.

血液検査

心筋障害マーカー
CK
CK-MB活性
トロポニンT(トロップTⓇ)or H-FABP(ラピチェックⓇ)など

心負荷評価
BNP(脳性ヒト利尿ペプチドホルモン)

電解質
血清カリウム,マグネシウムなど

ホルモン異常の鑑別
血算,甲状腺や副腎ホルモン

初期治療

上記の評価で,患者の血行状態が保たれているか否か,すなわち“安定しているか”“不安定であるか”を評価.
→血行動態が破綻した「不安定な徐拍」と診断した場合は,循環器医の到着を待たずに直ちに治療を開始する.

第 1 度房室ブロック,運動選手や夜間睡眠中にみられる洞徐脈や第 2 度房室ブロック(ウェンケバッハ型)などの無症候性の徐脈に治療適応はない.

有症候性ではペースメーカの植込みが第1選択となる.

薬剤や高K血症など可逆性の原因があれば,原因そのものへの対処と,適宜一時的ペーシングを行う.

一時的ペーシングは経静脈リードによる右室ペーシングに加え,より緊急ならパッチ電極による経皮的ペーシングも使用される.

一時的ペーシングの開始まで,薬物治療を行うこともある.

経皮ペーシング

マニュアル式除細動器を用いて,皮膚に貼付した電極パッドから皮膚を通して心臓にペーシング刺激を与えて心臓を収縮させることで血行動態の改善を図る.
*特に状態が不安定なIII度(完全)房室ブロックや高度房室ブロックに対しては,速やかに経皮ペーシングを行う.

経皮ペーシングを長時間持続するのは困難であり,速やかに循環器医へコンサルトし経静脈ペーシングや恒久的ペースメーカ植え込みを考慮する.

手順

1)必要に応じて鎮静薬, 鎮痛薬を投与する.
2)マニュアル式除細動器の心電図モニタ電極を装着する.
3)経胸壁パッドを右前胸部と左側胸部に貼る.
4)除細動器をペーシングモードに切り換える.
5)設定:デマンドモード→心拍数60/分,強度1 mAから徐々に上昇させ,ペーシング刺激に対してQRS波が検出できた値からさらに10% 程度上げる.
6)ペーシング開始後,大腿動脈で脈拍が触れることを確認する.

注:スタンバイ・経皮ペーシング
III度(完全)房室ブロックあるいは高度房室ブロックであれば,症候の如何を問わず可及的すみやかに経静脈ペーシングの準備を考慮する.
*急変する可能性が高いため,経静脈ペーシングが準備できるまでの間に経皮ペーシングのパッドを患者の胸に貼って,状態が不安定になった場合は直ちに開始できるよう準備をしておくことが望ましい.

アトロピン

迷走神経依存性の徐脈を疑う場合に使用される.

緊急時には 0.5 mg を静注するが,反復投与も可能.

ブロックが心房-ヒス束間あるいは房室結節内(AHブロック)のとき,房室伝導の改善が期待される.
→アトロピンは洞結節の興奮頻度を増加させるため,心房レートが上昇する.

ブロックがヒス束内あるいはヒス束下のブロック(HVブロック)では,心房レートの上昇が房室伝導比の低下を招き,さらに心拍数が低下するおそれもある.

虚血性心疾患に伴う徐拍に対してアトロピンを使用する場合は,心筋の酸素需要増加により心室頻拍や心室細動などを誘発する可能性があるため,慎重かつ十分な注意を要する.

投与例
硫酸アトロピンⓇ 0.5 mg静注(3~5 分間隔で総量3 mgまで反復投与可)

アドレナリンとドパミン

アトロピンが無効で経皮ペーシングを準備する間に,またはペーシングが無効な場合に投与を考慮する.

投与例
ボスミンⓇ 2~10 μg/分持続静注
(アドレナリン 1mgを生食 100mLに入れて,HR見ながらdiv)
or
イノバンⓇ 2~10 μg/kg/分持続静注

タイトルとURLをコピーしました