筋萎縮性側索硬化症 amyotrophic lateral sclerosis;ALS

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なすび医学ノート

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上位・下位運動ニューロンが徐々に変性脱落することによって全身の随意筋が委縮して寝たきりとなり,嚥下筋麻痺や呼吸筋麻痺によって全身の随意筋が委縮して寝たきりとなり,嚥下筋麻痺や呼吸筋麻痺によって,多くの場合5年以内に死亡する,過酷な致死性疾患.

経過は症例により異なるが,片側上肢の筋萎縮にはじまり,反対側上肢,両下肢へ筋萎縮が進行して,その間に言語障害,嚥下困難などの球麻痺症状および呼吸筋麻痺が加わる経過をとることが多い.

人工呼吸器による呼吸管理を行わないと,発症後2~5 年で呼吸不全のために死亡にいたることがほとんど.

呼吸筋をふくめた全身の筋萎縮および脱力にもかかわらず,知能などの高次機能や感覚は全く保たれることが多い.

現在までに有効な治療薬や治療法がほとんどない.

疫学

本邦における年間発症率は,1.1~2.5人/10万人であり,患者総数は約1万人と推定されている.

好発年齢は40~60歳.やや男性に多い傾向.

予後

症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約3.5年といわれているが、正確な調査はなく、個人差が非常に大きい。

進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。

進行が遅く、呼吸補助無しで10数年の経過を取る例もある.

原因

家族性

ALS発症者の5~10% は家族性で発症がみられ,家族性ALSとよばれる.

多くは常染色体優性遺伝形式をとることが報告されてきた.

SOD(superoxide dismutase) 1

1993 年に家族性ALSにおいてその一部の原因遺伝子がCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)であることが明らかになった.

SOD1は,細胞内に発生した活性酸素を除去する解毒酵素.

変異SOD1は,変異によって毒性を獲得したgain-of-function機序によってALSを発症することが判明した.

TAR DNA-binding protein(TDP-43)

ALSでは,TDP-43陽性細胞質内核入体を有する細胞では,核内のTDP-43が消失している(loss-of-function)ことが神経病理学的に示されており,その細胞ではTDP-43の発現が促進され,TDP-43の凝集体がますます増大する悪循環が生じていると推察される.

RNA代謝異常

核-細胞質間輸送障害

ストレス顆粒異常

液-液相分離の関与

タンパク分解系機能障害

直鎖状ユビキチン鎖を介した神経細胞死

病態

典型例の剖検所見では運動ニューロンの変性のみならず脳幹被蓋部の著明な萎縮を認め,さらに脳幹部の神経細胞内に好塩基性の封入体を認めている.

もっとも神経細胞脱落が顕著なのは脊髄運動ニューロンだったが,病期が長くなるにつれ,好塩基性封入体,神経細胞内封入体およびグリア細胞内封入体の分布は運動系以外にも拡がっていった.

発症1 年の時点において,封入体は脊髄前角以外に黒質にも観察された.グリア細胞内封入体は神経細胞内封入体よりも広範に,発症後早期からみられた.

好塩基性封入体よりも免疫染色によるFUSTLS陽性封入体の分布の方が広範であった.

臨床経過

平均35.3歳で筋力低下を発症し,平均死亡年齢は37.2歳であり病期の進行は非常に急速.

ALSは発症様式により,
1)上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す上肢型(普通型)
2)構音障害、嚥下障害といった球症状が主体となる球型(進行性球麻痺) 25%
3)下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る下肢型(偽多発神経炎型) 20%
の3型に分けられることがある。

これ以外にも、呼吸筋麻痺が初期から前景となる例や体幹筋障害が主体となる例、認知症を伴う例もあり多様性がみられる。

球麻痺症状:舌の萎縮,線維束性収縮,構音障害,嚥下障害
上位運動ニューロン障害:筋委縮,腱反射の低下,線維束性収縮

四大陰性症状

眼球運動障害,感覚障害,膀胱直腸障害,褥瘡

治療

現在,ALSの治療薬として認可されているのはリルテックⓇ内服およびラジカットⓇ点滴のみであり,いずれを用いてもその進行を止めることはできない.
→早期に病因の解明,その成果に基づく基礎研究から臨床への橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)による治療法の開発が求められている.

筋力低下や痙縮に伴い、様々な二次的症状が出現するため,それらへの対応も重要.

グルタミン酸拮抗薬

リルゾール リルテック®

欧米における治験で、グルタミン酸拮抗剤が生存期間を僅かであるが有意に延長させることが明らかにされ、1999年より本邦でも認可された.

フリーラジカル消去薬

ラジカット®

不安や抑うつ

安定剤や抗うつ薬を用い、痙縮が著しい場合は抗痙縮剤を用いる。

筋力低下

痛みに対しては鎮痛剤や湿布薬を使用し、関節拘縮の予防には定期的なリハビリが必要である。

呼吸障害

非侵襲的な呼吸補助と気管切開による侵襲的な呼吸補助がある。
呼吸筋障害による呼吸不全.

嚥下障害

胃瘻形成術、経鼻経管栄養、経静脈栄養を考慮する必要がある.

コミュニケーション

進行に伴いコミュニケーション手段を考慮することが重要であり,症状に応じた手段を評価し,新たなコミュニケーション手段の習得を早めに行うことが大切.

体や目の動きが一部でも残存していれば,適切なコンピューター・マルチメディア,意思伝達装置及び入力スイッチの選択により,コミュニケーションが可能となることが多い.

症状が進行する前にあらかじめ,どのような治療法を選択するかについて話合いを,早めに十分に時間をかけて行うことが大切.

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