自己免疫性肝炎 autoimmune hepatitis;AIH

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

何らかの機序により自己の肝細胞に対する免疫学的寛容が破綻し,自己免疫反応によって生じる疾患.

女性に好発し,早期に肝硬変への進展傾向を示す活動性の慢性肝障害.

2015年1月より指定難病とされ,重症度が中等度以上もしくは肝硬変に進行した例が医療費助成の対象となる.

疫学

2016年を調査年とした疫学調査では,患者数は30,325例と推定され,人口10万人あたりの有病率は23.9と報告されている(2004年の調査と比較し,約3倍増加).

女性の方に多い.
・2004年は男女比1:6.9であったが,2016年は1:4.3と男性患者の増加がみられる.

本邦における好発年齢は40歳以降であり,50歳代に単一のピークを持つ年齢分布を示す
・オーストラリア,ヨーロッパでは15~25歳の若年層にもピークがある.

原因

病因は不明であるが,遺伝的素因を背景として,肝実質細胞を標的とする免疫反応が本症の発現に関与すると考えられている.
*ウイルス,薬剤,アルコールなどによる肝障害は除外される.

遺伝的要因

HLA DR3,DR4,DRB1*0301,DRB1*0401
CTLA-4,TCRCβ,Ig allotype
TNF-α,IL-1β,IL-10,Fas
vitamin D receptor
SH2B3,CARD10

・欧米ではHLA-DR3,DR3陰性者ではHLA-DR4が高頻度であり,DR4陽性患者はDR3陽性患者と比較して高齢.
・本邦ではDR3はきわめて稀で,DR4が高頻度.

免疫学的要因

自然免疫

TLR(toll-like receptor)の機能異常
DAMPs(damage-associated molecular patterns)による樹状細胞活性化

獲得免疫

自己免疫性T細胞の活性化
制御性T細胞の量的・質的異常
IL-17,Th17細胞増加
IgG産生,抗核抗体産生

環境要因

ウイルス

肝炎ウイルス
EBウイルス
サイトメガロウイルス

薬物

スタチン
抗菌薬

病態

遺伝的素因に何らかの環境因子が加わり(trigger),免疫学的異常をきたす.

門脈域へのリンパ球・形質細胞浸潤
インターフェイス肝炎
emperipolesis

肝線維化進展

肝硬変

分類

自己免疫性肝炎は1型,2型,3型に分類されている.
本邦はほとんどが1型.

1型:抗核抗体,抗平滑筋抗体または両者
2型:肝腎ミクロゾーム抗体1型
3型:肝可溶性抗原(soluble liver antigen;SLA)に対する自己抗体

今日もお疲れ様です!( ´∀`)bグッ!
読んでくれて,ありがとう.

肝外症候

関節痛,発熱,発疹などの肝外症候,自己免疫性疾患の合併がみられる(本邦では自己免疫性肝炎患者の約1/3).
・合併する自己免疫性疾患としては慢性甲状腺炎,関節リウマチ,Sjoegren症候群が多い.
・他にSLE様症状,特発性血小板減少症,溶血性貧血がある.
・胸膜炎,潰瘍性大腸炎,腎尿細管性アシドーシスの合併も報告されている.

unclassified chronic hepatitis

組織所見のうえで,自己免疫性肝炎の特徴を備えているにもかかわらず,C型肝炎ウイルス感染マーカー陽性の症例が少数ながら存在する.

International Autoimmune Hepatitis Groupによる診断基準のスコアリングシステムで疑診または確診を示す症例に対しては自己免疫性肝炎として治療することがすすめられる.

臨床経過

肝細胞障害に基づく症状以外に,さまざまな全身症状を伴うことが特徴.

発症は多くの場合潜行性であるが,時に急性肝炎あるいは劇症肝炎様の発症をみることがある.

ウイルス性慢性肝炎と比較すると,初発症状として黄疸の頻度が高い.

特に若年者でみられるものは進行も早く,早期に肝硬変へと進展し,くも状血管腫,腹水,門脈圧亢進症,手掌紅斑が早期よりみられる.

死因としては肝不全が最も多く,次いで消化管出血であり,肝細胞癌は少ない.

検査

血清AST,ALT活性の持続性あるいは反復性の上昇,血清膠質反応(TTT,ZTT)の高度異常など

定型的な自己免疫性肝炎ではALPが基準値上限の2倍を越えることはまれ.
・原発性胆汁性肝硬変(PBC)とのオーバーラップ症候群ではALPが基準値上限の2倍を越えることがある.

IgG濃度の高度上昇(2.0g/dL以上),抗核抗体,抗平滑筋抗体,あるいはLE細胞現象など種々の自己抗体が陽性である.
*急性発症例は自己抗体陽性,血清IgG高値などがみられないことがあり,診断が困難なことがある.

赤沈の亢進,CRP陽性もウイルス性慢性肝炎と比較して高頻度.

定型的自己免疫性肝炎では抗ミトコンドリア抗体が高力価陽性を示すことはまれであるが,PBCとのオーバーラップ症候群では抗ミトコンドリア抗体陽性のことがある(約10%).

病理

門脈域への単核球の濃密な浸潤と,限界板を越えて肝小葉内への単核球の浸潤と肝細胞死(interface hepatitis)がみられる(慢性肝炎,活動性の病理組織像).

本症ではリンパ球のみならず,しばしば形質細胞の浸潤がみられることが特徴.
・形質細胞浸潤は自己免疫性肝炎の特徴であるが,すべての症例にみられるわけではない.

亜小葉性壊死,また小葉改築傾向を伴い,初診時に肝硬変に至っていることもある.

診断

診断基準

①他の原因による肝障害が否定される
②抗核抗体陽性あるいは抗平滑筋抗体陽性
③IgG高値(>基準上限値1.1 倍)
④組織学的にinterface hepatitisや形質細胞浸潤がみられる
⑤副腎皮質ステロイドが著効する

典型例:上記項目で1 を満たし、2~5のうち3項目以上を認める。
非典型例:上記項目で1 を満たし、2~5 の所見の1~2項目を認める。

1)副腎皮質ステロイド著効所見は治療的診断となるので,典型例・非典型例ともに治療開始前に肝生検を行い,その組織所見を含めて診断することが原則.
*治療前に肝生検が施行できないときは診断後速やかに副腎皮質ステロイド治療を開始する.

2)国際診断スコアが計算できる場合にはその値を参考とし,疑診以上は自己免疫性肝炎と診断する.

3)診断時,既に肝硬変に進展している場合があることに留意する.

4)急性発症例では,上記項目2)3)を認めない場合がある.
組織学的に門脈域の炎症細胞浸潤を伴わず,中心静脈域の壊死・炎症反応と形質細胞を含む単核球の浸潤を認める症例が存在する.

重症度判定

重症→臨床所見①or②,臨床検査所見③のいずれかがある
中等症→臨床所見①②がない,臨床検査所見①or②(③がない)
軽症→臨床所見①②がない,臨床検査所見①②③がない

臨床所見
①肝性脳症あり
②肝萎縮あり

臨床検査所見
①AST or ALT>200U/L
②総ビリルビン>5mg/dL
③PT時間<60% or PT-INR>1.3

治療

早期に診断し,治療を開始すれば予後は比較的良好.
治療開始が遅れた場合,あるいは治療が不十分の場合,ウイルス性慢性肝炎と比較して早期に肝硬変に移行する.

診断が確定したら,必ず重症度評価を行い,重症の場合には遅滞なく,中等症では病態に応じ専門機関へ紹介する.
・AIHの予後は10年生存率95%と良好であるが,死亡例の約30%が診断初期の半年以内に認められ,重症例においては,診断時の対応が予後の改善に重要.

簡易型国際診断基準スコアが疑診以上の場合は副腎皮質ステロイド治療を考慮する。

抗ミトコンドリア抗体が陽性であっても,簡易型国際診断基準スコアが疑診以上の場合には副腎皮質ステロイド治療を考慮する.

副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬は,臨床症状,臨床検査所見の改善がみられた後も長期にわたって維持量の投与が必要.

副腎皮質ステロイド

90%以上で血清トランスアミナーゼが改善する.

免疫抑制薬

アザチオプリン

PSL治療により血清トランスアミナーゼが基準値内にコントロールされない症例や治療中に再燃した症例に追加投与することで寛解が得られることが多い.

副作用である重篤な白血球減少や脱毛に関連するNUDT15遺伝子多型が報告されている.
→遺伝子多型検査が保険適用になった.

NUDT15遺伝子型検査
Cys(cysteine)/Cys型→重篤な副作用が出現するリスクが非常に高いため,アザチオプリンは回避する.
Arg(arginine)/Cys型,Cys/His(histidine)型→低用量(通常の半量程度)からの使用を検討
Arg/Arg型,Arg/His型→リスクが少ない.
*いずれにしろ定期的な副作用モニタリングが重要

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