Alport症候群 Alport syndrome

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なすび医学ノート

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○糸球体基底膜の構成成分であるtype Ⅳコラーゲンのα5鎖〔α5(Ⅳ)鎖〕をコードするX染色体(Xq22)上のCOL4A5遺伝子の変異に起因する伴性遺伝性の腎疾患.

○一番頻度の高い遺伝子疾患.

アルポート症候群(指定難病218) – 難病情報センター

病態

○基底膜の構成成分であるTypeⅣコラーゲンのα鎖のうち,α3,4,5のいずれかの規定遺伝子の異常によって起こる.
→それを補おうと,α1やα2鎖が反応性に産生が増加し,不規則に沈着する.
→かえって構造が保てなくなり,基底膜がちぎれたり,不規則に薄くなったり肥厚したりと膜のフレーム自体がランダムになってしまう.
→基底膜の厚さもバラバラになる.
→濾過障壁としての機能も低下し,物質透過性が高まってしまうため,赤血球をはじめとしたサイズの大きなものまで尿中に漏出する.

○1本のコラーゲン分子は,3本のα鎖がらせん構造を形成している.
 α鎖は6種類存在し,奇数が2本+偶数1本の組み合わせが基本となる.

○全身の基底膜は,基本的にα1鎖とα2鎖で構成される.
 糸球体基底膜(GBM)はα3鎖,α4鎖,α5鎖
 ボウマン嚢基底膜はα1鎖とα2鎖
 表皮基底膜は,α5鎖とα6鎖

○α1鎖とα2鎖は第13染色体上に存在する.
○α2鎖は,皮膚の基底膜,ボウマン嚢基底膜,メサンギウム領域で陽性に染色される.
○α3,α4鎖遺伝子(COL4A3,COL4A4)は第2番染色体に存在し常染色体劣性ならびに優性遺伝型の原因となる.
○α5鎖は,糸球体基底膜と皮膚に存在している.
○α5鎖(COL4A5)はX染色体に存在し,伴性遺伝型の原因となる.

遺伝形式

○異常が起こるα鎖の種類によって,遺伝形式も異なる.
 X染色体連鎖遺伝形式をとるのが一般的.8割は伴性遺伝.

男性 male-X linked AS;mXLAS

○重症化する.

○XLAS男性の腎予後には,遺伝子変異の種類が強く関与する.
 広範囲の欠失やナンセンス変異,フレームシフト変異など,蛋白合成に大きな影響をもたらす変異では,X染色体の活性化が関与していると推察される.

女性 female-X linked AS;fXLAS

常染色体 autosomal ressisive AS;ARAS,autosomal dominant AS;ADAS

○常染色体劣性遺伝型は10~15%.
 常染色体優性遺伝型の患者もまれながら存在.

○ARASにおいても,変異は多種報告されており,性別によらず10-20歳代で末期腎不全に至る.
→ADASはXLAS男性やARASに比べれば腎予後は良好.
 末期腎不全に至る場合がある.

Digenic

○遺伝性・家族性を証明できない患者も少なからず存在する(約5%程度か)

症候

○典型的な男性例では5歳頃までに顕微鏡的血尿が生じ,その後,蛋白尿も出現してくる.
 10歳頃までに感音性難聴,平均17~18歳で高血圧,SCr値の上昇が始まり,眼症状が現れてくる25歳頃には慢性腎不全となる.

○女性例では顕微鏡的血尿が主体で,血尿陽性例の2/3は将来,蛋白尿も現れてくるが,ネフローゼ症候群は稀である.

○高血圧は平均32歳で1/3にみられ,慢性腎不全になる頻度は5~10%.

尿検査

○顕微鏡的血尿が主体だが,発熱時には肉眼的血尿を呈する.
 蛋白尿は血尿に遅れて生じ,ネフローゼ症候群は男児例に多い.

○糸球体基底膜の疾患であり,進行すると糸球体はメサンギウム増殖を呈するが,蛋白尿はさほど多くない.
 高度蛋白尿を伴うことはしばしばあるが,微小変化型ネフローゼ症候群のような浮腫に難渋するネフローゼ症候群を呈することはまれ.

聴力検査

○高音域の感音性難聴は普通両側性で,小児では進行性.

○どのタイプのAlport症候群でも感音難聴を合併する可能性があり,その頻度は約80%といわれる.

○XLAS男性では,遺伝子変異の種類によって進行度が異なり,40歳代までに約90%が難聴をきたすが,XLAS女性では40歳代までに10%程度と少ない.
 ADASでは40%の症例に難聴がみられる.

○多くの男児では自覚がなくても聴力検査で10歳前でもみつかる.

眼検査

○水晶体被膜と角膜のデスメ膜などにα3α4α5が存在しており,前部円錐推水晶体(XLAS男性で22%程度),後嚢下白内障を発症する可能性がある.

○男性例の3/4,女性例の1/3にみられ,両側性の円錐角膜が特徴的で,白点状網膜炎様の変化もみられる.
 ただし,12歳以下では眼症状は極めて稀だが,その場合にも両親を検査すると所見がみつかることがある.

皮膚生検

○皮膚の基底膜を蛍光標識抗α2鎖抗体と抗α5鎖抗体を用いることによって,α5鎖の存在様式を確認でき,Alport症候群の診断に有用である.

○mXLASでは,α2鎖には異常がないので,皮膚の基底膜は陽性に染色されるが,α5鎖は全く存在しないので,陰性になる.

○fXLASでは,父方由来のX染色体には異常があり,母方由来のX染色体は正常であり,これらが,ランダムに選択されることから,陰性部分と陽性部分がモザイク状に存在することになる。

腎生検

○腎生検組織でα鎖の欠損を確認した場合,臨床的にはα5鎖を観察するのがよい.
 伴性遺伝型男性では完全欠損,女性ではモザイク変化(連続性が消失)する.
 常染色体劣性型ではGBMで欠損するが,ボウマン嚢基底膜にはα鎖が残存する.

光顕所見

○小児例ではほぼ正常で,加齢とともに非特異的な分節性の糸球体硬化,尿細管萎縮,間質の単核球や泡沫細胞(foam cell)の浸潤,線維化を認める.

○泡沫細胞はネフローゼ症候群を呈する他の腎炎でもみられるが,本症ではしばしば間質に集簇し,幼若な糸球体もみられる.

電顕所見

○糸球体基底膜は不規則な肥厚と部分的な菲薄化を呈し,緻密層は層状に断裂してその間隙に小顆粒がみられる.

○網目状変化もみられる.

○糸球体基底膜の分節性の断裂は他の腎炎でも稀にはみられる.

蛍光抗体法

○蛍光抗体法で免疫グロブリンや補体の沈着を認めない.

診断

診断基準

○主項目に加えて副項目の1項目以上を満たすもの.
○主項目のみで副項目がない場合,参考項目の2つ以上を満たすもの.
※主項目のみで家族が本症候群と診断されている場合は「疑い例」とする.
※無症候性キャリアは副項目のIV型コラーゲン所見(II-1かII-2)1項目のみで診断可能である.
※いずれの徴候においても、他疾患によるものは除く(糖尿病による腎不全の家族歴や老人性難聴など)

主項目

1)持続的血尿
 3か月は持続していることを少なくとも2回の検尿で確認する.
 稀な状況として,疾患晩期で腎不全が進行した時期には血尿が消失する可能性があり,その場合は腎不全などのしかるべき徴候を確認する.

副項目

1)IV型コラーゲン遺伝子変異
 COL4A3又はCOL4A4のホモ接合体又はヘテロ接合体変異,又はCOL4A5遺伝子のヘミ接合体(男性)又はヘテロ接合体(女性)変異をさす.

2)IV型コラーゲン免疫組織化学的異常
 IV型コラーゲンα 5鎖は糸球体基底膜だけでなく皮膚基底膜にも存在する.
 抗α 5鎖抗体を用いて免疫染色をすると,正常の糸球体,皮膚基底膜は線状に連続して染色される.
 しかし,X連鎖型アルポート症候群の男性患者の糸球体,ボーマン囊,皮膚基底膜は全く染色されず,女性患者の糸球体,ボーマン囊,皮膚基底膜は一部が染色される.
 常染色体劣性アルポート症候群ではα 3,4,5鎖が糸球体基底膜では全く染色されず,一方,ボーマン囊と皮膚ではα 5鎖が正常に染色される.
 注意点は,上述は典型的パターンであり非典型的パターンも存在する.また,全く正常でも本症候群は否定できない.

3)糸球体基底膜特異的電顕所見
 糸球体基底膜の広範な不規則な肥厚と緻密層の網目状変化により診断可能である.
 良性家族性血尿においてしばしばみられる糸球体基底膜の広範な菲薄化も本症候群においてみられ,糸球体基底膜の唯一の所見の場合があり注意を要する.この場合,難聴・眼所見・腎不全の家族歴があればアルポート症候群の可能性が高い.
 また,IV型コラーゲン所見があれば確定診断できる.

参考項目

1)腎炎・腎不全の家族歴

2)両側感音性難聴

3)特異的眼所見
 前円錐水晶体(anterior lenticonus),後嚢下白内障(posterior subcapsular cataract),後部多形性角膜変性症(posterior polymorphous dystrophy),斑点網膜(retinal flecks)など

4)びまん性平滑筋腫症

菲薄基底膜病(TBMD)との鑑別

1)難聴や眼症状のない常染色体優性遺伝性疾患
2)腎機能障害をきたさず予後良好

治療

○根本的な治療はいまだ確立されておらず,末期腎不全への進行を可能な限りくいとめるための様々な治療が検討されてきた.

○近年XLASもしくはARASの患者に対し,軽微な血尿・蛋白尿の時点からACE阻害薬の投与を開始することにより,末期腎不全への進行を緩徐にできると報告された.

○腎移植を受けた本患者の3~5%で移植腎の糸球体基底膜に対する抗体が生じ,抗糸球体基底膜抗体腎炎が起こる.

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