インスリン抗体 anti-insulin antibody

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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インスリン抗体には,外因性インスリンによって産生されるインスリン抗体(insulin antibody;IA),と,自己のインスリンに対して産生されるインスリン自己抗体(insulin autoantibody;IAA)がある.

インスリン自己抗体による低血糖をインスリン自己免疫症候群(insulin autoimmune syndrome;IAS)と呼ぶ.

病態

低親和性・高結合能の自己抗体

・抗体は多量のインスリンと結合しやすく,かつ乖離しやすい.
→自発性の低血糖とともにインスリン作用不全による高血糖の原因になる.
・一旦内因性のインスリン分泌が増加し,トラップされた後に解放されることで低血糖が起こる.
・外因性インスリンに対する場合はインスリンの薬理動態に影響し,血糖変動の増大や低血糖頻発の原因となる.

高親和性・低結合能の自己抗体

・インスリンに結合しにくく,結合した場合は離れにくい.
・インスリン製剤など外因性インスリンによって生じる抗体.
・血糖変動に影響を及ぼしにくい.
・インスリン注射歴のある症例にみられる,低血糖になりにくい.インスリン必要量が増加する.

診断

インスリン抗体の存在を疑う病態

1)インスリン製剤によるインスリン作用が弱まったとき
2)大量のインスリン注射量が必要になったとき(単位数をどんどん増やしても血糖コントロールができにくくなったとき)
3)注射部位の発疹,かゆみなどインスリンアレルギーを疑ったとき
4)1型糖尿病の診断時の膵特異的自己抗体の検査として
5)原因不明の血中インスリン高値の原因検索として
6)インスリン製剤未使用者における自発性低血糖の原因検索として

Scatchard解析 スキャッチャード解析

抗体の抗原との親和性・結合量を定量的に抗体の性質を調べる.

高親和部と低親和部の接線が得られ,高親和部の傾き(親和定数K1)と横軸との交点(結合能R1)を評価する.
・K1が高いほど親和性が高く,R1が高いほど結合能が高い.

インスリン自己免疫症候群の血清中のヒトインスリン自己抗体の125I-ヒトインスリンと結合阻害的に作用する非標識インスリンにはヒトインスリンを用いる.

インスリン製剤治療中に産生されたインスリン抗体の場合は,125I-ヒトインスリンにおける非標識インスリンにはヒトインスリンを使用する.

治療

インスリン治療離脱

αGI,分食

夜間の低血糖に対して,眠前にグルセルナ(グルセルナはglycemic index が低い)

最近は,GLP-1受容体作動薬を使用してうまくいった報告が散見される.
・夜間の低血糖が速やかに消失.
・グルカゴン分泌促進作用とともに免疫修飾作用が関連していることが推測されている.

インスリンアナログの変更

ヒトインスリンとインスリンアナログでは構造の違いから抗体減少を期待でき,実際にヒトインスリンやインスリンアルパルトで抗体産生を認める症例でインスリンリスプロに変更して改善を認めた症例,ヒトインスリンやインスリンリスプロ,中間型インスリン,インスリンデテミルでは抗体によって血糖コントロールが困難な症例でインスリングルリジンを導入したところ,抗体の性質が変化してコントロール改善につながった症例などの報告がある.

インスリン抗体量を減らす

SU薬やDPP4阻害薬といった内因性インスリン分泌を促進する薬剤の中止.
→産生された抗体は内因性インスリンにも作用する.インスリン使用量を減らす.

ステロイド治療

血漿交換

保険適応になっておらず,インスリン抗体が一時的に低下するがまた元に戻る.
→時間稼ぎ.その間にインスリン治療が中止できれば・・・

二重濾過血漿交換 double-filtration plasmapheresis;DFPP
体外循環回路に濾過特性の異なる2種類の濾過器を設置し,標準的な血漿交換では除去されてしまうアルブミン分画などの除去を減らし,病因物質の分画のみをより効率的に除去する.

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