狭心症 angina pectoris;AP

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

狭心症は心筋虚血を原因とする胸痛症候群.

QOLを低下させるだけでなく,心筋虚血に伴う致死性不整脈による突然死や繰り返す心筋虚血による心機能の低下,冠動脈プラークの不安定化による不安定狭心症への移行や急性心筋梗塞の発症につながり,その結果として,虚血性心筋症など,多くの生命を脅かす心血管イベントを発症する.

ischemia with non-obstructive coronary arteries;INOCA
狭心症症状を有し,非侵襲的検査で虚血所見が認められるにも関わらず,冠動脈造影で狭窄病変を認めない病態.
→冠攣縮,微小血管障害による狭心症

器質的冠動脈疾患(労作性狭心症) exercise-induced angina

心外膜を走行する冠動脈において動脈硬化による高度の器質的病変(狭窄)が形成され,一定以上の労作による虚血が誘発される病態.

機能的冠動脈疾患(冠攣縮性狭心症) coronary spastic angina

器質的病変は認めないが,冠動脈の一過性血管攣縮により虚血が生じる病態.

東洋人,特に日本人に多い.

病態には,血管内皮機能異常(内皮細胞からのNOの産生低下)が関与するとされる.

夜間~早朝にかけて安静時に生じる胸痛,運動耐容能の著明な日内変動(早朝の運動能の低下),過換気(呼吸)により誘発されるなどで疑う.

診断

12誘導心電図やHolter心電図で自然発症のST上昇を捉えることができれば,診断可能だが,その所見を捉えることは容易ではない.

冠攣縮誘発試験

冠動脈造影を実施し,アセチルコリンやエルゴノビンを用いて冠攣縮を誘発させる..

確定診断.

冠微小血管障害(微小血管狭心症) microvascular angina

弁膜症や心筋症などがなく,直径が100μm以下の微小な冠動脈の拡張不全・収縮亢進のために心筋虚血が一時的に起こることによって,胸部圧迫感が労作と無関係に安静時にも起こる狭心症.

女性の方が男性よりも罹患しやすい.

病態

機序としては,
①器質的な微小血管障害:細動脈の血管壁肥厚,毛細血管密度の低下(古典的な冠危険因子,左室肥大,心筋症などで生じる)
②微小血管の攣縮:小動脈レベル
③①と②の両方

タイプ1

狭心痛を主徴とする非閉塞性冠動脈疾患(狭義の微小血管狭心症).

タイプ2

心筋症に合併する冠微小循環障害.

タイプ3

器質的閉塞性冠動脈疾患に随伴する冠微小血管障害.

タイプ4

PCIなどの冠動脈治療や心カテーテル検査の際に生じる医原性冠微小循環障害.

診断

1)労作時の胸痛や呼吸困難の狭心症症状がある
2)閉塞性冠動脈疾患がない(狭窄率<50%,FFR>0.80)
3)客観的な心筋虚血が証明されている(機能的画像診断による)
4)微小血管障害が証明されている(侵襲的検査ではCFR,冠微小血管抵抗の測定).
・心外膜冠動脈に血行動態的有意狭窄がない状況下でCFR<2.0
・冠微小血管抵抗を測定する手段としては,hyperaemic microvasucular resistance(HMR),index of microvascular resistance(IMR)がある.

診断

最も重要なのは問診.
これに基づき,解剖学的評価,生理学的評価を選択・施行し,診断を確定させる.

治療

治療目標は大きく2つ.
1)心筋梗塞の発症やその後に生じる心不全や不整脈による死亡を防止し,予後を改善させる.
2)虚血を解除し,狭心痛をコントロールすることで症状を改善し,QOLを改善させる.

禁煙

特に冠攣縮性狭心症では徹底させる.

β遮断薬

適応

労作性狭心症に対して第一選択.
*本邦では,器質的狭窄に加え,冠トーヌスの亢進や冠攣縮の関与もあり,単剤投与は慎重にする.

症状のコントロールがつかない場合は,硝酸薬やCa拮抗薬,ニコランジルなどとの併用を検討する.

微小血管狭心症に対しても推奨される.
海外ではこちらを使用することが多い.

メカニズム

カテコラミンによりβ受容体が活性化され生じる心拍数の増加,房室結節伝導の促進,心筋収縮性の増加を抑制する.
1)心収縮力,動脈圧が低下→心筋酸素需要量を低下
2)心拍数の減少→拡張期の冠灌流時間を延長→左室心筋への血液供給を増加させる
3)運動中の心拍数と血圧の積(double product)を低下

受容体の選択性,内因性交感神経刺激作用(intrinsic sympathomimetic activity;ISA),膜安定化作用(membrane stabilizing activity;MSA)により分類される.

狭心症に関しては,β1遮断性でISAを持たないものが望ましいとされる.

注意点

相対的にα受容体を有意にすることで冠攣縮性狭心症を誘発する可能性が危惧される.
→冠攣縮性狭心症が疑われる場合は,まずCa拮抗薬などの冠拡張薬を優先する.

高齢者では,徐脈などの副作用に十分に注意する.

禁忌

絶対禁忌
高度徐脈,高度房室ブロック

相対禁忌
喘息,閉塞性動脈硬化症

インスリン投与中は低血糖症状をマスクする可能性があり,注意が必要.

Ca拮抗薬

長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬・ジルチアゼム徐放剤

適応

冠攣縮性狭心症で第一選択.

血圧・心拍数などからそれぞれの症例にあった薬剤を選択する.
コントロールがつかない場合には,硝酸薬やニコランジルなどとの併用が検討される.

・β遮断薬は冠攣縮を増悪する危険性があるので,単独使用せずにβ1選択性遮断薬にして,Ca拮抗薬と併用させる.
・降圧が不十分な場合にはCa拮抗薬やRA系阻害薬を併用する.

本邦では,微小血管狭心症にも使われることが多い.
・原因として微小血管攣縮の症例が海外と比較して多いことが挙げられる.

メカニズム

Caチャネルをブロックすることにより,細胞外から細胞内へのCaイオンの流入を阻害し,血管平滑筋の収縮を抑制する.
→末梢血管を拡張させ,後負荷を軽減
→1)心筋酸素消費量を減少
 2)冠血管を拡張させ心筋酸素供給量を増加

硝酸薬

労作性狭心症,冠攣縮性狭心症いずれにおいても有効.

メカニズム

生体内で内皮由来弛緩因子(endothelium-derived relaxing factor;EDRF)の本体と考えられる一酸化窒素(nitric oxide;NO)に変換され,血管平滑筋弛緩作用を示す血管内皮非依存性の血管拡張薬.
1)冠動脈の拡張
2)側副血行の改善による心筋灌流量の増加
3)前負荷・後負荷の軽減による心筋酸素需要量の低下

外因性NOドナーとしてその分子構造中の-ONO基が平滑筋細胞内で酵素依存性にNOとなる.
→グアニル酸シクラーゼを活性化して,cGMPを増加
→増加したcGMPはプロテインキナーゼG(protein kinase G;PKG)を活性化
→筋小胞体Ca2+ポンプ調節蛋白であるホスホランバンをリン酸化
→筋小胞体へのCa2+取り込みを増加させ,細胞内Ca2+濃度を減少
→血管平滑筋弛緩

硝酸エステル薬の作用する冠血管径は100μm以上と比較的太いため,虚血領域から血流を奪うcoronary steal現象は起こらないと考えられている.

発作時

即効性のある舌下錠や噴霧製剤は,発作の即時寛解に適しており,労作開始の数分前に使用し,発作を予防することも可能.

発作時の連用は5~10分おきの2回程度までが安全
・それでも症状の改善が得られない場合は,急性冠症候群への移行を考慮し,効果発現が早く,用量調整が容易である注射製剤を使用する.

長期投与

持続性硝酸薬の内服・貼付は症状を緩和し運動耐容能を改善する.

長期投与により耐性を生じることが報告されている(機序は不明).
・予防策として,間欠投与など薬剤を投与しない時間を作るよう配慮が必要.

優れた症状改善効果を有するが,生命予後改善効果は示されていない.
→PCIなどの血行再建施行例では,その症状改善と同時に中止するのが一般的.

副作用

頭痛が多く,服薬の継続が困難になる場合がある.
→数日間で軽減することもあるため,投与に際しては,予め患者に説明を.

禁忌

相対禁忌
1)閉塞性肥大性心筋症,高度大動脈弁狭窄症
→血管拡張作用により血圧低下を来たし,失神を誘発する可能性がある.

併用禁忌
ホスホジエステラーゼ5阻害薬(シルデナフィル,バルデナフィル,タダラフィル)
→併用により,重篤な低血圧を起こす可能性がある.
*高齢者男性では,前立腺肥大症や勃起機能不全の加療歴を確認!

カリウムチャネル開口薬

nicorandilは,Kチャネル開口作用を持つ薬剤.

血管平滑筋のKチャネルを開口することで血管を拡張し,抗狭心症作用を示す.

心筋内ミトコンドリアにおけるATP感受性Kチャネルを開口させ,薬理学的プレコンディショニング作用も併せ持つ.

標準的治療を受けているハイリスクの安定狭心症に対して,nicorandilはプラセボと比較して,1次エンドポイントである冠動脈疾患死,非致死性心筋梗塞胸痛による予定外入院の発症を有意に抑制し(相対リスク17%減少),その予後改善効果が示されている(IONA試験,2002年).

スタチン

抗酸化ストレス作用,抗炎症作用,内皮機能改善作用などが,冠微小循環障害の改善に寄与する.

タイトルとURLをコピーしました