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1)発作性心房細動の予後は良好で,lone Afでは生命予後はよい.
2)基礎心疾患(閉塞性肥大型心筋症,大動脈弁狭窄)とその重症度により種々の症状をきたし予後は大きく異なる.
3)生命予後としては特に心不全や脳梗塞が問題となる.
救急外来では,まずはワソランを緩徐に静注(ワソラン5mg+生食20mL).
*血圧を保っていること,EFが保たれていること前提.
EFが低下,血圧が低下している場合は,β blocker(ランジオロール).
基本的な治療方針
1st line:抗血栓凝固療法
↓
2nd line:レートコントロール(心拍数調節)療法
↓
3rd line:リズムコントロール(洞調律維持)療法
↓
(必要があれば,アップストリーム療法)
除細動
心房細動は頻脈と心房収縮の欠如により,心機能の低下をもたらすため,重症な基礎疾患症例では血圧低下,ショック,心不全を招来し,致死的となることがある.
基礎心疾患や肝腎機能の低下がなく発症後2日以内
薬物による除細動
基礎心疾患がある場合,2日以上経過している場合,薬理学的除細動が無効な場合
電気的除細動
発症後2日以上経過している場合
血栓塞栓症発生の危険性があり,十分な抗凝固療法を除細動前後に行う.

薬理学的除細動
除細動を行う際には心電図モニター,血圧測定を行う.
心房細動を心房粗動に移行させ,1:1 房室伝導による著しい頻脈を誘発する危険や洞結節機能不全を増悪させる可能性,Brugada 症候群のST上昇を助長して致死性不整脈を誘発する危険があるので注意する.
静注法
ジゴキシン注
心不全がある場合
ベラパミル注
心不全がない場合
ランジオロール(オノアクト®)
1~10γの点滴静注
心不全がある場合
経口法
1)経口法は患者自身で可能な簡便な方法だが,1度目は病院内で実施し安全性を確認しておく.
2)その後に洞調律の維持をはかるリズムコントロール or 心房細胞のまま心拍数を調節するレートコントロールをする.
・ピルジカイニド(サンリズム®)50mg 1~3Cap(年齢により適宜増減)頓用
・ジソピラミド(リスモダン®)100mg 1~2Cap(年齢により適宜増減)頓用

電気的除細動
緊急性が高い場合
1)速効型静脈麻酔下(ラボナール®100~150mg)で,QRS波に同期させた直流通電を行う.
2)100Jより開始し,不成功の場合には出力を(最大300Jまで)増加させる.
3)除細動前3週間,後4週間はワルファリンを用いてPT-INRを2.0-3.0に維持する.
リズムコントロール・レートコントロール
1)リズムコントロールとレートコントロールとでは,予後において全体として有意な差はないとされる(AF-CHF試験).
2)薬剤によるリズム治療は心拍数調節に比べ自覚症状の軽減には有効であるが,死亡・心不全・塞栓症といったエンドポイントに関しては明らかな差はなかった(J-RHYTHM).
→薬物学的除細動率や洞調律維持率の低さや,抗不整脈薬による有害事象などの懸念があり,臨床現場ではレートコントロールされることが多い.
3)有効血中濃度内に保つことが重要!
・少量から開始し,症状改善が得られたなら,その量で十分.
4)抗凝固療法はしっかりとする.
虚血心がある場合
虚血の改善が優先され,肥大心や不全心ではACE阻害薬やARB,あるいはβ遮断薬などの使用が適応になる.
心拍数調節(レートコントール)
目標心拍数<110/分(徐脈傾向に注意)
1)心拍数を適切な範囲に調節すれば,自覚症状を軽減し,心機能を維持することができる.
2)従来はジギタリスがもっぱら使用されてきたが,労作時の頻脈抑制効果が弱いことなどから,最近ではジギタリスの使用頻度は低下し,β遮断薬やCa拮抗薬が使用されることが欧米でも本邦でも多くなってきた.
3)心拍数調節が運動耐容能とQOL改善に及ぼす効果については,ジギタリスに比べてCa拮抗薬(ベラパミル)がトレッドミル負荷試験による運動時間を有意に延長した.
β遮断薬の効果はCa拮抗薬に劣っていた(海外ではβ遮断薬が継続投与される割合が最も高い).
4)症状が軽い,1年以上続く慢性型,抗不整脈が無効または投与を望まない症例が適応.
5)心拍数は厳格なコントロールはしなくてよい.90bpm以下が目安(60~80bpmが目標).

最近では,β遮断薬を選択することが多い.
β遮断薬はレート抑制効果が他の薬剤よりも強く,心筋の保護効果,心房細動自体の抑制効果などの多くの付加価値があり,投与法(経口・静注)や剤形(錠剤・貼付剤)のおいてもバリエーションがある.
β遮断薬
期外収縮を抑えて心房細動発症に対する一定の抑制効果をもつとともに,心房細動発症後の心拍数を低下させる作用を持つ.
カテーテルアブレーション施行後には,肺静脈周辺の自律神経叢への刺激から交感神経が亢進して頻脈が出現しやすく,周術期にも日常的の投与されている.
新陳代謝を低下させ,糖尿病管理を増悪させる因子となるため,糖尿病患者では投与の必要性を十分に吟味し,必要最小限の用量と期間での投与を心がける必要がある.
→必ずしも必須ともいえない状況であれば,直ちに中止したほうがよい.
ジギタリス
心機能低下(LVEF<40%)
急性期
ランジオロール静注(微量から徐々に漸増)
↓
ジゴキシン静注(追加で使用)
慢性期(長期)
ビソプロロール経口/貼付(少量から開始)
カルベジロール経口(少量から開始)
↓
ジゴキシン経口(追加で使用)
心機能温存(LVEF≧40%)
急性期・慢性期(長期)
ビソプロロール経口/貼付(通常量)
カルベジロール経口(通常量)
ベラパミル経口(通常量)
ジルチアゼム経口(通常量)
上記,いずれか単剤を使用
↓
作用が異なる2剤を併用
若年者(活動量が多い)
半減期が長く,服用回数が少ないもの
→β遮断薬(ビソプロロール=メインテート®,ビソノテープ®)
ビソプロロール2.5mg=ビソノテープ4mg
高齢者(活動量が少ない)
半減期が長いと,蓄積効果が懸念され,微調整がしやすいもの
→Ca拮抗薬(ベラパミル=ワソラン®)
血圧が低いとき
ジギタリス

洞調律化と再発予防(リズムコントロール)
1)心房細動の持続により心房筋の電気生理学的性質に変化が生じる電気的リモデリングの結果,不応期が短くなり,伝導速度が低下し心房細動がますます持続するようになる.
・イオンチャンネルにも変化が生じ,Naチャネル密度が低下するため,Ⅰ群抗不整脈薬の心房細動抑制効果は減弱する.
・心房筋に特異的に発現するK電流(ⅠKur,ⅠKAch)を抑制する薬物には,心室筋に対する影響がほとんどないため,心室性催不整脈作用がないという特徴がある.
動物実験では心房細動の抑制効果が認められるが,臨床例では有効性が確認されるに至っていない.
2)息切れなどの症状を取り除ける.
3)副作用を起こさないことに留意する.


心機能が正常であれば,I群抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)
心機能が低下していれば,Ⅲ群抗不整脈薬(Kチャネル遮断薬)であるアミオダロン(
Ⅰa群とⅠc群は禁忌!)
Ia群薬
ピルジカイニド(サンリズム®)
腎排泄型(腎機能障害では投与不可)
半減期が短い
50mg 3Cap(分3),75歳以上では25mg 3Cap(分3)
シベンゾリン(シベノール®)
100mg 3T(分3)
ジソピラミド(リスモダン®)
Ic群薬
フレカイニド(タンボコール®)
肝代謝型
半減期が長い
100mg/day(分2)から開始し,200mg/day(分2)まで増量可
洞停止・徐脈頻脈症候群のリスクがあり,100mgで効果がないならあきらめる.
Ⅲ群薬
頓服療法 Pill in the pocket
服用後の最高血中濃度到達時間が2時間程度の抗不整脈薬を用い,あらかじめ停止効果があること,重大な副作用(頻脈の増悪,とくに心房粗動の1:1房室伝導,あるいは停止時の徐脈)のないことを確認しておき,心房細動発作時に頓服する方法.
1)本邦ではピルシカイニド(サンリズム®)やシベンゾリン(シベノール®)が使用されることが多い.
2)頓服量は1日あたりの常用量の1/2~1/3とする.
3)発作持続時間,頓服後の観察期間によって異なるが,発症後1時間以内に服用すれば80%を越す停止効果が得られる.
持続的服用
常用量を毎日継続使用して,持続していた心房細動の停止を試みる方法.
1)海外ではアミオダロンがよく使用されるが,その停止効果は20%台.
2)最も停止率が高いのはキニジンであるが,消化器症状や催不整脈作用などのために現在ではほとんど使用されない.
3)本邦で汎用されるピルシカイニド150mg/dayとプラセボの比較試験では,持続性心房細動に2週間継続して投与すると,洞調律化はピルシカイニドでは22.4%であったのに対し,プラセボでは2%に過ぎなかった.長い持続期間(2ヶ月)と大きな左房径(>45mm)では洞調律化が短い.
4)持続する心房細動への継続的な抗不整脈の投与は,洞調律化がせいぜい20%台であり,催不整脈作用などの有害事象の可能性を考慮すると,積極的には勧められない.
ベプリジル(ベプリコール®)の持続的投与
・Ca拮抗作用やKチャネル遮断作用を持ち,その持続的投与は,他の抗不整脈薬で洞調律化が不可能であった持続性心房細動を高率に洞調律に戻す.
・QT延長から多形性心室頻拍torsade de pointesを起こすことがあるので,使用は専門家に任せる.
カテーテルアブレーション(リズムコントロール)
低心機能を伴う心不全を有するAF患者の一部において,死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションの治療を考慮する(ClassⅡa)
CASTLE-AF試験
メカニズム
心房細動発生の原因のほとんどが肺静脈内の袖状心筋からの異所性興奮であることが明らかになり,肺静脈内の発火起源の局所焼灼により,62%の成功率が報告された.
肺静脈と左心房の接合部を全周性に焼灼することにより,肺静脈内の袖状心筋を一括隔離して左心房から電気的に隔絶する肺静脈隔離術が標準術式となり,さらに高率に心房細動を根治できるようになった.
↓
成功率は,(1回のセッションで)発作性の場合は約70~80%,持続性の場合は約50~60%.
合併症発生率は,他の頻拍と比べて3~5倍ほど高い.
(根治療法であるため,成功した場合のメリットは大きい)

高額であるため,全例が適応というわけではない.
現時点での良い適応は,発作性,有症候性,比較的若年者,左房径正常,心機能正常のいくつかを満たす患者.
左心房~肺静脈の三次元的構造は複雑であり,X線透視だけではカテーテル操作には相当の熟練を要し,長時間の透視による被爆も問題であったが,近年の三次元マッピングシステムの開発と進歩により,肺静脈隔離術における技術的問題は大幅に改善された.
・特にマルチスライスCT(computed tomography)の画像を取り込むことにより,リアルな三次元ナビゲーションが可能になったことから,現在では,熟練した術者が肺静脈隔離に要する時間は1時間半程度となっており,透視時間は10分前後となっている.
血栓形成防止のためにカテーテル先端から生理食塩水を噴射しながら焼灼するイリゲーションカテーテルが標準装備となり,カテーテル先端の組織に対する荷重が刻一刻と表示されるコンタクトフォース・センシング機能が導入され,焼灼手技の安全性及び確実性が格段に向上した.
従来の高周波アブレーションに加え,最近では,肺静脈を短時間で隔離するバルーン型のカテーテルが複数種類導入された.
・Cryoballoonがその代表であり,4本の肺静脈全ての隔離に要する時間は1 時間前後にまで短縮され,さらに成功率についても,従来の高周波アブレーションと同等であることが示されており,国内外で使用頻度が増加している.
→発作性Afに対しては,より積極的に適用されるかも.
適応
1年以上の長期持続性Afに対する成績は約60%と下がる.
・持続期間の延長と共に心房の構造的リモデリング(拡大・肥大・線維化など)が進行し,肺静脈や前庭部のみでなく,心房に広くAf発症・持続のための基質が生じるため.
→アブレーションは発症早期に実施することが勧められる.

合併症
合併症は,(心房中隔を貫通させる)Brockenbrough法によって生じる心タンポナーデ,肺静脈内での焼灼による術後の肺静脈狭窄,食道損傷,横隔神経麻痺など.
房室結節アブレーション+両心室ペースメーカ(cardiac resynchronization therpy;CRT)
APAF-CRT試験
血圧コントロール
収縮期血圧130mmHg未満の厳格な降圧が心房細動新規発症の抑制に有効
1)心房細動と高血圧は併存することが多く,両者ともその頻度は年齢とともに増加する.
2)高血圧は心房細動発症の主要リスクであり,交感神経の活性化,RA系の賦活化,心房拡大,心房線維化,左室肥大や拡張障害を含む左室リモデリングが心房細動発症に関与するメカニズムとして考えられている.
3)高血圧はまた冠動脈疾患の発症に関わり,それが心房細動発症のリスク増加につながる.
4)左室肥大や心不全を合併する場合は,RAS阻害薬が有用性が高い.
5)EFrEFではβ遮断薬も心房細動の発症抑制に有用
慢性心房細動においても血圧管理が重要であり,収縮期血圧130mmHg未満を目指す
1)心房細動における脳卒中,動脈塞栓症や全死亡のリスクは血圧依存性に増加する.
2)発作性心房細動の発作頻度抑制や慢性化防止,除細動後の再発防止といった二次予防に対するRAS阻害薬の効果は明確ではない.
適切な血圧管理とともに,心拍数のコントロールが心不全発症予防のために重要