抗糸球体基底膜病 anti-glomerular basement membrane disease

医学ノート(なすび用)

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糸球体基底膜(glomerular basement membrane;GBM)に対する自己抗体である抗GBM抗体が原因(Ⅱ型アレルギー)となり,肺出血や急速進行性糸球体腎炎を来す予後不良な疾患

抗GBM抗体により肺胞出血を主体とする肺病変とRPGNの両者が生じた場合にGoodpasture症候群(GPS)と呼ぶ.

病態

抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)

抗糸球体基底膜抗体は,主として糸球体と肺胞に分布するⅣ型コラーゲンα3鎖C末端にあるNC1ドメインⅣ型コラーゲンα3鎖が対応抗原とされる.
*α5鎖(一部α4鎖)のNC1ドメインを抗原エピトープした抗GBM抗体も一部存在することが報告されている.

通常の生体内においてこの抗原エピトープはNC1ドメイン同士の結合で基底膜内に埋没しているが,種々の要因により肺・腎の基底膜が障害され,α3/4/5鎖の 6量体が解離して抗原エピトープが露出することで,抗GBM抗体の産生が誘導されると考えられている.

抗基底膜抗体出現の原因は不明であるが,感染や遺伝子による免疫系の異常が示唆されている.
*喫煙も誘因の一つとして古くからその可能性が報告されている.

T-Cell病

発症・進展に関与する因子として,T-cell epitopeを提示するHLA(human leukocypte antigen)(MHC-classⅡ)の遺伝子多型とT-cellとの一機序が解明された.

ヒト検体でHLA-DRのserotype DR15を介して抗原提示されるとT-cellはThへ分化し,B-cellの抗体産生と腎炎を促進し,病態を進行させる.
・DR1を介して提示されるとTreg(regulatory T cell)へ分化し,GBM腎炎の鎮静化を誘導する.

抗糸球体基底膜抗体腎炎 Anti-glomerular basement membrane antibody nephritis,抗GBM抗体腎炎

抗糸球体基底膜抗体腎炎は循環血液中の糸球体基底膜に対する抗体(抗GBM抗体)の出現により惹起される腎炎.

最も重篤なRPGNの病型とされ,短時間のうちに乏尿~無尿性の腎不全が進行し,不可逆的な腎不全が完成する傾向になる.

1)多くは急性腎炎や急速進行性腎炎の臨床病型を呈し,組織学的には半月体形成性腎炎を示す.
2)60~70%で肺胞出血を併発し,肺胞出血を伴う場合にはGoodpasture症候群と呼ばれる.

疫学

本邦のRPGN患者のうち,抗GBM抗体腎炎の頻度は6.6%,GPSは1.5%と発症頻度は稀であるが,抗GBM抗体腎炎の発症6か月時点の腎生存率は20.9%,死亡率は23.3%と,いずれも予後不良の疾患とされる .

腎病理

組織学的には壊死性半月体形成性糸球体腎炎を呈する.

免疫染色法での,糸球体係蹄壁に沿った(peripheral)IgGの線状沈着(linear)は比較的特異的で,他疾患でみられるのは糖尿病性腎症およびfibrillary glomerulonephritisのみで,鑑別は容易である.

治療

腎予後・生命予後ともに不良な病態であり,治療として迅速かつ重点的な免疫抑制療法と,血漿交換療法の併用治療が推奨されている.

治療開始時に透析を要する程度の高度腎障害を認める場合は,積極的な治療によっても腎予後の改善が見込めないとされ,RPGNガイドラインでも,肺胞出血を伴わない症例では腎障害の程度を慎重に見極め,積極的治療の適応を慎重に判断すると記載されている.
・治療開始時点で透析を要する程度の腎障害を認める場合,1 年後の腎生存率は8%と非常に低く,とくに全糸球体に半月体形成を認める場合は,治療後も全症例が透析を離脱できなかったと報告されている.

初期治療として免疫抑制療法(ステロイドパルス療法+免疫抑制薬=抗GBM抗体の産生抑制)と血漿交換療法(抗GBM抗体の除去)の併用療法を原則とする.

1)免疫抑制薬に関しては,経口副腎皮質ステロイド薬のみでは効果が不十分ないしは副腎皮質ステロイド薬投与量の漸減困難な症例では免疫抑制薬(シクロホスファミド1~2mg/kg/日)の併用が推奨される.
2)腎機能低下例に対しては,投与量の減量or投与を避ける必要がある.

血清抗GBM抗体価は,疾患活動性や再燃のマーカーとして有用とされているが,基本的には一度寛解に至ると再発は稀であるので,GBM抗体陰性化を維持しつつ,免疫抑制薬の漸減中止を目指す.

1)抗GBM抗体消失後の維持療法のエビデンスはきわめて乏しい.
2)抗GBM抗体の産生が6~9ヶ月で自然に正常化することから,少なくともその期間が過ぎるまでは低用量の副腎皮質ステロイド薬の使用を継続することが多い.
→ガイドラインでは,6~12ヶ月は副腎皮質ステロイドを継続し,それ以降は中止を検討すると記載されている.

血漿交換

原則連日または隔日で抗体が消失するまで継続する.
*抗GBM抗体価を定期的に測定しながら,測定感度以下まで血漿交換療法を行うことが推奨されているが,その達成には 10~14 回程度の頻回の血漿交換を要するとされる.
(本邦の抗GBM抗体型腎炎に対する血漿交換療法の保険適用
7回まで)

診断時から透析依存状態+sCr≧5.7mg/dL以上では,透析離脱効果は証明されておらず,肺出血がない場合は血漿交換はされていない.

若年,低い半月体形成率や高い正常糸球体率,短い罹患期間などの回復が見込める要因を見極めて,適応を判断する.

(RTX)

CY不応症例で抗GBM抗体陰性化などの報告があるが,透析離脱効果は明らかでなく,エビデンスは不十分.

(Streptococcus pyogenes由来IgG分解酵素 Immunoglobulin G degrading enzyme of Streptococcus pyogenes;IdeS)

1)ヒトIgGをF(ab’)2断片とFc断片に切断して補体依存性細胞傷害作用と抗体依存性細胞傷害作用を抑制する.
2)IdeS単回投与により,血漿交換での抗体陰性化に抵抗した症例に対して抗体を陰性化し,かつ,糸球体IgG-Fcの沈着を軽減させた.

非典型抗GBM抗体腎炎

酵素免疫測定法で抗GBM抗体(構造変化したα3NC1 domainに対する抗体)が検出できない,臨床経過が非典型的な腎炎.

atypical-抗GBM抗体腎炎

1)IgG1,4が多い.
2)非半月体形成の種々の増殖性腎炎で腎予後良好

IgG4-抗GBM抗体腎炎

1)構造変化がないα3NC1 domainに対するIgG4の抗体.
2)若年女性の喫煙者に肺病変を呈する.
3)RPGNを呈するが,腎予後良好.
4)再発する.

Alport症候群の腎移植後

常染色劣性(α3,4)X連鎖(α5)の抗原暴露で発症し,X連鎖(α5鎖)はα5鎖が抗GBM抗体の対応抗原.

IgA型-抗GBM抗体腎炎

1)腎予後不良(ほぼ腎死),肺出血4割.
2)他の腎炎,自己免疫疾患と合併.

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なすび院長

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