抗MRSA薬

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

MRSA感染症の治療の第1の要点は,感染症の原因細菌となっているか,単なる定着かの鑑別にある.

1)抗MRSA薬の使用は,耐性菌の出現を促す可能性があるため,感染症に限って治療を行うことが必要である.
2)定着状態では使用しない.
→グラム染色所見で貪食像の有無を確認することが求められる.
3)手術部位感染症(SSI:surgical site infection)では,感染巣の適切なドレナージが原則であり,発熱,白血球数,CRPなどの感染徴候が認められない場合は,不必要に抗菌薬を選択する必要はない.

血中濃度モニタリング(TDM:therapeutic drug monitoring )を行い,治療有効域を探り,かつ,中毒域を回避する.

MRSA 感染症の治療ガイドライン―改訂版―2019(ダウンロード)
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/guideline_mrsa_2019.pdf

バンコマイシン vancomycin;VCM

塩酸バンコマイシン注® 500mg

第1選択薬

MRSA感染症における使用経験とEvidenceが豊富である.

グリコペプチド系抗菌薬
細菌表面のリン脂質に結合し,細胞壁合成を阻害する殺菌性の抗菌薬.

スペクトラム
GPC,Clostridium属,Actinomyces,Peptostreptococcus属
・近年MRSAのバンコマイシンに対して,耐性ではないがMICが上昇している株もみられるようになり,このような株にはトラフ値を10~15μg/mLに上げるほうが効果良好であると報告されている.

1)内服薬は腸管から吸収されず、MRSA感染症では使用しない.
→メトロニダゾールに反応しないCDI(Clostridium difficile infection)では使用される.
2)体内分布は比較的良好なものの胆道系・髄液への移行はあまり良くない.

適応

バンコマイシンの使用が適切であり、容認できる状況<CDC>
・βラクタム剤耐性グラム陽性菌による重症感染症の治療
・βラクタム剤に重症アレルギーのある患者にグラム陽性球菌感染症の治療を行う場合
・抗菌薬投与に関連した腸炎の治療において,メトロニダゾールに反応しない場合,またはその腸炎が重症で生命の危険がある場合
・心内膜炎の危険性が高い患者に対する予防投与
・MRSAやメチシリン耐性表皮ブドウ球菌による感染率が高い施設で,人工物や装置を移植する心臓血管系の手術や人口骨頭置換術等の外科手術に対する予防投与(手術の直前にバンコマイシンを1回投与し,手術が6時間以上続く場合は同剤を追加する.
*予防投与は最高2回以内に止めるべきである.

バンコマイシンの使用を控えるべき状況<CDC>
・生命に危険を及ぼすβラクタム剤アレルギー患者以外の患者に対するルーチンの外科的予防投与
・MRSA感染発生率が高くない病院において,グラム陽性菌による感染が疑われる所見がない顆粒球減少発熱患者に対する経験的抗菌薬療法.
・コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が血液培養1本のみから検出され,同時に採血した他の血液培養は陰性である場合(血液培養の汚染が考えられる場合)の治療.
・βラクタム剤耐性のグラム陽性菌が培養で検出されなかった患者に対する継続的な経験的治療.
・留置中心静脈カテーテルや末梢カテーテル由来の感染,またはコロナイゼーションを予防するための全身あるいは局所(抗菌薬によるロック)投与
・消化管の選択的な除菌
・MRSAのコロナイゼーションを根絶させるために用いる
・抗菌薬関連腸炎の治療において,最初から用いる
・出生時体重が非常に小さい乳児(1500g未満)に対するルーチンの予防投与
・βラクタム剤感受性グラム陽性菌感染を起こした腎不全患者の治療
・バンコマイシン溶液を局所や洗浄に用いる

投与方法(抗菌薬 TDM ガイドライン 2015)

初回投与量
15~20mg/kg実測体重(max 2g/回)を12時間おき
・重篤な感染症や複雑性感染症の場合は,早期に血中濃度を上げるために初回のみローディングドーズ 25~30mg/kg実測体重を考慮する.

2回目からの投与量
腎機能正常の場合、15~20mg/kg実測体重を12時間おきが目安
・2回目からの投与量と投与間隔については、TDM担当者(薬剤師)に相談する.

4(5)回目の投与直前に血中濃度(トラフ濃度)を測定する.
・最低血中濃度(トラフ値)を10~15μg/mL(重症感染症では15-20μg/mL)となるように調節.
・最高血中濃度(ピーク値)は20~40μg/mL.治療効果と副作用モニタリングのため測定(特に必要が無い限りは行わなくてよい )

腎機能低下(CCr<50)
・1 回量は15~20mg/kg実測体重を目安として,投与間隔を24時間またはそれ以上(1日おきなど)に延長して調整する

HD
初日15~25mg/kg実測体重(CKDガイドラインは30)を1回実測体重(初回は多め推奨) ,次回の透析日から1回10mg/kg実測体重(大体500mg)を透析後に週3回(HDで除去される).

投与速度
500mgあたり30分以上
→1g以下の場合:1時間点滴,1gより多い場合:2時間点滴
溶解液:5mg/mL以下の濃度が望ましいとされるが,500mgを100mLに溶解→非現実的

主な副作用

毒性が強く,腎毒性や聴毒性,骨髄抑制などの副作用が有名.

腎障害

1) 腎障害はVCM単独で5%に,アミノグリコシドとの併用で22%に出現するという報告がある.
2)透析をしていない進行したCKD患者の場合には特に注意する)

Red man症候群

1)VCM投与直後から上半身を中心として発疹,紅斑,掻痒,発熱などの症状を起こす.
2)VCMを急速に点滴することにより血管周囲にヒスタミン遊離が生じるために起こるとされ,点滴速度を落とすことで防止できる.
3)抗ヒスタミン薬の前投与も選択の一つ.

聴覚障害

点滴終了1~2時間後の濃度が60μg/mLを超える状態が続くと聴覚障害をきたす.

テイコプラニン teicoplanin;TEIC

タゴシッド注® 200mg

ポリペプチド系抗菌薬

1)バンコマイシンより優れているデータはないため,第1選択にはならない.
2)VCMと同様の機序だが,比較してTEICの方が副作用の頻度が少ないとされているが,臨床的に特徴や注意点などほぼ同一.
3)何らかの理由でVCMが使用できない場合にTEICの使用を考慮.
4)バンコマイシンで薬剤熱・薬疹がでた場合,比較的安全に使用可能とされる(副作用10%未満).

投与方法

開始 4 日目までに目標トラフ値に到達させるために負荷投与を行う.

ローディングドーズを含む投与開始 3 日間 (抗菌薬TDMガイドライン2015より)

目標トラフ値は,15-30μg/mL に設定(重症例では20-30).
血中濃度が定常状態になるのに2~3日を要する.
外部発注のため数日間かかる.

リネゾリド linezolid;LZD

ザイボックス®

オキサゾリジノン系抗菌薬
・細菌のリボソームに結合し,蛋白合成を阻害することで静菌的作用を有する.

スペクトラム
グラム陽性菌、嫌気性菌
・VCM耐性の腸球菌(VRE)や黄色ブドウ球菌(VRSA)にも効果があるとされる.

1)肺炎、皮膚軟部組織感染症が適応となる.
・菌血症への治療効果は、バンコマイシンに対して劣る可能性がある.
2)経口でも吸収が良好なため,点滴と同じ組織濃度が得られる.
3)体内の各臓器に良好に移行
4)悪心/嘔吐/下痢が多く,血小板減少などの副作用の出現することもあり,注意深い経過観察(血算のモニター)と,耐性菌の出現予防ともあわせ長期投与(28日以上)は避ける.

投与方法

(点滴)600mg 12時間おき
(内服)600mg 1日2回
腎障害のある場合にも用量の調節は不要

外来治療が可能だが,VRE耐性用の抗菌薬で外来で気軽に処方するものでない.

アルベカシン硫酸塩  arbekacin sulfate

ハベカシン注®(75・100mg)

アミノグリコシド系
・細菌の蛋白合成を阻害することにより抗菌作用を示し,その作用は殺菌的.
・MRSAの産生する各種のアミノグリコシド不活化酵素に対して安定であるが,二機能酵素(AAC(6’)/APH(2’’))では失活することが報告されている.

投与方法

1回75~100mg 1日1回 点滴静注(1日1回投与がより有効)
抗菌薬TDM ガイドラインではCpeak 15~20 μg/mLを推奨.

副作用

最低血中濃度2 μg/mL以上が繰り返されると,第8脳神経障害や腎障害発生の危険性が大きくなる可能性がある.

ダプトマイシン daptomycin;DAP

キュビシン® 350mg

スペクトラム
多剤耐性を有するものを含む黄色ブドウ球菌,連鎖球菌,腸球菌種が含まれる.
・バンコマイシン耐性ロイコノストック属に対する臨床活性を示す

1)菌血症、IE、骨髄炎、皮膚軟部組織感染症で適応あり.
2)肺サーファクタントで不活化されるため,肺炎患者のためにダプトマイシンを使用すべきではない.
3)バンコマイシンが使用できない場合(進行する腎不全、アレルギー、副作用など),MRSAのVCMのMIC=2で治療経過が悪い場合に、使用を検討する.
4)ゲンタマイシンとの併用でダプトマイシンは,ブドウ球菌や腸球菌を死滅させるのに相乗効果がある.
5)殺菌作用は用量依存的である.Ca2+依存性細胞膜障害.
6)骨,皮膚軟部組織への移行に優れ,糖尿病性足病変においても良好な移行が確認されている.
7)FDA承認は,複雑性皮膚・軟部組織感染症の治療で4mg/kg/日,右心系心内膜炎を含む黄色ブドウ球菌血流感染で6mg/kg/日.
8)ダプトマイシン毒性の二つの主要な原因は,クレアチンホスホキナーゼのレベル上昇とミオパチーで,薬剤中止後にどちらも解決する.
9)治療中に毎週クレアチンホスホキナーゼ値のモニタリングをし,CPKの上昇が通常上限の5倍以上であれば中止することを勧める.
・腎不全とスタチン内服で注意.

投与方法

基本投与量:6mg/kg 24時間おき
重症感染症・IE・骨髄炎・人工物感染・椎体炎の場合:8-10mg/kg 24時間おき
※CCr < 30 ml/minの場合は,48時間おきに投与

キヌプリスチン/ダルホプリスチン  quinupristin-dalfopristin;QPR/DPR

シナシッド®

ストレプトグラミン系抗菌薬
VCM耐性菌感染症の治療薬として開発された新しい抗菌薬.細菌のリボソーム50Sに結合し,蛋白合成を阻害し抗菌作用を発揮する.

スペクトラム
E.faecalis以外のグラム陽性菌,淋菌,一部の嫌気性菌.リネゾリドとほぼ同様なのだが,腸球菌の一種であるE.faecalisは自然耐性を有するため本薬は効かない.

1)元来は静菌性だが,キヌプリスチン:ダルフォプリスチン=3:7の合剤になっており,両方の相乗効果により殺菌性を示す.
2)肝代謝なので、腎機能低下に対して投与量を調節する必要がない.

使用方法

リネゾリド同様,耐性を生まないように適応を厳しく検討して大切に使う.
7.5mg/kg 8時間ごと(中心静脈より点滴静注) 21~72日間

副作用

静脈炎,筋肉痛,関節痛が一般的.
肝のp450を介する薬剤とは相互作用に留意する必要がある.

テジゾリド tedizolid

シベクトロ® 200mg、経口,点滴

オキサゾリジノン系
既存のLZDと同じリボソームの50Sサブユニットに結合して70S開始複合体の形成を阻害することにより,細菌の蛋白合成が阻害され,菌の増殖を抑制する

使用方法

適応は「テジゾリドに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染」

用法用量は「成人は1日1回200mg、点滴静注は1時間かけて投与」

1日1回投与のテジゾリドは,LZDと同様に経口剤(錠剤)と注射剤(点滴静注)があり,腎機能低下例においても用法・用量の調節の必要はなく.絶対的バイオアベイラビリティが高いことから,静脈内投与から経口投与に同じ用量で切り替えることができる.

その他

全国的なサーベイランスで,MRSAの感受性を有する抗菌薬は,ミノマイシン(感受性率約50%),バクタ(バクトラミン)とリファンピシン(ともに95%以上感受性)がある.

マクロライドやニューキノロンに感受性の株は10~15%ほどであり,これは市中型MRSAの可能性がある.

これらの薬剤は,単剤での使用は,耐性菌を誘導する可能性があるので併用もしくは短期とする.

 市中型MRSAではダラシンが有用.

タイトルとURLをコピーしました