アルコール性肝障害 alcoholic liver disease;ALD

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なすび医学ノート

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エチルアルコールを含有する飲料の過剰摂取によって生じる肝臓障害であり,初期病変である脂肪肝をはじめ,進行した急性の肝細胞変性壊死と炎症を伴うアルコール性肝炎,さらには線維化の進行したその終末像であるアルコール性肝硬変にまで至る多彩な病変からなる.

アルコール性肝障害は,純アルコールで男性30g/日,女性20g/日以上の飲酒量で発症しうる.
・飲酒量の性差は,女性ではエストロゲンなどにより少量の飲酒でアルコール性肝障害をきたすため.

病態

アルコール性脂肪肝

肝細胞内に中性脂肪が種々の程度に蓄積し肝腫大をきたした状態であるが,中性脂肪のほかに少量ながらリン脂質,コレステロールも増加する.

自覚症状としては無症状であることも少なくないが,全身倦怠感,食欲不振,上腹部重圧感,右季肋部痛,腹部膨満感などが認められる.

他覚的には肝腫大が高頻度(90%以上)にみられる.

肝は表面平滑,辺縁は鈍,肝腫大の程度により中等度の硬さから弾性硬まであり,圧痛を伴うことが多い.手掌紅斑,くも状血管腫,女性化乳房も時にみられるが,これらの所見は長期飲酒者に多い.

時に,軽度の黄疸を認める場合もある.
・肝小葉の30%以上にわたる脂肪化(大滴性脂肪肝)
・その他の組織学的な変化は認められない.

アルコール性肝繊維症

・中心静脈周囲性の線維化 perivenular fibrosis
・肝細胞周囲性の線維化 pericellular fibrosis
・門脈域から星芒状に延びる線維化 satelllate fibrosis
・炎症細胞浸潤や肝細胞壊死は軽度

アルコール性肝炎

大酒家において飲酒量が急激に増加して持続(連続飲酒発作という)するのを契機として発症する急性肝障害.

脂肪肝に比べて臨床的に重症であることが多い.

アルコール150~200g(日本酒換算にして7合~1升)以上を,連日(1週~数週)にわたって摂取した場合に発症することが多い.

本症の確診は組織学的になされるのが原則であるが,臨床的には症状が軽度の場合もある.

自覚症状としては高度の食欲不振と全身倦怠感とともにはきけ,嘔吐,下痢,腹痛などの消化器症状が高頻度(40~50%)に認められる.

発熱,体重減少もしばしば認められる.

他覚的所見としては黄疸,著明な肝腫大が高頻度に認められる.

肝腫大は右肋骨弓下で2~3横指から臍部に達するほどの著明な腫大をきたすことがある.

肝の辺縁は鈍で,強い圧痛を認め,硬度硬.
肝硬変を合併しているときには,表面も凹凸不整となる.

腹水,浮腫,時に脾腫,消化管出血を認める.

さらに重症になれば肝性脳症や腎不全を呈してくる.
エンドトキシン血症やDICを合併することも少なくない.

病理
・小葉中心部の肝細胞の膨化 ballooning degeneration
・肝細胞の壊死
・Mallory小体(アルコール小体)
・多核白血球の浸潤

アルコール性肝硬変

アルコール性肝障害の終末像であるが,他の型の肝硬変と区別することは容易ではない.

自覚症状には特徴的なものはなく,食欲不振,全身倦怠感,腹部膨満,脱力感などの不定愁訴が主.

肝腫大,くも状血管腫,手掌紅斑,女性化乳房は高頻度に認められ,頻度は非アルコール性肝硬変に比べて高い.
脾腫の頻度は比較的少ない.

アルコール性肝硬変では他の臓器障害も高頻度に認められ,消化性潰瘍,睾丸萎縮,末梢神経炎,下腿けいれん(こむらがえり),舌炎,Dupuytren拘縮を手掌に認めることが少なくない.

病理
・小結節性の再生結節
・薄間質性の再生結節

アルコール性肝癌

アルコール性肝障害で肝癌の所見が得られたもの

検査所見

血液検査

時に軽度の貧血と血小板減少を認めることもある.
・MCVは一般に大きい.
・肝硬変になると貧血を認めるが,大球性のことが多い.

アルコール性肝炎では貧血と白血球増加を認めることが多く,血小板も減少する.
・アルコール性肝炎においては好中球を中心とする白血球増加は比較的特徴的な所見であり,10,000/mm3前後のことが多いが,時には重症の場合は20,000~40,000以上になり,類白血病反応を呈することもある.

プロトロンビン時間が延長する.

肝機能検査所見
・トコンドリア由来のAST活性が上昇(総AST活性の20%以上)する.ALTは正常またはごく軽度の上昇を認めることが多く,AST/ALT比は2.0以上となる.
・γ-GTP活性はASTの上昇よりも高頻度(約90%)に異常高値を呈する.
・アルコール性肝炎では,高ビリルビン血症がしばしば認められるが,通常は2mg/dL以上で10mg/dL以下
・コリンエステラーゼは脂肪肝で高値傾向,アルコール性肝炎では低下してくる.血清アルブミンもアルコール性肝炎では低下する.

アルコール性肝障害では,一般に血中脂質の増加がみられ,特に脂肪肝では,中性脂肪,HDLコレステロール,リポ蛋白(pre-βリポ蛋白)の増加が著しい.

画像所見

アルコール性肝障害で肝の脂肪変性を伴うときにエコーで肝エコーレベルの上昇と,深部エコーの減衰を認め,CTで肝CT値の低下を認める.

診断

問診

アルコール性肝障害の診断はまず,その飲酒歴を可能な限り正確に把握することから始まる.
・家族や勤務先の同僚からも聴取する.
→常酒飲酒家は実際よりも飲酒量を少なく申告することが多く,飲酒量を適切に診断し得るマーカーが必要とされている.

欧米では,糖鎖欠損トランスフェリン(carbohydrate-deficient transferrin;CDT)がマーカーとして体外診断用医薬品として幅広く使用されている.

肝生検

脂肪肝自体は超音波およびCTスキャンにて診断されることが多いが確実な診断は肝生検で行われる.

アルコール性のものでは門脈域の変化に加えて,脂肪変性,小葉中心性の線維増生が同時に認められること,AST/ALT比が2~3以上であることが多い.

治療

経過と予後は禁酒したかどうかにより著しく異なる.
・脂肪肝は,禁酒によって通常2~4週間で治癒する.
・中等症以下の症例では入院安静と断酒のみで,肝障害の速やかな改善が期待できる.

継続飲酒により,脂肪肝→アルコール性肝炎,または肝線維化→肝硬変へと進展する.
・肝硬変では禁酒した群の5年生存率が約80%であるのに対して,大酒を継続した群のそれは約30%.

断酒

基本は禁酒であり,継続できれば予後は改善する.
しかし,断酒ができず,難渋することが多い.

アルコール依存症治療では,断酒が不可能な場合は飲酒量を減らすことから始め,飲酒による害をできるだけ減らすというハームリダクションの概念が提唱されている.

薬物治療

2019年1月に飲酒量低減薬としてナルメフェンが認可され,断酒を必要とする患者の中間目標として減酒を設定することでハームリダクションへの新たな選択肢が示されている.

現時点では,一定の講習を受けた精神科医のみが処方可能な状況.

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