アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)

医学ノート(なすび用)

angiotensin receptor-neprilysin inhibitor;ARNI(アーニィ)

サクビトリルバルサルタン エンレスト® 50mg/100mg/200mg

「ARBであるバルサルタン」と「ANP/BNP/CNPなどのナトリウム利尿ペプチドを分解するネプリライシンを阻害するNEP阻害薬サクビトリル」を1:1で結合含有させた合剤.

ARNIの現実的な使い方(youtube うし先生 2021/11/20)

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薬理

薬効

投与されると,速やかにサクビトリル(NEP阻害薬)とバルサルタン(ARB)に分離される.

サクビトリルは,吸収後3~4時間で活性体(LBQ657)に変換され,ネプリライシン阻害作用を発揮する.
・内因性ナトリウム利尿ペプチドの量が増加し,利尿作用や血管拡張作用によって体液量が減少して心負荷が軽減される(飲むハンプと言われることがある).cGMPも増加する.
・ACEやaminopeptidase Pは阻害しない.
→ブラジキニンの分解が弱く,血管浮腫が少ないと期待される.

アンジオテンシンⅡも分解する作用があるため,単剤ではRAS系が亢進する.
→ARBが合剤になっている.

・ネプリライシンは,体内に広く分布する膜結合型エンドペプチダーゼであり,中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase;NEP)とも呼ばれる.
・ネプリライシンの主たる作用は利尿ペプチドの分解
・ネプリライシンは,その他,ブラジキニン,アドレノメデュリン,サブスタンスP,エンドセリン,アンジオテンシンⅡの分解にも関与する.

なすび院長
なすび院長

早期からの効果→降圧,体液貯留抑制効果
長期予後改善効果→心室リモデリング抑制

BNPの分解も抑制してしまうため,ARNI下での評価はNTproBNPを測定する.

副作用

血管浮腫(0.2%),腎機能障害(2.4%),低血圧(8.8%),高K血症(4.0%)

なすび院長
なすび院長

腎機能低下や高K血症の頻度は,エナラプリルとほぼ同等か低いが,血圧低下作用は明らかに強い.

要注意ケース

血管浮腫の既往がある患者は禁忌.

血圧が低い患者(収縮期血圧≦100mmHg)
重度の腎機能低下(eGFR<30)
血清Kが高い患者

慢性心不全

ACE 阻害薬 or ARB,β遮断薬,MRAがすでに投与されているHFrEFにおいて,症状を有する(or効果が不十分)場合,ACE阻害薬 or ARBからの切替えを行う(ClassⅠ).

欧米のガイドラインでは,すでにACE阻害薬などの標準治療下にも関わらず,心不全症状を有する心機能の低下した心不全患者に対して,ACE阻害薬からARNIへの切り替えがクラスⅠ,エビデンスレベルBとして位置づけられている.
HFrEFでは有効であった(PARADIGM-HF試験)が,HEpEFでは有意差なし.本邦でもまだエビデンスは出ていない.

使用方法

慢性心不全(標準的な治療を受けている患者に限る)→ 50mg/100mg/200mg

開始:1回50mgを1日2回経口投与.
→忍容性が認められる場合は,2~4週間の間隔で1日100mg 1日2回,1日200mg 1日2回まで増量.

増量基準
①症候性低血圧がなく,収縮期血圧≧95mmHg
②血清カリウム値≦5.4mEq/L
③eGFR≧30mL/min/1.73㎡ and eGFRの低下率≦35%

開始時注意
アンジオテンシン変換酵素阻害薬 or アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬から切り替えて投与する(併用は禁忌).
*血管浮腫があらわれるおそれがあるため,本剤投与前にアンジオテンシン変換酵素阻害薬が投与されている場合は,少なくとも本剤投与開始36時間前に中止する.
*本剤投与終了後にアンジオテンシン変換酵素阻害薬を投与する場合は,本剤の最終投与から36時間後までは投与しない.

エビデンス

PARADIGM-HF試験
NYHA心機能分類Ⅱ度以上,LVEF 40%以下のHFrEF患者が対象
・18歳以上
・BNP≧150pg/mL or NT-proBNP≧600pg/mL
・併用薬はβ遮断薬90%以上,MRAが50%以上に投与され,ガイドラインで推奨された標準的治療が十分にされていた.
サクビトリルバルサルタン200mg VS エナラプリル10mg×2
一次エンドポイント(心血管死or心不全の入院の複合,心血管死,心不全入院)
→有意にサクビトリルバルサルタンの方が有意に少なかった.
 20%の心血管イベント抑制

1)全死亡も減少させた.
2)対象のエナラプリルの投与量が18.9mg/dayと最大用量に近く,サクビトリルバルサルタンは十分量のエナラプリルよりも有効であることが示された.

PARALLEL-HF試験(国内第Ⅲ相前向き比較試験)
日本人HFrEFにおけるサクビトリルバルサルタンの有効性と安全性を検証.
→有効性が立証され,本邦でも使用可能に

PIONEER-HF試験
急性非代償性心不全で入院した患者のうち,急性期治療により安定した患者(収縮期血圧≧100mmHgが6時間以上持続,24時間以上利尿薬の増量がなく強心薬も使用していない)が対象
入院から登録までの中央値は68時間.
約半数の症例で,ACE阻害薬 or ARBが未投与.

なすび院長
なすび院長

現時点で日本人HFpEF患者に対する本薬の有効性が示されたとは判断できない.

高血圧症

高血圧症→100mg/200mg
*2021年9月に「高血圧症」の適応が追加

1回200mgを1日1回.
*年齢,症状により適宜増減.
*最大投与量は1回400mgを1日1回

過度な血圧低下のおそれ等があり,原則として本剤を高血圧治療の第一選択薬としない
ARNIを高血圧の第一選択薬にできない理由(日経メディカル2021/10/22)

医学ノート(なすび用)
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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
勉強好きで,私用に細々とまとめています.

妻:りんご
長女:いちご
次女:れもん
三女:みかん
事務長:かえる

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