Basedow病 治療

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

 治療法として,薬物療法,131I内用療法(アイソトープ治療),手術療法の3つの選択肢がある.

生活指導

1)規則的な生活を行い,睡眠を十分にとるよう指導する.
2)甲状腺中毒症期は激しい運動を制限し,手術,抜歯,侵襲を伴う検査を避ける.
3)ストレスを避ける.またはうまく処理するように指導する.
4)未治療,治療中,寛解中にかかわらず禁煙を指導する.
5)日常のヨウ素摂取は特に制限する必要はない.

抗甲状腺薬

チアマゾール(thiamazole,アメリカではMethimazole;MMI) メルカゾール®
プロピルチオウラシル(propylthiouracil;PTU) チウラジール®,プロパジール®

概要

1)TPOによるサイログロブリン(Tg)のチロシン残基のヨウ素化を特異的に阻害し,甲状腺ホルモンの産生と分泌を抑制することにより,血中の甲状腺ホルモンを徐々に下げる.
2)外来で開始でき,副作用さえ生じなければほとんどすべての患者で十分な効果(甲状腺ホルモン合成の抑制とBasedow病自己免疫機序の改善)を得ることができる.
3)日本では約99%の患者が最初に選択.
4)治療期間は長いものの,そのうち甲状腺中毒症の時期は数ヶ月で,内服継続により正常甲状腺機能(euthyroid)の状態が続くので日常生活に何ら支障はない.

欠点

1)副作用の頻度が低いとはいえず,重大な副作用が生じ他の方法に変更せざるを得ないときが時にある.
2)数年治療しても寛解に入る率が他の2法よりも低い.
・寛解に至る患者は2~3年で30%.
3)寛解に至ったとしてもその後の再発が数割と比較的高い
・抗甲状腺薬を中止後に再発する患者が少なくない.
・TRAbが陰性でも約3割で再発.
4)生涯に及ぶ薬物治療の費用は手術費用を上回ると計算されている.

抗甲状腺薬の選択

Basedow病の内服薬治療においては治療効果,副作用,コンプライアンスのすべての点で,早期の妊娠希望者および妊娠4~7週を除き,MMIを第一選択薬とすることが推奨されている.

1)MMIのほうがPTUより早く甲状腺ホルモンを正常化できる(最終的な治療効果に差はない).
2)MMI 5~15 mg/dayの少量投与はMMI 30 mg/dayやPTUより安全(副作用の発現頻度はMMIでは投与量に関連するがPTUでは関係しない).
3)MMIは1日に1回の投与で有効であるが,PTUは分割投与が必要
4)MMIとPTUの薬価は同じ

初期投与量

1)副作用は治療を始めて3ヵ月以内に出ることが多いので,治療開始後少なくとも3か月間は副作用のチェックのために原則として2~3週ごとに診察する.
2)抗甲状腺薬の効果が出るには3~4週かかるので,治療開始時に動悸・頻脈・振戦など交感神経症状が強い例ではβ遮断薬を併用する.

MMI

MMIは甲状腺内に貯留するので15mg(3錠)までは単回投与でよいが,それ以上は分服.

■不顕性(FT4は正常)
 5mg/日+チラーヂンS 12.5or25μgから開始

■軽症(治療前FT4 5ng/dL以下)
 15mg/日で開始

■中等度(治療前FT4 5~7ng/dL)
 15mg/日,少しでも早く甲状腺機能を正常化させる必要がある場合は30mg/日

■重症(治療前FT4 7ng/dL以上)
 30mg/日で開始.速効性を期待するなら,ヨウ化カリウム50mg 1T/日も併用.

PTU

通常300mg/日(分3)

■不顕性(FT4は正常)
 50mg/日から開始.

漸減→維持量

開始後は,重症度に応じて2~6週間隔で甲状腺機能を確認し,甲状腺機能が十分正常範囲に入ったら,4~6週間隔にチェックを行い,抗甲状腺薬を漸減していく.
*FT3,FT4を測定する(TSHは治療開始後数ヶ月は抑制される).

MMI 5mg/day(隔日),PTU 50mg/day(隔日)まで減量後は,これを維持量として一定期間継続する.
維持療法中は,2~3ヵ月毎にTSHを含めた甲状腺機能が正常範囲にあることを確認する.
*維持療法からはFT4とTSHを測定する.

1)euthyroidに達した後は血中TSH値を正常域に維持するように抗甲状腺薬を漸減する.
2)病勢に再燃の傾向があれば,途中増量する.
3)抗TSH受容体抗体(TRAbなど)で代表される自己抗体測定により,免疫状態の把握も必要.
4)抗甲状腺薬が多すぎると甲状腺機能低下症(血中TSH上昇)を医原的に作ってしまい,甲状腺腫は大きくなる.
5)甲状腺機能低下症が生じてしまった場合でも,TSH受容体値の動き,甲状腺腫の変動との関係などで,抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン薬を併用する場合もある(block and replacement治療).

MMI

30mg→20mg→15mg→10mg→5mg→5mg隔日.
5mgくらいあたりからは長期間同じ量の維持投与.

中止の目安,寛解

抗甲状腺薬1錠隔日投与で,6カ月以上甲状腺機能が正常な場合は,休薬を検討してよい.

1)最少維持量の抗甲状腺薬で正常機能が半年以上は維持され,抗TSH受容体抗体の陰性が持続し,甲状腺腫も小さい場合,寛解に入っている可能性を考え,薬物療法の中止を考慮する(寛解率は80%).
2)寛解しても再燃する割合は30~50%.寛解後もfollow upが必要.
3)休薬後半年から1年は再燃の頻度が高いので,少なくとも3ヶ月毎のfollow upが必要とされる.
4)薬物治療期間は2年を目安とし,減量・中止の目処が立たないものについては他の治療法への切り替えを考慮する.
5)抗甲状腺薬治療で寛解しやすいのは甲状腺機能亢進の程度が軽く,甲状腺腫が小さいものであり,機能亢進が強く,甲状腺腫が大きいものは寛解しにくい.
6)開始後6ヵ月,12ヵ月後にTRAbが高値なものは寛解は望みにくい.
7)血清T3/T4が高値を持続するものや,抗TSH受容体抗体価が経過中に低下しないか変動するものは寛解しにくい.
8)若年者のほうが寛解しにくい.
9)喫煙,精神的ストレスは予後を悪くさせる因子である.

抗甲状腺薬で寛解したのちに再燃した場合は,手術による外科的治療や131I内用療法を考慮する必要がある.

1回目の再燃でその後抗甲状腺薬を再開した場合の寛解率は初発時投与後の寛解率と差がないが,2回以上再燃した場合には寛解率が低下するため,特に2回目以降の再燃の場合には治療法変更を考えるべき.

抗甲状腺薬中止後のはじめの6ヶ月間は,甲状腺機能を2~3ヵ月おきに検査し,その後は徐々に間隔を延ばし,1年以降は6~12ヶ月おきに検査する.

副作用

発疹・蕁麻疹

・最も多い副作用で,4~6%に認められる.
 抗ヒスタミン薬で対処できることが多いが,無効のときは抗甲状腺薬を変更ないし中止する.蕁麻疹がひどい場合には副腎皮質ホルモン薬(ステロイド)を使う.

肝機能障害

・未治療のBasedow病では軽度の肝機能異常がみられることがあるので,必ず抗甲状腺薬投与前に肝機能(AST,ALT,y-GTP,総ビリルビンなど)をチェックしておく
・治療前の黄疸は甲状腺クリーゼを示唆する.
・治療後に肝機能の悪化を認めたら慎重に経過をみる(一過性の肝障害は甲状腺機能の改善時にもみられるためである)が,ALTが正常上限の3倍以上に悪化する場合はウイルス性肝炎など別の肝障害との鑑別を行うとともに抗甲状腺薬を中止し,他の治療に切り替える.

無顆粒球症

 重篤な副作用として,無顆粒球症が0.2~0.5%に起こる.

1)MMIとPTUで差はないが,MMIでは発生頻度に用量依存性があり,1日量30mgの方が15mgより高い.
2)通常治療開始2~3ヶ月以内に突然発熱・咽頭痛などで始まるので投与開始後2~3ヶ月間は,2週間に1回,それ以降も分画を含めた白血球数の測定が必要.
3)突然発症することがあるので,患者にも発熱などの症状があれば医療機関を受診して白血球を調べてもらうように伝えておく.
4)典型例では顆粒球絶対数はほぼ0であるが,定義上は顆粒球数 500/μL 以下も無顆粒球症としている.
5)末梢血塗抹標本では顆粒球をほとんど認めない.赤血球数および血小板数は通常正常値を示す.
6)骨髄所見は発症後の時期により異なるが,顆粒球系の低形成と成熟障害を認めることが多い.

■発生機序
大きく2つに分けられる.
1)医薬品が好中球の細胞膜に結合してハプテンとして働き抗好中球抗体の産生を引き起こす免疫学的機序(抗体が結合した好中球は貪食細胞に補足されて破壊される)
・抗甲状腺薬は免疫学的機序がメイン.
・HLA DRB1 0803およびDRB1 1501に強く相関することが報告されている.
2)医薬品あるいはその代謝物が顆粒球系前駆細胞を直接的に傷害する中毒性機序

■対応
1)診断したら,直ちに抗甲状腺薬を中止し無機ヨウ素に変更する.
2)抗生物質の投与と,発熱している場合には血液培養を含めた細菌学的検査を行い,広域スペクトラムの抗菌薬を十分量用いた感染症の治療(エンピリック・セラピー)を直ちに開始する.
3)中止後,好中球の改善がみられるまで,1~3週要する(早ければ3日くらい).
4)G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を使用するかどうかについては,賛否両論.
5)何が起こってもおかしくない.きめ細やかな全身管理,発熱などの様々な身体症状の訴えのみならず,不安,焦燥感,不眠,愚痴などの精神症状に対しても,適切に対処する.
6)好中球が1000/μL以上となり,感染症状の改善が認められ,回復した後は,できるだけ速やかに,放射線療法または手術にもっていく.
7)交差反応があるため,もう一方の抗甲状腺薬への変更は推奨されていない.

筋肉痛/関節痛

・筋肉痛/関節痛,発熱などの症状が出現した場合はもう一方の抗甲状腺薬に変更するが,重大な副作用の初期症状の可能性もあるので,薬剤以外の治療が望ましい場合がある.

MPO-ANCA関連血管炎

1)頻度は低いが,PTUによるものが圧倒的に多く,服用量や期間とは無関係に服用開始後1年以上で起こる.
2)PTUの長期投与例におけるMPO-ANCAの陽性頻度は4~40%と報告されているが,抗体陽性だけでは治療の対象にはならない.
3)発熱,関節痛,筋肉痛,風邪症状などの出現に注意し,検尿,CRP,クレアチニン,MPO-ANCAを測定する.
4)症状・症候の出現が疑われたら,直ちに抗甲状腺薬を中止して無機ヨウ素に変更後,手術かアイソトープ治療を行う.
5)急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を発症し,急速に腎不全に陥ることがある.

無機ヨード薬

ヨウ化カリウム丸(KI丸)
50~100mg/日(分1~分2).ヨードとして38~76mgに相当する.

1)ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料として必須の成分であるが,大量の無機ヨウ素をヒトや動物に投与すると甲状腺機能は抑制される.

Wolff-Chaikoff効果
・過剰の無機ヨウ素は有機化を抑制し甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制する.
・正常甲状腺では投与後24時間以内に現れ,10日以内にエスケープする.

2)甲状腺内の血管分布の減少,腺組織の固化,濾胞細胞の縮小効果などを認める.
→特徴を生かし,大量の無機ヨウ素をBasedow病の術前治療薬として用いる.
3)エスケープ現象を考慮して手術前1~2週間使うことによって,手術までに甲状腺機能を抑制するという目的のほか,甲状腺内の血流を低下(ドプラエコーで確認できる)させて手術時の出血量を抑えるという効果がある.
4)甲状腺クリーゼでは,急速に甲状腺機能を抑制させるために用いる.いずれも抗甲状腺薬と併用する.
5)抗甲状腺薬が使用できない場合にも使用.
・そのままでは甲状腺が腫大したり,Wolff-Chaikoff効果からのエスケープ現象によりヨウ化カリウム剤の効果が得られなくなる恐れがあるため,なるべく早期にアイソトープ治療へ.
6)副作用としてはまれに皮疹がみられる.
7)抗甲状腺薬同様,破壊性甲状腺炎には無効.

β遮断薬

1)Basedow病に代表される甲状腺中毒症では,甲状腺ホルモンの作用で,心拍出量は増大し収縮期血圧は上昇するため,頻脈や高血圧に対してβ遮断薬を使う.
2)Basedow病でカテコールアミンやアドレナリンβ受容体,交感神経の機能が亢進しているエビデンスはないが,不安,振戦,暑がりなどのアドレナリン刺激様症状の緩和効果も期待して使用されている.
3)甲状腺機能亢進症における心不全は心拍数依存性であるため,β遮断薬によるレートコントロールは左室機能を改善する.

■プロプラノロール
インデラル® 30~60mg/日(分3or分4)

1)喘息がなければ,非選択的なプロプラノロールが自覚症状緩和には優れるが,頻回内服が必要となる.
2)プロプラノロールの禁忌は,気管支喘息,糖尿病ケトアシドーシス,高度の徐脈(50/min以下),高度房室ブロック,洞不全症候群,心原性ショック,肺高血圧による右心不全,うっ血性心不全,低血圧症,重症の末梢循環障害(壊痘など),未治療の褐色細胞腫など.

■アテノロール(テノーミン®),ビソプロロール(メインテート®)
テノーミン® 25~50mg/日(分1),メインテート® 2.5~5mg/日(分1)

1)β1選択性かつ持続性であり,日常的にはよく使用される.
2)気管支喘息は慎重投与となり,禁忌から外れる.

■妊婦,授乳婦
1)妊婦では流産,胎児の発育不全,分娩の遷延を誘発する恐れがあるため推奨されないが,必要ならアテノロール(テノーミン®)とプロプラノロール(インデラル®)は使用可能.
2)授乳中に必要な場合は,アテノロール(テノーミン®)より乳汁分泌量が少ないプロプラノロール(インデラル®)が推奨されている.

アイソトープ治療(131I内用療法)

1)甲状腺に特異的に集積する131Iを内用し,放射線を内照射することで腫大した甲状腺組織を破壊する.
2)甲状腺機能亢進症を確実に治すことができ,再治療が可能であるが,放射性ヨウ素(131I)により甲状腺組織を破壊するため,甲状腺機能低下症に移行する可能性が高いことが欠点である.
3)手術治療とは異なり,傷は残らず,多くは外来で行えるが,効果発現まで1~2ヶ月かかる.
4)米国ではBasedow病の第一選択.
5)治療法は放射性ヨウ素カプセルを1回服用するだけであるが,前後各1~2週間のヨウ素制限が必要である.
6)治療後4か月間は少なくとも月に一度の機能検査を行う.
7)1年以上経過すれば,半年~1年に一度の検査で経過をみる.
8)治療後の眼症の経過観察も必要.
・活動性の眼症がある場合,悪化する可能性があるため,避ける.
9)被爆を伴うであるため,治療直後は生殖腺への被爆と妊娠中の甲状腺機能変動による胎児への影響が懸念される.
→女性は治療後1年,男性は半年の避妊期間を設ける必要がある.

絶対的適応

・抗甲状腺薬で重大な副作用が出たとき
・MMI,PTUともに副作用で使用できないとき

相対的適応

・抗甲状腺薬や手術治療を希望しないとき
・抗甲状腺薬によって寛解に入らず,薬物治療からの変更を希望するとき
・手術治療後のBasedow病の再発
・甲状腺機能亢進症を確実に治したいとき
・甲状腺腫を小さくしたいとき

絶対的禁忌

・妊婦,妊娠している可能性がある女性.近い将来(6ヶ月以内)に妊娠する可能性がある女性.
・授乳中の女性

相対的禁忌

・活動期または重症Basedow病眼筋症(悪化する可能性が高い)

慎重投与

・18歳以下(安全性が確立されていない.他の治療法が選択できないときは家族を含め相談・説明する)

手術

わずかな甲状腺組織を残し,甲状腺を摘出する(亜全摘)が主流だったが,
1)TSHの検査精度の向上によって,術後に機能亢進症が残存する症例が少ないことが明らかになった.
2)甲状腺を温存したにも関わらず,甲状腺ホルモン補充療法が必要になる症例も多かった.
3)亜全摘により,数年間は術後の甲状腺機能が正常に維持されたとしても,何らかの理由で自己抗体が増加すれば,再発する
全摘術が標準になってきている.

1)甲状腺ホルモン補充療法が不可欠.
2)早い治療効果が得られ,確実性が高いが,手術に伴う入院,麻酔,手術瘢痕は避けられない.
3)まれに反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症が生じる可能性がある.
4)甲状腺機能低下症や副甲状腺機能低下症が生じる可能性があり,定期的な経過観察が必要である.
5)術前に甲状腺機能を正常域に持ち込む.
・抗甲状腺薬が使用できない症例ではヨウ化カリウムを使用する.

適応

1)甲状腺癌などの腫瘍を合併した場合
2)副作用のために抗甲状腺薬が使用できず,かつ131I内用療法を希望しない場合
3)妊娠中に副作用などのため抗甲状腺薬が使えなくなった場合
 早期の寛解を希望する場合や甲状腺腫が大きい場合,服薬コンブライアンスが悪い場合は相対的適応である.

小児の場合

1)小児Basedow病の特徴は,薬物治療での寛解率が30%前後と低く,しかも3~6年かかるといわれていることである.
2)最近,小児においてPTUによる重症肝障害による死亡例や肝移植例の報告がなされ,小児では極力PTUを避けるよう勧告された.
3)初期治療は薬物療法を原則とし,抗甲状腺薬はMMIを第一選択,投与量は0.5~1.0 mg/kg/day(分1~2)で,原則として成人量を超えないようにする.
4)巨大甲状腺腫,MMIの副作用,再発,腫瘍合併などの場合は,手術療法(甲状腺亜全摘術)を選択する.
5)アイソトープ治療は米国では小児に対しでもよく行われるが,わが国では経験が少なく慎重に検討する.

高齢者の場合

1)症状が典型的でなく,明確な症状に乏しいため,診断までに時間がかかる場合がある.
2)若年者と比較すると,甲状腺腫は小さく,眼症状に乏しく,動悸や振戦などの症状の発現頻度も多くない.
3)食欲不振や体重減少,不整脈や心房細動などの頻度が高く,消化器疾患(癌)や循環器疾患として診療されている場合が少なくない.
4)心不全になりやすいので,甲状腺機能亢進症の治療と平行して適切な全身管理が必要である.
5)加齢による生理的な変化として,①TSHに対する甲状腺の反応性は不変または減少,②T4 分泌量の減少
・TRAb値には差がないが,高齢者では甲状腺腫が小さく,未治療時のFT3および FT4は有意に低値を示す.
・FT3/FT4比は差がない.
・TRAb に対する甲状腺組織の反応性が低下している可能性がある.
6)高齢者の心房細動は除細動を行いにくく,抗凝固薬の継続が必要である.
7)第一選択はMMI.
・MMI に対する感受性が高いため,30~40%の症例ではMMI 10mgで,治療開始後約4週でFT4が正常化する.
・MMI 10mgでコントロール可能な目安はFT4<3ng/dL.
・軽症例において15mgで投与開始する場合は機能低下に注意.
・中等症・重症や,できるだけ速やかに正常化を要す る患者では若年者と同じ考えでよい.
8)再燃,再発を極力避けたいのと,麻酔・手術のリスクを考えると,アイソトープ治療を選択することが多い.

潜在性甲状腺機能亢進症

1)まず,潜在性甲状腺機能亢進症が無痛性甲状腺炎などによる一過性のものかどうかを確認するため,1か月後に再検する.
2)持続してTSHが0.1 mU/L以下に抑制されている場合は心房細動や骨粗鬆症の発症リスクを考慮し,60歳以上のケースではBasedow病として治療を行ってもよい.
3)潜在性甲状腺機能亢進症が心房細動の危険因子であることを示されている.
・有名なフラミンガム研究では,観察開始時の血清TSH値が0.1mU/L未満の心房細動になる確率は,正常群に比べて3.1倍と報告している.
4)骨粗鬆症に関しては,多結節性甲状腺腫による潜在性甲状腺機能亢進症患者を対象としたいくつかの研究では,正常者に比べて骨量が有意に減少していることや,TSHを補正することにより骨量減少のスピードを低下させたことが報告されている.

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