Addison病 Addison’s disease

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なすび医学ノート

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副腎に病変が原発する慢性副腎皮質機能低下症

近年は,先天性副腎皮質過形成のように原因遺伝子が同定されているものは,別疾患として扱われる.

副腎機能低下症,副腎不全 hypoadrenalism
コルチゾールの作用が低下している状態.疫学○原発性の原因疾患は,欧米では自己免疫性が70~90...

病態

自己免疫性,感染症(結核など),悪性腫瘍,出血などが知られている.

1990年代前半は,結核が原因の多数を占めていたが,近年は結核が減ったため,自己免疫性の比率が高くなっている.

自己免疫性

特発性
Polyglandular autoimmune syndrome(APS) 1型/2型

病理学的にはほとんどの副腎皮質細胞は萎縮しているが,副腎髄質は正常.
・約75%で副腎自己抗体を認める.
・約50%は何らかの自己免疫疾患(甲状腺疾患など)を伴っている.

他腺性自己免疫症候群 autoimmune polyendocrine syndrome;APS

 臓器特異性を示唆する自己免疫疾患として甲状腺疾患(32%)(Basedow病,橋本病),糖尿病,副甲状腺機能低下症,性腺機能低下症の合併が多く,また副腎その他,性腺,甲状腺などの自己抗体が検出される.
 橋本病の合併はSchmidt(シュミット)症候群と呼ばれる.

感染性

結核
真菌(ヒストプラズマ,パラコクシジオイデス症)
HIV感染症
梅毒
アフリカトリパノソーマ症

1)結核による乾酪性肉芽腫が副腎皮質を占拠する.
2)病初期は腫大→副腎破壊→線維化や萎縮・石灰化を約50%

転移性癌

原発性肺癌,乳癌(この2つで60%くらい),胃癌,大腸癌,リンパ腫

副腎出血,副腎梗塞

髄膜炎菌による敗血症,血栓症に対する抗凝固療法など

薬剤

ケトコナゾール,リファンピシン,フェニトイン,バルビツール酸,メチラポン,ミトタン

その他

放射線照射後
全身性疾患(サルコイドーシス・アミロイドーシスなど)
ACTH不応症
副腎白質ジストロフィー
副腎脊髄ニューロパチー
家族性グルココルチコイド欠損症
グルココルチコイド抵抗症
コレステロール代謝不全

症候

 90%以上の副腎皮質の破壊による全ステロイドホルモンの脱落状態と,これに伴う下垂体-副腎のフィードバック機構の乱れと髄質の破壊(結核性Addison病)による症状がある.

 自己免疫性の自然経過として,アルドステロン分泌が先に障害されて,遅れてコルチゾール分泌の障害が顕れることが知られている.

コルチゾール欠乏

1)グルココルチコイド作用が欠如し,低血糖と低血圧をきたし,カテコールアミン減少はこれをさらに増強する.
2)水利尿不全(水負荷で尿量が十分に増加しない)をきたす.
3)負のフィードバックの抑制がとれ下垂体前葉からPOMC由来のACTH, βLPH, γLPHを含むペプチドの分泌が増加し,皮膚の色素沈着をきたす.

アルドステロン欠乏

1)ミネラルコルチコイドであるアルドステロンの欠乏により腎の遠位尿細管でのNaの再吸収,およびK+,H+の排泄が抑制される.
→尿中へのNaの排泄増加とKの体内貯留
→細胞外液量が減少し,ヘマトクリットは上昇

アンドロゲン欠乏

1)副腎アンドロゲン(DHEA sulfate,アンドロステンジオン)はアンドロゲン作用は弱いものの,末梢でテストステロンに転換され,男性化作用を発現するが,この欠乏により女性の腋毛,恥毛の減少の原因となる.
2)男性では睾丸由来のテストステロンが優位であるので著明でない.

症状

1)色素沈着(皮膚,粘膜,爪,舌,口腔粘膜,歯肉にみられる)
2)易疲労感,脱力感
3)食欲不振
4)体重減少(成人)
5)月経異常
6)皮膚乾燥
7)腋毛・恥毛脱落(女性)
8)体重増加不良(小児)
9)悪心・嘔吐
10)性欲低下
11)早期閉経
12)起立性低血圧,低血圧
13)耐寒性低下
14)低血糖

検査所見

高レニン血症→低アルドステロン血症→高ACTH血症→低コルチゾール血症の順で出現する.

1)血中Na低下,高K血症,赤沈促進,貧血,好酸球増加
2)血中コルチゾールまたは尿中17OHCS,17KSの低値
3)合成ACTH8時間点滴静注またはACTH depot薬筋注(連続2~3日以上)負荷試験に無反応
4)血中ACTHの高値
5)血中アルドステロン低値(高K血症になる)またはアンジオテンシン負荷試験に無反応
6)血中DHEA sulfateの低値

画像所見

X線,超音波,CT,MRIでは結核性Addison病で78%に副腎の石灰化,副腎腫大がみられ,特発性ではどちらも認められない.

診断

自覚症状

①色素沈着: あるいはまれに白班、関節部、手術創、乳輪、手掌の皮溝、歯齦、口腔粘膜、舌、口唇などに特徴的
②易疲労、脱力感
③体重減少
④消化器症状: 食欲不振、悪心・ 嘔吐、下痢、腹痛
⑤精神症状: 無気力、無関心、不安感
⑥急性副腎皮質不全症状: 全身倦怠感、頭痛、悪心・ 嘔吐、発熱などの非特異的症状に始まり、急速に進行して意識障害、呼吸困難、ショック

他覚症状

①低血圧:起立性低血圧症を来しやすい。
②脱毛、性腺機能低下: 女性では腋毛、恥毛の脱落、月経異常、男性では性欲低下
③低血糖症状

検査所見

①内分泌学的検査成績
血漿コルチゾール低値と血漿ACTHの高値を認め、迅速ACTH負荷試験で血漿コルチゾールの増加反応を認めなければ、本症と診断できる。
血漿コルチゾールは正常下限でも、ACTH負荷に対して血漿コルチゾールの反応性が欠如、あるいは低下しているものを部分的アジソン病と呼ぶ。
②末梢血液像
軽度の貧血や白血球数の減少並びに相対的リンパ球増加及び好酸球増加。
③血清生化学
アルドステロン欠乏による血清ナトリウム、クロールの低下とカリウムの上昇。 血清ナトリウム(mEq/L)/カリウム(mEq/L)比が30以下(正常は32)。
ときに高カルシウム血症、代謝性アシドーシス、水利尿の低下。
④免疫学的検査
自己免疫機序の関与する特発性アジソン病では、抗副腎抗体を検出することがある。

重症度分類

以下の4項目のうち、少なくとも1項目以上を満たすものを対象とする。
1)「血中コルチゾールの低下を認める」
血中コルチゾール基礎値4µg/dL未満
2)「負荷試験への反応性低下」
迅速ACTH負荷(250µg)に対する血中コルチゾールの反応 15µg/dL未満
3)「何らかの副腎不全症状がある」
以下に示すような何らかの副腎不全症状がある。
・特徴的な色素沈着
・半年間で5%以上の体重減少
・低血圧
・脱毛
・低血糖症状
・消化器症状(悪心、嘔吐など)
・精神症状(無気力、嗜眠、不安など)
・関節痛
・過去1年間に急性副腎皮質不全症状に伴う入院歴がある
4)「ステロイドを定期的に補充している者」

治療

 原則は副腎皮質ステロイドホルモンの代償療法であり,生涯にわたっての補充が必要である.
 副腎結核によるものではグルココルチコイド補充療法開始後は十分に観察を行い,必要に応じて結核の治療を行う.

グルココルチコイド

 生理的にはコルチゾールが最もよく,成人の1日のコルチゾール分泌量である20mgを分泌の日内変動に合わせて朝15mg,夕方5mg投与する.
 この量では色素沈着は十分に改善しないことが多く,合成ステロイド薬であるデキサメタゾンの投与がコルチゾールに比べ色素沈着の改善効果の点ですぐれている.

ミネラルコルチコイド

 症状が強い場合には,併用する.
 通常,本邦では食塩摂取量が多いのでミネラルコルチコイドの投与をほとんど必要としない.
 生理的にはアルドステロンであるが製剤がなく,フルドロコルチゾン(フロリネフ 0.1mg)を朝内服させる.

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