アミロイドーシス amyloidosis

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なすび医学ノート

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βシート構造を有する蛋白質が,何らかの原因で線維構造のアミロイド線維を形成して細胞外に沈着し,臓器の機能障害を起こす疾患の総称.

アミロイドは,コンゴーレッド染色で赤橙色,偏光顕微鏡観察で緑黄色の複屈折を呈する細胞外の沈着物.

アミロイドは,アミロイドの基となる前駆蛋白で分類することが基本であり,現在までにヒトで36種類のアミロイド前駆蛋白が同定されている.

分類

全身性アミロイドーシスは,アミロイド蛋白と臨床症状からさらにALアミロイドーシス,AAアミロイドーシス,家族性アミロイドポリニューロパチー,透析アミロイドーシス,老人性全身性アミロイドーシスに分類される.
→それぞれ,原因や治療法が異なる.

血液中のアミロイド前駆蛋白が全身臓器に沈着する全身性アミロイドーシスと,局所で産生されたアミロイド前駆蛋白が単一臓器に沈着する限局性アミロイドーシスに分類することもできる.

AAアミロイドーシス

二次性,反応性アミロイドーシスとも呼ばれ,急性期炎症蛋白の血清アミロイドA(serum amiroid A;SAA)の代謝産物であるアミロイドA(amyloid A)蛋白が組織に沈着し,臓器障害を生じることで発症する.

基礎疾患:炎症性疾患(関節リウマチなど)
心障害:±
腎障害:+++
肝障害:+
末梢神経障害:ー
その他の障害:消化管
治療:炎症抑制

原因

本邦での原因として,関節リウマチ60.3%,悪性疾患7.0%,リウマチ以外の膠原病6.5%,炎症性腸疾患4.5%,慢性感染症4.5%と報告されている.

発症機序としては,AAの前駆蛋白であるSAA蛋白の持続発現が一要因であるとされ,その発現の増強にはinterleukin-6刺激が重要な因子とされる.

ALアミロイドーシス

異常形質細胞から産生される単クローン性免疫グロブリン軽鎖を前駆蛋白とするアミロイドが沈着し,臓器障害をきたす.

基礎疾患:形質細胞異常
心障害:+++
腎障害:+++
肝障害:++
末梢神経障害:+
自律神経障害:+
その他の障害:軟部組織,消化管
治療:化学療法,自家幹細胞移植

異常形質細胞により産生されたモノクローナルな免疫グロブリン(M蛋白)の軽鎖(L鎖)に由来.

骨髄で産生され血中に分泌された前駆蛋白が全身諸臓器へ沈着する全身性ALアミロイドーシスと,局所で産生された前駆蛋白が単一臓器に沈着する限局性ALアミロイドーシスの二型に大別される.

疫学

ATTRwtアミロイドーシスに次いで頻度が高い全身性アミロイドーシス.

米国における発症率は100万人あたり9.7~14.0と報告されている.

治療法の進歩により,患者の長期生存が可能となり,ALアミロイドーシスの有病率は年々増加している.

症候

蛋白尿などの腎症状

うっ血性心不全・不整脈などの心症状

起立性低血圧などの自律神経症状

下痢・便秘・吸収不良などの消化器症状

四肢の感覚・運動障害や手根管症候群などの末梢神経症状

肝脾腫

診断

疑うときには,免疫グロブリン,血清・尿免疫固定法(or電気泳動),血清遊離軽鎖(フリー来とチェーン)の測定を行って,M蛋白の証明.

治療

治療の基本は,アミロイド前駆蛋白である単クローン性の異常免疫グロブリン軽鎖(フリーライトチェイン)の産生を抑制する.

多発性骨髄腫に準じて,
自己末梢血幹細胞移植併用大量メルファラン療法(HDM/ASCT(high dose melphalan/autologous stem cell transplantation)),
メルファラン-デキサメタゾン療法(MEL/DEX(melphalan/dexamethasone)),
ボルテゾミブを含むレジメ
がfisrt lineであり,個々の患者の状態・治療施設の状況により選択される.

未治療の全身性ALアミロイドーシスに対し,D-CyBorDがCyBorD単独に比べ,血液学的完全奏効率を改善し,アミロイド沈着による心臓や腎臓の機能低下を防ぐことが明らかになっている.
CyBorD=シクロホスファミド・ボルテゾミブ・デキサメタゾンの併用
D-CyBorD=抗CD38抗体であるダラツムマブとCyBorDを併用
→ダラツムマブの製造販売承認が申請中

ATTRアミロイドーシス

トランスサイレチン(transthyretin;TTR)を前駆蛋白とするATTRアミロイドが原因.

TTR遺伝子に変異がある遺伝性ATTRアミロイドーシスと,変異のない野生型ATTRアミロイドーシスとに分けられる.
→いずれの病型も症状は類似しており,心不全と不整脈(心房細動・伝導障害・心室性不整脈)が中心.

遺伝性ATTR(ATTRv)アミロイドーシス

v=variant
旧名:家族性アミロイドポリニューロパチー

変異TTRが原因

基礎疾患:TTR遺伝子変異
心障害:++
腎障害:+
肝障害:ー
末梢神経障害:+++
自律神経障害:+++
その他の障害:消化管,眼

常染色体(優性)の遺伝性全身性アミロイドーシス.

疫学

従来,ポルトガル,スウェーデン,日本(長野県・熊本県)の集積地のみに存在する非常に稀な疾患と考えられていたが,近年の疾患啓発により,日本全国・全世界に存在する比較的頻度の高い遺伝性疾患であることが明らかになっている.

日本国内の現在の患者数は約400人であるが,未診断例が多く,潜在的には1000人程度の患者が存在すると推測される.

130種類以上の病原性変異が報告されているが,本邦で最も頻度が高いTTR遺伝子変異はV30M(p.V50M)変異.
・長野県や熊本県といった集積地にみられる典型像(early onset Val30Met型)は,若年発症で,末梢神経症状を中心とした多彩な臨床症状を呈する.
・非集積地においても,Val30Met型が散在することが報告されている(late onset Val30Met型).50歳以降の比較的高齢発症,家族歴の頻度が少ない,男性が多いなどの特徴がある.

発症年齢は20~80歳代まで幅広いが,近年,50歳以降に発症する高齢患者が多数を占めている.

病態

TTRは大部分が肝臓で,一部が脳脈絡叢・眼の網膜色素上皮から産生され,血中に分泌される血漿蛋白質.

TTRは血液中では四量体を形成し,甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)の運搬やビタミンA-レチノール結合蛋白複合体の運搬を行っている.
→TTRがアミロイドを形成するには天然構造である四量体から単量体への解離が必要であるが,ATTRvアミロイドーシスではTTR遺伝子変異により四量体構造が不安定になっているため,単量体へと解離し,アミロイド線維を形成する.

高齢発症では,明らかな家族歴を持たない孤発例も稀ではない.

症候

主な臨床症状は,感覚・運動性の末梢神経障害,自律神経障害,心筋障害.
・若年発症では神経症状,高齢発症では心症状が主体となる傾向がある.

自然経過では発症から10~15年で死に至る.

末梢神経障害に加え,心症状を契機に診断される場合も稀ではない.

治療

肝移植

肝臓における変異TTRの産生を抑制する目的.

全身に沈着するATTRアミロイドのほとんどが肝臓で産生され,血中に分泌された変異TTRに由来していることから,1990年に初めて実施され,現在はその有用性が証明されている.

侵襲性,ドナー不足,移植に関連する合併症などの問題が存在.

移植後に,野生型TTRの沈着により心アミロイドーシスが進行することや,脈絡叢や網膜色素上皮細胞で産生される変異TTRの沈着により眼や脳のアミロイドーシスが進行することが明らかになっている.

TTR四量体安定化薬

TTRの生理的リガンドであるサイロキシン結合部位に結合し,四量体を安定化させ,アミロイド線維の形成を抑制する.

TTRのT4 binding siteに結合する低分子化合物を用いている.

タファミジス
・非常に高価
・2013年に「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの末梢神経障害の進行抑制」として適応が許可された.
・2019年にATTR型心アミロイドーシス(野生型・変異型)に対する適応が追加された.

diflunsal

核酸医薬

TTRのほとんどが肝臓で産生されるため,遺伝子サイレンシングの手法を用いた遺伝子治療の良い標的となる.

下記2剤とも,TTR mRNAの3’非翻訳領域を標的として設計し,肝臓で野生型・変異型TTRmRNAを特異的に分解する.

パチシラン
TTRメッセンジャーRNAを標的とし,遺伝子発現を抑制し,TTRの産生を阻害する低分子干渉RNA(small interfering RNA;siRNA)製剤.
・2019年6月に「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」の適応を取得.
・通常3週に1回,0.3mg/kg点滴静注する.

Inotersen(本邦未承認)
アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide;ASO)製剤.
・末梢神経障害とQOL悪化を有意に抑制することが証明.
・重篤な有害事象として糸球体腎炎と血小板減少が報告され,日本での治験が中止になっている.

野生型ATTR(ATTRwt)アミロイドーシス

wt=wild-type
旧名:老人性全身性アミロイド-シス

野生型TTRが原因

主に高齢者に認められる孤発性の全身性アミロイドーシスであり,野生型TTRのC末断片を主たる構成分とするアミロイドが心臓や手根管などの靭帯を中心とした全身臓器に沈着する.

疫学

剖検例の研究では,80歳以上の12~25%,95歳以上の37%と非常に高率に心臓へのATTRアミロイドの沈着が報告されている.
→高齢者におけるcommon diseaseであると推測されている.
→左室駆出率の保たれた心不全(EFpEF)に多く潜んでいる可能性が指摘されている.

高齢者の手根管症候群の多くが,野生型ATTRアミロイドーシスが原因であることも明らかになっている.

原因

加齢により四量体が不安定となり解離して単量体を形成し,アミロイド線維を形成する.
・機序は十分に解明されていない.

病態

主に症状を出現するのは関節・靭帯・心臓.
手根管症候群(特に両側),脊柱管狭窄症,心不全,不整脈

手根管症候群は,心症状に数年先行して出現する.
・脊柱管狭窄症,肘部管症候群,変形性膝関節症など他の整形外科的合併症も多い.

心不全は,病初期にはHFpEFの病型をとり,経過とともに心収縮力も低下する.

不整脈としては心房細動の合併も多い.

大動脈弁狭窄症に多く潜んでいることも指摘されている.
・ATTRアミロイドーシス合併AS患者の特徴として,男性に多く,EFの軽度低下,low-flow low-gradient ASという病態を有する症例が多くみられる.
・治療後の予後は,ATTRアミロイドーシスを認めない例に比べ不良.

治療

TTR四量体安定化薬

タファミジスは,変異型のみならず,野生型TTRの四量体構造も安定化する.

2019年3月に本邦で適応追加.

(核酸医薬)

野生型TTRの産生も抑制することから有効性を期待されている.
現在試験中.

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