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定義
WHOによる成人(65歳未満)の貧血の定義
男性Hb 13g/dL以下,女性Hb 12g/dL以下
高齢者の場合は,患者の活動性に応じた診療をする(Hbの閾値を一律に下げない).
疫学
64歳以上の年齢の約15%,85歳以上では約30%が貧血状態にあるとされている.
原因
一般成人で圧倒的に頻度が高いのは鉄欠乏性貧血.
高齢者の場合は,複数の要因が関与することが多い.
「原因不明の貧血」(unexplained anemia;UA)とされていた貧血でも,体細胞遺伝子変異検査まで行えば,原因を特定できることもある.
→idiopathic cytopenia of undermined significance with isolated anemia(ICUS-A)や,白血球の体細胞遺伝子変異が検出された場合はclonal cytopenia of undetermined significance(CCUS)などの診断名が用いられる傾向にある.
貧血の影響
高齢者の生命予後や臓器障害に貧血が影響する.
→心血管障害のリスク,認知機能の低下,不眠症,抑うつ状態,QOLの低下,転倒や骨折リスクの上昇など
→入院回数や入院期間の延長とも関連
検査
平均赤血球容積 mean corpuscular volume;MCV
網赤血球
RNA含量が多い赤血球が全赤血球当たり何%存在するかが自動血球計数器で測定される.
現在は,×赤血球数して,万/μLと絶対数で標記するのが一般的.
頻度が高い原因
栄養素の欠乏
巨赤芽球性貧血
・ビタミンB12の吸収能は加齢とともに低下し,PPI・H2拮抗薬の長期服用や,ピロリ感染による萎縮性胃炎によって胃酸が低下すると欠乏が起こりやすい.
・高齢者では認知症が前面に出ることもある.
銅欠乏
・胃切除後や吸収不良症候群患者で神経症状を伴う場合や経管栄養中の患者,亜鉛摂取中の患者で貧血をみた場合は銅を測定
エリスロポエチン産生の低下
高齢者のUAの一部は,CKDの有無によらず,血清エリスロポエチン濃度が低下することが報告されている.
高齢者でしばしばみられる慢性炎症はEPO産生を低下させる.
↓
他に原因がなく,貧血による活動性の低下がみられる場合は,血清EPOを測定し,貧血に見合った上昇がない場合はESA投与を検討.
慢性疾患による貧血 anemia of chronic disease
慢性炎症・悪性腫瘍・CKD
→炎症性サイトカインにより肝臓からのヘプシジン産生が亢進
→腸管内皮細胞やマクロファージ内での鉄運搬蛋白であるフェロポルチンの作用が抑制
→鉄が腸管内皮細胞やマクロファージに留まる
→血清鉄やHbが低下
TSAT>16%,フェリチン上昇
基礎疾患がなくても,高齢者ではエストロジェンやテストステロンの低下がヘプシジンの産生を促し,貧血になることがある.
原因不明の貧血 unexplained anemia;UA
Hb 9~11g/dLと貧血は軽度で1年以上変化がなく,かつ原因疾患が特定できないもの.

あくまでも一時的な診断名であり,経過を十分に観察する.
体細胞遺伝子変異をきたした造血幹細胞によるクローン性造血が注目されている.
白血球や血小板の減少を伴う貧血
造血幹細胞の異常(MDS),造血幹細胞の減少(再生不良性貧血)を疑う.
・人口の高齢化による,疾患の頻度は増加している.