個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
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他の生物に咬まれたりさされたりして発症する.
創感染+疼痛,毒,アナフィラキシー,病原体が問題になる.
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ハチ
創感染+疼痛,毒,アナフィラキシー,病原体の5つすべてが問題となりうる.
ハチ毒自体は,基本的に1回刺されただけの毒素(数10μg程度)で命に関わることはない.
↓
アナフィラキシーが問題
疫学
アナフィラキシーは,子供の0.4~0.8%,大人の3%で起こる.
病態
体内に入った毒素は肥満細胞上のIgEと結合し,肥満細胞からメディエーターが放出される.
放出されたヒスタミン,ロイコトリエン,プロスタグランジン,血小板活性化因子などがアレルギーを起こす.
・アナフィラキシーは1回刺されただけでも生じうる.
・以前ハチによるアナフィラキシーが起こったことがある人は,もう一度刺されたときにアナフィラキシーになりやすい(30~60%).
・刺された直後の数十分以内に一番起こりやすいが,遅延型アナフィラキシーや二相性アナフィラキシーが起こることがあるのは,他のと同様.
局所過剰反応 large local reaction;LLR
感染を起こすことは少ないが,刺されてから24~48時間後に皮膚が広範囲(10cm程度)に腫れあがることがある.
IgE介在型の遅延型アレルギー.
上行型リンパ管炎を伴うこともある.
3~5日後をピークとした腫れのときは稀だが,感染を考える.
→LLRであれば,通常は改善している時期.
LLRだけでは,全身症状は起こさない.
治療
局所処置として患肢の挙上,冷却,適度な洗浄(汚染時).
・指輪は外す(腫れて,抜けなくなる).
刺されたところに毒針が残っていたら,すぐに取り除く.
・毒針の先には毒嚢がついており,刺さっていたらすぐに注入されてしまう.
・ハチの中でも針が残るのはミツバチだけ(多数の返しがついている).
→針を抜く際は,返しを残さないよう皮膚を薄く削るなどして慎重に抜く.
・ミツバチは刺したあとはそのまま死ぬ.
・スズメバチの針には返しがなく,何度でも刺せる.
LLRについては,冷却と患肢挙上を行うとよく,通常は7日間程度かけて改善していく.
・抗ヒスタミン薬や経口ステロイドが効果的な場合もある.
・痛みに対してNSIADs,痒みに対してステロイド軟膏を処方してもよい.
・LLRであれば抗菌薬は不要だが,感染かはっきりしない場合は抗生物質を処方しておくのが妥当.
予防
アレルゲン曝露を避ける(ハチに刺されないようにする).
・赤い服は,花と勘違いして寄ってくる.
・黒い服もよくない.
・香水の香りにつられてハチが寄ってくる場合もある.
・ジュースの甘い香りもハチは好むらしい.
ハチの巣の駆除は,専門業者などに依頼する.
マダニ
特有の病原体を持つこと,虫体が食いついて取れない(咬着する)ことが問題.
マダニとは?
日本全国に生息し,山林部,草むら,河原,庭などの自然がある場所に生息している.
最初は約2mm大の米粒半分くらいのサイズで,吸血により大きくなると時にすいかの種くらいの大きさになる.
・刺されても痛くないため,血が吸われて大きくなるまで気づかない.
マダニは食いつくときに唾液腺からセメントのような物質を出して,口器(額体部)をヒトの皮膚に固着させる.
→無理に引っ張ると体がちぎれて,口器が皮膚に残り(異物肉芽腫が形成されるかも),消化管内にいるマダニ特有の病原体が注入されるリスクあり.
マダニ類が媒介する感染症

治療
マダニの除去
マダニが食いついている皮膚ごとメスで切除が確実
1)約1mLの局麻薬(アドレナリン添加リドカイン)をマダニの刺し口に注射
2)マダニの体軸と平行に口器に沿ってメスを入れる.
マダニ媒介感染症に関する情報提供と予防
予防的抗菌薬
ドキシサイクリン200mg単回投与
・9歳以上の小児では4mg/kg(最大投与量は200mg)
・8歳以下の小児では禁忌
*抗菌薬投与は不要なことも多い(Lyme病になる確率は低い).
「Lyme病の流行地域」「マダニが36時間以上吸着」「マダニが吸着して大きくなっている場合」にリスクが高い.
予防
野山でマダニの刺咬を受けないことがもっとも重要.
マダニの活動期(主に春から初夏,および秋)に野山へ出かけるときには,
1)むやみに藪などに分け入らない.
2)マダニの衣服への付着が確認できる白っぽい服装をする.
3)衣服の裾は靴下の中にいれ,虫よけをし,マダニを体に近寄らせない
万一刺咬を受けた場合には,口器を残さず,かつ虫体を潰さないように抜去する.
予防を目的としたワクチンはない.
ムカデ
日本では主にトビズムカデという大型ムカデによる咬傷が多い.
問題になるのはアナフィラキシーと疼痛.
ムカデとは?
山林,田園,人家の庭に生息している.
室内にも侵入し,布団や靴の中に潜んでいることもある.
夜行性なので,夜間に受傷することが多い.
病態
約1%にアナフィラキシーが起こると言われている.
アナフィラキシー例は頭頚部の受傷で多い.
ムカデ毒はハチ毒と交差反応性を持つ可能性を指摘されている.
毒液の化学的刺激,アレルギー反応により強い炎症が起こり,局所の疼痛が強く現れる.
治療
一般的な治療は,疼痛に対して鎮痛薬,局所麻酔薬.
アレルギー症状に対して抗アレルギー薬やステロイド軟膏.
温熱療法があり,43℃のお湯につけると痛みが改善するという報告あり.