成人成長ホルモン分泌不全 adult growth hormone deficiency;AGHD

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
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 成人においてGHの分泌不全により,生活の質(QOL)の低下と体組成異常および血中脂質高値などの代謝障害を呈し,予後が悪化する疾患.

疫学

 国内推定患者数:36,000人,新規発症:1,410人/年

病態

NAFLD/NASH

 AGHDにおけるNAFLD発生の危険因子としては,BMI高値,内臓脂肪面積高値,インスリン抵抗性,脂質異常症の存在.
 IGF-1が肝臓における酸化ストレスを軽減し,ミトコンドリアの機能を改善することが見いだされた.
 GH補充は内臓脂肪を減少させ,インスリン抵抗性を改善することから間接的に効果を発揮している.

原因

・腫瘍性疾患(下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫)
・Rathke嚢胞
・下垂体炎
・empty sella症候群
・頭部外傷
・頭蓋放射線照射
*その他の下垂体ホルモン分泌不全も伴うことが多い.

症候

症状

 易疲労感,スタミナ低下,集中力低下,うつ状態

身体所見

・皮膚の乾燥・菲薄化,体脂肪の増加
・ウェスト/ヒップ比増加,筋力低下

一般検査

・脂質異常:総コレステロール↑,LDL-C↑,中性脂肪↑
・耐糖能異常(約20%で認める):脂肪分解低下→内臓脂肪型肥満→インスリン抵抗性
・肝障害:NAFLD,NASHの頻度が高い
・骨塩量・骨密度低下:骨折罹患率が高い
・内頸動脈IMT肥厚:心血管合併症,脳血管合併症増加

内分泌検査

GHは1回の基礎値の測定では判断できない!
・GH↓,尿中GHの排泄量低下
・IGF-1はほとんどの場合は低下しているが稀に正常.
・IGFBP-3(IGF結合蛋白-3)の低値:血中で特異的にIGFに結合,GH依存性に産生
*他の下垂体前葉ホルモンの低下がないかも評価する.

画像検査

■下垂体MRI
 器質性疾患の検索

負荷試験(GH分泌刺激試験)

■インスリン負荷
 低血糖によるストレスで視床下部に作用.ソマトスタチンの分泌抑制とGHRHの分泌促進
■アルギニン負荷
 視床下部からのソマトスタチンの分泌抑制
■L-DOPA負荷
 ソマトスタチンの分泌抑制とGHRHの分泌促進 偽性低反応あり
■グルカゴン負荷
 グルカゴンによる血糖上昇後,インスリン分泌が促進.
 血糖降下に対する反応(インスリン負荷と同じ機序)
■GHRP-2負荷(成人発症のみ)
 growth hormone-releasing peptide-2が視床下部に作用し,GHRHの分泌促進とソマトスタチンの分泌抑制
■クロニジン負荷(小児のみ)
 中枢性のα2-アドレナリン作動薬で,GHRH分泌を促進 偽性低反応あり
■GHRH(GRH)負荷
 偽性低反応あり

生活の質検査(Adult Hypopituitarism Questionnaire;AHQ)

QOL評価.

診断(平成24年度改訂)

■判定基準
・Ⅰの①あるいはⅠの②+③を満たし,かつⅡの①で2種類以上のGH分泌刺激試験において基準を満たすもの.
・Ⅰの④とⅡの②を満たし,Ⅱの①で1種類のGH分泌刺激試験において基準を満たすもの.
 GHRP-2負荷試験の成績は,重症型の成人GH分泌不全症の判定に用いられる(注7).
■成人成長ホルモン分泌不全症の疑い
・Ⅰの1項目以上を満たし,かつⅢの①を満たすもの.
■病型分類
○重症成人成長ホルモン分泌不全症:上記判定基準を満たし,GH分泌刺激試験における血清(血漿)GHの頂値がすべて1.8ng/mL以下(GHRP-2負荷試験では9ng/mL以下)のもの.
○中等症成人成長ホルモン分泌不全症:成人GH分泌不全症の診断基準に適合するもので,重症成人GH分泌不全症以外のもの.
Ⅰ.主症候および既往歴
①小児期発症では成長障害を伴う(注1).
②易疲労感,スタミナ低下,集中力低下,気力低下,うつ状態,性欲低下などの自覚症状を伴うことがある。.
③身体所見として皮膚の乾燥と菲薄化,体毛の柔軟化,体脂肪(内臓脂肪)の増加,ウェスト/ヒップ比の増加,除脂肪体重の低下,骨量の低下,筋力低下などがある.
④頭蓋内器質性疾患(注2)の合併ないし既往歴,治療歴または周産期異常の既往がある.
Ⅱ.検査所見
①成長ホルモン(GH)分泌刺激試験として,インスリン負荷,アルギニン負荷,グルカゴン負荷,またはGHRP-2負荷試験を行い(注3),下記の値が得られること(注4).
・インスリン負荷,アルギニン負荷またはグルカゴン負荷試験において,負荷前および負荷後120分間(グルカゴン負荷では180分間)にわたり,30分ごとに測定した血清(血漿)GH の頂値が3ng/mL以下である(注4,5).
・GHRP-2負荷試験で,負荷前および負荷後60分にわたり,15分毎に測定した血清(血漿)GH頂値が9ng/mL以下であるとき,インスリン負荷におけるGH 頂値 1.8ng/mL以下に相当する低GH分泌反応であるとみなす(注5).
②GH を含めて複数の下垂体ホルモンの分泌低下がある.
Ⅲ.参考所見
①血清(漿)IGF-1値が年齢および性を考慮した基準値に比べ低値である(注6).

注1:性腺機能低下症を合併している時や適切なGH補充療法後では成長障害を認めないことがある.
注2:頭蓋内の器質的障害,頭蓋部の外傷歴,手術および照射治療歴,あるいは画像検査において視床下部-下垂体の異常所見が認められ,それらにより視床下部下垂体機能障害の合併が強く示唆された場合.
注3:重症成人GH分泌不全症が疑われる場合は,インスリン負荷試験またはGHRP-2 負荷試験をまず試みる.インスリン負荷試験は虚血性心疾患や痙攣発作を持つ患者では禁忌である.追加の検査としてアルギニン負荷
あるいはグルカゴン負荷試験を行う.クロニジン負荷,L-DOPA負荷とGHRH負荷試験は偽性低反応を示すことがあるので使用しない.
注4:次のような状態においてはGH分泌刺激試験において低反応を示すことがあるので注意を必要とする.
・甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンによる適切な補充療法中に検査する.
・中枢性尿崩症:DDAVPによる治療中に検査する.
・成長ホルモン分泌に影響を与える下記のような薬剤投与中:可能な限り投薬中止して検査する.
・薬理量の糖質コルチコイド,α遮断薬,β刺激薬,抗ドパミン作動薬,抗うつ薬,抗精神病薬,抗コリン作動薬,抗セロトニン作動薬,抗エストロゲン薬 .
・高齢者,肥満者,中枢神経疾患やうつ病に罹患した患者.
注5:現在のGH測定キットはリコンビナントGHに準拠した標準品を用いている.しかし,キットによりGH値が異なるため,成長科学協会のキット毎の補正式で補正したGH値で判定する.
注6:栄養障害,肝障害,コントロール不良な糖尿病,甲状腺機能低下症など他の原因による血中濃度の低下がありうる.
注7:重症型以外の成人GH 分泌不全症を診断できるGHRP-2負荷試験の血清(血漿)GH基準値はまだ定まっていない.
附1:下垂体性小人症,下垂体性低身長症またはGH分泌不全性低身長症と診断されてGH投与による治療歴が有るものでも,成人においてGH分泌刺激試験に正常な反応を示すことがあるので再度検査が必要である.
附2:成人においてGH単独欠損症を診断する場合には,2種類以上のGH分泌刺激試験において,基準を満たす必要がある.
附3:18歳未満であっても骨成熟が完了して成人身長に到達している場合に本手引きの診断基準に適合する症例では,本疾患の病態はすでに始まっている可能性が考えられる.

治療

成長ホルモンの補充

ヒューマトロープ®
2009年より下垂体機能低下症が特定疾患に認定され,患者の経済的負担が軽減された.

診断したらまず特定疾患申請!現時点では重症のみ適応.

治療の目的

・自覚症状およびQOLの改善
・代謝障害是正→予後の改善

使用方法

・毎日就寝前にGHを皮下注射.
・少量(3μg/kgBW/day)から開始し,臨床症状・血中IGF-1値をみながら,4週間単位で増量し,副作用がみられずけつ血中IGF-1値が年齢・性別基準範囲内に保たれるように適宜増減する.
・男性は0.1-0.2mg/day,閉経前女性は0.2-0.3mg/dayが目安.
・高齢者ではより少量(0.1mg/day)から開始し注意深く容量を調整する.

一生続けないといけないことを強調せず,まずは半年使って治療効果をみましょうと説明することが大事

・GH投与量の上限は1mg/dayで,小児の投与量と比較すると,小児では0.175mg/kg/週(25μg/kgday)であり,成人では6~8μg/kgday前後が多く,小児の1/4,多くても1/2量.
・治療経過中は定期的に血中IGF-1値を測定し,年齢・性別基準範囲内であることを確認する.
・測定はGH投与開始後24週目までは4週間に1回,それ以降は12~24週間に1回が目安.
・体組成の改善,代謝障害の是正,QOLの改善など,GH治療の臨床効果を評価する.

有害事象

 GHの体液貯留作用に関連する手足の浮腫,手根管症候群,関節痛,筋肉痛などが治療開始時にみられるが,その多くは治療継続中に消失する.

浮腫と関節痛は,減量で必ず改善することを事前に説明する!

禁忌

糖尿病患者,悪性腫瘍のある患者,妊婦
*糖尿病については,血糖コントロールがよく網膜症などの合併症が進行していない症例では再考してよいかも?(欧米では,増殖性網膜症や活動性のある網膜症のみに禁忌)

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