成人T細胞性白血病 adult T-cell leukemia;ATL

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なすび医学ノート

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ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1;HTLV-1)が病因となり,HTLV-1キャリアの3~5%に60歳代後半をピークに発生する予後不良な末梢性T細胞腫瘍.

1977年,九州・沖縄地方を主とする西南日本に多発するT細胞腫瘍として,内山,高月らによって初めて報告され,1980年にRNAレトロウイルスのHTLV-1が原因ウイルスとして同定されている.

疫学

HTLV-1キャリアの高齢化に伴い,ATLの発症年齢の中央値は70歳に近くなっている.

病態

主に母乳を介する母子感染によるHTLV-1の感染後,約60年の潜伏期間を経て発症する.

感染初期

HTLV-1 Tax蛋白による感染T細胞のポリクローナルな増殖が起こる.
・Tax特異的な細胞傷害性T細胞の標的となる(Taxの免疫原性が高い)のを回避するため,ウイルスはTaxの発現を低下させる.

感染中期以降

感染細胞は,他のウイルス蛋白であるHBZ(HTLV-1 bZIP factor)の発現により感染T細胞の増殖を維持し,長い潜伏期間の間に,感染細胞にTaxの機能を代替するTCR(T-cell receptor)経路,NF-κβ経路(nuclear factor-Kappa B)経路などを活性化するゲノム変異やエピジェネティックな変化をする.
→ATL細胞のオリゴクローナルな増殖→ATL細胞のモノクローナルな増殖・がん化へとつながる.

病型分類

1980 年代の全国実態調査で収集されたATL患者の情報から,急性型,リンパ腫型,慢性型,くすぶり型の4臨床病型に分類し,さらに慢性型を予後不良因子(血清LDH値が施設正常値上限を超える,血清BUN(blood urea nitrogen)値が施設正常値上限を超える,血清アルブミン値が施設正常値下限を下回る)のいずれか1 つでも有するかどうかによって亜分類された.
→「下山分類」として現在も世界的に広く使用されている.

【必要な情報】
①末梢血白血球数と白血球分画(自動血球分析の場合はATL細胞を認識できない場合があるため注意が必要で,基本的には目視で判断する)
②生化学的検査(LDH,Ca値,BUN,アルブミン)
③リンパ節腫大の有無(有の場合には組織学的診断)
④皮膚や臓器・中枢神経病変の有無

急性型,リンパ腫型,予後不良因子を有する慢性型ATLをaggressive ATL,予後不良因子を有さない慢性型ATLとくすぶり型ATLをindolent ATLとする.
・Aggressive ATLは,indolent ATLから移行(急性転化)して,あるいはindolent ATLの時期を経ず,もしくはindolent ATLの時期に発見されずに発症する.

診断

症候

Aggressive ATLでは,発熱,全身倦怠感,食欲不振,リンパ節腫大,皮疹,肝脾腫等の症状を呈し,核クロマチンの凝集とともに多様分葉した白血化細胞(核の切れ込みや花弁状核など特有の核変形のあるATL細胞の末梢血への出現)が見られたり,血清LDH値や可溶性インターロイキン2 受容体(soluble interleukin-2 receptor;sIL-2R)値が上昇している症例が多い.

初診時から高カルシウム血症やそれに伴う腎障害,細胞性免疫低下による爪白癬や食道カンジダ症,稀にはニューモシスチス肺炎がみられる場合があり,これらはATLを疑う重要な所見となる.

Indolent ATLは,無症状の場合が多く,健診や他の医学的理由で血液検査を実施した際に白血球増加や末梢血への異常リンパ球の出現を偶然に発見されたり,皮疹のために皮膚科を受診し,診断されたりする場合がほとんど.

抗HTLV-1抗体検査

HTLV-1感染の有無を調べる.

西南日本は,世界的にも有数のHTLV-1 endemic areaであるが,近年では,人口の移動に伴ってHTLV-1キャリアは,西南日本出生者とは限らなくなってきている.

病理診断,フローサイトメトリー

リンパ節等生検標本の免疫染色を含む病理診断,末梢血に異常細胞が出現している場合には,フローサイトメトリー法(flow cytometry)によって,腫瘍細胞がCD4,CD25陽性であること(稀にCD4 陰性CD8 陽性ATLが存在する)を確認する.

その他

上記で診断は概ね確定できるが,厳密にはHTLV-1 が腫瘍細胞に単クローン性に組み込まれていることをサザンブロット法(southern blot)で確認する(保険適用外).さらに新規治療薬モガムリズマブの投与適応決定のためにCC chemokine receptor 4(CCR4)の発現を調べる.

治療

急性型では骨吸収性サイトカインであるPTHrPやRANKLと関連する高カルシウム血症が高頻度認められ,重症例では入院の上早急な治療介入が認められる.

indolent ATL(予後不良因子を有さない慢性型ATLとくすぶり型ATL)

Aggressive ATLになるまで無治療経過観察を行う.
・くすぶり型と予後不良因子を有さない慢性型の患者を比較すると,全身化学療法が開始されるまでの中央値はそれぞれ56.0カ月 VS 39.1 カ月であったが,生存曲線はほぼ重複していた(ATL-PIプロジェクト).

Indolent ATLに対する無治療経過観察は,類似した経過をとる慢性リンパ性白血病などの低悪性度造血器腫瘍の治療に準じる.

Indolent ATLの患者は皮膚病変を有することも少なくないが,皮膚病変に対しては副腎皮質ステロイド薬やレチノイドの外用剤,局所放射線療法,光化学療法などの皮膚指向性治療が行われる.
→皮膚局所の症状緩和としては有効であるが,生存期間の改善に貢献するエビデンスはない.

局所治療の範囲を超える皮膚病変が存在する場合は,ステロイドホルモンの全身投与,経口レチノイド製剤,インターフェロンγ 製剤,単剤化学療法(エトポシド経口少量,ソブゾキサン)による全身治療が行われる.
→生存期間の改善に貢献するエビデンスはない.

海外では,皮膚病変や日和見感染など有症候の場合は,インターフェロンαとジドブジンの併用療法(IFN/AZT療法)が1つの選択肢となることが日本との大きな違いであるが,エビデンスレベルは低い.

aggressive ATL(急性型,リンパ腫型,予後不良因子を有する慢性型ATL)

診断後,直ちに多剤併用化学療法を実施し,年齢や全身状態を考慮して可能な症例では同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem cell transplantation;allo-HSCT)を実施する.

多剤併用化学療法

VCAP-AMP-VECP療法(ビンクリスチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン―ドキソルビシン+ラニムスチン+プレドニゾロン―ビンデシン+エトポシド+カルボプラチン+プレドニゾロン) mLSG15
・JCOG9801 試験で有用性を確認(VS CHOP療法)
・56歳以上の患者のサブ解析ではOSにおけるVCAP-AMP-VECP療法の優位性はない.

biweekly CHOP療法(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)
・一般に選択される.

同種造血幹細胞移植 allogeneic hematopoietic stem cell transplantation;allo-HSCT

化学療法で一定の効果が得られた70歳未満で,可能であれば選択される.

2000年以降の骨髄非破壊的移植(reduced intensity stem cell transplantation;RIST)の導入により,有効性が示されるようになった.
・3年OSは33%で,化学療法単独の成績を上回る.
・一般に60歳までとされる骨髄破壊的造血幹細胞移植の適応から外れる患者が多いが,RISTで対象が70歳くらいまでに拡大している.

allo-HSCTは25~40%の患者に長期生存が得られることから,標準治療と位置付けられるようになったが,ほぼ同じ割合の患者に治療関連死を生じ得る.

aGVHD grade1~2で,OS改善.

移植後再発例に,ドナーリンパ球輸注(donor lymphocyte infusion;DLI)の治療効果を認めることがある.

(免疫療法)

免疫チェックポイント阻害薬が有効である可能性あり.

(抗ウイルス療法)

HTLV-1を標的とし,抗ウイルス薬インターフェロンαと抗HIV-1逆転写酵素阻害薬zidovudine(AZT)の併用療法.

NCCNでは,標準的治療であるが,本邦では保険適応はない.

ATLにおけるDNA修復異常を標的としている?

分子標的薬

再発・難治ATLへの二次治療

モガムリズマブ mogamulizumab ポテリジオ®
ケモカイン受容体CCR4(CC chemokine receptor 4)に対するヒト化モノクローナル抗体.
・初回治療時(mLSG15)に化学療法薬と併用することも可能となっており,併用することによってCR割合を高めることができる(無増悪生存期間は有意な延長なし).
・CCR4はATL細胞だけでなく制御性T細胞にも発現していることから,その抑制により,本剤使用後allo-HSCTを行った際にステロイド抵抗性の激しいGVHDが出ることが報告されている.
→50日以上のインターバルを推奨.

レナリドミド lenalidomido レブラミド®
免疫調節薬(IMiDs)
・有効性の高い経口薬で,高齢者への投与が期待される.

Brentuximub vedotin アドセトリス®
CD30陽性末梢性T細胞リンパ腫に承認

HTLV-1キャリアと判明した妊婦への説明

・HTLV-1キャリアは決して稀ではないこと(約100万人のキャリアがいます)
・今,病気の状態ではないこと(発病しなければ健康です)
・問題なく出産できること,普段通りの生活をしてもよいこと
・赤ちゃんへの感染を予防する方法があること(人工乳,90日までの短期母乳,凍結母乳)
・将来,ほとんどの方が病気を発病しないこと(ATLの発病は5%,HAMは0.25%)

母子感染予防として,完全人工栄養(粉ミルク:完全人工栄養)をまず推奨し,母乳投与を強く望む際は,90 日までの短期母乳(90 日までは直接母乳で,その後は粉ミルクでの人工栄養),凍結解凍母乳(搾乳した母乳を凍結・解凍後に哺乳ビンでの哺育)を提案する.
・栄養法の選択は,キャリア妊婦とパートナーが自主的に行うもので,医療者は中立的な立場で,患者の意志を尊重する.

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