Basedow病 Basedow’s disease,Graves’ disease

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なすび医学ノート

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甲状腺櫨胞細胞のTSH受容体に対する自己抗体(TRAb)による臓器特異的自己免疫疾患で,甲状腺が過剰に刺激されることで甲状腺中毒症を発症する.

 びまん性甲状腺腫,種々の甲状腺中毒症状を呈するが,Basedow病眼症,限局性粘液水腫を呈するなどの甲状腺外症状を呈する.
 これらの組織においてもTSH受容体が特異的に発現し,合併症においてもTSH受容体が自己抗原として重要な役割を果たしていると考えられる.

Basedow病眼症/甲状腺眼症 Graves' ophthalmopathy
・Basedow病では特有の眼症状を呈する.・眼瞼腫脹,眼球突出,複視などの眼症を認めるものはBasedow病...
Basedow病 治療
 治療法として,薬物療法,131I内用療法(アイソトープ治療),手術療法の3つの選択肢がある.生活指導...

疫学

1)甲状腺中毒症を来す疾患として最も頻度が高く,約500人に1人.
2)男女比は1:4~5と女性に多い.
3)遺伝的素因の影響が強い(家族内発症,HLA抗原との関連).
4)発症年齢は小児期から高齢にわたるが,20~40歳代にかけてピークがある.
5)他の自己免疫疾患(1型糖尿病など),膠原病(SLE)と合併することもある.

病態

抗原特異的自己免疫疾患であり,抗TSH受容体抗体が甲状腺ホルモンの過剰分泌を引き起こすだけでなく,柱状およびひだ状の上皮と少量の膠質からなる甲状腺自体の肥大や過形成をも引き起こす.

 抗TSH受容体抗体によりTh2優位となり,B細胞活性化が病態の増悪に関与しており,未治療Basedow病のCD8+領域の上昇はTh2への偏りの是正が治療が重要なことを示唆している.

 数種の人種グループではBasedow病に細胞障害性T-リンパ球抗原4(CTLA-4)の多様性が関連している.
 この関連性はおそらくある種のCTLA-4対立遺伝子が自己反応性T細胞に及ぼす影響を反映しているものと思われる.

 1型糖尿病を合併した症例ではHLA DRB1 0405/DQA1 0303/DQB1 0401を高頻度に有することが多いと報告されている.

 自己免疫性甲状腺機能低下症と共通した数多くの免疫学的特徴を有している.
 それにはサイログロブリンや甲状腺ペルオキシダーゼに対する血清中の抗体濃度が高いことと,おそらく甲状腺組織内に存在するヨードトランスポーターに対する抗体濃度が高いこともあると思われる.

 病理組織像では正常より胞体の大きい濾胞上皮細胞が甲状腺全体にみられ,ところどころに大きい濾胞を形成している.
 しばしば濾胞腔内に濾胞上皮細胞が乳頭状に突出して増生する.
 濾胞内のコロイドの脱出が高頻度でみられ,リンパ球の浸潤やリンパ濾胞の形成もよくみられる.
 抗甲状腺薬の使用により組織像は変化する.

粘液水腫 myxedema

1)粘液水腫とは圧痕を残さない皮膚の膨隆で,自己免疫機序によるグリコサミノグリカン(ムコ多糖)の沈着.
2)典型的な限局性粘液水腫(限局性に皮膚が硬く盛り上がり,毛孔が聞いて,オレンジの皮のようになる)はわが国ではまれであるが,下腿全体が硬く腫れる前脛骨粘液水腫は比較的よくみられる.
3)眼球突出(exophthalmos),前脛骨粘液水腫(myxedema)と肥大性骨関節症(osteoarthropathy,パチ状指)を伴ったものをEMO症候群という.

低K血性周期性四肢麻痺

甲状腺ホルモン作用により,交感神経β刺激に対する組織の反応性が亢進し,骨格筋膜におけるNa+-K+ATPaseが活性化すると考えられている.
→血中Kが細胞内に移行し,血中Kが低下する.

炭水化物摂取量が多い場合,多量に分泌されたインスリンによりNa+K+ATPaseがさらに活性化し,低K性ミオパチーを呈することもある.
→Basedow病患者で甲状腺ホルモンのコントロールが不十分な場合は,低K血症の増悪を来す可能性があるため,炭水化物摂取に気を付ける必要がある.

診断

Basedow病
a)の1つ以上に加えて,b)の4つを有するもの
確からしいBasedow病
a)の1つ以上に加えて,b)の1,2,3を有するもの
Basedow病の疑い
a)の1つ以上に加えて,b)の1と2を有し,FT3・FT4高値が3か月以上続くもの.

a)臨床所見
1.頻脈,体重減少,手指振戦,発汗増加等の甲状腺中毒症所見
2.びまん性甲状腺腫大
3.眼球突出または特有の眼症状

b)検査所見
1.FT4~FT3いずれか一方または両方高値
2.TSH低値(0.1μU/mL以下)
3.抗TSH受容体抗体(TRAb,TBII)陽性.または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性
4.放射性ヨウ素(またはテクネチウム)甲状腺摂取率高値,シンチグラフィでびまん性

■付記
1.コレステロール低値,アルカリフォスファターゼ高値を示すことが多い.
2.FT4正常でFT3のみが高値の場合がまれにある.
3.眼症状がありTRAbまたはTSAb陽性であるが,FT4およびTSHが正常の例はeuthyroid Graves病またはeuthyroid ophthalmopathyといわれる.
4.高齢者の場合,臨床症状が乏しく,甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意をする.
5.小児では学力低下,身長促進,落ち着きのなさ等を認める.
6.FT3(pg/mL)/FT4(ng/dL)比は無痛性甲状腺炎の除外に参考となる.
7.甲状腺血流測定,尿中ヨウ素測定が無痛性甲状腺炎との鑑別に有用である.

症候

Merseburgの三徴→甲状腺腫,眼球突出,頻脈

甲状腺腫
・甲状腺はびまん性に腫大し,極めて大きなものからほとんど触れないものまで様々.
・しばしば血管雑音(bruit)を聴取する.

甲状腺中毒症
・温度感→暑がり
・皮膚→発汗亢進,湿潤で温かな皮膚,時に下肢浮腫
・体重→体重減少,ただし若年では食欲亢進/食事摂取量増加のたまにむしろ体重増加することも.
・循環器系→動悸,息切れ,頻脈,心房細動,収縮期血圧の上昇(脈圧開大),僧帽弁逸脱,心不全
・消化器系→便通回数の増加,便が緩くなる~下痢,食欲亢進(高齢者では食欲低下あり)
・運動/神経系→振戦,せかせかした行動や思考,神経質,イライラ,多弁,早口,特にthyrotoxic myopathy,周期性四肢麻痺(男性),学業の低下(小児)
・性腺/生殖系→経血量の減少,月経周期の乱れ,不妊症,流産,男性では女性化乳房

一般血液検査

低コレステロール
甲状腺ホルモンは主にLDL受容体遺伝子を刺激して,LDL-Cを低下
主にアポA-Ⅰ遺伝子を介してHDL-Cを低下
主にリポ蛋白リバーゼを介して中性脂肪を上昇

低クレアチンキナーゼ(CK)
おもに腎クリアランスの増加

高アルカリホスファターゼ(ALP)血症
骨代謝の亢進によるもので,アイソザイムはおもに骨型
甲状腺中毒症が数か月間持続してから認められる.
破骨細胞と骨芽細胞がともに刺激され,リモデリング周期は半分に短縮→高回転型→約10%の骨量減少→主に皮質骨の骨密度が低下

肝機能異常
しばしば

白血球の滅少
抗甲状腺薬の副作用と混同しないように治療前のチェックが必要

高血糖 oxyhyperglycemia
・食後30~60分の早期に.
・食物の吸収が早くなる
・1型糖尿病を合併することも少なくない(自己免疫性多内分泌腺症候群:APS).特にサイログロブリンやマイクロゾーム高値例に多く,両疾患の自己免疫機序の共通性が考えられる.

甲状腺関連検査

FT3,FT4,TSH
・甲状腺中毒症はTSHとFT4で診断する.
 TSHが最も鋭敏→FT4やFT3が基準値範囲内にあっても,それらを正常に調節するためにまず変動する.
 甲状腺中毒症が軽度であればTSHだけが低下(潜在性甲状腺機能亢進症).
 破壊性甲状腺炎の初期はFT4が非常に高値でもTSHは測定できることが多い
←TSHの抑制には一定の期間を要する.
・FT3は2ヶ月に1回を目安に測定.
 総T3測定より優れる:サイロキシン結合グロプリンの影響を受けずに評価できるため.
 FT3のみ高値のT3 toxicosisという病態(甲状腺内の脱ヨウ素酵素活性の変化による)がある.
 抗甲状腺薬による治療抵抗性の指標になる.
 逆に,甲状腺クリーゼのように重篤な状態では低T3症候群状態になる.

甲状腺自己抗体
・TRAb/TSAb陽性(保険診療上の算定はどちらか一方).
 保険点数はTSAbのほうが高いが,感度・特異度はTRAbのほうが高い.
・TgAbやTPOAbはBasedow病でも陽性になりうるが数値は高くない.
 強陽性の場合はBasedow病と橋本病の合併(Hashitoxicosis)を考える.

甲状腺エコー

・びまん性の甲状腺腫大.腫大の程度はさまざまであるが,正常甲状腺の2~3倍のびまん性,無痛性で比較的軟らかい腫大を示すことが多い.
 ときに分葉状.左右均等なことが多い.
・ドプラ検査で火焔状の血流増加:診断の参考になるが,血流の多さは必ずしも機能の高さを反映しているわけではない.

未治療
・全体的に腫大.エコーレベルは正常ないし低下.
・カラードプラでは血流増加が著しく,血流波形の解析を行うと上甲状腺動脈の血流は増加している.

既治療
・抗甲状腺薬の投与により腫大した甲状腺は徐々に縮小することも多い.
・治療とともにエコーレベルも改善.
・自己免疫異常の是正が進むとともに血流状態も正常に近づく.無機ヨード剤の投与により急速に血流減少が認められる.

シンチグラフィ

・123Iまたは99mTcの摂取率の上昇.びまん性に腫大した甲状腺全体を均一に集積.

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