個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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○CKDのように画像所見や腎機能のみで明確に診断可能な定義はなく,長期間,高血圧にさらされることに伴い生じる腎障害の総称.
→病歴,高血圧の家族歴や治療歴,蛋白尿の程度,腎臓の画像所見,臨床経過などさまざまな情報を統合して診断する.
良性腎硬化症:通常の高血圧に伴う腎硬化症.
悪性腎硬化症:加速型高血圧-悪性高血圧のように細動脈のフィブリノイド壊死を伴い、壊死性動脈内膜炎や壊死性糸球体炎などを認める予後の悪い腎硬化症.

病態
○高血圧に長い間暴露されると,腎細動脈の硬化性変化を主体とする腎硬化症を生ずる.

○日本人の約4000万人が高血圧症に罹患していると推測されており,腎硬化症を発症するriskは多くの日本人が有していると考えられる.

○腎糸球体の内圧は,輸入細動脈の筋原性反応および尿細管-糸球体feedback系などの調節により,全身血圧の変動があっても約50mmHgにcontrolされている.
○高血圧症では腎動脈から輸入細動脈に至るまで,高い血圧にさらされており,まず血管を中心とした病変がまず生じ,血管障害の進展に伴い,糸球体や尿細管・間質病変が生ずる.

症候
尿検査
○軽度の蛋白尿が生ずる.
・蛋白尿が2g/day(2g/gCr)以上になることは少なく,多くの症例では1g/day以下.
・蛋白尿の特徴として重要なのは高血圧の診断の後に蛋白尿が発症してくる点.
→蛋白尿が高血圧症に先んじて認められる場合は腎炎などを疑う.
○尿沈渣所見も増殖性腎炎で認められる赤血球円柱などは良性腎硬化症では通常認めない.
・硝子円柱がみられることがある.
診断
○病理学的な診断名であるため,確定診断には腎生検による病理学的診断が必要であるが,腎生検される症例が少なく,臨床的に疑う.
○高血圧性の臓器障害の一つであるため,本態性高血圧が長期間持続した後に,他の高血圧性臓器傷害(心肥大・高血圧性眼底・頸動脈肥厚・脳梗塞)があれば,本症の診断に重要な所見となる.
腎病理
○肉眼所見として,腎表面に細顆粒状変化を認めることが知られている.
○進行すると腎機能の低下とともに腎臓の大きさは小さくなる.
○組織学的には血管病変・糸球体硬化・間質障害などさまざまな病変を生ずる.
血管病変
○光学顕微鏡所見としては,慢性的な高血圧に伴う内膜肥厚,中膜の肥大,筋層線維化,弾性板の重層化などの組織変化を示す.
→その結果として小葉間動脈や細動脈の管腔内の狭窄を生ずる.
○細動脈に認められる硝子様沈着(血漿蛋白構成成分など)なども特徴的.
・特に糸球体血管極や輸入細動脈に好発
→腎血流が低下し、糸球体および尿細管・間質病変を誘導する。
糸球体病変
○血管病変により血流障害が生じ,糸球体血流量が低下して虚脱所見が認められる.
○PAM染色では基底膜の蛇行を認めやすい.
・進行すると全節性硬化が生じ,ネフロン全体の機能が失われる.
○蛍光抗体法は他の腎疾患を否定するために行われ,基本的に陰性で特異的な所見を認めない.
尿細管・間質病変
○血管病変から虚血性の糸球体障害を生じ,進行すると尿細管・間質障害を生ずる.
・間質の線維化と血清Cr値との関連性が報告されている.
・虚血により尿細管上皮との表面抗原に関連する免疫学的機序が働き,尿細管・間質性病変を起こすというメカニズムも考えられている.