アトピー性皮膚炎 atopic dermatitis

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
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ありふれた外界抗原に対するⅠ型アレルギー反応が皮膚に起こり,慢性・再発性の掻痒を伴う湿疹を主病変とする疾患.

「増悪,寛解を繰り返す,掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義される.
・アトピー素因とは①家族歴,既往歴(気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎のうちのいずれか,あるいは複数の疾患),または②IgE抗体を産生し易い素因のこと.

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疫学

・生後4ヵ月~6歳では12%前後,20~30歳代で9%前後の頻度で認めることが明らかになっている.
・実際のアトピー性皮膚炎は数百万人に至ると考えられている.

原因

皮膚バリア機能,アレルギー炎症,知覚(痒み),循環要因,遺伝要因,黄色ブドウ球菌,発汗などの多彩な因子が関わる.

発症に関わる因子

非アレルギー的要素

皮膚バリア機能・乾燥肌

エアコンの使用増加や発汗の低下による乾燥した環境や石鹸の使用など

神経・かゆみの異常

免疫・アレルギー的要素

Th2型免疫反応
・IgE,肥満細胞,好酸球,Th2細胞,ILC2,ランゲルハンス細胞
・Th2ケモカイン(TARCなど)

Th1型とTh17型免疫反応

細菌感染(黄色ブドウ球菌など)

その他

ストレス(精神的要因),乾燥した気候,不適切な治療,発汗など

フィラグリン遺伝子変異による皮膚バリア機能低下

約20~30%のアトピー性皮膚炎にフィラグリン遺伝子の変異が存在する.

フィラグリン遺伝子の変異の有無に関わらず,中程度から重症の全てのアトピー性皮膚炎患者では,フィラグリンタンパクが減少している.
→原因としてTh2サイトカインが表皮の分化の抑制することが考えられている.

アトピー性皮膚炎発症におけるアレルギー炎症

皮膚バリアに異常が起これば,各種抗原が皮膚内へ侵入しやすくなる.

アトピー性皮膚炎の主な外来抗原(アレルゲン)は,花粉や埃などのタンパク抗原であり,タンパク抗原の曝露に対してランゲルハンス細胞をはじめとする樹状細胞が抗原を取り込み,抗原特異的なヘルパーT細胞を活性化し,Th2型アレルギー反応を誘導する.

Th2環境下では,表皮角化細胞からの抗菌ペプチドの産生が低下し,ブドウ球菌などの細菌やヘルペスウイルスなどのウイルスの皮膚感染が合併しやすい.
・ブドウ球菌は,菌そのものが症状の増悪につながる.

IL-4/5/13などを産生する2型自然リンパ球(group 2 innate lymphoid cell;ILC2)も注目されている.

アトピー性皮膚炎の患者の上皮細胞は,TSLP(thymic stromal lymphopoietin)を高発現している.
・掻把などにより表皮角化細胞より産生されたTSLPは,近傍に存在するランゲルハンス細胞に発現するTSLP受容体に作用してTh2誘導を介してIgE産生を促す.
・TSLPは直接好塩基球に作用してIL-4の産生や増殖を促進させることにより,アレルギー発症を誘導する.

病態

一般に 1 つのみの抗原だけでなく,多くの抗原に対する Ⅰ型アレルギー反応が主体をなす.
・乳幼児期においては食物が抗原となることが多く,それ以後ではダニや花粉が抗原となることが多い.

Ⅳ型アレルギー,皮膚の感染(異物侵入),自律神経異常,情緒因子などの因子も複雑に関与している.

強い掻痒感が出現し,それを“掻く”ことによってさらに病変が広がるのが特徴.

病理

肥満細胞のほか,好酸球やリンパ球などの炎症細胞の浸潤が顕著である.
・肥満細胞はアレルゲンのみでなく,神経ペプチドによっても反応,脱顆粒する.

表皮の肥厚および海綿状態とともに,角層のセメント物質であるセラミドの減少が異物抗原の侵入を容易にしていると考えられている.

合併症

特に顔面の重症例に多い眼症状(白内障,網膜剥離など),単純ヘルペス感染症の重症型であるカポジー水痘様発疹症,伝染性軟属腫(水いぼ),伝染性膿痂疹(とびひ)などがあげられる.

気管支喘息やアレルギー性鼻炎などを合併していることがある.

通常,内臓は侵されない.

症候

「アレルギー体質の人に生じた慢性の痒い湿疹」
激しい痒みを伴い,発疹は湿疹病変となる.

急性の病変としては赤くなり(紅斑),ジクジクしたぶつぶつ(丘疹、漿液性丘疹)ができ,皮がむけてかさぶたになる(鱗屑、痂皮)状態.

慢性の病変としてはさらに皮膚が厚く硬くなったり(苔癬化),硬いしこり(痒疹)ができたりする.

発疹はおでこ,目のまわり,口のまわり,くび,肘・膝・手首などの関節周囲,背中やお腹などに出やすく,左右対称性に出る.
・特に肘,膝の屈側部などに出現する.
・下眼瞼の皺襞形成(Dennie-Morgan徴候)や眉毛部外側の脱毛(Hertoghe徴候)などもみられる.

皮膚症状は年齢により変化する.
1)乳幼児期:顔面,頭部に紅斑や丘疹が出現し,次第に全身に拡大する.この時期では湿潤傾向が強い.
2)小児期:皮膚は次第に乾燥性となり,苔癬化局面がみられる.
3)思春期・成人期:元来思春期までに軽快,治癒するのが一般的だったが,近年,成人期まで慢性化する例が増加している.皮膚はさらに乾燥化し,角化性丘疹,落屑,肥厚,苔癬化も著明となる.

白色皮膚描記症→鈍なもので皮膚を擦ると白くなる現象

検査所見

血清総IgE(RIST)値が多くの例で上昇する.

特異的IgE(RAST)抗体が多くのアレルゲンに対してみられるが,特に,ダニやハウスダストに対して強陽性を示すことが多い.

皮膚反応(プリック反応)も陽性を示す.

ダニによるパッチテストがしばしば陽性を示すが,このことは Ⅳ型アレルギー反応(遅延型)の関与も示唆する.

末梢血好酸球もしばしば増加する.

診断

特徴的な皮膚症状,アトピー性疾患の合併,既往歴,家族歴,および RIST および RAST の高値などから診断する.

その他診断の参考になるものとして,家族に気管支喘息,アレルギー性鼻炎,結膜炎,アトピー性皮膚炎があるか,過去に気管支喘息,アレルギー性鼻炎,結膜炎などがあったか,血清IgE値の上昇があるかなどがある.

重症度

軽症:面積に関わらず,軽度の皮疹のみみられる.
中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる.
重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上,30%未満にみられる.
最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる.

治療

治療のゴールは,「日常生活を不自由なく過ごせること」.

最も重要なポイントは,炎症の初期に十分な強さを有するステロイド外用薬を用いて,しっかり炎症を抑えること.

生活指導

皮膚をできるかぎり清潔に保ち,皮膚の感染を避ける.

皮膚への刺激を少なくする.

ダニの駆除など判明している抗原をできるだけ除く.

食物アレルゲンに関しては,関与が確実なもののみ避ける.

原因,悪化因子の除去

2歳未満の場合には順に食物,発汗,環境因子,細菌真菌などがおもなもので,13歳以上の場合には環境因子,発汗,細菌真菌,接触抗原,ストレス,食物などが考えられる.

2歳から12歳までは乳幼児から成人のパターンへ移行していく過程.
・個々の患者によって原因,悪化因子は異なるのでそれらを十分確認してから除去や対策を行う.

スキンケア(異常な皮膚機能の補正)

アトピー性皮膚炎における主な皮膚機能異常とは,水分保持能の低下,痒みの閾値の低下,易感染性をいう.

皮膚の清潔を保つ.
(1) 汗や汚れは速やかにおとす.
(2) 強くこすらない.
(3) 石鹸シャンプーを使用するときは洗浄力の強いものを避け,十分にすすぐ.
(4) 痒みを生じるほどの高い温度の湯を避ける.
(5) 入浴後にほてりを感じるような沐浴剤,入浴剤を避ける.
(6) 入浴後に適切な外用剤を塗布する.

皮膚の保湿
(1) 入浴シャワー後は必要に応じて保湿剤を使用する.
(2) 患者ごとに使用感のよい保湿剤を選択する.軽微な皮膚炎は保湿剤のみで改善することがある.

その他
(1) 室内を清潔にし,適温適湿を保つ.
(2) 新しい肌着は使用前に水洗いする.
(3) 洗剤はできれば界面活性剤の含有量の少ないものを使用する.
(4) 爪を短く切り,なるべく掻かないようにする.

薬物療法

抗ヒスタミン薬(H1拮抗薬)内服が原則である.

ステロイド外用薬については議論のあるところだが,一般的に必要である.

使用する場合はできるだけ作用の弱いものから始める.

最近では免疫抑制薬としてのタクロリムス外用薬の有効性が確立しており,積極的に使用する.

1~2週間をめどに十分な効果が認められた場合にはステップダウン(より弱い治療の選択)し,逆に十分な効果が見られない場合にはステップアップ(より強い治療の選択)する.

ステロイド外用薬

強さ,軟膏,クリームなど剤型がいろいろあるので重症度に加え,個々の皮疹の部位と性状及び年齢に応じて選択する.
・強度と使用量をモニターする習慣をつける.
・長期使用後に突然中止すると皮疹が急に増悪する事があるので,中止あるいは変更は医師の指示に従う.
・ステロイド外用薬は顔面にはなるべく使用しないようにする.
・使用する場合でも,可能な限り弱いものを短期間にとどめるよう気を付ける.

ステロイド外用薬の局所の副作用としては,皮膚の萎縮,血管拡張,毛嚢炎などが主なもの.
・特に顔面において発現しやすいので,顔面の症状に対してステロイドはできるだけ使用せず,使用するときは弱いものを短期間にとどめ特に注意深く観察することが望まれる.
・体幹,四肢ではこれらの副作用は比較的まれなので,皮疹の程度に応じた適切な強さの外用療法を行えば,副作用は生じにくい.

ステロイド内服

長期間のステロイドの内服は全身的な副作用の発現を引き起こし,アトピー性皮膚炎の治療としては,外用療法に比べて危険性の方が高いと考えられ,最重症例に一時的に使用することはあっても,原則としては使用しない.

免疫抑制薬

16歳以上の場合には免疫調整剤であるタクロリムスの外用(プロトピック軟膏0.1%)が,2~15歳には同0.03%が使用できる.

ステロイド外用薬の副作用の出やすい部位やステロイド外用薬の効果の見られない病変部に使用し,特に顔面,頸部の症状に有用性が認められている.

免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル®)の内服は既存の治療に抵抗性のある16歳以上の患者で,3ヶ月以内に休薬することが使用指針により求められている.

デュプリマブ

デュピクセント® サノフィ 2018年承認

ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤.
アトピー性皮膚炎治療薬として初の生物学的製剤→IL-4とIL-13の作用を阻害する.

アトピー性皮膚炎,気管支喘息に適応がある.

・1シリンジにデュピルマブ(遺伝子組換え)300mgを含有するプレフィルド・シリンジ.
・投与開始日に600mgを皮下注射し,その後,2週間に1回300mgを皮下注射.

デルゴシチニブ

コレクチム® 軟膏 0.5%
2020年4月アトピー性皮膚炎に対する外用治療薬として承認

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で,JAK ファミリーのキナーゼをすべて阻害し,免疫細胞の活性化を抑制する.

1)悪性リンパ腫や皮膚癌のリスクの説明が不要.
2)刺激感が少ない.
3)強い紫外線を気にしなくてよい.
4)やや高価(タクロリムスの1.4倍)

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