出血傾向 bleeding tendency

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

出血傾向とは,外傷などの誘因がなく,皮下出血や内臓出血を来たしたり,出血に伴い,正常な止血機構が障害されている場合を示す.

症候

症状

点状出血,斑状出血などの紫斑(皮下出血),鼻出血・口腔粘膜出血,関節・筋肉内出血,過多月経,頭蓋内出血,消化管出血,術後・抜歯後の止血困難

紫斑(皮下出血)

3mm未満を点状出血,2cmまでを斑状出血,それ以上を溢血班と表現する.

紅斑と紫斑は,視診だけでは判別が難しく,透明なスライドガラスで判断する.
圧迫して色が消退する→紅斑,毛細血管拡張,色素沈着
消退しない→紫斑

ステロイド内服やCushing症候群の際には,軽微な皮膚の脆弱性に伴う出血斑を認めることがある.

点状出血
・血小板や毛細血管の異常に起因することが多い.
 血小板機能異常症,血小板減少症→四肢を中心に打撲時の皮下出血斑
 IgA血管炎→臀部・下肢を中心として左右対称に認めるやや隆起した紅~紫色の出血斑

斑状出血・溢血班
・凝固異常で多い.広範なことがある.
 後天性血友病,自己免疫性後天性凝固第ⅩⅢ因子欠乏症,劇症型抗リン脂質抗体症候群など.

粘膜出血

鼻出血,歯肉・口腔粘膜出血,消化管出血ならびに血尿があるが,点状出血と同様に,血小板や毛細血管の異常に起因することが多い.

大動脈弁狭窄症の狭窄部での高ずり応力が原因となって引き起こす後天性von Willebrand症候群では,しばしば消化管出血を引き起こす.

関節・筋肉内出血

関節内や筋肉内の深部出血を認めた場合は,主に先天性凝固因子の欠乏症を考える(特に血友病).
後天性欠乏症では,関節内出血は稀で,広範な皮下血腫や筋肉内血腫を形成することが多い.

過多月経

過多月経は,von Villebrand病,無/低フィブリノゲン血症,血小板機能異常症,免疫性血小板減少病(ITP),先天性プラスミノゲンアクチベータ・インヒビター欠乏症に特徴的.
・特にPAI-1欠乏症では重篤な出血を来たす.

後出血

一旦止血後の再出血.

線溶系の異常によるα2プラスミンインヒビター欠乏症や線溶亢進型播種性血管内凝固症候群,FⅩⅢ欠乏症で認められる.

診断

問診

既往歴

抜歯後,術後,分娩後の止血困難,過多月経の既往があるか?

新生児期の遷延する臍出血→先天性FⅩⅢ欠乏症,無フィブリノゲン血症
創傷治癒遅延→FⅩⅢ欠乏症,先天性プラスミノゲンアクチベータ・インヒビター欠乏症
習慣流産→無/低フィブリノゲン血症,FⅩⅢ欠乏症
先行感染あり→急性免疫性血小板減少性紫斑病,IgA血管炎

家族歴

家系内に出血傾向を示す家系員がいるか?

血友病
伴性潜性遺伝(劣性遺伝形式)→男性に発症

von Villebrand病
主に常染色体顕性遺伝(優性遺伝)→性差はなし

その他の凝固因子欠乏症
常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)→ホモ接合体の可能性.両親が血族婚かどうか確認.

薬剤の使用歴

抗血小板薬
非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)

血小板機能低下を来たす.

抗生剤
血小板数や機能の低下
長期使用による腸内細菌叢の死滅によるビタミンK依存性凝固因子の低下を来す場合がある.

ワーファリン・DOAC
時に脳出血や消化管出血などの重大な出血性合併症

長期ステロイド
ステロイド性紫斑病

化学療法・放射線治療
造血障害による血小板減少

合併症

VK欠乏を来すような病態(閉塞性黄疸・吸収不良症候群など)
VK依存性凝固因子の低下

肝硬変等の肝障害
血小板減少あるいは肝合成凝固因子の因子低下

尿毒症
血小板機能異常

多発性骨髄腫
血小板機能異常
後天性VWD・ALアミロイドーシス合併による各種凝固・線溶系の異常,血管の脆弱性

検査

血算

末梢血塗抹標本

血液生化学

肝機能,腎機能は必ず評価する.

プロトロンビン時間 prothrombin time;PT

凝固因子カスケードの外因系の評価

活性化部分トロンボプラスチン時間 activated partial thromboplastin time;APTT

凝固因子カスケードの内因系の評価
・リン脂質依存性

ヘパリンは,アンチトロンビンに結合し,トロンビンや第Ⅹ因子の活性を阻害する作用を高めるため,延長する.

凝固因子の低下と,PT・APTTの値は必ずしも直線的な関係にないことに注意
・PTやAPTTは単独の凝固因子低下に対する感度は鈍い.
・PTやAPTTは,凝固因子30%未満になったときに異常値になり,30~40%の単一凝固因子の欠損は軽度もしくは正常域に留まっていることが多い.
→出血傾向がある場合は,PTやAPTTが軽度でも延長していれば,凝固因子活性(特に第Ⅷ因子)やvon Willebrand因子活性を測定する.

(出血時間)

Duke法が一般的
・耳朶をランセットで穿刺し,止血するまでの時間を測定する.

検査手技による誤差が大きく,信頼性に問題あり

出血時間が手術の安全性や出血時間を予測するというエビデンスはない.
→術前検査として不適正.

フィブリノゲン濃度

フィブリノゲン・フィブリン分解産物 fibrinogen/fibrin degradation products;FDP,Dダイマー D-dimer

安定化フィブリンのプラスミンによる分解産物
→血栓が局所or全身に生じていることを占めている.

交差混合試験(クロスミキシング試験) cross mixing test

肝障害やDICに起因しないPTやAPTTの延長に遭遇した場合には,凝固因子が足りないのか,凝固因子活性を阻害する物質が存在するのかを鑑別するため,交差混合試験を行う.

正常プール血漿,被検血漿を10:0,8:2,5:5,2:8,0:10の容量比で混和し,室温あるいは37℃で一定時間反応後(一般的には2時間)APTTを測定する.
→横軸に混合比,縦軸にAPTT(秒)をとり,プロットする.

第Ⅷ因子欠乏血漿
20%以上の正常血漿の添加でAPTTは正常域近くまで短縮
→下に凸のカーブ(欠乏パターン)

第Ⅷ因子に対するインヒビターを有する血漿
正常血漿の混合比を高くしても,正常血漿中の凝固因子活性を阻害され,APTTが正常化しない.
→上に凸のカーブ(インヒビターパターン) or 直線
・第Ⅷ因子インヒビターの場合は,時間依存性の阻害反応を示すため,37℃,2時間反応後の方が阻害反応が大きい.

ループスアンチコアグラント(lupus anticoaglant;LA)陽性の血漿
・凝固因子の活性化にはリン脂質が必要であるため,APTT測定試薬にはリン脂質が含まれている.
・LAはリン脂質に対する抗体がリン脂質と凝固因子の反応を試験管内で阻害する.
→上に凸のカーブ(インヒビターパターン),即時型(混和直後と2時間反応後の成績の差が少ない)
・LAでは,出血傾向がないことも鑑別ポイント

血小板

末梢血での血小板の正常値は,15~40万/μL.

自然出血のリスクは1~2万/μL未満で生じる.
外傷時の出血傾向が生じるのは,5万/μL未満程度から.
→低侵襲の手術は5万/μL程度で可能.

血小板数は絶対値だけでなく,その推移も重要.
・軽度な低値でも急速に血小板数が低下している場合は注意.

血小板が減少している場合

まず偽血小板減少症を除外

血算の試験管に含まれる抗凝固薬EDTA(ethylenediamineteraacetic acid)が原因で試験管の中で血小板同士が凝集塊をつくる現象であり,体内の血小板減少はない.

・末梢血塗抹標本で,引き終わりに血小板凝集塊を観察することで判断できる.
・エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acie;EDTA)以外の抗凝固薬(ヘパリンあるいはクエン酸Naなど)を用いて,血小板数を再測定する.

偽性血小板減少を除外し,10万/μL未満であれば,真の血小板減少を考える.

骨髄での血小板産生障害

汎血球減少や異常細胞を認める場合
骨髄検査を含めた造血器疾患の精査

再生不良性貧血
 トロンボポエチン濃度が著明高値(保険適応外)
MDS
白血病
発作性夜間ヘモグロビン症
巨赤芽球性貧血
悪性腫瘍の骨髄浸潤

巨大血小板を認めた場合
血小板のサイズが赤血球より大きい

ITP
May-Hegglin異常症→好中球デーレ小体
Bernard-Soulier症候群→リストセチン惹起血小板凝集検査

血小板破壊・消費の亢進

ITP
赤血球や白血球の減少・形態異常を伴わず血小板単独で減少しており,網状血小板比率が増加し,TPO濃度が正常~軽度高値の場合はITPを考える.

血栓性血小板減少性紫斑病 thrombotic thrombocytopenic purpura;TTP
Coombs溶血性貧血および末梢血塗抹標本にて破砕赤血球を認め,腎障害あるいは精神・神経症状を合併している場合
→ADAMTS13活性およびインヒビターの測定をして,速やかに治療を開始する.

溶血性尿毒症症候群 hemolytic uremic syndrome;HUS
嘔吐や下痢を伴い,先行感染として腸管出血性大腸菌の感染が疑われる場合に考える.

DIC
PT・APTTが延長し,DFP・Dダイマーの増加を伴う場合は疑う.
→トロンビン・アンチトロンビン複合体,プラスミン・プラスミンインヒビター複合体,可溶性フィブリン等を測定する.

血小板分布異常

脾腫をきたすさまざまな疾患では,血小板が捕捉され,血小板減少を来たす.

進行した肝硬変を生じる血小板減少症
脾臓による捕捉ではなく,主に肝臓でのTPO産生の低下に起因する.

Wiskott-Aldrich症候群
免疫不全を伴う小型血小板を認めた場合に考える.
血小板は小さく不完全であるため,脾臓での血小板破壊が増え,血小板減少症を引き起こす.

血小板数が正常な場合

PT・APTTともに延長している場合

肝硬変など
肝での蛋白合成能低下

無/低Fig血症,異常Fig血症
フィブリノゲンが低下し,肝機能が正常な場合

VK欠乏
フィブリノゲンが正常で,PIVKA-Ⅱが高値を示す場合

凝固因子欠乏
PIVKA-Ⅱを認めず,肝臓での蛋白合成能も正常の場合.
→プロトロンビン活性,第Ⅴ因子,第Ⅹ因子活性を測定
→交差混合試験(先天性or後天性)
 後天性で最も多いのが後天性血友病

DIC
消費性に凝固因子が低下

PT正常・APTT延長の場合

血友病
出血傾向を認め,出血時間が正常の場合はまず考える.
→第Ⅷ因子と第Ⅸ因子を測定
・活性化低下を認め,家族歴があり,男性の場合は先天性血友病と診断
・家族歴も出血傾向もない場合は,後天性血友病を疑い,交差反応試験を行い,インヒビターの検査を行う.

VWD
出血時間延長を伴う場合に考える.
→VWF活性・抗原量の測定,リストセチン惹起血小板凝集検査
・試薬によってAPTTが延長しない場合があるため,スクリーニング検査の際にAPTTと同時にVWF活性も測定しておく.

抗リン脂質抗体症候群
通常は血栓傾向を示すが,ループスアンチコアグラント(lupus anticoaglant;LA)が陽性で,低プロトロンビン血症を来すLA-低プロトロンビン血症症候群では,出血傾向を示す.

PT延長・APTT正常の場合

第Ⅶ因子欠乏症を疑い,FⅦ活性を測定する.

PT・APTT共に正常の場合

FⅩⅢ欠損症
PT・APTT共に正常を示す唯一の凝固因子欠損症.
FⅩⅢ活性の低下を認めた場合は,既往歴・家族歴の確認および交差混合試験より,先天性欠損症と後天性欠損症とを鑑別.

血小板機能異常症
出血時間が延長している場合は,血小板凝集能検査を行う.
大部分は,抗血小板薬やNSAIDsによる.
先天性疾患である血小板無力症は,血小板膜糖タンパクⅡb/Ⅲaの先天的欠損(あるいは機能障害)であるが,リストセチン凝集能を除くADP・コラーゲン・エピネフリン等で惹起される血小板凝集能が全て欠如する.
GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体の欠如(あるいは機能障害)であるBernard-Soulier症候群では,リストセチンによる血小板凝集のみ欠如し,巨大血小板と血小板減少も認める.

血管性紫斑病
検査すべてに異常がない場合.
血管壁の障害により生じる.
Rumpel-Leede試験が陽性になるが,精度が低く,臨床的な有用性は低い.
最も多いのが単純性紫斑あるいは老人性紫斑.
毛細血管拡張を伴っている場合は遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler病)
特徴的な点状出血斑を認める場合はIgA血管炎など

観血的処置・手術時に推奨される血小板数

予防的歯科的処置(歯石除去など)→2~3万/μL以上
簡単な抜歯→3万/μL以上
複雑な抜歯→5万/μL以上
局所歯科麻酔→3万/μL以上

中心静脈カテーテル挿入→2万/μL以上
腰椎穿刺→5万/μL以上
硬膜外麻酔→8万/μL以上

小手術→5万/μL以上
大手術→8万/μL以上
中枢神経手術→10万/μL以上
脾摘→5万/μL以上
分娩→5万/μL以上

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